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労働委員会によるあっせん手続きを
申し立てられた際の企業側の対応(1)

国際企業法務協会労働法研究会 

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企業法務から見るアクチュアル労務トラブルQ&A(Case3)

 「法務部スタッフ」を主人公として、その視点から語られる、今日的で複雑な労働問題の数々。会話文や主人公のモノローグなどを用いて事件は語られ、時間軸に沿って事態は展開していきます。法務部スタッフは外部弁護士のアドバイスを仰ぎながら、事例に即した「落としどころ」を見出していきます。
 Case3 は、「労働委員会によるあっせん手続きを申し立てられた際の企業側の対応」です。
(※この連載はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。)

 


 関連記事
  Case1 物流企業における従業員の事故についての企業側の対応 (1)(2)(3)
  Case2 パワハラによるうつ病により休業した契約社員に対する企業側の雇い止め対応 (1)(2)



Case3 労働委員会によるあっせん手続きを申し立てられた際の企業側の対応(1)

【登場人物】
 古賀:株式会社YAWARA 法務部長
 吉田:同社の人事部長
 篠原:同社の営業部長
 田村:同社の営業担当(女性)
 野村弁護士:同社の顧問弁護士

 

※この事例は、「パワハラによるうつ病により休業した契約社員に対する企業側の雇い止め対応」(Case2)の続編にあたります。

【経緯】

 9月12日、更新拒絶通知期限ギリギリに、古賀は、田村に対する雇い止めの通知を作成していた。

 顧問の野村弁護士からのアドバイスを受け、古賀、吉田、篠原の3人は、田村の取り扱いについて数度に渡り協議を繰り返した。その結果、これ以上、田村の能力向上に期待を持つことができないため、田村の雇い止めを実行するしかない、という結論に至った。

 遡ること9月9日、田村から吉田宛てに電話が掛かってきた。
 それによれば、田村は、9月3日に病院へ行き、「うつ状態」との診断を受けたこと、その原因が、篠原からのパワーハラスメントおよびセクシャルハラスメントであること、そのため、篠原のハラスメント実態について調査することを会社に求める、という内容であった。
 古賀、吉田、篠原の3人は、田村に対する更新拒絶通知を一方的に出したことに対して、万一、田村がクレームを言ってきた場合には、給与1ヵ月分程度の解決金は支払うことまでは譲歩することを事前に確認していた。
 9月12日、吉田は、田村に対し、古賀が作成した雇い止めの通知を発送した。
 

 会社宛に、労働組合加入通知書および要求申入書がFAXされてきたのは、それからしばらく後、10月27日のことであった。


 

労働組合加入通知および要求申入書



 拝啓 貴社ご清栄の段お慶び申し上げます。
 当組合は、個人加盟の労働組合です。
 今般、貴社の従業員田村さん(以下田村組合員)が当組合に加盟しましたのでご通知致します。
 田村組合員の組合加入の経緯と貴社に対する要求事項は以下のとおりです。

 田村組合員は、7月15日から契約社員として採用されました。入社直後から、上司の篠原部長は、田村組合員に対して、同組合員に特段の業務上のミスがないのに、異常なまでに叱責を繰り返し、本人の人格を否定するような言動も増え、更には、体型に関する侮辱的発言をするようにもなりました。そして、その行為は日を追って激しくなりました。

 9月3日、田村組合員は医師から「うつ状態」であるとの診断を受け、翌4日から休職することとなったため、9月9日、同組合員が、篠原部長のハラスメント被害について調査するよう人事担当者に依頼しました。
 ところが、9月12日、貴社は休職中の田村組合員に10月14日付で雇い止めすることを通知し、さらに、9月19日には、同組合員が、人事担当者と電話で会話した際、人事担当者は、ハラスメントの被害状況について「翌日の面談時では、事実確認はやりたくない。解決金の説明及び、謝罪のみ行いたい」と回答しました。
 翌9月20日、人事担当者と篠原部長は、田村組合員と面談し、同組合員の被害の事実を認めず、その代わりとして、解決金を支払うことで解決したいと発言しました。
 本年10月15日、貴社は田村組合員に10月14日で契約期間満了したことを改めて通知しました。

