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スポーツビジネスを守るもの (後編)

一般社団法人GBL研究所 理事 宮田 正樹

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スポーツビジネスと法 第5回

 労働法、独占禁止法、契約法、著作権法、商標法……。これらさまざまな法律が複雑に絡み合う、世界でもっともポピュラーなビジネスがあります。それが「スポーツ」ビジネスです。日頃、私達が観賞しているこのスポーツにこそ、その国ならではのビジネス課題や法律問題が潜んでいます。この連載では、スポーツビジネスと法に関する研究の第一人者である宮田正樹先生に、「スポーツビジネスと法」と題して連載をいただきます。
 連載第5回、タイトルは「スポーツビジネスを守るもの」(後編)。シカゴ・カブズのホーム球場である「リグリー・フィールド(Wrigley Field)」は、メジャーリーグベースボールのシンボルでありながら、スポーツと放送権をめぐる訴訟の舞台でもあったのです。



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第2次Rooftop business訴訟
〔Case No. 15C 551 (N.D. Ill. Jan. 20, 2015)〕

 2004年に和解によって解決したはずのカブズとRooftopオーナーとの間に新たな紛争が勃発しました。それは、2009年にカブズとリグリー・フィールドをそのオーナーであった新聞社・Tribune Companyから買い取った地元財閥・Rickettsファミリーの総帥・Thomas S. Ricketts(以下「リケッツ氏」といいます)がリグリー・フィールドとその周辺の大規模再開発案(総額375百万ドル)をぶち上げたことに端を発します。

 話を進める前に、Rooftop businessがどのようなものかを忘れた方に画像をご覧に入れましょう。


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(Rooftop businessビル(タウンハウス)のイラスト 転載元:Ricketts Family Now Controls Majority of Wrigley Field Rooftops

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(写真左端が球場ライト側観客席 転載元:Cubs want to install 650-square-foot sign at Wrigley Field that may block views from neighboring Chicago businesses

【リケッツ氏によるカブズの買収】
 1981年Wrigley Fieldの名付け親ともいえるチューインガム王・リグリー家(Wrigley Company)からカブズを買い取った新聞社・Tribune Companyは「シカゴ・トリビューン」や「ロサンゼルス・タイムズ」などを発行する大手新聞社でしたが、9・11後の広告収入の激減に見舞われながらも業容拡大に走り経営が悪化していきました。
 2007年にはサム・ゼル(Sam Zell)により買収され、プライバタイズ(マネジメント・バイアウト)が図られましたが、結局2008年12月に会社更生(チャプター11)を申請することになりました。その結果、カブズとリグリー・フィールドは売却されることになり、地元財閥・Rickettsファミリーがこれを購入することになったのです。
 ただし、MLBの球団の売買にはメジャーリーグ規約(注1)によりMLBの総会(Major League Meeting)における3/4の賛成が必要となっています。
 2009年1月にRickettsファミリーが競売で競落したカブズの株式の売買は、同年10月のMLBの総会で他29球団全員一致の賛成で承認され、10月29日で売買が完了しています。

(注1)MAJOR LEAGUE CONSTITUTION Article V MAJOR LEAGUE MEETINGS Section 2.
(b) The vote of three-fourths of the Major League Clubs shall be required for the approval of any of the following:
(1) ………………
(2) The sale or transfer of a control interest in any Club; provided,however, that a majority vote of all Major League Clubs shall be sufficient to approve any such sale or transfer occurring upon the death of an owner to a spouse or one or more lineal descendants. For purposes hereof, the term “control” shall mean the possession by the transferee, directly or indirectly, of the power or authority to influence substantially the management policies of the Club. A sale or transfer of a non-control interest in any Club shall require oNLy the approval of the Commissioner;

【カブズおよびリグリー・フィールドの持主(オーナー)の変遷】
 因みにカブズはNL(ナショナル・リーグ)の創生期には「Chicago White Stockings」の名で参加している名門です。参考のため、カブズとリグリー・フィールドのオーナー(持主)の変遷を表にしておきます。


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【2004年の和解の内容】
 第1次Rooftop business訴訟は、和解により解決されたのですが、このときの和解契約書はいわば「ライセンス契約」のような体裁を示しています(第2次Rooftop business訴訟における原告(Rooftopオーナー)の訴状でも「Rooftop License Agreement」と呼んでいます)。
 主要項目は次の5つです。

