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スポーツ中継のブラックアウト
(アメリカの視聴者によるクラスアクション)
(中編)

一般社団法人GBL研究所 理事 宮田 正樹

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スポーツビジネスと法 第8回(中編)

労働法、独占禁止法、契約法、著作権法、商標法……。これらさまざまな法律が複雑に絡み合う、世界でもっともポピュラーなビジネスがあります。それが「スポーツ」ビジネスです。日頃、私達が観賞しているこのスポーツにこそ、その国ならではのビジネス課題や法律問題が潜んでいます。この連載では、スポーツビジネスと法に関する研究の第一人者である宮田正樹先生に、「スポーツビジネスと法」と題して連載をいただきます。
連載第8回、タイトルは「スポーツ中継のブラックアウト(アメリカの視聴者によるクラスアクション)」です。



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MLBとテレビ放送

 前述のようにMLBの初期のブラックアウト・ルールは、各球団は、ホーム球場の中心から半径50マイル(約80.5km)の範囲を「ホーム地域」とし、その範囲にあるテレビ放送局に自己の行う試合を、それがホームの試合であれアウェイの試合であれ、実況放送させることができ、ホーム地域においては他の球団の試合の実況テレビ放送をブラックアウトすることができるというものでした。ただし、ワールドシリーズとオールスター戦は別で、いずれもNBC(National Broadcasting Company‎)が、1950年から独占的に放送しています。

 したがって、MLBの各球団は、地元でのテレビ放映権を地元テレビ局1社に独占的に許諾することにより得られる対価を副収入(入場料収入以外の収入、あるいはテレビ放送により減少したかも知れない入場料の補完収入)として享受する道を選び、地元テレビ局との結びつきを強めていきました。一方、他地域から流されるテレビ放送は、ホーム球場の観客減少につながるとしてブラックアウトを続けました。これは、独占契約を結んだ地元テレビ局の独占権を保護し、より高額の放映権料を取得するためであるともいえます。

 このようにブラックアウトによりメジャー球団が存在するような大都市などには他のMLB球団の試合を流すことができないことや、放送権は各球団との個別契約で取得することになっていたこともあり、MLBの試合が全国ネットでテレビ放送されるようになるまでにはけっこう時間がかかっています。


(1) ABCが創設した「Game of the Week」
 その口火を切ったのは、ABC(American Broadcasting Company)でした。 ABCは1951年9月に土曜日のプライムタイムに野球放送を始めました。しかし、これはMLBの試合ではなく、Women’s Professional Baseball Leagueによる「Girls Baseball」でした。
 ABCは1953年のMLBの開幕戦のうち「ニューヨーク・ヤンキース対ワシントン・セネターズ」戦を放送するところまで漕ぎ着けましたが、当時の副大統領ニクソンが始球式を行うはずであったこのゲームは雨で流れてしまいました。
 しかし、ABCはこの年、3球団(フィラデルフィア・アスレティックス、クリーブランド・インディアンズ、シカゴ・ホワイトソックス)と放送契約を締結し、「Game of the Week」というプロ野球実況番組をスタートしました。
 この番組の初放送は同年の戦没将兵追悼記念日(Memorial Day、毎年5月の最終月曜日)に行われた<クリーブランド・インディアンズ対シカゴ・ホワイトソックス>戦でした。多くの大都市ではブラックアウトされたため、この放送はさほどマスコミの話題とはなりませんでしたが、ABCの「Game of the Week」は郡部の地域を中心に着実に視聴率をとっていきました。そのおかげでABCは1954年シーズンに向かって100ステーションのネットワーク局を獲得することができました。
 そして、翌1954年には、新に4球団(ブルックリン・ドジャース、ニューヨーク・ジャイアンツ、フィラデルフィア・フィリーズ、ワシントン・セネターズ)との契約にも成功し、全16球団(当時)中7球団の主催する試合を「Game of the Week」で放送しました。


(2) CBSの参入
 ABCの創設した「Game of the Week」は『GOTW』と略称されるようになるほど一般化しましたが、番組スポンサー・Falstaff beer(Falstaff Brewing Corporation)が、当時他の2大ネットワークテレビ局(「National Broadcasting Company:NBC」と「Columbia Broadcasting System:CBS」)に比べるとネットワークテレビ局の数で劣っていたABCを見限り、1955年シーズンはGOTWの放送局をABCからCBSに変更してしまいました。
 1955年にABCの「Game of the Week」を引き継いだCBSは、年間26ゲームを100ネットワーク局で放送するところから始めましたが、1956年には、MLB全16球団中13球団を放送可能球団として契約し、ネットワーク局を175局まで増やしました。