 以上のとおり、田村組合員は篠原部長から受けた度重なる暴言のため、精神的被害を受け、胃痛、腹痛、睡眠障害を発症し、休職せざるを得ない状況に追い込まれたのです。
 こうした篠原部長の言動は、パワーハラスメントであるとともに、体型についての侮辱的発言がセクシャルハラスメントにあたることは明らかです。
 また、そうしたハラスメントが横行する職場環境を放置し続けた貴社は、使用者の職場安全配慮義務に違反し、篠原部長と共に、田村組合員に謝罪し、賠償する責任があります。さらに、篠原部長のハラスメントによって、休職せざるを得なくなった田村組合員を一方的に雇い止めしたことも、違法な雇い止め解雇に当たると、当方は認識しています。

 そこで、田村組合員と組合は、まず第一に、田村組合員の雇い止めを取り消すと同時に、同組合員が復職可能なまでに体調が回復するまでの間、休職期間を延長して雇用を維持すること、第二に、田村組合員が受けたハラスメント被害に対して誠実に謝罪及び賠償すること等の要求を申し入れますので、速やかに実施してください。

 ご承知のとおり、労働者は民族、雇用条件、身分、性別等の如何に関わらず労働組合に加入する権利を憲法・労働法で保障されています。また、労働条件は労使対等な立場で決定すべきことが労働法で定められており、労働組合が申し入れる要求に関して、使用者は誠実に対応する義務を負っています。労働組合との団体交渉を拒否することや、労働組合加入を理由とした業務上の不利益扱い等は、労働組合法代7条で禁じられた違法行為(不当労働行為)となります。
 当組合は、団体交渉、労働協約締結、争議行為の権限を持つ労働組合法上の当事者となります。当組合を無視、排除して、組合員と直接交渉を試みることも不当労働行為となりますのでご注意ください。



敬具

 



 さらにしばらく後、11月26日、以下のような書面が株式会社YAWARAに届いた。



 

あっせん申請書



1.使用者
郵便番号  ***-****
株式会社YAWARA
代表取締役 ****
事業の種類 ①インターネットを利用した情報の収集、管理、処理、提供の各サービス
      ②広告関連事業
従業員数  **名
連絡責任者 ****
電話    03(****)****


2.組合
郵便番号  ***-****
****労働組合****支部
執行委員長 ****
組合員数  **名
加盟組織  ****労働組合
連絡責任者 ****
電話    03(****)****
別組合   なし


3.あっせん事項
団体交渉のあっせん(主に①田村組合員に対する雇い止めの撤回、②ハラスメントについての謝罪と賠償)


4.申請に至る経緯
別紙


5.会話記録
篠原:社会人としてやっていけると思ってんの?
田村:思っていません。
篠原:危機感持ってる?
田村:はい。
篠原:本当に持ってる?どう思ってるか分かんないだけど。性格の問題じゃん。注意力がなさ過ぎるんだよ。ありえる?自分宛じゃないメール返しちゃうって?わかるそれ?なめてる?45年間生きてきて、初めて会ったんだけど。
田村:自分が悪いんですけども、篠原さんのメールが自分の受信箱に入ると思っていなくて。
篠原:こんなミスしている人いる?田村に給料払うんだったら他の人の給料上げたいよ。また最初からやり直しじゃん。ギャグだよ。俺からするとホント気持ち悪いよ。ありえなくて。自分でこの仕事向いていると思うの?
田村:私はまだ仕事の経験が全然ないので、向いている向いていないっていうものはないと思うので。
篠原:社会人経験あるとかないとか関係ないと思うんだけど。どっかで新卒だから仕方ないとかって思ってない?
田村:思っていません。そう思わせてしまったことは申し訳ありません。私の申し上げたかったのは、直そうと思わないと直らないと思うので……
篠原:直ってないじゃん。
田村:直しますと申し上げたかったということです。
篠原:どうすんだよ、こんな状況で。1,000人いたら、1,000人中ビリだよ。そう考えると向いてないよ。絶対に違う業種にしたらいいんじゃないかって思う。田村さんのために。メールも書かない業種に。細かい作業しなくていいじゃん、怒られないし。
田村:辞めたいと思っていません。
篠原:なんで?
田村:設定した目標を達成したいと思っているので。
篠原:無理じゃん。違う?進捗管理できない、メールができない。いないから、そんな人。いたとしても辞めてくし。
田村:対策を立てて、基本的なことを直して……私は直ると思ってます。
篠原:基本的なことが直ってないじゃん。直っても、三日たったらまたやるわけでしょ。自分が人より劣ってるって分かってる?何で私こんなにいわれてるんだろうとか、できてるとか思ってる?
田村:思ってません。表情がふてぶてしく見えるかもしれないですけど。それに直ってることもあると思います。ドアを静かに閉めるとか。
篠原:ふてぶてしく見えるよ。やっていけるの?続けられんの?
田村:はい、続けたいです。
篠原:続けたくても席がなくなる可能性があるんだけど。もう今日はあがって。
田村:はい。