1.訴訟を取り止めること。
2.Rooftopオーナーは、売上の17%をロイヤルティとしてカブズに支払う。
3.契約の期間は締結の日(2004年1月27日)から2023年12月31日までの約20年間とする。
4.カブズは観客席を拡げることができるが、それによってRooftopからの観戦に悪影響が生じた場合には当該Rooftopオーナーに相当の補償を行う。
5.カブズはRooftopからの観戦の邪魔になるような風除けシートやその他の障害物を設置しない(バナーとか旗や特別のイベント用の装飾物は除く)。ただし、行政機関の承認を得たいかなるWrigley Fieldの拡張(expansion)も本条を含む本契約の違反にはならない。(第6条第6項・・・原文下記のとおり)
6.6 The Cubs shall not erect windscreens or other barriers to obstruct the views of the Rooftops, provided however that temporary items such as banners, flags, and decorations for special occasions, shall not be considered as having been erected to obstruct views of the Rooftops. Any expansion of Wrigley Field approved by governmental authorities shall not be a violation of this Agreement, including this section.

【第2次訴訟にいたる経緯】
 カブズのオーナーが、私企業とはいえ社会的性格を持った「新聞社」からリケッツ氏という野心的な企業家に移ったことにより、カブズならびにリグリー・フィールドの経営は資本の論理・利益追求路線が露わになっていきました。

 リケッツ氏の戦略は収容観客数も少なく老朽化したリグリー・フィールドとその周辺を再開発し、収入を増やし、チームを強化することにより総合的に売上と収益を伸ばすことにあります。その一環として、カブズによる観戦価格(チケット料金)のコントロールが及ばないRooftop businessを自らのコントロール下に置き、価格をコントロールすると伴に売上そのものを取り込むことがありました。

 手始めにリケッツ氏は、カブズを手に入れてすぐにRooftop businessの一つを実質的に手に入れています。しかし、その後はRooftop businessは遅々として進みませんでした。その間、何度もRooftopオーナー達に「価格協定」(観戦料の最低価格をリグリー・フィールドと合わせてくれという提案)を持ちかけていたようです。

 そして、2013年1月19日、カブズはリグリー・フィールドの総額375百万ドルの再開発計画を公表します。次いで、同年4月15日、球場のレフト側に6,000平方フィート(SQF)のジャンボトロンとライト側に1,000SQFの広告看板を設けることを含む、計画の詳細を発表しました(この時点では、Rooftopオーナー達はこのような景観を変えるような球場の大幅改修についてはシカゴ市の歴史的景観委員会の承認が得られることはないと高をくくっていたものと思われます)。

 ところが、同年7月11日、シカゴ市の歴史的景観委員会は、レフト側に5,700SQFのジャンボトロンとライト側に650SQFの広告看板を設けるという計画を承認してしまいました。リケッツ氏の政治力といいますか、ロビーイングが功を奏したのでしょう。
 この承認を得て、カブズ側はRooftopオーナーに対し「Rooftop businessを我々に売却するか、ジャンボトロンや広告看板に視界をさえぎられて事業をクローズする羽目に陥るか、どっちがいいかな?」と強く迫ってくるようになったといいます。

 そして、2014年になり、カブズは合計で7つの広告看板等を球場に立てることを5月頃から明らかにしていましたが、同年7月10日にシカゴ市の歴史的景観委員会は次の7つの広告看板等の建設を許可しました。

・650SQFの広告看板:レフト側に3枚
・3,990SQFのジャンボトロン:レフト側に1台
・2,400SQFのビデオボード:ライト側に1台(バッティング・ラインナップも表示される)
・その他の広告看板:ライト側に2枚

(ジャンボトロンとビデオボードの設置された姿 転載元:The Design of the Wrigley Scoreboard: Revolutionary, Retro or Both?


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 この建設の承認に対し、Rooftopオーナー達は直ちに(同年8月)条例違反であるとして承認の取り消しとカブズの再開発工事の進行の差止を求めてシカゴ市、歴史的景観委員会、委員等に対する訴訟をCOOK COUNTY Circuit Court(州裁判所)に提起しました(訴訟には委員達がリケッツ氏らと秘密交渉をしていたとの糾弾も含まれていました)。これに対し、シカゴ市側が本件訴訟の内容は連邦法や憲法に関わるからという理由で連邦地裁への移管(removal)を求めたため、この訴訟は連邦地裁(U.S. District Court for the Northern District of Illinois)に係属することになりましたが、翌年(2015年)4月に原告が訴訟を取り下げました。

