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施設の名称は
誰が付けるのか? (後編)

一般社団法人GBL研究所 理事 宮田 正樹

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スポーツビジネスと法 第7回(後編)

 労働法、独占禁止法、契約法、著作権法、商標法……。これらさまざまな法律が複雑に絡み合う、世界でもっともポピュラーなビジネスがあります。それが「スポーツ」ビジネスです。日頃、私達が観賞しているこのスポーツにこそ、その国ならではのビジネス課題や法律問題が潜んでいます。この連載では、スポーツビジネスと法に関する研究の第一人者である宮田正樹先生に、「スポーツビジネスと法」と題して連載をいただきます。
 連載第7回、タイトルは「施設の名称は誰が付けるのか?」(後編)。



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 中編では、ネーミングライツの法的性格について解説し、日本において生じた問題事例を紹介しました。本稿では本場アメリカでの事例を見ていくことにします。

1 計画倒れに終わった”Farmers Field”(画像は予定図)

〔Farmers Field〕
 Farmers Field.JPG  Farmers Field.JPG
(転載元 Business Insider)         (転載元 BanBillBoardBlight)

 ファーマーズ・フィールドは2010年にAEG(Anschutz Entertainment Group)(※1)がロサンゼルスに建設すると発表したアメリカンフットボール用のスタジアムでした(建設完了予定は2016年)。
 建設費$750百万(2011年に$1、200百万に見直し)、収容観客席72,000席(76,000席まで増設可)のスタジアム計画は、久しくロサンゼルスに本拠を構えるチームがなかったNFLやロス市も大歓迎であり、2011年2月には保険会社Farmers Insurance Group(以下「ファーマーズ」といいます)が$700百万、30年間の条件で「Farmers Field」と命名するネーミングライツ契約を締結したと発表されました。
 ただし、ファーマーズの契約もロス市の建設許可も、NFLのチームがホームスタジアムとして使用することを条件としていました。移転してくるのでないかと噂されたチームは「Minnesota Vikings」「San Diego Chargers」「St. Louis Rams」「Jacksonville Jaguars」「Oakland Raiders」の5チームに上ります。

(※1)AEG(Anschutz Entertainment Group)
 AEGは、5大陸、120カ所以上に及ぶ施設のネットワークの所有・運営・プログラム管理を行う世界有数のスポーツ・娯楽企業の1つです。ロンドン五輪で使用されたO2アリーナ、ロサンゼルスのLAライブなど、スポーツ施設やエンターテインメント施設の多くを所有、又は運営会社として関わっており、単に施設の維持管理をしているだけではなく、お金を生み出すための施設の運用、運営に独自のノウハウを以ってあらゆるプログラム開発を行っているスポーツ、エンターテインメント興行の世界的なプロフェッショナル集団です。

 しかし、その招致は遅々として進まず、St. Louis Ramsはイングルウッド市(カリフォルニア州)に新スタジアムを建設することを表明、San Diego ChargersとOakLAnd Raidersはカーソン市(カリフォルニア州)に共同で新スタジアムを建設することを表明するなど、NFLのチーム招致の見込みが立たなくなり、2015年3月、AEGはこの計画の中止を発表します。
 AEGはこの計画に少なくとも$50百万をつぎ込んだといわれていますが、ファーマーズは「1セントも支払わずに。$6百万の広告宣伝効果を得た」といわれています。


2 AEGの象徴”Staples Center”

〔Staples Center〕
 Staples_Center.JPG  staples-center-2.jpg
(転載元 Psomas)

 ステイプルズ・センターは、ロサンゼルス・ダウンタウンにある屋内競技場で、AEGが中心となり$375百万の建設費をかけて1999年に完成し、事務用品企業・ステイプルズが命名権を取得して「Staples Center」と名づけられました。
 NBAの2チーム(「Los Angeles LAkers」と「Los Angeles Clippers」。これに女子バスケットWNBAの「Los Angeles Sparks」を加えるとバスケットボール・チームは3チームとなります。)のホーム・アリーナである上、NHLの「Los Angeles Kings」のホーム・アリーナでもあるこの施設は、ボクシングの世界戦や音楽イベントなど年間250ものイベントが開催され、400万人を超える入場者が訪れています。

