MENU
BIZLAW BIZLAW
Powerd by LexisNexis®
BIZLAW
BIZLAW Powerd by LexisNexis®

RSS
Google+
Twitter
Facebook
HOME

AI・ロボット・自動運転の
法的実務の課題と対応の方向性
(その1)

弁護士・弁理士・米国弁護士 (芝綜合法律事務所) 牧野 和夫


6 AIやロボット(自動運転車を含む)が人間にケガをさせたら
誰が民事責任を問われるか?

 ここでは、次の流れに沿って「AI、ロボットの民事責任」という問題を検証していきたい。

流れ1

(1) 発生した損害に対して「誰に」民事責任が発生する可能性があるか

 この問題を「責任主体」「法的責任の種類」に2区分して考えると、次のようにまとめることができる(表4)。

 表4

責任主体

法的責任の種類

1 運転者(操縦者)

不法行為責任

2 管理者

管理責任(不法行為責任)

3 運行供用者

運行供用者責任(自動運転車の場合)

4 ハード製造者

不法行為責任(過失)、PL責任(欠陥)

5 プログラム開発者

不法行為責任(過失)、PL責任の補償責任

6 データ提供者

不法行為責任(可能性低い)、PL責任の補償責任

 プログラム開発者は、自身の不法行為責任の可能性に加えて、ハード製造者との取引契約上の免責規定で、ハード製造者が負担した責任をプログラム開発者へ求償できる権利を規定する場合が多いと想定される。そのような規定がされる場合に発生する補償責任を負うことが考えられる。

 データ提供者は不法行為責任を負う可能性が一応考えられるが、(とくに自立型の場合には)どのようなプロセスを経て人工知能が作動したかについて証明することが不可能であるので、直接にデータ提供者に対して不法行為責任を問うことは難しいだろう。ただし、契約上免責条項が規定される場合には、補償責任を負うことになるだろう。


(2) 発生した損害に対して「どのような民事責任(法的責任の根拠・性格)がどのような要件を満たすと発生する」可能性があるか

 この問題を「発生する民事責任」「責任発生の要件」に2区分して考えると、次のようにまとめることができる(表5)。

 表5

発生する民事責任

責任発生の要件

1 不法行為(民法709条) 

損害発生に対する帰責性(故意過失、因果関係等) プログラム開発・管理・監督責任を含む

2 運行供用者責任(自賠責法)

(自動運転車の場合)
損害発生に対する帰責性(故意過失、因果関係等)

3 PL責任(製造物責任法)

製造物(ソフトウェアが組み込まれたハードを含む)の欠陥から発生した損害に対して責任を負う(欠陥、因果関係等)

4 契約上の免責規定による補償責任

契約当事者の帰責事由を要求する場合と、帰責事由の有無を問わずに補償責任を負わせる場合が想定される

5 プログラム開発者

不法行為責任(過失)、PL責任の補償責任

6 データ提供者

不法行為責任(可能性低い)、PL責任の補償責任


1. 運行供用者(相手方が自己のために自動車を運行の用に供する者であること)
2. 運行(運行供用者又は運転者が自動車を運行をしたこと)
3. 結果(他人の生命又は身体を害したこと)
4. 運行起因性(上記侵害が上記運行によるものであること)
5. 免責事由がないこと(自己及び運転者が自動車の運およに関し注意を怠ったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと、自動車に構造上の欠陥又は機能の障害があったこと)

「運行供用者」とは、

 「自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者を意味する」(S43年最高裁判決)

 ものであり、具体的には、「自分の所有する自動車を自分で運転していた者」「夫名義の自動車を運転していた妻」「従業員ドライバーがバス、タクシー、運送会社の所有車両を運転していた場合のバス会社など」「車を友人に貸して友人が運転していた場合の所有者」を含む。
 そのため、ロボット(自動運転車を含む)を営利目的で稼働する会社は、「運行供用者」となり運行供用者責任を負う可能性があるだろう。

 3の製造物責任(PL)法では、欠陥がある製品(製造物)を製造したメーカー等が製造物の欠陥から発生した損害を賠償する責任を負うことになる。不法行為責任で要求される「過失」の立証は不要であり、損害を被った消費者の立証責任を軽減している。
 しかしながら、この「欠陥」の立証が難しだろう。メーカーは設計・製造段階また欠陥のあるAIを作ろうとしていないからだ。AIが自ら学習していく過程で人間に危害を加えたとき、製造者に欠陥責任を問えるかどうかは非常に難しい。ただし、自立型ロボット(自動運転車を含む)の場合には、メーカーとしては、その点の注意義務が加重されて、違法行為とは何かを理解し違法行為に加担しないプログラムを設計することを要求され、それを欠いた場合には「欠陥」が認定される可能性が出てくる。


(3) 発生した損害に対して誰がどのような民事責任を負う可能性があるか?

