MENU
BIZLAW BIZLAW
Powerd by LexisNexis®
BIZLAW
BIZLAW Powerd by LexisNexis®

RSS
Google+
Twitter
Facebook
HOME

めくるめく
スポーツビジネス法の世界(前編)

一般社団法人GBL研究所 理事 宮田 正樹

sportslaw_main02

スポーツビジネスと法 第1回

 労働法、独占禁止法、契約法、著作権法、商標法……。これらさまざまな法律が複雑に絡み合う、世界でもっともポピュラーなビジネスがあります。それが「スポーツ」ビジネスです。日頃、わたしたちが観賞しているこのスポーツにこそ、その国ならではのビジネス課題や法律問題が潜んでいます。この連載では、スポーツビジネスと法に関する研究の第一人者である宮田正樹先生に、「スポーツビジネスと法」と題して連載をいただきます。連載第1回、タイトルは「めくるめくスポーツビジネス法の世界」です。


スポーツと法務が
交わり始めた1990年

 わたしがスポーツビジネスに関わりだしたのは、商社(伊藤忠商事、以下「伊藤忠」と表記)の法務部で働いていた頃に遡ります。新規事業として動き始めたスポーツビジネス・プロジェクトを法務面でサポートする機会を得た1990年からでした。

 「文化スポーツ事業室」という部署の大坪正則氏(以下「大坪氏」)がプロジェクト・マネージャーとなり、社内外のエキスパート(その段階では「(将来)エキスパートとなるべき人」と呼んだ方がいい人が大半だったのですが)を集めてスポーツビジネスのプロジェクトチームを作り、NBAプロバスケットボールのビジネスを中心に、ゴルフのPGA Tour、テニスのATP Tourなどの日本におけるテレビ放映やビデオ販売、ブランド・マーチャンダイジングやスポンサーシップのライセンシングなどをビジネス化していたのです。

 NBAとは、大坪氏のハードネゴの結果、1988年から1998年までのちょうど10年間にわたり、日本におけるすべてのビジネスに関する独占的なマスターライセンス契約を締結しました。日本で公式戦(開幕戦)を興行する権利を含め、NBAがアメリカで展開しているあらゆるビジネスを、伊藤忠とNBAがいわばパートナーシップを組んで、日本で展開していくことになったのです。

 当時、神様・マイケル・ジョーダンの活躍と人気、彼を中心にNBAのスター選手で固めた「ドリーム・チーム」のバルセロナ・オリンピックでの大活躍と優勝などにより、アメリカ本土はもちろんのこと、世界中でNBAブームが沸き立っていくまっただ中でした。それに加え日本では、少年ジャンプ誌に連載がスタートした井上雄彦の「スラムダンク」の爆発的な人気が追い風となりました。

 NBAのビジネスも他のライセンスビジネスと変わりはなかろうと、軽い気持ちで大坪氏のチームの「法務顧問」として参画したわたしの認識が改めさせられたのは、1992年にNBA側が伊藤忠側メンバーのレクチャーのためにニューヨークで開催してくれた1週間にわたるビジネス・コンファレンスにメンバーの一人として参加してからです。

 彼らがいかに綿密にゲームやそのプロモーションを組み立てているか、スポンサーシップやマーチャンダイジングの成果物(商品や販促物など)をいかに詳細に吟味し許諾を与えているか、スポンサー企業の選別や指導をどのように行っているか、そして選手を、文化使節としての知性と教養、誠実さを表現できる人間として教育・指導している姿などを現実に見るにつけ、産業としてのスポーツビジネスが持つ懐の深さとその完成度に感心し、驚かされる毎日でした。

 われわれ日本のプロジェクトチームが、そして、わたし自身が、スポーツビジネスの魅力と面白さに魅了されていったことは言うまでもありません。わたしは、当該チームの専任担当者ではなく、他の事業部の法務案件も担当しながらの兼務でしたが、他の法務部員からの白い目と羨望のまなざしを強く感じつつ、1998年にNBAとの契約が終了し、大坪氏やわたしが伊藤忠を離れるまで、スポーツビジネス案件の担当の役得(?)を離しませんでした。