シカゴ市の建設承認を得たカブズは、2014年シーズンが終わるやいなや(2014年9月29日から)これらの広告看板等の建設工事をスタートし、観客席の拡張など一部の工事は翌2015年シーズン中の6月半ばまでずれ込みましたが、第1期の工事を完了しています(球場の改修の計画については、本稿の末尾の記載参照)。


(ジャンボトロン、ビデオボード設置前 転載元:Cubs complete pact for $500 million Wrigley Field renovation
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(ジャンボトロン、ビデオボード設置後 転載元:Single Game Suites & Premier Group Hospitality
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 7月にシカゴ市から得た建設の承認を背景に、カブズ側はRooftop businessの買収を進めていきました。そして、2014年12月4日、買収に応じないRooftopオーナー達に追い打ちをかけるように2,200SQFへと若干小さくしたライト側ビデオボードを、ライト・ポール方向に移動して設置する修正計画を発表します。カブズ側はこの微調整は国立公園局の指導によるもので、これによって75万ドルの連邦税のタックス・クレジットを得られるからであると釈明していますが、この設置場所変更がなされると自己のRooftopからの視界を完全にブロックされることになるRooftopオーナー達が、翌2015年1月20日、建設工事差止を求める訴訟を起こしたのです。

【訴訟の内容】
原告:
Right Field Rooftop, LLC(”Skybox on Sheffield”の名称で営業)
Right Field Property, LLC(Skyboxの物件の所有者)
3633 Rooftop Management, LLC(”Lake View Club”の名称で営業)
Rooftop Acquisition, LLC(Lake Viewの物件の所有者)
被告:
Chicago Baseball Holdings, LLC
Chicago Cubs Baseball Club, LLC
Wrigley Field Holdings, LLC
Thomas S. Ricketts (リケッツ氏個人)

原告の主張:訴因(count)は次の①〜⑨に分かれています。

①私的独占の企て(ATEMPTED MONOPOLIZATION)→シャーマン法違反
カブズの試合の「生観戦(live view of Cubs Games)」の市場の独占を企て、競争相手であるRooftop businessに価格協定を強要した上、応じないと見るやジャンボトロンやビデオボード、看板等による営業妨害で潰しにかかってきた。

②私的独占の企て(ATEMPTED MONOPOLIZATION)→シャーマン法違反
①の補助的主張としてなされたもので、カブズの試合の「Rooftopからの生観戦」の市場の独占を企てて、①で指摘した行為をしたというもの。

③不実表示(FALSE AND MISLEADING COMMERCIAL REPRESENTATION)→商標法(ランハム法:不正競争防止法に近い)違反
リケッツ氏らが、コンベンションその他の場でカブズの傘下以外のRooftop businessを「盗人(ぬすっと)」呼ばわりして誹謗中傷した。

④統一詐欺的取引慣行法(UNIFORM DECEPTIVE TRADE PRACTICES ACT)違反
上記③を含むカブズ側の誹謗中傷行為が「詐欺的取引行為」に該当する。

⑤消費者詐欺法(CONSUMER FRAUD AND DECEPTIVE BUSINESS PRACTICES ACT )違反
公衆の面前で行われた上記③④を含むカブズ側の誹謗中傷行為が「消費者詐欺行為」に該当する。

⑥名誉毀損(DEFAMATION)
同上。

⑦フォールス・ライト(FALSE LGHT)(「名誉毀損」に似ているが、「原告の精神的・感情的な安寧を守る」ことが意図されている点が名誉毀損と異なる)

⑧履行期前の契約違反(ANTICIPATLY BREACH OF CONTRACT)
カブズ側のビデオボード等の設置意思表示は和解契約のANTICIPATLY BREACH OF CONTRACTに当たり、原告はその設置の差止を求める。

⑨契約違反(BREACH OF CONTRACT)
リケッツ氏らの行った誹謗中傷行為は和解契約の「非難禁止」条項に違反するので、損害賠償とこれまでに支払ったロイヤルティの返還、その他衡平法上の救済を求める。

 以上により、Rooftopオーナー達は損害賠償と球場の再開発工事の差止を求めました。また、工事の差止は緊急性があるとして、後日(2月12日)、仮制止命令および予備的差止命令(temporary restraining order、preliminary injunction)を求めました。

【裁判所の判断】
(1)仮制止命令(temporary restraining order:TRO)
 2月19日に裁判所に棄却されました。理由は次のとおりです。

