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AI・ロボット・自動運転の
法的実務の課題と対応の方向性
(その1)

弁護士・弁理士・米国弁護士 (芝綜合法律事務所) 牧野 和夫

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 人工知能に関するソフトウェア・クラウドデータベース、医療などのソフトウェア分野、そしてロボット工学、自動運転自動車、ドローンなどのハードウェア分野双方において、テクノロジーは急激な発展と変化を見せています。企業ビジネスがこれらの最先端技術の活用を視野に入れようとするとき、求められるのはビジネスの促進と法的リスクとをカバーできる法務のあり方です。最先端の技術領域を扱うビジネスに関して、これからの法務の課題は何か。あるべき法制度の設計はどのように行われるべきか。この連載では、「最先端法務」の未来を展望します。第2回は「AI・ロボット・自動運転の法的実務の課題と対応の方向性(その1)」。



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  最先端法務とは何か 第1回 データ立国に向けて / 別所 直哉(ヤフー株式会社社長室長 執行役員)




はじめに

 本稿では、人工知能(AI)技術の進展がどのような業種へ影響を及ぼすかを見た上で、具体的に何が起きようとしているのか(主に米国の動き)、米国政府・日本の政府の対応(立法・法規制の動向)を概観する。次に法制度への具体的な影響(人工知能の民事責任、刑事責任、正当防衛や緊急避難、プライバシー保護責任、知的財産の帰属、雇用法)について見ていきたい。最後に、日本の学会・業界団体の動き、さらには企業法務部・知財部の機能やあり方についても論じる。今回は、人工知能の民事責任までを論じたい。


1 人工知能が影響を与えるであろう分野と業種

 まずは、人工知能(AI)技術の進展が、具体的にどのような業界・業種・職種へ影響を与えるのかを見てみよう(表1)。

 以下の一覧表を見れば分かる通り、あらゆる分野・業種で人工知能(AI)技術が既に実施されているか、もしくは、今後実施予定である。結論から言ええば、ありとあらゆる分野・業種・職種へ影響するものであり、ビッグデータと人工知能技術の普及で影響を受けない分野・業種・職種はほとんどないと言えよう。人工知能関連技術の市場規模は、ある試算によれば、2015年の3兆7000億円から、2020年には6倍の22兆2000億円へ急成長することが見込まれている。これは既得権者であってもなくても、双方に大きなビジネスチャンスとなるだろう。すべてのモノの情報がネットでつながり生活や業務が効率化される、IoT (Internet of Things)あるいはIoE (Internet of Everything)とよばれる現象が、今後急成長するマーケットを示唆している。


 表1

分野・業種

人工知能を利用した具体的なビジネス

広告

ターゲット広告など

Virtual Reality(VR)

Virtual Reality(VR)元年、ウェアラブル、アプリ SENSY (人工知能で洋服選び、カラフル・ボード社が運営)など

地方再生

村起こし、観光ニーズの発掘、お見合い支援など

Social Sharing

ネット仲介サイトを通じて不動産、クルマの共同利用、AirB&Bなど空き部屋の有効利用など

人工知能の直接の活用

ゲーム、将棋、大学入試(センター試験、東大入試)、医師国家試験、言葉が分かるロボット

ドローン、ロボット

介護、危険地域、製造工場、物流・配達、軍事、橋・ビル等建造物の点検)、Pepper RoboHon(ロボット型スマホ)、ロボットが企業だけでなく家庭へも普及、人工知能技術の軍事利用 「自律型致死兵器システム(LAWS)」欧米での開発

自動運転自動車

2016年は自動運転元年、高速では年内に実用化(日産志賀副会長)、GM2017, トヨタ・本田2010、無人タクシー 神奈川県で過疎地域で導入(DeNA)

3Dプリンター

人物写真をフィギュアへ、銃の複製が容易にできてしまう、製造業では金型が不要に、人工臓器、人間のコピーが出来てしまうか?