 なお、1956年という年は、現在に至るMLBのブラックアウト・マップ(図1)の原型が定められた年でもあります。この年、National League(NL)は”National League Broadcast Agreement”としてテレビ放送に関わる各球団の独占地域を定めました。更に、クローズド・サーキット・シアター(”closed-circuit theater television”:雑誌記事1参照)での実況放送については、その入場料をホームチームとビジターチームとで折半することを定めました。これが、後にローカル・ケーブルテレビ収入の均等分配化のベースとなりました。American League(AL)もNLとほぼ同様の規定を定めました。

(図1)現在のMLBのブラックアウト・マップ
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※すべての図はクリックで拡大します

 次は科学雑誌「Popular Science」の1939年11月号の記事で、ちょっと古いですが映画館を中心に上映された”closed-circuit theater television”の雰囲気を表しています。

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(3) NBCの参入
 ワールドシリーズやオールスターで以前から野球のテレビ放送については実績を積んでいたNBCは、1957年に独自の「Game of the Week」を『Major League Baseball』というシンプルな番組名でスタートさせ、CBSに対抗することにしました。NBCは、ミルウォーキー・ブレーブス、ピッツバーグ・パイレーツ、シカゴ・カブズ、ワシントン・セネターズの4球団にまだ放送を許諾可能な試合が残っていることに気づいたのです。
 NBCの放送もMLBの球団所在地ではブラックアウトされましたが、そのネットワークは37州、116局まで広がりました。(先発のCBSは、この時期に24州、163局でした。)

 更に、1958年6月1日、CBSの日曜日の野球実況テレビ放送”Sunday Game of the Week”の放送が開始されますと、これに対抗してその年12月にNBCが翌年(1959年)に”Sunday Game”をスタートさせることを発表します。

 こうして、1959年以後NBCとCBSは土日の試合をフルシーズン・25週毎週テレビ放送することになります。


(4) ABCにより幕が開いたリーグ一括契約
 スポンサーの意向で自社が創設したテレビ実況中継番組GOTW(”Game of the Week”)を1955年にはCBSに譲らざるを得なくなったABCですが、1960年に再度GOTWに参入しています。しかし、東海岸でPM4:00スタートする試合を中心とするという、他2大ネット(NBCとCBS)とは時間帯をずらした番組設定は功を奏さず、1年でこの番組から撤退しました。

 そして、捲土重来をめざしてABCが挑んだのは、真の全チーム・全国ベースでのGOTWでした。
 1961年にスポーツ放送法の成立と同時にスタートしたNFLのリーグ一括契約を横目で睨んでいたMLBの思惑とも相まって、1965年シーズンの全国ネットテレビ放送権は下記の条件でABCが取得することになりました。

  • 契約金は$5.7百万(各球団に$30万ずつ支払う)・・・1965年シーズン分
    (当時、MLBは全20球団(AL:10、NL:10)でしたが、ニューヨーク・ヤンキースは1964年にCBSに買収されその傘下となっていたため、この契約に加わらなかったので19球団が契約対象球団でした。しかし、フィラデルフィア・フィリーズが他のテレビ局との契約とのバッティングにより脱落し、最終的には18球団が参加球団となりました。)
  • 1966年シリーズを$6.5百万(@$32.5万 × 20球団)で放送できるオプション契約付
  • 試合数は28試合(レギュラーシーズン・ゲーム)
  • ブラックアウトされるのは、当該試合のホームおよびアウェイの球団のホーム地域のみとする。

 上記ABCの契約は、次の点で画期的なものでした。

① MLBに放送権料の均等分配方式を導入させる元となったこと。
② 全国ネットテレビ放送のブラックアウトは、放送される試合の当事者(ホームおよびアウェイの球団)の地元ホーム地域のみとし、他のMLB球団のホーム地域ではブラックアウトされないこととしたこと。

 しかし、ABCのGOTWは、各球団の地元テレビ放送やCBSによるヤンキースのGOTWに視聴率で劣る結果となり、ABCは1966年シーズンのオプション権を行使することなくGOTWから撤退することになります。


(5) リーグ一括での全国ネットテレビ契約の始まり
ABCの後を引き継いだのはNBCでした。

 ABCとの$6百万に迫る契約金額に味をしめたMLBは遂にリーグ契約としてのGOTWの放送契約をNBCと結ぶことにしました。その条件は年間28ゲームのGOTWにワールドシリーズとオールスターの放送権を加えて総額$30.6百万というものでした。内訳は次のとおりです。