 この問題を「発生する民事責任」「要件」「誰に発生する可能性があるか」の3区分で考えると、次のようにまとめることができる(表6)。

 表6

発生する民事責任

要件

誰に発生する可能性があるか

1 不法行為(民法709条) 

損害発生に対する帰責性(故意過失、因果関係等)

運転者(操縦者)、管理者、プログラム開発者

2 運行供用者責任(自賠責法)

(自動運転車の場合)損害発生に対する帰責性(故意過失、因果関係等)

運行供用者

3 PL責任(製造物責任法)

製造物(ソフトウェアが組み込まれたハードを含む)の欠陥から発生した損害に対して責任を負う(欠陥、因果関係等)

ハード製造者、プログラム開発者(但しプログラム開発者はハード製造者に対する補償責任)

4 契約上の免責規定による補償責任

契約当事者の帰責事由を要求する場合と、帰責事由の有無を問わずに補償責任を負わせる場合が想定される

プログラム開発、データ提供者


(4) 自立型と非自立型とで民事責任の種類に差異があるか、不可抗力の場合は免責されるか

 この問題(人工知能に起因する損害賠償責任の根拠)は、次のとおりまとめることができるだろう(表7)。下記の通り自立型と非自立型、不正アクセス、いずれの場合にも法的責任のリスクが発生するので(契約上の免責規定の場合も含めて)、人工知能を利用した製品やビジネスの開発を促進するためにも、今後は、社会に発生するリスクを政策的に軽減するために、自賠責法のように国家により新たな保険制度を設けるか、あるいは、民間の保険商品の開発によりリスクヘッジして行くかを検討すべきだろう。

 表7

主体

非自立型

誰に発生する可能性があるか

1 運転者(操縦者)

不法行為責任

2 管理者

管理責任(不法行為)

管理責任(不法行為)

3 運行供用者(自動運転者)

運行供用者責任

運行供用者責任

4 ハード製造者

PL責任(欠陥が認定できるか?)

PL責任(欠陥が認定できるか?)

5 プログラム開発者

不法行為責任(過失にあたるか?)ハード製造者への補償責任(4に準じて認定できるか?)

不法行為責任(過失にあたるか?)ハード製造者への補償責任(4に準じて認定できるか?)

6 データ提供者

契約上の免責規定による補償責任(4に準じて認定できるか?)

契約上の免責規定による補償責任(4に準じて認定できる可能性は低いか?)


(5) 不正アクセスにより発生する法的責任

 基本的には、加害者が責任を負うが、下記の各主体についても不正アクセスによる乗っ取りを防止するための注意義務(欠陥回避)の責任を負う可能性がある。この問題は次のとおりまとめることができるだろう(表8)。

 表8

主体

非自立型

誰に発生する可能性があるか

1 運転者(操縦者)

不法行為責任

2 管理者

管理責任(不法行為)

管理責任(不法行為)

3 運行供用者(自動運転者)

運行供用者責任

運行供用者責任

4 ハード製造者

PL責任(欠陥が認定できるか?)

PL責任(欠陥が認定できるか?)

5 プログラム開発者

不法行為責任(過失にあたるか?)ハード製造者への補償責任(4に準じて認定できるか?)

不法行為責任(過失にあたるか?)ハード製造者への補償責任(4に準じて認定できる可能性は低いか?)

6 データ提供者

契約上の免責規定による補償責任(4に準じて認定できるか?)

契約上の免責規定による補償責任(4に準じて認定できる可能性はほとんどない?)

 続く本稿 その2では、AIやロボットに関する刑事責任や正当防衛、AIが作った知的財産権の帰属先や雇用への影響を分析していきたい。



編集/八島心平(BIZLAW)




この連載記事を読む
 最先端法務とは何か

関連記事
 前例なき時代の道標、未来型コンプライアンス

Profile

牧野 和夫 [弁護士・弁理士・米国弁護士 (芝綜合法律事務所)]


【略歴】いすゞ自動車(17年)、アップル(3年)で社内弁護士、法務責任者等を歴任し自動運転分野を議論するに相応しい経歴を有する。
【現職】 英国ウェールズ大学経営大学院教授、早稲田大学講師、琉球大学法科大学院講師、関西学院大学商学部講師、明治学院大学法学部講師、国際企業法務協会理事。人工知能等最先端法務問題の研究目的で来年から「最先端法務研究会」を国際企業法務協会内で会員企業向けに立ち上げる。
【経歴】 早稲田大学法学部卒、General Motors Institute修了(優等)、ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、ハーバード大学ロースクール交渉戦略プログラム修了、いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、クレディスイス生命保険法務部長、Business Software Alliance日本代表事務局長、国士舘大学法学部教授、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授、大宮法科大学院大学教授、早稲田大学大学院(国際情報通信研究科)講師を経て現職。



1 2 3




ページトップ