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2015年台湾改正会社法に関する
最新の動向について


(台湾・玄奘大学・法律学系・黄 瑞宜副教授)


Ⅰ はじめに

 2015年9月4日に、台湾の会社法は「閉鎖的株式会社」という制度が導入され、株式会社の章節の中(356条ノ1から356条ノ14まで)において、計14カ条からなる新たな規定として設けられ、公布施行されるに至った。

 閉鎖的株式会社制度を導入するきっかけは、かつて、現行台湾会社法の制度設計については、大規模な企業向けの規定がほとんどであり、中小企業や科技新創事業(以下では、新形態のビジネスモデルと称する)においては、現行会社法に関する強制的な規定や不備な規定が多かったゆえ、資金調達を円滑にするために、ほとんどが海外で会社を設立するようになったのである。

 そのため、今回の会社法改正において、人材流出の恐れや、資本金および税収入をより的確に確保できるように、主に、イギリスやアメリカの閉鎖的株式会社の立法例を参考したわけである。

 当該制度を導入した結果、国内外の起業家が、中小企業や新形態ビジネスモデルに対応するため、非公開会社を前提にし、資金調達をよりやりやすくし、自由かつ柔軟的に会社を設立することができるようになった。


Ⅱ 閉鎖的株式会社の特色

 閉鎖的株式会社の主な特色は、会社が無額面株式を選択して発行することができ、複数議決権付特別株または特定事項拒否権付特別株を発行することもできることから、初期において自己資金が不足している起業家が外部からの資金調達を行うと同時に、会社に対する経営権を保有することもできるというメリットがある。台湾で起業しようとする若者や外国人でも、閉鎖的株式会社の設立を検討することができる。


Ⅲ 閉鎖的株式会社の意義および設立

 「閉鎖的株式会社」とは、台湾会社法第356条ノ1の規定によれば、株主の人数が50人以下でなければならず、定款において株式の譲渡制限が定められている株券非公開発行会社のことを指す。

 すなわち、閉鎖的株式会社は、その会社機構が簡易化され、また株主の人数の制限、持分譲渡の制限および新出資公募の禁止から、閉鎖的・非公開的性質を有する会社である。

 しかし、閉鎖的株式会社の設立には、株式会社の発起設立に相当する方法で行うことになる。

 ただし、株主の人数について、中央主管機関が社会経済および実際の情況に応じて、株主の人数を追加することが認められる(台湾会社法第356条ノ1第2項)としている。

 すなわち、発起人が全員の同意を得て、閉鎖的株式会社を設立することができる(台湾会社法第356条ノ3第1項)。しかし、定款において会社の閉鎖的の属性を記載しなければならない(台湾会社法第356条ノ2)としている。


Ⅳ 出資の方法

 発起人の出資が、現金による出資を除くほかに、会社の事業に所要な財産、技術、労務または信用による出資を払い込むことができる(台湾会社法第356条ノ3第3項)。ただし、現金による出資がされない場合には、株主全員の同意を得なければならない(台湾会社法第356条ノ3第4項前段)。

 これに対して、株式会社の場合には、現金、債権および技術による出資に限られ、労務または信用による出資が認められていない(台湾会社法第156条第7項)。


Ⅴ 機関

 発起人が取締役および監察人を選任する方法については、定款にそれに関する規定が記載される場合を除くほかに、台湾会社法第198条の規定に準用される(台湾会社法第356条ノ3第5項)。

 すなわち、会社法第198条の規定では、「1株式につき選任すべき取締役または監察人の人数と同数の選挙権を有し、1人に集中させて選挙し、または数人に分散させて選挙し、投票用紙によって示される議決権をより多く獲得した者が、取締役または監察人として選任させることができる」としている。

 そのため、閉鎖的株式会社が、定款で特に定めた場合に限り、累積投票による取締役または監察人を選任することができる。株式会社の場合は、累積投票制度しか利用できない。

 また、特別株の株主が取締役または監察人として選任されることが可能である。閉鎖的株式会社が、特別株を発行するとき、定款に会社法第356条ノ7の各事項を記載しなければならない(台湾会社法第356条ノ7)としている。そのため、特別株の株主が取締役または監察人として選任される権利の事項をも定款に定めなければならない(台湾会社法第356条ノ7第1項4号)。

 いわゆる、閉鎖的株式会社は、複数議決権付特別株、特定事項拒否権付特別株などを発行することができるが、株式会社の場合はこのような特別株を発行することができない。


Ⅵ 株主総会の招集

 閉鎖的株式会社が定款において、株主総会を招集するときに、テレビ会議または書面決議によって議決権を行使することができると定めることができる(台湾会社法第356条ノ8第1項)としている。また、株主総会がテレビ会議によって、これを行う場合には、テレビ会議に出た株主が自ら出席するとみなされる(台湾会社法第356条ノ8第2項)。

 また、閉鎖的株式会社は株主総会の開催を省略し、書面決議の方法も認められる(台湾会社法第356条ノ8第3項)。


Ⅶ 計算

 閉鎖的株式会社が、資本制度を採るほか、株式会社の場合と同様法定準備金制度を採用する。法定準備金は欠損の填補のみに用いられ、準備金の資本組入れ。そのため、利益配当および欠損の填補について半年ごとにこれを行うことができる(台湾会社法第356条ノ10第1項)と定められている。

 また、会社が半年ごとに利益配当および欠損の填補に関する議案について、営業報告書と財務諸表とともに、監察人に交付し、監査を受けた後、取締役会においてこれを決議しなければならない(台湾会社法第356条ノ10第2項)。


Ⅷ 非閉鎖的株式会社への変更

 閉鎖的株式会社が発行済み株式総数の3分の2以上の株式を有する株主が株主総会に出席し、その出席した株主の議決権の行使により、過半数の同意を得て、非閉鎖的株式会社に変更することができる(台湾会社法第356条ノ13第1項)としている。また、株主の人数が会社法第356条ノ1の規定に満たさない場合には、非閉鎖的株式会社に変更し、同時に、変更登記を経なければならない(台湾会社法第356条ノ13第3項)と規定されている。


Ⅸ 結びにかえて

 閉鎖的株式会社制度を導入する主な目的は、中小企業や新形態のビジネスモデルの起業家に勇気を与え、台湾の経済を活性化させるためである。本来なら、閉鎖的株式会社の設立は、非公開会社を前提にしており、機関設計が簡易化され、また株主の人数の制限、持分譲渡の制限および新出資公募の禁止をしているから、閉鎖的・非公開的性質を有する会社である。

 しかし、会社法第356条ノ13の規定では、こうした新形態のビジネスモデルが一定の規模に達したとき、株式有限会社に変更しなければならない。投資者や閉鎖的株式会社の少数株主の権益保護などが、問題になるからであろう。

 かねてから、台湾の学界において、閉鎖的株式会社制度を導入すべきか否かについては、活発な議論があった。ちなみに、2014年には「中小企業発展条例」における技術株の課税が緩和されたが、現在の税金制度によると、労務または信用により生じた株券に所得税を支払わなければならない。すなわち、こうした新形態のビジネスモデルの株券がまだ現金になっていないうちに、政府に所得税を支払わなければならないので、合理的なものにはなっていない。




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