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データ立国に向けて

ヤフー株式会社社長室長 執行役員 別所 直哉

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 人工知能に関するソフトウェア・クラウドデータベース、医療などのソフトウェア分野、そしてロボット工学、自動運転自動車、ドローンなどのハードウェア分野双方において、テクノロジーは急激な発展と変化を見せています。企業ビジネスがこれらの最先端技術の活用を視野に入れようとするとき、求められるのはビジネスの促進と法的リスクとをカバーできる法務のあり方です。最先端の技術領域を扱うビジネスに関して、これからの法務の課題は何か。あるべき法制度の設計はどのように行われるべきか。この連載では、「最先端法務」の未来を展望します。第1回、テーマは「データ立国に向けて」。



はじめに

 インターネットの普及は、eコマース、デジタルコンテンツの配信といった新たなサービスを誕生させた。これらのサービスの登場により、これまでリアルの世界で行われていた行動がデジタルデータとして生まれ変わることとなった。また、インターネットに接続される端末も、パソコン以外にスマートフォン、タブレットPC、ウェアラブルコンピューターといった新たなデバイスやセンサー、カメラなど多種多様な端末に広がってきている。これにより、これまで取得することのできなかった多様なデータが容易に取得できるようになりつつある。

 このような環境変化により、日本国内のデータ増量はリニアではなく、指数関数的に増えている。これまで考えられていたデータ増加量をはるかに超え、まさにビッグデータが生まれている。IDCのレポートによると、2005年から2020年にかけてデータ総量は132EBから44ZB(※)になるとされており、実に300倍以上増加することとなる。

 ※ EB(エグザバイト)=1018B(バイト)、 ZB(ゼタバイト)=1021B(バイト)

 データ化がひとたび進展すると、もう元には戻れない。今まで非ネット分野だった医療やモビリティ分野にも、早晩その波は到来する。また、これら多種多量なデータを処理する能力も飛躍的に向上しており、データを利活用できる環境が整ってきている。

 では、データは実際にどのような価値を生み出すのだろうか。一つは社会課題の解決につながる。
 例えば、日々の運動量、心拍、睡眠等のデータを蓄積し、分析することで、体調の変化を捉え、症状が重篤化する前に治療を行うことができるようになるかもしれない。データを基に食事指導、運動指導などを行えば健康の維持にもつなげられる。個人の健康維持、健康寿命の延長は、ひいては社会保障費の抑制にもつながり、日本が抱える大きな社会課題の解決に寄与することになる。

 インフラの維持にもデータの利活用が期待されている。橋梁やトンネルといったインフラの点検の多くは、人の目と手で行われている。もちろん、毎日点検することはできないので、一定期間の間隔で点検が行われる。人による定期点検が劣っているとは一概には言えないが、現実問題としてトンネルの崩落などの痛ましい事故が起こってしまっている。しかし新たな試みとして、橋梁等にセンサーを埋め込み、データを収集することで、劣化や破損を常にチェックしようという動きが出てきている。人による点検コストの削減も期待されるし、常時データを収集することで、異常を早期に把握し、事故が起こる前に修繕することができる。特にインフラは、今後、耐用年数を過ぎていくものが次々に出てくるので、インフラ分野でのデータ利活用には大きな期待が寄せられている。

 もう一つ、データの利活用は社会課題の解決にとどまらず、経済成長の源泉としても期待されている。
 SASによる研究では、英国でのビッグデータ解析による経済価値は、2012年から2017年までの累計で約2,160 億ポンドになるとの試算結果が出た。ちなみに、この金額は、同じ期間の英国のGDPの約2.3%に相当するもの とみられている(※)。

 ※ 「海外におけるビックデータの実態把握に関する情報収集・評価に係る調査研究報告書」4ページ目参照

 また、MITが企業の業績とビッグデータ解析の活用状況との関係性について分析したところ、「トップ業績企業」はあらゆる事業活動において「業績劣位企業」に比べてビッグデータ解析を利用する確率が顕著に高く、将来戦略の策定や日常業務オペレーションにおける活用率は、「トップ業績企業」は「業績劣位企業」の約2倍との結果が出た。

データ利活用サイクルへの乗り遅れが
企業競争の敗北を招く

 このようなデータの経済的価値にいち早く注目し、さまざまなチャネルを通じてデータを収集しているのが、グーグル、アマゾンらに代表される海外の企業である。

 ビッグデータ時代の競争は、一度乗り遅れると取り返すのは非常に難しい。データを活用してサービスを向上することで利用者が増大し、その利用者から、ますます多くのデータが集まる。データが大量に集まれば、分析の精度も高まり、さらに利用者のニーズにマッチした魅力あるサービスへとつながる。魅力あるサービスはさらなる利用者を呼び、またデータが集まるというサイクルを生み出す。このサイクルに乗れないということは、もはやその分野での競争の敗北を意味する。

 海外の主要な企業は、既にこのサイクルを生み出している。日本の企業も早急にこのサイクルに乗らなければ、短期間のうちにその差は広がってしまい、二度と追いつくことはできなくなってしまう。日本の企業の中には、このことに気づき、取組を始めているところもあるが、まだまだわずかだ。データの重要性を認識し、直ちに行動に移すべきである。

 一方で、政府には、日本企業がこうしたサイクルに乗るための環境を整備することが求められる。日本が世界で一番データを利活用しやすい国にしていくことが重要である。

 そのためには、インフラの整備と競争促進的な法整備の両輪が急務である。




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