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現地代理人とのコミュニケーション2

エスキューブ(株)代表取締役・エスキューブ国際特許事務所所長
知財経営コンサルタント・弁理士 田中 康子

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さあ、「知財英語」で話そう 第6回(後編)

いまや「知財」は事業戦略の柱、そして「英語」はビジネスの要。「知財英語コミュニケーション」は、知財部員や弁理士だけでなく、法務部員、研究者、エンジニア、技術営業、弁護士等々、世界を相手に仕事をするグローバル人財にとって必要なスキルなのです。ところが「知財英語」は、知財や契約に関する法律用語の他、技術に関するテクニカルワードも含むため、英会話教室ではなかなか学ぶことができません。
この連載では、「知財英語コミュニケーション」を身につけるためのエッセンスを、全6回に渡り紹介します。
今回は、第6回(後編)「現地代理人とのコミュニケーション2」をお送りします。

 


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あなたの英文メールに返信が来ない理由

このシリーズでは、プレゼンテーションやディスカッションを中心とする知財英語コミュニケーションについてスピーキングの要素を中心に解説してきた。

英語でプレゼンテーションやディスカッションする機会が少なくても、レターやメールでのやり取りには慣れている、問題無くこなしている、という人は多いものと思う。筆者も日本企業で外国出願実務を担当していた頃はそう思っていた。しかし米国系企業に入社後、これが大間違いであったことを知った。現地代理人、つまり外国の弁理士や特許弁護士は、スマートで日本人の英語に慣れている。そして何よりこちらは彼らのクライアントであるから、たとえ日本人のレターが何を意図するのかわからなくても、必ず返事をくれるし、ダイレクトに「わかりません」とは言わなかったのだ。そんな彼らも、筆者が企業を退職して独立すると本音を教えてくれるようになった。


米国人弁護士にこっそり聞いた日本人のレターやメールの「印象」

日本人のレターやメールは、こんな風に思われている。

・前置きやExcuseから始まり、目的がわかりにくい。
・背景の説明は長々と書いてあるが肝心の情報が不足している。
・返事が必要なのか、いつまでに必要なのか、ハッキリしない。
・最後まで読んでも何が言いたいのかわからないことがある。

「そんなこと言われたことない……」と思われたあなた、その通り。米国弁護士からみたら日本の知財関係者、特に企業はクライアントなので、例えわからなくても「わかりません」とは言わない。

米国人弁護士にこっそり聞いた日本人のレターやメールへの「対応」

では、彼らはどうやって、日本人のレターやメールに対応しているのか、これもこっそり聞いてみた。

・返事不要ということはないだろうから、返事はする
・言いたいことを聞き出すため、Yes/Noで答えられる色々な質問をする
・Office Action対応に関連する場合、応答案を送って直接添削してもらうようにする

これまで、「返事が来ない」「返信が的を射ていない」「指示していないことも書いてある」と感じたことのある皆様、ひょっとすると原因はあなたの英文にあるのかもしれない。


今回は、現地代理人とのコミュニケーション2として、

日本企業甲社の知的財産部に勤める小林温子さんは、携帯端末部品開発の中止にあたり、関連特許のライセンス先を探している。そこで米国弁護士のBatesさんに、米国でのライセンス先探しを手伝ってくれるかどうか打診するメールを書いた。

という設定で、現地代理人とのLetter and Email(レターやメール)によるコミュニケーションのポイントを取り上げる。

まずは典型的な日本人らしいExample 1:

Dear Mr. Bates,

Thank you for your kindness as always.

As to electronic parts useful for handy devices such as a mobile phone or a tablet, our company have some patent rights.
Our company started developing electronic parts because we thought mobile phone business was good, and filed a lot of patent applications.
However, last month our company stopped developing electronic parts, so those patents have been sleeping.
I heard you would do a business trip to Japan.
Please visit us to talk about those patents.

Thank you very much in advance.

Best regards,
Atsuko Kobayashi

どうやら小林さんは、「最近携帯関係の電子部品の開発を中止したので、その関係の特許をライセンスしたい」と思っているらしいことはわかる。しかし、Bates氏は具体的にどうすればよいのか、困惑するに違いない。以下、フレーズごとに見ていこう。


Thank you for your kindness as always.
「いつもお世話になっております」を英語にしたつもりで日本人が書く日本語的英語の代表例である。英語には「いつもお世話になっております」という概念は無いので、書いても意図が通じないばかりか相手を困惑させるだけである。


As to electronic parts useful for handy devices such as a mobile phone or a tablet, our company have some patent rights.
ここでuseful for は「……に使える」となり、違和感がある。
次のhandy devicesは携帯端末を意図しているようだが、英語では、handheld devicesが良いだろう。


Our company started developing electronic parts because we thought mobile phone business was good,and filed a lot of patent applications.
「弊社は、携帯電話事業が有望であると考えたので、電子部品開発をスタートし沢山の特許出願をしました。」と背景を説明している。本メールの目的からすると書かなくてもよい。また、we thought mobile phone business was good という表現は、「携帯電話事業が有望であると考えた」というには、少し稚拙な印象を与える。もし記載するなら、We expected that mobile phone business would be rapidly growing. などがよいだろう。


However, last month our company stopped developing electronic parts, so those patents have been sleeping.
「しかし、先月弊社は電子部品の開発を中止したので、それらの特許が休眠しています。」という背景も、ライセンスのサポートを打診するという目的には必要ないだろう。ちなみに、our company は既に前の文で使っているので、繰り返しを避けてweにする方が自然であろう。however やso も、日本語の「しかし、でも、ところが」や「……ので」に置き換えて使う人が多いが、不要な場合も少なくない。


I heard you would do a business trip to Japan.
Please visit us to talk about those patents.

