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渋谷区の
「同性パートナー」条例案は
日本社会の価値観を変革させるか

なんもり法律事務所 弁護士 南 和行

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Purple Sherbet Photography/We must teach the children of the world equality, peace, and love (CC)

LGBTのアーキテクチャ 第2回

 2015年2月12日、渋谷区が同性カップルへの公的なパートナーシップ証明発行などを定める条例制定を検討中と報道がなされ、一斉にメディアで拡散された。BIZLAWでは、この条例の可能性や意義について、なんもり法律事務所の南和行弁護士にご寄稿いただいた。法律上の効果だけではないいわば効力が、見えてくるはず。



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渋谷区の
パートナーシップ証明

 同性カップルへの公的なパートナーシップ証明発行などを定める条例制定が渋谷区で検討されていると報じられた。公表されている資料によると「結婚に相当する関係」であることの証明書を渋谷区が発行するとのことである。

 これまでも男女共同参画に関する条例等(※)でセクシュアル・マイノリティの権利を言及する自治体や、大阪市淀川区のように「LGBT支援宣言」をして、職員・地域の事業主への研修等を実施する自治体もあった。

 しかし、自治体による同性愛カップルの公認は全国初である。

宮崎県都城市「都城市男女共同参画計画」など


公的証明で何ができるのか

 渋谷区が条例に基づいて「結婚に相当する関係」を公に証明することによる法律上の効果についてはどうだろうか。民事に関しての原則たる民法が同性婚を認めておらず、さらに結婚制度以外のパートナーシップ制度を認める法律もない。条例は国の法律を超えることはできないから、渋谷区の条例が、公に証明する以上に、例えば相続の権利や扶養の義務を定めることはできない。

 しかし、だからといってこの「結婚に相当する関係」の証明が何の意味もないのかといえば、そうではない。これまで相続権はおろか日常家事代理権すらなく、サービス提供などの場面で「男女ではない」ことを理由に様々な我慢を強いられてきた当事者にとって、公に証明されること、すなわち隠された存在ではないと言えることは、社会に対して平等な取り扱いを求める大きな契機となるだろう。

 渋谷区の条例が、「男女の結婚ではない」ことだけを理由にしたサービス提供の拒否や福利厚生等の差異を禁止事項とした場合、条例に基づく公的な証明を得た同性カップルに対して、男女の夫婦と異なる取り扱いをすることは、事業者や企業や行政、場合によっては渋谷区自身にとっても、コンプライアンス上の問題となる。
 この条例にどう対応するかは、ダイバーシティ(多様性)受容の取り組みに関する、当該企業や事業主へのCSRを評価する指針となるだろう。 また事業主や企業は、社内の就業規則をあらためて検証する中で、新たな需要の芽を見いだせるかもしれない。


何が「結婚に相当」なのか

 ところで同性カップルであることを公的に証明する前提となる「結婚に相当」とはいったいどういう関係であろうか。同居の有無であろうか、交際の年月であろうか、それとも何らかの契約関係であろうか。
 渋谷区の条例では、当事者が一人で物事の判断ができなくなったときに、互いに後見人となり財産を管理する任意後見契約の締結が、公的な証明の要件となると報道されている。

 たしかに、同性カップルは法律上何も補償されていないが、これを補うために互いに任意後見契約をしたり、日常の財産管理や包括代理権の契約をしたりすることは少なからずある。そういった文脈の中で渋谷区の条例の要件は、実情を踏まえたものであろう。しかし、男女の夫婦を見渡せば、財産の管理も様々であり、暮らしの関係も様々であり、財産の管理だけが「結婚」の核心ではないことは明らかである。

 民法を概観すれば「夫婦」は、財産の管理の関係というよりも、むしろ扶養や日常の代理を基礎づける関係のようにも見える(「夫婦」は子供を作る装置としての制度であるのかと曲解したくなる規定もあるのだが)。
 すなわち「結婚に相当」な同性カップルの関係を公認することは、「結婚」は男女のものであるとしてきた社会に対して、「結婚」あるいは「家庭」について新しい価値観の発見を問いかける取り組みとなるのである。

 私は、この点において渋谷区の取り組みが、今後、日本社会において「結婚」あるいは「家庭」のあり方を再検討し、同性婚やパートナーシップ制度の可能性を探るきっかけとして大きな意義を感じている。



編集/稲垣正倫(BIZLAW)




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 LGBTのアーキテクチャ

Profile

南 和行 [なんもり法律事務所 弁護士]

1976年生まれ。大阪弁護士会所属。京都大学農学部、同大学院を経て住宅建材メーカーで技術開発職をした後、大阪市立大学法科大学院。2008年司法試験合格。同性パートナーの吉田昌史弁護士と2011年に結婚式を挙げ同性愛者であることをカミングアウト。2013年から大阪南森町で、同性カップルの弁護士夫夫による法律事務所「なんもり法律事務所」を開設する。




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