 この施設をコアとしてAEGが開発したのが、複合型エンターテインメント施設の「LA Live」(以下「LAライブ」といいます)です。LAライブは、ダウンタウン・ロサンゼルスの再開発プロジェクトにより2007年にオープンしました。4百万平方フィート(約372,000 平方メートル)の広さがあり、ステイプルズ・フィールドはその一部を占めるに過ぎません。他の主な施設は、コンサートなどが行われる「マイクロソフト・シアター」(当初はノキアが命名権を取得し「ノキアプラザ」と名称されましたが、2014年にノキアのDevices & Services部門をマイクロソフトが買収したことにより2015年6月に改称されました)やグラミー賞の歴史が分かる「グラミー博物館」など、そしてスポーツ・バー「ESPNゾーン」やレストラン「ウルフギャングパック」など数々のレストランやバーが並び、夜遅くまで若者達でにぎわっています。
 LAライブの敷地内には、「ザ・リッツカールトン・ロサンゼルス」(ホテルと居住エリアがある)と「JWマリオットLAライブ」という2つのホテルが備わっており、旅行客が泊まるのにも便利な施設となっています。
 スポーツ施設をキーとした地域開発(都市再開発)の見本のような施設・エリアです。


3 フランチャイズ移転でチームブランド刷新”Barclays Center”

〔Barclays Center〕
 Barclays_Center.JPG  barclays-center-2.jpg
(転載元 pinterest)

 バークレイズ・センターはNBAのブルックリン・ネッツのホーム・アリーナとして使用されているニューヨークの多目的ホールです。

 ネッツは、1976年からNBAに加入し「ニュージャージー・ネッツ」としてニューヨーク市のお隣であるニュージャジーを拠点として活動していました。しかし、NBAへの参加に際し、ネッツは300万ドルの加盟料を支払う義務を負い、また、マーケットが重なるニューヨーク・ニックスに補償金として480万ドルを支払わなければならなかったため、当時の主力選手・ジュリアス・アービングをフィラデルフィア・セブンティシクサーズに金銭トレードで放出するという苦渋の選択をすることになりました。300万ドルと引き換えにチームの大黒柱を失ったネッツは、その後長らく低迷することになります。

 直ぐお隣のニューヨークには、同じNBAでは名門ニューヨーク・ニックスが、マンハッタンの中心部にあるマジソン・スクエア・ガーデンを本拠としていますし、MLBではニューヨーク・ヤンキースやニューヨーク・メッツ、NFLではニューヨーク・ジャイアンツなど、4大メジャースポーツの9球団がひしめいているという「激戦区」の上、「弱い」、「遠い」(マンハッタンからハドソン川を渡るニュージャージー州には地下鉄網があまり発達しておらずアクセスが悪い)という三重苦に見舞われたネッツは、残念ながら他球団の後塵を拝することしかできませんでした。

 2004年、不動産業者のブルース・ラトナーがネッツを3億ドルで買収し、翌2005年にニューヨーク市ブルックリン区に本拠地を移す計画を発表しました。資金繰りの問題から計画は遅延しましたが、2009年にロシア人実業家のミハイル・プロホロフが2億ドルの出資でチームの株式の80%と新アリーナの株式45%を取得したことで計画が再起動し、2010年3月には新本拠地となるバークレイズ・センターの建設が始まったのです。
 施設着工前の2007年にイギリス・ロンドンに本拠を置く国際金融グループ・バークレイズが20年契約、総額$400百万のネーミングライツを取得し、「Barclays Center」と名づけられました。なお、ネッツへの出資者にはブルックリン出身のヒップホップ・アーティストであるジェイ・Zも名を連ねています。
 そして、2012年にブルックリンへの移転が完了し、チーム名は正式にブルックリン・ネッツとなったのです。

 本拠地移転効果は新シーズンが始まる前から発揮されました。2012年7月からシーズン開幕直前の10月末までの4か月間のブルックリン・ネッツの公式グッズの売上は、前年度(ニュージャージー・ネッツ時代)の同時期比で3000%増と脅威の伸びを見せたのです。  チームオーナーの一人であるヒップホップ・アーティスト・ジェイ・Zがデザインを手掛けたという白と黒のモノトーンの新チーム・ロゴも評判を呼んだようです(図1参照)。

 また、シーズン開幕前の2012年10月末の時点で、既に1万1000人分のシーズン席が売れたといいます。バークレイズ・センターの観客収容人数は1万7734人ですから、アリーナの6割強の座席をシーズン席で埋めてしまった計算になります。まさに「ブランド一新」の効果があったわけです。

〔Nets Logo 左が旧、右が新〕
 Nets_Logo.png   Nets_Logo.png

(図1 転載元 UnderConsideration)