 そして、わたしが「Sports Law」「スポーツビジネス法」を意識して勉強を始めたのは、大坪氏が伊藤忠を退社後、「スポーツ経営学」の教授として帝京大学で教鞭を執るようになってしばらくしてからです。2005年に大坪氏から頼まれて、彼の授業にゲスト講師として登場し、「スポーツビジネスと法」と題する講演を行ったことが切っ掛けとなり、「「スポーツ経営学」のコースの中に「スポーツ法」の授業を正式に組み込むから、準備を進めておくように」とオファーを受けました。

 非常勤講師として帝京大学で教鞭を執り始めたのは2008年からです。授業のための準備として、2005年頃から教材を探し始めたところ、またまたスポーツビジネス大国・アメリカに驚かされることになりました。


アメリカ「Sports Law」の広範さ

  アメリカでは「Sports Law」が一つの法律分野として確立しており、大学においても「Sports Law」がコースとして成立しています。教科書・教材も豊富にそろっているのです。そして、「Sports Law」の専門弁護士もたくさん居ます。

 スポーツビジネスはそれだけで一大ビジネスですが、エンターテインメント・ビジネスの一分野ととらえると、その領域はとてつもなく広いものとなります。そして、訴訟大国であり判例法(コモンロー)の国・アメリカであるがゆえに、スポーツおよびスポーツビジネスに関する判例が豊富にゴロゴロところがっており、教材に事欠きません。ということで、アメリカの「Sports Law」をわたしの「スポーツ法」のベースに据えることにしました。わたし自身のスポーツビジネス経験がNBA、PGA、ATPといった「アメリカ型」のスポーツビジネスだったことも原点としてありますが。

 続く後編では、スポーツビジネスを「アメリカ型」と「ヨーロッパ型」に区分し、そこからスポーツビジネスを具体的に腑分けしていきます。


後編につづく


 編集/八島心平(BIZLAW)


book_global_businesslaw

グローバルビジネスロー基礎研修 1企業法編
Basic Training of Global Business Law 1 Business Law

井原 宏 / 河村 寛治(編著)
定価:¥5,600+税

出版社:   レクシスネクシス・ジャパン
ISBN-13:  9784908069338
発売日:   2015/11/12




この連載記事を読む
 スポーツビジネスと法 / 宮田 正樹(一般社団法人GBL研究所 理事)

宮田 正樹

Profile

宮田 正樹 [一般社団法人GBL研究所 理事]

一般社団法人GBL研究所 理事、二松学舎大学国際政治学研究科。1971年大阪大学法学部卒。同年伊藤忠商事株式会社入社。同法務部等を経て、株式会社日本製鋼所法務専門部長兼法務グループマネージャーを歴任。2013年9月末日を以て同社(日本製鋼所)を定年退職。同年10月より一般社団法人GBL研究所理事。2004年より二松学舎大学大学院で「企業法務」について、2008年より2016年2月まで帝京大学で「スポーツ法」について、それぞれ非常勤講師として教鞭を執る。主著に『リスク管理と契約実務』(共著 第一法規、2004年)、『知的財産のビジネス・トラブル Q&A』(共著 中央経済社、 2004年)『リスク管理と企業規程の作成・運用実務』(共著 第一法規、2008年)『プロスポーツ経営の実務』(共著 2011年 創文企画)『現代企業実務 Ⅰ(国内企業法務編)』(共著 2014年 大学教育出版)『法務部員のための契約実務共有化マニュアル』(共著 2014年 レクシスネクシス・ジャパン)『グローバルビジネスロー 基礎研修 Ⅰ 企業法務編』(共著 2015年 レクシスネクシス・ジャパン)など多数。




ページトップ