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企業の競争力を高める
新たな知的財産戦略のススメ

「知的財産戦略」セミナーレポート 

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技術のコモディティ化理論、財務・税務戦略を含めた「四位一体の知財戦略」とは?

 「優れた技術と知的財産を持つ日本企業が、なぜグローバル競争で勝てないのか――」。グローバル企業をはじめ、企業の知財戦略に精通した専門家二人による「『知財戦略のススメ』出版記念イベント~競争優位を築き、日本発のイノベーションを興す~」と題されたセミナーが2016年6月に開催された(K.I.T.虎ノ門大学院主催)。
 講師として登壇したのは、同書の著者であり、大人気小説・ドラマ『下町ロケット』に登場する弁護士のモデルにもなった鮫島正洋弁護士と、同じく著者であり、知財業界の将来を担う新進気鋭の知財会計コンサルタント・小林誠氏が、出版秘話も交えながら、知財戦略を成功させるためのポイントについて、理論と実践の双方の観点から解説を行った。



 ● 技術と知財で勝る日本企業が、世界で戦うために必要な新理論とは (鮫島 正洋 氏)
 ● 財務・税務的観点から見たビジネスにおける知財戦略の必要性 (小林 誠 氏)


技術と知財で勝る日本企業が、
世界で戦うために必要な新理論とは

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 大手企業の知財関連部門や中小企業の経営者たちと日々接し、「技術系弁護士」としても知られる弁護士法人内田・鮫島法律事務所の鮫島正洋弁護士は、まずグローバル市場における日本企業の現状について解説した。


特許があるだけでは、グローバル競争に勝てない時代

 「日本はかつて、優れた技術力でグローバルシェアを獲得し、長らく世界一の特許出願国でした。しかし2000年以降、電機業界を中心にアジア勢に追い上げられ、日本企業が苦戦する状況が続いています。知財関係者にとって特に衝撃的だったのは、『最も知財活動に注力してきたはずの電機業界が最も早く凋落した』という現実でした」

 また、特許数とシェアの関係の変化について、太陽光パネル業界の事例を挙げた。

 「ある日本のメーカーは約5000件もの特許を持っていて、1990年代はグローバルシェアが90%を超えていました。しかし、2010年には4%にまで落ちています。一方、業界トップシェア(8%)を占める中国企業は、約10件の特許しか有していません。これはほんの一例で、特許を多く持つ日本企業のグローバルシェアが下落し続けている製品・分野は非常に広範にわたっています」


技術と時間の相互関係から、技術のコモディティ化を捉える

 こうした現状からは、『特許の保有件数とグローバルシェアにはまったく相関がない』という結論に行き着きがちである。しかし、鮫島氏をはじめ、企業のR&D・知財に携わる担当者たちには、このロジックに違和感を覚えるとの声も少なくなかったという。

 「そこで、このような現象が生じる原因を分析し、事業競争力向上のための知財戦略対策として導き出したのが『技術のコモディティ化理論』です。技術のコモディティ化とは、『満了した特許技術のみで製造できる製品スペック』と『市場の要求する製品スペック』がイコールになった状態を指します」

 同理論は鮫島氏が提唱する事業競争力向上のための知財戦略を支える4つの理論の一つで、製品スペック軸と時間軸の相互関係によって、製品の状態を3つのステージに分類する。

 「ステージⅠは、まだ製品・技術のスペックが市場の求めるスペックよりも低くて、R&Dによる特許出願の余地があり、必須特許取得が可能な時期です。ステージⅡでは、すでに多くの特許が出されたために必須特許取得が困難になり、満了特許のみで製造できる製品のスペックがじわじわと上がっていきます。そして、コモディティ化が起こった瞬間に、一気に特許を持たない企業の市場参入が始まり、先行者のシェアは急激に低下します。これがステージⅢです。このステージでは、先行者がせっかく良い製品をつくっても売れなくなってしまいます。私が見る限りでは、このステージⅢで停滞している電機系・化学系の日本製品が多いと考えられます」


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適時適切な知財戦略で、コモディティ化に対応

 コモディティ化を回避することはむずかしいが、適切な知財戦略によって遅延させることは可能だと鮫島氏は語る。それが、ステージⅡにおける情報管理だ。

 「『市場の要求するスペック』は、『満了した特許技術のみで製造できる製品スペック』に『β』をプラスしたものとする考え方を用います。たとえば、化学系製品であればプロセスノウハウ、機械系ならばすりあわせ技術が『β』に該当します。この『β』を開示しなければ、後発者はグローバル競争に参入できず、コモディティ化も起こりません。このように、特許技術以外で自社製品のスペックをつくり出している要因を分析し、その部分を堅守するという戦略もありえます」

 また、すでにステージⅢに進んだと思われていた製品・分野が、社会構造的な変化によってステージⅠに戻る例も少なくないという。

 「自動車を例にとると、業界全体としてはコモディティ化していましたが、70年代に石油資源の枯渇という社会構造の変化が起きました。そして、将来的に電気自動車へと移行していくプロセスで、『ハイブリッド』という構想が生まれました。この分野でいち早く特許を新たに取得した日本企業は相当な利益を上げ、特許による影響力を駆使できるステージⅠに戻りました」

 このように、何らかの社会構造的な変化が突然生じるケースは多くの分野で起こり得るという。

 「ですから、企業は自社の対象製品が在るステージを正確に評価しながら、適切な知財戦略を講じ、社会的変化に対して敏感な組織行動をとることが重要です」


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Profile

鮫島 正洋


弁護士法人内田・鮫島法律事務所
代表パートナー 弁護士・弁理士
K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 客員教授




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