 1.1966年シーズン〜1968年シーズンのGOTW:毎年$6百万(3シーズン総計$18百万)
 2.1967年のオールスター戦&ワールドシリーズ:$6.1百万
 3.1968年のオールスター戦&ワールドシリーズ:$6.5百万

 このうちGOTWの放送権料は、MLBから各球団に均等分配されることとなりました。 こうして、全国ネットのテレビ放送についてはMLBが一括独占的に全国ネットテレビ局と契約し、その放映権料は各チームに均等に分配する、各球団の地元でのテレビ放送権については各球団が地元テレビ局と契約し、その放送権料は当該球団が取り込める(均等分配の対象とはならない)という、現在に至るMLBのテレビ放送権の取扱い方が定まったわけです。

 このようなMLBのテレビ放送権およびその対価の取扱いは、リーグで一括管理・契約して対価を各チームに均等分配することによりチーム間格差のミニマイズを図っているNFLと比べると中途半端なものといわざるを得ません。
 その原因は、既に地元テレビ局との独占的テレビ放送権契約から相当の対価を得ていた各チームのオーナーが、その既得権を手放さなかったからです。彼らにとっては、全国ネット局とのGOTWから得られる対価は副収入としての位置づけだったため、これは均等分配とすることを受け入れたのです。

 なお、ブラックアウト地域とは、各球団が契約している地元テレビ局に与えられた当該チームの試合の独占的放送地域ということになるのですが、そもそもは「マイナーリーグの保護」を謳って始めたブラックアウト・ルールを、この頃にはMLBは「各球団の収益保護(収益格差を拡げないため)」という説明に替えています。
 その説明とは次のようなものです。

各球団にとって地元テレビ局とのテレビ放送権契約料は大事な収益源となっている。 テレビ放送契約を自由競争にしてしまうと、人気チーム(例えばヤンキース)に各地域のテレビ局からの契約が集中し、弱小球団はほとんどテレビ放送権収入を得られなくなる。それでは球団間の格差が大きく開いてしまうので、ブラックアウト地域を定めてその地域外の放送局は当該球団と契約できないようにしているのである。

 この当時のMLBのブラックアウト・ルールを図で表したものが次の図です。


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 MLBのブラックアウトの仕組みは、次の2つの契約により成り立っています。

1.地元テレビ局との契約
 各球団は地元テレビ局と(ブラックアウト地域内における)独占的な放送権契約を締結することができる。その対価(契約金=放送権料)は当該球団の収入となる。
 (ブラックアウト範囲を示すのが図において破線で囲まれた部分。)
 当該地元テレビ局は地元球団のホームおよびアウェイの試合をブラックアウト地域内で独占的に放送できる。
 この「独占的」の意味は、次の2つのブラックアウトがなされることを意味する。
 ① 対戦相手球団も、同球団の地元テレビ局との独占的な放送権契約を行っているので、当該テレビ局が対戦相手球団の地元でその試合のテレビ放送を行っているが、その放送が流れ込んでくることをブラックアウトできる。
 ② 下記2の全国ネットのテレビ放送で地元球団の試合が放送されても、その全国ネット番組は対戦球団の地元ではブラックアウトできる。


2.全国ネットテレビ局との契約
 全国ネットテレビ局(例えばNBC)とのGOTWの契約はリーグが一括契約窓口となり、売り手市場を形成することにより、有利な条件で全国ネットテレビ局と契約する。 その対価(契約金=放送権料)は各球団に均等分配する。


 以上、ネットワークテレビ局との関係を中心にMLBのテレビ放送権ビジネスの成り立ちの歴史をNBCの独占体制とMLBのリーグ一括全国ネットテレビ放送権契約がスタートした1966年まで辿ってきました。
 なお、1966年までのMLBのテレビ実況放送の歴史を、本文に書き込めなかったワールドシリーズやオールスター戦のテレビ放送権の所在の変遷なども加えて、以下に年表としてまとめておきましたのでご参照ください。


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 以降、ケーブルテレビ局の台頭(特にRegional Sports Network:RSNの台頭)、衛星放送、MVPD(Multichannel Programming Distributor)の出現、インターネット配信といった新しいメディアの台頭・登場によりテレビ放送権ビジネスの仕組みも変わっていきますが、その骨格は1966年のNBCとのリーグ一括による全国ネットテレビ放送契約がなされたことで固まったものといえます。

