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現地代理人とのコミュニケーション1

エスキューブ(株)代表取締役・エスキューブ国際特許事務所所長
知財経営コンサルタント・弁理士 田中 康子

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さあ、「知財英語」で話そう 第6回(前編)

いまや「知財」は事業戦略の柱、そして「英語」はビジネスの要。「知財英語コミュニケーション」は、知財部員や弁理士だけでなく、法務部員、研究者、エンジニア、技術営業、弁護士等々、世界を相手に仕事をするグローバル人財にとって必要なスキルなのです。ところが「知財英語」は、知財や契約に関する法律用語の他、技術に関するテクニカルワードも含むため、英会話教室ではなかなか学ぶことができません。
この連載では、「知財英語コミュニケーション」を身につけるためのエッセンスを、全6回に渡り紹介します。
今回は、第6回(前編)「現地代理人とのコミュニケーション1」をお送りします。



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Interview, Office visit, Dining

 これまで、第1回の「知財英語コミュニケーションとは何か?」を皮切りに、第2回~第3回では「知財英語プレゼンテーション」について、第4回~第5回では「知財英語ディスカッション」について解説してきた。
 少しでも実感がわき、実践で使いやすいよう筆者の実務経験に基づく実例を挙げているので、皆さんがプレゼンテーションやディスカッションの準備をする際には思い出して読み返していただければと思う。

 特に、「第1回 技術部長とのやり取りの部分」、「第3回(後編) スクリプト付きプレゼンテーションの例」、「第5回 「模擬Teleconference」」には、知財英語とビジネス英語のキーフレーズをちりばめてあるので、繰り返し音読すれば、知財英語コミュニケーションスキルは格段にアップする。

 ところで、第1回の冒頭に、『出願からディナーまで「知財英語」コミュニケーション』と記載されていたのを覚えているだろうか。ビジネスで知財英語を用いる場面では、プレゼンテーションやディスカッションだけではなく、それらの場面に付随する「現地代理人とのコミュニケーション」が漏れなくついてくる。例えば、ディスカッションのために現地代理人の事務所を訪れる際、あるいは現地代理人があなたの会社を訪れる際のコミュニケーション、そしてランチやディナーを共にする際のコミュニケーションである。

 今回は「現地代理人とのコミュニケーション 1」として、


「USPTO(United States Patent and Trademark Office:米国特許商標庁)の審査官と面接するためにワシントンDCエリアの特許事務所を訪れ、現地代理人と打合せの後USPTOで審査官と面接、そして夕食を共にする」

 という設定で、Interview, Office visit, Dining のポイントを解説する。(Letter and email は、次回)



特許事務所訪問 Office Visit

 特許事務所に着いたら、Reception(受付)へ向かうのだが、その前に、建物への入館手続きが必要な場合がある。身分証明書の提示を求められたり、その場で写真をとって、写真付きの簡易入館証を渡されたりすることもあるので少し時間がかかる。身分証明書は、米国では頻繁に提示を求められる。写真付きのもの(Photo ID)が必須なのでパスポートを常に携行するとよいだろう。

 さて、会議室に通されたらまず挨拶、そして打合せのスタートとなる。アウェイであっても、打合せの進行は代理人に任せず、自ら目的をはっきりと述べたうえで積極的に進めてよい。この打合せで何をしたいのか、は必ず伝えよう。 以下に仮想例を記載する。

打合せ時の想定問答

Takahashi: Nice to see you, again, Mr. Bates. Nice to meet you, Ms. Hayes. Let me introduce Mr. Doi, the co-inventor in the case, from our Yokohama research center.
<二回目以降に会う場合は、Nice to see you. 初めて会う場合は、Nice to meet you.>

(高橋:ベイツさんこんにちは。ヘイズさんこんにちは。本件の発明者で弊社の横浜研究所の土井さんを紹介します。)


Bates: Good to see you, Takahashi-san. Nice to meet you, Doi-san. Have a seat please. How was your flight?

(ベイツ:高橋さん、またお会いできて嬉しいです(ほぼ、“こんにちは”の意)。土井さん初めまして。どうぞおかけください。フライトはいかがでしたか?)


Takahashi: It was good, It’s a long flight as you know, but at least I could enjoy watching some movies.
<決して、I’m sleepy due to a jet-lag. 等と言わないこと。半分ジョークのつもりでも、ビジネスの場で「眠いです」というのは失礼にあたる。>

(高橋:良かったですよ。機内では映画を楽しみました。)


Hayes: And how are you doing, Doi-san? Is this your first visit to DC?