 しかし、そのブルックリン・ネッツも、2014-15シーズンにはヘッドコーチ(監督)にライオネル・ホリンズを招聘し、新たなスタートを切ったけれど、最終的には38勝44敗に終わり、プレーオフには辛うじて第8シードで出場したものの、アトランタ・ホークスに2勝4敗で屈しました。
 その後も更にチームの弱体化が進行し、ライオネル・ホリンズ監督は2016年1月10日に解任、スタッフ・マネジメント陣を一新して再建を図っています。

 なお、2015年にはNHLのニューヨーク・アイランダースが従来のナッソー・コロシアムからバークレイズ・センターに移転し、ホーム・アリーナとして使用しています。


4 スポンサーが見つかるか?”Nationals Park”

〔Nationals Park〕
 NationALs Park.jpg  NationALs Park2.jpg
(転載元 Washingtonian(左) CBSSPORTS.COM(右))

 前編で「移転先による優遇事例」として紹介したワシントン・ナショナルズのホーム・スタジアムであるナショナルズ・パークは、所有者であるワシントンDCからネーミングライツまで与えられていながらも、2008年にオープンして以来、長らくそれを現金化せず(すなわち、スポンサーを募らず)「ナショナルズ・パーク」の名称を維持してきました。
 「Nats Park」の愛称で地元に親しまれている名称を大切にし、「Yankee Stadium」や「Fenway Park」そして第5回で紹介した「Wrigley Field」(※2)などの「伝説の球場」に習おうとしたものと思われます(優遇により得た「特権」をそそくさとお金に換える姿を見せると市民の反発を買う、と恐れたのかも知れません)。

(※2)Wrigley Field
リグリー・フィールドの名称はオーナーであるチューインガム王、チューインガム・メーカーの名前から採られていますが、ネーミングライツの行使によるものではありません。

 そんなナショナルズでしたが、2012年から本格化したテレビ放映権を巡る地元テレビ局・MASN(Mid-Atlantic Sports Network)との争い(※3)により、テレビ放映権収入が上がらず、選手の補強資金の不足をきたし始めたことより、背に腹は代えられずと、2016年の春からネーミングライツ・スポンサーを探し始めました。

 スポンサー探しのためにナショナルズがパートナーとして選んだのは、コンサル会社であるKorn FerryとMLBのネット配信子会社MLBAM(MLB Advanced Media:MLBの試合のネット配信事業「MLB.tv」を主たる事業とするMLBの優良子会社)でした。
 Korn Ferryにコンサルを頼むことは不思議でないのですが、MLBAMにどのような機能を期待し、MLBAMがどのような役割を果たしているのかについては詳しく調べてみたいと思っています。

 ナショナルズ・パークのネーミングライツの金額について、専門家は(2013年時点で)年間$10〜15 百万程度はするだろうと言っています。金額の高騰傾向にある現在においては、それ以上の金額を要求することもあり得ます。そのせいか、まだスポンサーは決まっていません。

(※3)ナショナルズとMASNとの争い
 MASNはナショナルズと同じナショナル・リーグに所属するボルティモア・オリオールズ(メリーランド州)が株式の過半数を有するスポーツテレビ局ですが、ナショナルズも株主を保有しています。ワシントンDCの北東約57kmに所在するボルティモアは、MLBがナショナルズをエクスポズ時代の拠点であったモントリオールからワシントンDCに移転させるに際して、テレビ放映権収入の減少につながるとして反対を表明していたのです。  ボルティモアの反対を懐柔するためにMLBが提案したのがMASNをナショナルズの地元テレビ局とし、ボルティモアはMASNの株式を通じてナショナルズの試合のテレビ放映によりMASNが得る収益を取り込む、というアレンジでした。
 このため、ナショナルズはMASNの少数株主に留められています。その上、MASNから支払われるテレビ放映権料が不当に安いという不満がナショナルズで高まり、争い→MLBの仲裁→訴訟へと発展していったのです。


5 大いなる先物買い”Chase Center”(未建設、画像は予想図)

〔Chase Center〕
 Chase Center.jpg  Chase Center2.jpg
(転載元 The Mercury News)

 最後に紹介するのは、NBA・ゴールデンゲート・ウォリアーズのホーム・アリーナとなる予定の「チェース・センター」です。
 サンフランシスコに建設予定の新アリーナは、1万8000席が設けられ2019-20シーズンから(すなわち2019年から)のオープンを予定していますが、2016年1月に、ニューヨーク州に本社を置く銀行持株会社であるJPモルガン・チェース(以下「JP」といいます)がネーミングライツを獲得し、「チェース・センター」と命名すると発表されました。 このネーミングライツの契約期間は20年、金額は明らかにされていませんが、少なくとも年額$10百万といわれています。これは、アリーナとしては最高額だろうとのことです。