【法務部としての解釈】

 古賀と吉田には、団体交渉や労働委員会によるあっせんの経験がない。
 そのため、労働組合からの要求申入書やあっせん申請書を前にして、これからどのようなことが起きるのか、まったく想像が付かなかった。
 調べてみると、労働委員会によるあっせん手続きとは、労働委員会が組合と会社の話を聞きながら、仲立ちをしてくれるという手続きであることが分かった。しかし、それは具体的にどのような流れで、どのようなことを行い、どのような効果を持つ手続きなのだろうか? 加えて、労働委員会によるあっせん手続きにおいて、注意すべきこと、特にこれをしたら絶対にNG、逆に、これはしっかりやっておかねばならない、というポイントは何だろうか?


「悩んでいる時間はない、野村先生にお伺いを立ててみよう」


古賀は、事態の経緯を踏まえたうえで、次の2つの検討点について顧問の野村弁護士にメールを送った。

検討点1 労働委員会に対するあっせん申請書が届いたが、どのようにアクションすればよいか?
検討点2 労働委員会によるあっせん手続きのうえで、何に注意すればよいか?




******************************************



 あっせん手続きに対して、野村弁護士はどのような解説を行うのか。実際のあっせんを通した末の、事態の結末はどうなるのか。
「企業法務から見るアクチュアル労務トラブルQ&A Case3」、次回の更新をお待ちください。


第2回につづく




 編集/八島心平(BIZLAW)




 この連載記事を読む
  企業法務から見るアクチュアル労務トラブルQ&A



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遠藤 元一 [東京霞ヶ関法律事務所 弁護士]

東京大学法学部卒。立教大学法科大学院講師、一般社団法人GBL研究所理事、「優れた第三者委員会報告書表彰委員会」委員。執筆として『循環取引の実務対応』(民事法研究会 2012年)、『倒産と担保・保証』(共著 商事法務 2014年)、「排除的管轄合意を無効としたアップル・島野訴訟中間判決」NBL1073号等。


青木 智子 [東京霞ヶ関法律事務所 弁護士]

早稲田大学法学部卒。通常企業法務の他、企業側の立場で、労働問題、コンプライアンス問題等も取り扱う。第二東京弁護士会 子どもの権利に関する委員会に所属し、子どもに関するいじめ事件、虐待事件等の対応も行っている。上場会社の監査等委員(現任)。

国際企業法務協会労働法研究会

国際企業法務協会」 International Corporate Counsels Association = INCAは、1988年に発足し、25年以上に亘り活発に活動している組織です。多数の企業法務部および個人が加入し、専門家の定期講演会、会員間の研修会、法分野ごとに研究会などを開催し意見・情報交換・懇親等を行っています。本連載の執筆陣である国際企業法務協会 労働法研究会は2012年8月に開講し、事例研究を行っています。






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