 次にMLBのブラックアウト・ルールおよびテレビ放送権ビジネスに対して起こされた反トラスト法違反のクラスアクションの顛末をご紹介することにいたします。


MLB(およびNHL)に対して起こされた反トラスト法違反のクラスアクション

 ここまでは空中波テレビ放送時代におけるMLBのテレビ放送権ビジネスの形成過程を追ってきましたが、ケーブルテレビの普及、衛星放送、そしてインターネット配信といったメディアが加わり多チャンネル・マルチメディア化した現代における放映権ビジネスの構造は下の図のとおりとなっています。


MLBおよびNHLの放映権ビジネスの構造図

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 なお、ここからの話には、無線や有線のテレビ放送だけでなく、インターネット配信を含むことになりますので、「放送権」ではなく「放映権」という用語を使用することにいたします。また、NHL(プロアイスホッケー)もMLBとほぼ同じビジネスモデルとなっていますので、一緒に説明に加えますが、「球団」という用語はNHLについては「チーム」を指すものとご理解ください。


〔図の略語の解説〕

HTT(Home Television Territory):
 当該地域のホーム球団の独占的なテレビ放映権許諾地域。当該ホーム球団の試合のテレビ放映で地域外のテレビ局が放送する番組はブラックアウトされるので、ブラックアウトされる範囲と同義。「in-Market」とも呼ばれる。

OOM(Out of Market):
 HTT以外の地域。ブラックアウトが及ばない地域。

RSN(Regional Sports Network):
 地域内のスポーツ専門ケーブルテレビ放送局。スポーツに特化した番組を制作したり、他から購入して地域に流している。下記のMVPDもRSNを自己の保有チャンネルの一つとしてラインナップすることが多い(当該HTT地域では、MVSDは少なくとも専属RSNによるホーム球団の実況番組は確実にラインナップしている)。

MVPD(Multichannel Video Programming Distributor):
 2つ以上のチャンネル(テレビ局)をまとめてケーブルや衛星放送を使って放送・配信しているサービス・プロバイダーで、ケーブルを使って提供している代表的企業が「Comcast」であり、衛星放送を使って提供している代表的企業が「DirecTV」。

〔仕組みの解説〕
1. リーグは各球団にHTTを振り当て、当該HTTにおいて各球団がRSNとの間で、2を内容とする放映権契約をおこなうことを認める。

2. ホーム球団のHTT内での放映権は、当該ホーム球団と独占的放映権契約を締結した(当該地域内の)RSNが有し、当該球団の試合の実況中継番組を制作し、地元ケーブル業者やMVPDにラインナップされた自己のチャンネルの番組として流す。
 球団とRSNとの間で締結される独占的放映権契約(Right Agreement)には次の事項が定められている。

 ① 球団は、以下に定める制約を条件として、契約したRSN(以下「専属RSN」といいます。)にホームおよびアウェイの試合の実況中継番組を制作することができる独占的な権利を与える。(専属RSNが制作したホームおよびアウェイの試合の実況中継番組を以下「ローカルゲーム番組」といいます。)
 ② 専属RSNは当該ローカルゲーム番組をHTT内で独占的に放送することができる。
 ③ 専属RSNは当該ローカルゲーム番組をHTT外で放送したり、放送させてはならない。
 ④ 当該ローカルゲーム番組のHTT外での放映権は、その映像などのコンテンツと共に、無償でリーグ(MLBまたはNHL)に提供しなければならない。(リーグはこれを使用して下記OMMパッケージやインターネット配信番組を制作する。)
 ⑤ リーグが全国ネットテレビ局(MLBの場合はFOX)との契約により球団の試合を当該全国ネットテレビ局に実況中継させることがありうるが、その場合は専属RSNの独占権の侵害には該当しないものとする。
 この契約により専属RSNから球団に支払われる対価(放映権料)は全て当該球団の収入となり、リーグや他の球団に分配する必要はない。

3. 全国ネットテレビ局との契約は、リーグ(MLBまたはNHL)が各チームを代表して一括して全国ネットテレビ局と交渉の上締結する。契約した全国ネットテレビ局からリーグに支払われる対価(放映権料)は、リーグでプールした後、各球団に均等分配される。

4. リーグは、1④により専属RSNから無償提供を受けたローカルゲーム番組データを元に、全球団の実況中継番組であるOMMパッケージ(MLBの場合は「MLB Extra Inning」、NHLの場合は「NHL Center Ice」)を制作する。このパッケージはMVSDにより全国的に提供され、契約利用者はどれでも好きな球団の試合を観ることができる。ただし、視聴者が居住している地域をHTTとする球団の試合はブラックアウトされる。
MVSDからリーグに支払われる対価(放映権料)は、リーグでプールした後、各球団に均等分配される。