①TROが認められるには、差止訴訟において勝訴する可能性が疎明されていることに加え、TROが下されないと急迫(immediate)かつ回復不能(irreparable)な被害・損失または損害が生じること、そしてコモンローによる救済(損害賠償)では、充分でないことが疎明されなければならないが、いずれも満たしていない。具体的には、
②ANTICIPATLY BREACH OF CONTRACTについては、和解契約書第6条6項の「Wrigley Fieldの拡張(expansion)」の解釈に疑義があり、現段階で判断できない。
③反トラスト法違反については、カブズ側が競争制限の意思を持って私的独占行為を行ったということが疎明されていない。
④予備的差止(preliminary injunction)の審尋が行われるまでの間も待てないほどの差し迫った危機が生じているといえない(直ちに営業停止に追い込まれるとの証拠が提出されていない。)し、煎じ詰めれば期間の定まったライセンス契約の違反の問題であるから、コモンローによる救済(損害賠償)で充分といえる。

(2)予備的差止命令(preliminary injunction)
 2015年4月2日に裁判所によって棄却されました。裁判所は、予備的差止命令が認められる条件として、上記TROと同じ条件を示し、TROのときとほぼ同じ棄却理由を述べています。以下、注目される点のみ記載します。

①反トラスト法違反については、「Baseball Exemption」(MLBのビジネスには反トラスト法は適用されないとする、1922年の連邦最高裁の判例)を裁判所はあっさりと認めました。
②万一「Baseball Exemption」の適用がないとしても、原告は独占される「市場」の存在を立証していない。「カブズの試合」は単一ブランド商品(single brand product)であり、その市場は、反トラスト法でいう「市場」(少なくとも2つ以上のブランドから成る市場)とはいえない。また、自分の商品(カブズの試合)を支配することが反トラスト法上の「独占」に該当するとはいわない。
③予備的差止を求める側(原告)がそれが認められない場合に被る損害と予備的差止を求められる側(被告)がそれが認められることにより被る損害とを比較衡量した場合に、原告が被る損害の方が大きいとはいえない。また、原告が予備的差止を申し立てるのが遅きに失したことも無視できない(そんなに急迫した危機じゃないからでしょ、ってことですね)。

(3)被告の却下請求(motion to dismiss)
 2015年9月30日、裁判所に認められました。却下を認める理由として、裁判所は次のように説明しています。
1 反トラスト法違反(すなわち、訴因①②)については、予備的差止の棄却理由①②のとおり。
2 不実表示からFALSE LIGHTおよび契約違反(すなわち、訴因③〜⑦および⑨)については、リケッツ氏やカブズによる発言・表明の内容については、表現の自由の範囲であるし、それを聞いた人は常識ある人なら誰も本気にしないと思われるものであった。
3 和解契約書第6条6項の解釈(すなわち、訴因⑧)については、「Wrigley Fieldの拡張(expansion)」が「観客席の拡張」のみを意味するものとは判断されず、シカゴ市の歴史的景観委員会という「行政機関の承認」を得たジャンボトロンやビデオボード、広告看板などの設置は、和解契約書でいう「拡張(expansion)」の範囲に入る。

 というように、カブズ側の完勝となったわけです。この裁判の結果を待たず、多くのRooftopオーナー達は次々にリケッツ氏・カブズの軍門に降り、Rooftop businessを彼らに売却したり、そのコントロール下に入っていきました。シカゴ市などを訴えた訴訟も、原告・Rooftopオーナー達が次々に脱落していき、取り下げの時点では、第2次訴訟の原告(”Skybox on Sheffield”と”Lake View Club”)だけになっていたのです。

 2016年4月時点で、全部で16を数えるRooftop businessのうち、10がカブズあるいはその子会社等の所有となっています。それ以外にも、実質的にはリケッツ氏あるいはカブズのコントロール下にあるRooftop businessがあるようなので、上記原告の店を除くほとんどのRooftop businessがカブズのコントロール下になっているといっていいような状態になってきています(2016年4月時点でカブズが保有するRooftopは下図参照)。

(ブルー(水色)の矢印の先は2016年以前から保有する物件、赤色の矢印の先は2016年になってから購入した物件。転載元:Ricketts Family Now Controls Majority of Wrigley Field Rooftops ※筆者が加筆)
Rooftop20161.jpg

【総括】
 上記第2次Rooftop business訴訟の紹介の過程で見て取れるリケッツ氏がオーナーとなって以後のカブズの「えげつない」ともいえる経営姿勢ですが、これらはMLBの球団経営における「王道」ともいえるスタイルなのです。

 球団の経営においては、チケット収入をいかに増やすかが最大の課題です。
 その方法としては主に次の3点が挙げられるしょう(チームを強くして、人気を上げることは別として)。