 JPは、2008年にリーマン・ショックにより経営破綻したワシントン・ミューチュアル・バンクの事業の大部分を同年9月に入札により19億ドルで手に入れていますが、それまでは西海岸に支店等営業拠点を持っていなかったため、1,000店を超える拠点を西海岸に保有するようになった現在でも、そのブランド浸透の努力は欠かせないとして、このネーミングライツのディールに食いついたといいます。
 前編で述べた「スポンサーの狙い」の見本のような事例です。

 以上、目がくらむようなアメリカのネーミングライツ事情を紹介してきましたが、最後に日本の現状に目を向けてみます。

【QVCマリンフィールド】
 日本のネーミングライツ契約としては珍しく「10年」という比較的長期の契約であり且つ球団・地元との相性も良かったと思われる「QVCマリンフィールド」が「ZOZOマリンスタジアム」とスポンサー及び球場名の変更を余儀なくされた事例を追ってみます。

経緯(新聞記事に基づきます)
 2016年7月、千葉市は、プロ野球・千葉ロッテマリーンズが本拠地とする千葉マリンスタジアム(美浜区)の命名権(ネーミングライツ)について、 権利を取得し「QVCマリンフィールド」との名称を付けていたテレビ通販大手QVCジャパン(同区)から「一定の成果をあげられた」として、契約の途中解除の申し入れがあったと発表しました。

 市によると、QVCとの当初の契約は2011〜2020年の10年間で、金額は年間2億7500万円。この収入は、市と球団が折半し、市は球場の維持管理や修繕費に充ててきました。解約の申し入れがあったのは6月下旬で途中解約は契約書に盛り込まれておらず、協議で対応を決めることになったということです。
 2016年度分の契約金は既に支払い済みであるが、市の担当者は「想定していなかった事態。協議を始めるとともに、次期スポンサー企業の募集の準備も進めたい」と説明しました。一方、QVCジャパンは「認知度の向上や地域の活性化など、10年先を見込んでいた当初の目標を達成できた。9月頃までに協議を終えたい」としています。

 同年9月27日、千葉市はQVC社が市と球団に計3億3000万円の違約金を支払うことで合意したと発表しました。
 その後、アパレルのオンラインショッピングサイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社スタートトゥデイと千葉市及び千葉ロッテマリーンズの三者で協議を続け、2016年11月17日に同社と新ネーミングライツ契約を締結しました。新名称は「ZOZOマリンスタジアム」となりました。

新スポンサー・スタートトゥデイの想い
 スタートトゥデイのウェブサイトでの告知(2016年11月18日付PRESS)に同社の想いが次のように記されています。

当社は、2001年より千葉県千葉市の幕張に本社を構え、地域貢献を目的とした活動を行ってまいりました(※)。また2010年に千葉マリンスタジアムのネーミングライツスポンサーが募集された際にも、幕張の更なる活性化をサポートしていきたいという想いから応募させていただきましたが、叶わず。今回、二度目の挑戦で、念願の命名権取得に至りました。

今後はマリーンズファンの皆様や地域の方々に喜んでいただけるよう、千葉市や千葉ロッテマリーンズと協力し、ZOZOマリンスタジアムを活用した企画を検討してまいります。また、この度のネーミングライツ取得により、更に地域の皆様と一体となって、千葉市・幕張の発展に貢献してまいります。

※当社の地域貢献を目的とした主な活動:
・ 社内制度「幕張手当」:幕張近辺に住む当社スタッフに対し、月額5万円を支給する社内制度
・ 幕張を拠点とする企業が集まり地域を清掃する「幕張クリーンの日」に、スタッフが参加(年2回)
・ 幕張海浜公園で開催される「幕張ビーチ花火フェスタ」への協賛(毎年)
・ 当社代表が千葉マリンスタジアムの施設改修などを目的とした「千葉マリンスタジアム基金」に個人で1億円を寄付
・ プロ野球球団「千葉ロッテマリーンズ」とコラボレーションした「QVCマリンフィールド」のクルーユニフォームのデザイン提供
・ プロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」初の海外遠征限定ユニフォームのデザイン提供
・ プロサッカークラブ「ジェフユナイテッド市原・千葉」のレジェンドマッチへの協賛・ウェアのデザイン提供
・ 本田圭佑選手の所属事務所が運営する幕張のサッカー場「ZOZOPARK HONDA FOOTBALL AREA」のネーミングライツ取得
【ZOZOマリンスタジアム ネーミングライツ取得について】
■施設名称 : ZOZOマリンスタジアム(ゾゾマリンスタジアム)
■英字表記 : ZOZO MARINE STADIUM
■所在地 : 千葉県千葉市美浜区美浜1番地
■契約期間 : 2016年12月1日から2026年11月30日までの10年間
■契約料 : 年間3億1千万円 (消費税及び地方消費税別)
■ネーミングコンセプト:当社が運営するファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」の名称と、地域の方になじみの深い「マリン」を組み合わせ、「ZOZOマリンスタジアム」に決定