(ヘイズ:土井さんこんにちは。DCへは初めてですか?)


Doi: I’m fine, thanks. I’ve visited New York City twice and LA once, but it’s my first time in DC. And I’ve never been to a law firm in the US before, so I’m very much looking forward to it.

(土井:こんにちは。ニューヨークへ2回、LAには1度行ったことがありますが、こちらは初めてです。米国の法律事務所を訪れるのも初めてなので、ワクワクしています。)


Takahashi: Well, we are here to talk about what to discuss with the examiner in the interview. I’ve never had an opportunity to have an interview with the USPTO examiner, so could you tell us what to expect?
<Small talkが済んだら本題へ。高橋さんは下線部のように、打合せの目的を述べている。>

(高橋:(えー、)審査官との面接で何を議論するかについてお話したいと思います。USPTOの審査官と面接するのは初めてですので、USPTOでの面接について少し教えていただけますか?)


Hayes: Sure. We’ll visit the head-quarters of the USPTO in Alexandria and meet the examiners, let’s see… OK, here, Sudhir Gupta, assistant examiner, and Anna Petrovsky, primary examiner. I will introduce you to them and share the present invention and examination status.

(ヘイズ:わかりました。これからアレキサンドリアにあるUSPTOの本庁を訪れ審査官に会います。審査官、ええーっと、審査官補が スディル グプタさん、審査官がアナ ペトロフスキーさんですね。お二人(高橋さんと土井さん)を審査官に紹介してから、まず本願発明の説明と審査の現状の確認から入ります。)


Takahashi: I think the examiners should have a good understanding of the invention since they have already examined it.

(高橋:審査官は本願を審査しているのですから、本発明についてすでに良くご存知だと思いますが。)


Bates: You’re right, Takahashi-san, they have examined the case, but each examiner is handling many cases at the same time. So, it would be a good idea to start by reminding them of the invention and the current examination status.

(ベイツ:高橋さんのおっしゃる通り、彼らはこの案件の審査をしています、でも審査官は一度にたくさんのケースを扱っています。なので、まずは本件発明と審査の現状の確認から始めるのがよいと思います。)


Takahashi: I see. In that case, we’d also better explain the background of the invention.

(高橋:わかりました。では、発明の背景も説明したほうがよいですね。)


Hayes: That’s a good idea. Doi-san will explain the outline of the invention including the background, then move on to a comparison with the prior art and the present invention. At this point, we should make sure if the examiners think the present invention is novel over the prior art. So, we can focus on arguing unobviousness.

(ヘイズ:それがいいと思います。土井さんが背景を含めて発明の概要を説明し、先行技術との比較へと移りましょう。その際、審査官は、本願発明が先行技術に対して新規性を有する、と考えているかどうか確認しましょう。そうすれば、非自明性の議論に集中できます。)


Doi: I just recently carried out some additional experiments and have the results along with the drawings. I believe we can assert that the present invention is not obvious from the prior art.

(土井:つい先日追加実験を行い、その結果を図面と一緒にお持ちしました。本願発明は先行技術から自明ではないと主張できると思っています。)


Bates: Excellent! The drawings and experimentation data will help us overcome this outstanding office action.

(ベイツ:素晴らしい。図面と実験データは今回のオフィスアクションを解消するのに役立ちますよ。)



審査官との面接 Interview with examiners

 今回の担当審査官は、名前からするとインド系とロシア系の様子。USPTOの審査官は、英語を母国語としない人が多く、発音やボキャブラリーが米国人とは異なる。そのため、面接では、ミスコミュニケーションとならない様、聴きとれない場合・理解できない場合は、遠慮せず一つ一つ確認しながら進めよう。面と向かって話ができる良い機会なので、今回の土井さんのように、図面やデータを使ったり模型を使ったりして説明すると効果的である。

 ベイツさんが言っているように、USPTOの審査官は多くのケースを並行して扱っているので、まず本件の内容と状況、そして今回の面接の目的を必ず確認する。そして、面接の最後には、議論したこと、合意したこと、今後のアクション等をメモに残しておこう。