Industry 4.0

(製造~物流を全てシステム化)(体験を共有すること)AIで工場カイゼン高度センサー装着部品 「変なホテル」ハウステンボス HIS

出版・音楽

図書館、電子書籍、人間に代わって新聞記事等言語の著作物の執筆、作詞・作曲、発明

金融・保険

(FINTECH=フィンテック) Bitcoin、金融商品取引への活用等

リスクの予知・予防

ビッグデータ・人工知能の活用により、天気予報、電気予報、災害・水害抑制、地震予知、防犯、故障・事故の予知・予防、自殺予知

医療・健康・製薬

ビッグデータ・人工知能の活用により、病気予測、人工臓器、ウェアラブルで健康管理、BioInformatics等

農業・林業

ビッグデータ・人工知能の活用による作業の効率化、自動運転トラクターなど

法律・コンサルティング

企業法務、アメリカ訴訟の証拠開示手続きでは既に利用、ご意見番人工知能(日立)


2 人工知能(AI)の急速な進展による米国の動向
~Singularity(技術的特異点)の衝撃~

 「ディープラーニング(深層学習)技術の急速な進歩」と「データ処理技術の急速な進展」によって、人工知能が人類の知性を超える「Singularity(シンギュラリティー=技術的特異点)」が2045年までに起こるのではないかという予測がある。すでに既にシリコンバレーでは、急成長産業と位置づけて、人工知能の技術者の活発な争奪戦が始まっている。日本でも、人工知能の研究者が20代の若手院生であっても年収1千万円を超える高給で米企業からオファーを受けている(シニアの研究者は数千万円)と聞いている。これに対し、法的な課題も議論されており、人工知能には厳しい法規制が必要と述べる識者もいる(起業家 Elon Musk 氏によるコメント ” Elon Musk: artificial intelligence is our biggest existential threat ”)。以下は、人工知能利用ビジネスに関するアメリカ米国の試みだ。その動向を見てほしい(表2)。


 表2

先端企業

新事業やその開発の動き

Google社言語

・ 自然言語に関する研究・コンピューターに言葉の意味を理解させることにより、人間からの複雑な質問にも対応
・Google Translate の新しい機能=スマートフォンのカメラを使ったリアルタイム翻訳機能を搭載 (2015 年 1 月発表)

Google社人工知能・ロボット

・人工知能関連企業の積極的買収
・DeepMind 社の買収
・ニューラルチューリングマシン(Neural Turing Machine) =人間の短期記憶の働きを模して、 データやアルゴリズムを記憶として保存し、未知の作業に再利用する特徴
・アルファ碁の開発(プロ碁士に勝利)
・Boston Dynamics 社等の7 つのロボット企業の買収
・Nest 社(スマートハウス向け IoT デバイス開発)の買収

IBM社・人工知能

・人工知能「ワトソン」の開発・実用化
・Pepperへの利用等

IBM社・医療

・医療診断サポートのシステムをMemorial Sloan-Kettering Cancer Center と共同開発
・ビッグデータ(60 万以上の医療知識、200 万ページの資料、数十年にも及ぶがん研究で収集した患者データ)を使い、数秒で医師に診療判断を提案できる
・がん治療の個別医療を目的としたゲノム医療

Microsoft社・言語

・Skype でリアルタイム音声翻訳を行う Skype Translator サービスを 2014 年 12 月から開始

Microsoft社・人工知能

・人工知能研究 Project Adam
・より精度の高い画像認識技術

FaceBook社・生体認識

・投稿された写真の顔を認識してタグを付けやすくするために人工知能を使用、顔認証ソフトウェアDeepFaceを開発
・97.25%の精度で顔の認識が可能、人間とほぼ同等の認識能力

FaceBook社・人工知能

・SNS のための人工知能研究
・ディープラーニングのオープンソースフレームワーク Torch のためのモジュールを公開 
・音声アシスタント(不快な写真のアップロードを停止する)など

Amazon社・人工知能

・人工知能を活用した即日配送のためのシステムを構築
・マイク型のデバイスに声で商品名を記録するだけで自動的に商品がオンラインストアのカートに追加される仕組み
・Amazon Prime Air 配送に無人航空機(ドローン)を使った配送システム
・小型自動走行ロボット (OAK4)を倉庫の商品管理に使用など

自動運転自動車

・2035年には、約3000万台規模(世界の新車販売の4台に1台)
・GM:2017年高速道路での自動運転機能を搭載したキャデラックを米中で販売予定
・Google: プロトタイプの公道実験を実施 2017年に出荷開始予定
・Apple:自動運転自動車の開発を開始




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