「日本に出張されると聞きました。これら特許について話をしに弊社にいらして下さい。」
と言われてBates氏はどうすればよいのだろうか? ちなみに、出張するはhave a business tripである。


Thank you very much in advance.
「よろしくお願い致します」を英語にしたつもりで日本人が書く日本語的英語の代表例である。「いつもお世話になっております」と同様、英語には「よろしくお願い致します」という概念も無い。尚、何か具体的なことを依頼する際に、前もってお礼を言うという感覚で、thank you in advanceと書く場合もあるが、日本語の「よろしくお願い致します」の意味にはならない。


つづいて、より英語らしいExample 2:

Dear Mr. Bates,

It was nice seeing you in Washington DC the other day.
I am writing to ask if you are interested in helping us pursue licensing our patents out to other companies.
We have recently decided to discontinue development of electronic parts used in handheld devices and would like to license the patents out to other companies. Attached is a list of the patents. Please let us know whether you are interested in helping us pursue these patent licensing opportunities or not, by the end of this month.

Best regards,
Atsuko Kobayashi

この例は、前置きや余分な背景はなく、冒頭部分で目的が明らかにされているので、読みやすい。Bates氏が返信するための判断材料となる特許リストも添付されている。そして、いつまでに何を答えればよいのか明確である。


It was nice seeing you in Washington DC the other day.
前置きは不要だが、どうしても何か書きたければ、「先日はDCでお会いできてよかったです。」とった一文を入れると良い。Bates氏とそれほど親しくない場合でも、思い出してもらうきっかけとなる。相手の顔が浮かんだ方が仕事がやりやすいのは万国共通である。


I am writing to ask if you are interested in helping us pursue licensing our patents out to other companies.
「外国企業へ弊社特許をライセンスアウトするにあたり、お手伝いをお願いできるかどうか伺いたく、メール致します。」と目的をハッキリ述べている。これを読めば、Bates氏は、どんな分野のどういう特許なのだろう?と思うのではないだろうか。


We have recently decided to discontinue development of electronic parts used in handheld devices and would like to license the patents out to other companies. Attached is a list of the patents.
「弊社は最近、携帯端末(ハンドヘルドデバイス)用の電子部品開発の中止を決定し、これらに関連する特許を他社にライセンスアウトしたいと考えています。特許のリストを添付致します。」と、Bates氏の気持ち“どんな分野のどういう特許なのだろう?”をみすかしたような文章が続く。すぐにBates氏は、添付の特許リストを見ながら、いつまでに返事をすればよいのかな? と考えるのではないだろうか。


Please let us know whether you are interested in helping us pursue these patent licensing opportunities or not, by the end of this month.
「これら特許のライセンスアウトに関してお手伝いいただけそうか否か、今月末までにお知らせください。」と、またしてもBates氏の気持ち“いつまでに返事をすればよいのかな?”を見透かした文章でしめている。そして、……whether or not……なので、興味があってもなくても返事をして欲しいことが伝わる。


Example 2では、目的を明らかにし、その目的を達成するための材料を記載している。言い換えると、読み手がこちらの要求に応えられる材料を与えているのである。
さらに、Example 2は、日本語をそのまま英語に置き換えたような日本語的英語ではないことがおわかりいただけるだろうか。この様な文章を書くためには、日本語で書いた下書きを、辞書を引きながら英語に直すのではなく、何が伝えたいのかを図に書き、Nativeが使う英文をまねて表現するとよい。


レターやメール作成のポイント

Example 1と2を通して、お伝えしたいポイントをまとめると次の通りである。

●前置きは不要
 ・「いつもお世話になっております」「よろしくお願いします」は無い。

●必要な項目を記載する
 ・目的(なぜこのメール・手紙を書いているか)
 ・要件(伝えたいこと)
 ・回答要否
 ・回答期限
  ⇒ ASAP=as soon as possible は、possibleでなければsoonでなくてよいととられるので避け、
    具体的な回答期限を記載する
  ⇒ 至急の場合は、単にurgentとせず、具体的な回答期限とその理由も記載する

●日本語の文章(単語)を英単語に置き換えない
 ・何を伝えたいのかを図に書いてみる
 ・Nativeの英文をまねる


最後に、日本人がグローバルコミュニケーションで通用する英文を書くための最大の課題は、日本の文化と教育制度に基づく「日本語的英語」を脱することである。今後機会があればこの点について掘り下げてみたい。




編集/八島心平(BIZLAW)

田中 康子

Profile

田中 康子エスキューブ(株)代表取締役・エスキューブ国際特許事務所所長
知財経営コンサルタント・弁理士]

1990年千葉大学理学部卒業。1990年より 帝人株式会社 知的財産部。2005年より ファイザー株式会社 知的財産部、2006年住友スリーエム株式会社 知的財産部。 2013年4月 エスキューブ株式会社を設立。2013年8月エスキューブ国際特許事務所を設立。2015/2016年度 日本弁理士会 知財経営コンサルティング委員会 委員長、現在同知的財産経営センター 副センター長。




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