 なお、今回は、USPTO本庁でのライブインタビューを想定したが、電話での面接も受け付けてくれるので、Teleconferenceに自信が出て来たら、わざわざ米国に出張しなくて済むのである。知財英語コミュニケーションスキルを身につければ、時間と費用を節約して効率よく仕事ができるようになる。



食事 Dining

 さて、審査官との面接が終わって代理人とのディナー。
 「何を話せばよいの?」が、最大の課題ではないだろうか。

 お勧めのトピックは、スポーツ、映画、食べ物である。
 時事問題、政治・経済もあまり深入りしなければOK。

 グローバルビジネスの席では、楽しく和やかな雰囲気作りが大切なことはもちろん、「どんな話をするのか」によって、あなたの“人となり”が評価されていることを忘れてはいけない。現地代理人のみならず、グローバルビジネスパートナーたちは、色々な側面から私たちを評価している。よって、スポーツや映画等のやわらかい話をしながらも、時折時事問題や政治・経済の話題、あるいはシェイクスピアに出てくるセリフ等をおり交ぜて、奥深さや教養をさりげなく見せておきたい。ウイットの効いたジョークも好印象である。ただし、笑いのツボは日本人とだいぶ違うので、日本のバラエティ番組で流行りのネタや、日本流のダジャレは全く理解されない。

スポーツ
 米国なら、野球、バスケットボール、フットボール(日本で言うアメリカンフットボール)、ゴルフあたりが無難である。その日の新聞やニュースで話題になっているものについて、情報を仕入れておけば心強い。

映画
 映画俳優を含め、趣味が合えば盛り上がりやすい話題である。最近の作品に限らず、多少古くてもハリウッドの名作なら知っている人が多い。なお、タイトルは、英語版(原題)と日本語版で異なることがある(以下参照)。

日本語タイトル

英語タイトル(原題)

アナと雪の女王

Frozen

塔の上のラプンツェル

Tangled

天使にラブソングを

Sister Act

キューティブロンド

Legally Blonde

デビル

The Devil’s Own

エネミーオブアメリカ

Enemy of the State

レナードの朝

Awakenings

評決のとき

A Time to Kill

食べ物
 まさに今食べているものについて話せばよいので手っ取り早い。ポイントは和食の場合。横文字の食べ物は片仮名ながら一応名前はわかるが、和食は普段日本語で表現しているため、英語で何というのかとっさにわからないことがある。是非予習しておこう。特に、ポピュラーな寿司ネタくらいはすぐに言えるように(以下参照)。

日本語名

英語名

マグロ

tuna

カツオ

bonito

イカ

squid

ブリ

yellow tale

ホタテ

scallop

アワビ

abalone

サバ

mackerel

イワシ

sardine

エビ

shrimp

タコ

octopus

 また会食をセッティングする場合には、主義(ベジタリアン等)や宗教上の制限、アレルギーの有無について確認しておくようにしよう。

 ベジタリアンは、菜食主義者のことだが、本当に野菜しか食べない人、卵と魚もOKな人、さらに鶏肉もOKな人等色々いる。宗教上の制限は、イスラム教、ヒンズー教、ユダヤ教が厳格である。イスラム教は豚肉とアルコールはNG、ヒンズー教は牛がNG、ユダヤ教はKosher(コーシャ)と呼ばれる厳格な規定に基づく食物を食べるという習慣がある。細かい規則もあるようなので必ず事前に聞いておこう。

 以上の様に、楽しく和やかな雰囲気で食事ができるよう気配りすることで、現地代理人との関係が良くなり、より充実したコミュニケーションができるようになる。そして結果として良い仕事につながる。
 ゆえに、知財英語コミュニケーションは、「出願からディナーまで」なのである。

 次回は、letter や email での現地代理人とのやり取りについて、「代理人とのコミュニケーション2」として説明する予定である。




編集/八島心平(BIZLAW)



田中 康子

Profile

田中 康子エスキューブ(株)代表取締役・エスキューブ国際特許事務所所長
知財経営コンサルタント・弁理士]

1990年千葉大学理学部卒業。1990年より 帝人株式会社 知的財産部。2005年より ファイザー株式会社 知的財産部、2006年住友スリーエム株式会社 知的財産部。 2013年4月 エスキューブ株式会社を設立。2013年8月エスキューブ国際特許事務所を設立。2015/2016年度 日本弁理士会 知財経営コンサルティング委員会 委員長、現在同知的財産経営センター 副センター長。




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