5. リーグが1④により専属RSNから無償提供を受けたローカルゲーム番組データを元に制作した全球団の実況中継インターネット配信番組(MLBの番組は「MLB.TV」、NHLの番組は「NHL GameCenter Live」)は、リーグが直接運営するサイトでしか提供されていない。
 このインターネット配信の契約者(視聴者)から支払われた対価は、リーグでプールした後、各球団に均等分配される。 この配信番組も、視聴者が居住している地域をHTTとする球団の試合はブラックアウトされる。

 以上を整理すると、MLBおよびNHLのテレビ放映ビジネスは次のような構造になっていることになります。

HTT ホーム球団と独占契約を締結した専属RSNの番組以外にはホーム球団の試合を視聴する手段はありません。すなわち、HTT内の住民はホーム球団の試合をテレビで視ようと思えば、専属RSNと直接契約するか、専属RSNの番組を提供しているMVSDと契約するしかありません(いずれも有料)。(ホーム球団の試合は専属RSNの独占市場)

OMM 地元球団の試合でなければ、MVSDとOMMパッケージの視聴契約を締結するか、リーグと実況中継インターネット配信契約を締結してインターネット経由で視聴する(いずれも有料)。あるいは、全国ネットの限られた数の実況放送の中にたまたま視たい球団の試合があればそれを視る(この場合は無料)。


反トラスト法違反のクラスアクション

 前記のような複雑な実況テレビ放映の地域別独占的市場を形成しているMLBおよびNHLのテレビ放映ビジネスに対して、2012年に視聴者から反トラスト法違反のクラスアクションが提起されました。

 まず、口火を切ったのがNHLのファンである視聴者でした。
 2012年3月12日、NHL等を相手取り、下記の3人を代表原告(class representativeまたはlead plaintiff)とする反トラスト法違反の訴訟が連邦地裁(ニューヨーク連邦地方裁判所南部地区:UNITED STATES DISTRICT COURT SOUTHERN DISTRICT OF NEW YORK)に申し立てられました。


Thomas Laumann、Fernanda Garber、Robert Silver(訴状表書き部分の写し 1)

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 次いで、2012年5月19日、今度はMLBのファンである視聴者4人が代表原告となり、MLB等を相手取り、反トラスト法違反の訴訟を同じ連邦地裁(ニューヨーク連邦地方裁判所南部地区:UNITED STATES DISTRICT COURT SOUTHERN DISTRICT OF NEW YORK)に申し立てました。


Thomas Laumann、Fernanda Garber、Robert Silver(訴状表書き部分の写し 2)

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 この2つの訴訟は争点の内容がほぼ同一と判断されたため、同年(2012年)12月からは一括して係属することになりますので、後編ではMLB等を原告とする訴訟を中心にその進行を追っていきます。


 〔備考〕アメリカの民事訴訟の流れ
アメリカの民事訴訟は有名なディスカバリー(discovery)という厳格な証拠開示手続が存在する、陪審制(jury trial)が選択される(裁判官による審理(judge trial)も選択可能)など日本と異なる面もありますので、その流れを簡単に図示しておきます。


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編集/八島心平(BIZLAW)



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この連載記事を読む
 スポーツビジネスと法 / 宮田 正樹(一般社団法人GBL研究所 理事)

宮田 正樹

Profile

宮田 正樹 [一般社団法人GBL研究所 理事]

一般社団法人GBL研究所 理事、二松学舎大学国際政治学研究科。1971年大阪大学法学部卒。同年伊藤忠商事株式会社入社。同法務部等を経て、株式会社日本製鋼所法務専門部長兼法務グループマネージャーを歴任。2013年9月末日を以て同社(日本製鋼所)を定年退職。同年10月より一般社団法人GBL研究所理事。2004年より二松学舎大学大学院で「企業法務」について、2008年より2016年2月まで帝京大学で「スポーツ法」について、それぞれ非常勤講師として教鞭を執る。主著に『リスク管理と契約実務』(共著 第一法規、2004年)、『知的財産のビジネス・トラブル Q&A』(共著 中央経済社、 2004年)『リスク管理と企業規程の作成・運用実務』(共著 第一法規、2008年)『プロスポーツ経営の実務』(共著 2011年 創文企画)『現代企業実務 Ⅰ(国内企業法務編)』(共著 2014年 大学教育出版)『法務部員のための契約実務共有化マニュアル』(共著 2014年 レクシスネクシス・ジャパン)『グローバルビジネスロー 基礎研修 Ⅰ 企業法務編』(共著 2015年 レクシスネクシス・ジャパン)など多数。




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