(1) 観客席を増やす
(2) 単価を上げる(その方法として採られるのがクラブシート(会員制レストランやラウンジにアクセスできる高級席)やスイートボックスの新・増設です)
(3) 野球以外のイベントへの球場利用

 これらを実行するためには資金調達・返済原資が必要です。その有力な手段の一つとして、球場での広告宣伝スポンサーの獲得があります。ジャンボトロンやビデオボード、広告看板スペースの増設などは、新たな広告収入の獲得が目的です。(Rooftopに対する嫌がらせ目的は、副次的なものに過ぎません。) そして、球場の立地エリア全体をボールパークおよびアミューズメント施設として総合開発し、総合的な地域開発を図り、売上収益を増大していうという戦略が採られます。

 Rooftop businessをカブズのコントロール下に取り込んでいくことは、観客席あるいはクラブシートやスイートボックスの増設と同じ効果がある上に、カブズによる価格コントロールができるという一挙両得の手段でもあるわけです。

 こうして獲得したお金(資金)を優秀な監督の獲得、選手の補強や待遇改善に投入することによりチーム力がアップし人気が出る、それにより観客動員力が上がり、広告料やスポンサーシップの対価が上がる、という好循環をもたらすのです。事実、カブズは2015年度には7年ぶりにシーズン90勝以上と、ポストシーズンへの進出を果たしましたし、本年度は71 年ぶりにWシリーズ進出を決め、何と108 年ぶりの優勝を挙げたのです。着実に効果が出ているといえますね。



 最後の画像はリグリー・フィールドの昔の姿を描いたものです。ご覧のように当初から外野フェンスは低く外野席は狭いものだったのです。この姿を最近まで残していたこと自体は褒められてよいのではないでしょうか。

(転載元:Check out Wrigley Field for the 1938 Cardinal-Cubs home opener
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【リグリー・フィールドの改修計画】
 リグリー・フィールドの改修は2014年オフから2018年まで4年をかけて行われる計画です(周辺地域の開発を除く)。

2014〜15年
外野席の構造的な鉄骨とコンクリートの撤去および拡張
レフト外野席に3,990平方フィートのヴィジョンを設置
ライト外野席に2,400平方フィートの少し小型のヴィジョンを設置と650平方フィートのヴィジョンを設置
3塁側コンコースの整備とトイレの増設
選手のウォームアップ施設の設置 など

 

2015〜16年
外野席の完成
豪華なクラブハウスの完成
ベンチの拡張
その他 など

 

2016〜17年
1塁側施設の整備
アンパイアー控室の完成
2階席の完成など

 

2017〜18年
1塁側コンコースの整備
プレス・ルームの整備など
 



  

 さて、次回は、所有権による施設へのアクセス制限という物理的・間接的な制限手段に頼らざるを得ないということでは興行そのものと同じ立場にある「スポーツ・イベントの放送権」をテーマとした「テレビ放映権って誰が持っているの?」を、予定を早めて紹介することにします。





 編集/八島心平(BIZLAW)


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この連載記事を読む
 スポーツビジネスと法 / 宮田 正樹(一般社団法人GBL研究所 理事)

宮田 正樹

Profile

宮田 正樹 [一般社団法人GBL研究所 理事]

一般社団法人GBL研究所 理事、二松学舎大学国際政治学研究科。1971年大阪大学法学部卒。同年伊藤忠商事株式会社入社。同法務部等を経て、株式会社日本製鋼所法務専門部長兼法務グループマネージャーを歴任。2013年9月末日を以て同社(日本製鋼所)を定年退職。同年10月より一般社団法人GBL研究所理事。2004年より二松学舎大学大学院で「企業法務」について、2008年より2016年2月まで帝京大学で「スポーツ法」について、それぞれ非常勤講師として教鞭を執る。主著に『リスク管理と契約実務』(共著 第一法規、2004年)、『知的財産のビジネス・トラブル Q&A』(共著 中央経済社、 2004年)『リスク管理と企業規程の作成・運用実務』(共著 第一法規、2008年)『プロスポーツ経営の実務』(共著 2011年 創文企画)『現代企業実務 Ⅰ(国内企業法務編)』(共著 2014年 大学教育出版)『法務部員のための契約実務共有化マニュアル』(共著 2014年 レクシスネクシス・ジャパン)『グローバルビジネスロー 基礎研修 Ⅰ 企業法務編』(共著 2015年 レクシスネクシス・ジャパン)など多数。




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