 QVCによる解約は、おそらく同社の経営不振を原因とするものと思われ、長期のコミットメントの難しさを再認識させられる事例といえます。
 同時に、スタートトゥデイのPRESSリリースには、同社のネーミングライツ・スポンサーとしての意気込みと地元への真摯な想いが込められており、是非、数少ないWin-Winの成功事例となって欲しいと願うものです。

 ということで、「ネーミングライツ」はどうあるべきかをまとめて、稿を終えたいと思います。

「ネーミングライツ」はどうあるべきか

1 ネーミングライツの目的
<スポンサーにとって>
 単なる広告効果ではなく、街のシンボル的な名声や、地域全体へのCSR効果
<住民にとって>
 新たな娯楽の創出への期待、生活環境の向上への期待、市民としての誇り
<地方公共団体・プロスポーツにとって>
 ◇地域の活性化
 ◇地域の再生
 ◇ランドマーク

2 ネーミングライツ・スポンサーに求められるもの
 単なるスポンサーではなく戦略パートナーであることです。
 金銭的負担軽減の金主だけではなく、魅力ある施設設計に参画し、付加価値の創造をもたらすパートナーとして施設のブランド価値を上げることにより、施設に冠した自らのブランドの価値があがるというWin-Winあるいはシナジー効果が生じるのです。

 ネーミングライツ・スポンサーは、スポーツ施設が地域住民から愛され、より魅力的な施設になるためのソフトやノウハウ提供者であり、また、スポンサーのブランド力に起因して、スポーツ施設そのもののブランド価値を創造していくための中心的役割を果たす存在でなければならないのです。
 戦略的に数十年単位での将来に向けてのビジョンを明確に設定できて初めて、アメリカの事例のように、数百億に上る多額の資金提供も可能になるのでしょう。

 以上、アメリカのネーミングライツに関して生じた不祥事や不都合な事態、ネーミングライツ契約のポイントなど、いろいろと積み残したテーマはありますが、それらについては稿を改めてご紹介するつもりです。


***


 さて、次回の第8回は「スポーツ中継のブラックアウト」と題して、アメリカにおけるプロ・スポーツのテレビ放送の仕組みについて見ていくことにしましょう。お楽しみに。





 編集/八島心平(BIZLAW)


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この連載記事を読む
 スポーツビジネスと法 / 宮田 正樹(一般社団法人GBL研究所 理事)

宮田 正樹

Profile

宮田 正樹 [一般社団法人GBL研究所 理事]

一般社団法人GBL研究所 理事、二松学舎大学国際政治学研究科。1971年大阪大学法学部卒。同年伊藤忠商事株式会社入社。同法務部等を経て、株式会社日本製鋼所法務専門部長兼法務グループマネージャーを歴任。2013年9月末日を以て同社(日本製鋼所)を定年退職。同年10月より一般社団法人GBL研究所理事。2004年より二松学舎大学大学院で「企業法務」について、2008年より2016年2月まで帝京大学で「スポーツ法」について、それぞれ非常勤講師として教鞭を執る。主著に『リスク管理と契約実務』(共著 第一法規、2004年)、『知的財産のビジネス・トラブル Q&A』(共著 中央経済社、 2004年)『リスク管理と企業規程の作成・運用実務』(共著 第一法規、2008年)『プロスポーツ経営の実務』(共著 2011年 創文企画)『現代企業実務 Ⅰ(国内企業法務編)』(共著 2014年 大学教育出版)『法務部員のための契約実務共有化マニュアル』(共著 2014年 レクシスネクシス・ジャパン)『グローバルビジネスロー 基礎研修 Ⅰ 企業法務編』(共著 2015年 レクシスネクシス・ジャパン)など多数。




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