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知財英語プレゼンテーション 2
Annex Main body
-スクリプト付きプレゼンテーションの例-

エスキューブ(株)代表取締役・エスキューブ国際特許事務所所長
知財経営コンサルタント・弁理士 田中 康子

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さあ、「知財英語」で話そう 第3回(後編)

いまや「知財」は事業戦略の柱、そして「英語」はビジネスの要。「知財英語コミュニケーション」は、知財部員や弁理士だけでなく、法務部員、研究者、エンジニア、技術営業、弁護士等々、世界を相手に仕事をするグローバル人財にとって必要なスキルなのです。ところが「知財英語」は、知財や契約に関する法律用語の他、技術に関するテクニカルワードも含むため、英会話教室ではなかなか学ぶことができません。
この連載では、「知財英語コミュニケーション」を身につけるためのエッセンスを、全6回に渡り紹介します。今回は、第4回「知財英語プレゼンテーション2 Annex Main body -スクリプト付きプレゼンテーションの例-」をお送りします。



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導入からまとめまでのスクリプトを押さえる

前回、前々回と、プレゼンテーションを構成する「Starting presentation」(導入)、「Main Body」(本論)、「Closing presentation」(まとめ)、「Dealing with questions」(質問への対応)について取り上げた。

前回の「Main Body」では、ポイントは、「誰に、何を、どう伝えるのか」であり、「誰に」伝えるのかによって、使用する言葉、説明の内容、説明の仕方を変える必要がある点が、特に知財英語プレゼンテーションでは重要であると述べた。そして、具体例としてプレゼンテーション例(スライド)を作成した。
今回は、前回作成したスライドに、表紙を追加し、予告通りStarting Presentation からClosingまでのスクリプト例をつけてみたので、ご覧いただければと思う。


フロントページ

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Good morning, Mr. Harts, Ms. Einerson, and Mr. Bates, thank you for visiting us today. My name is Taro Sasaki from the IP department of ABC Corporation.
I’d like to discuss “Patent Invalidation Trial in Japan.”
This presentation will take about 15 minutes, then we will have five minutes for Q&A. However, if you have any questions, please feel free to ask me anytime.

(おはようございます、Hartsさん、Einersonさん、Batesさん、本日は弊社にお越しいただきありがとうございます。私はABC株式会社知財部の佐々木太朗です。これから日本の特許無効審判についてお話します。プレゼンテーションは15分、その後質疑応答の時間を5分間取ります。もしご質問がありましたら、途中でも構いませんので、どうぞお気軽におっしゃってください。)


前提より、聴衆はX社の知財法務本部長、知財部担当者、海外事業部長である。名前を覚えておいて冒頭で上記のように挨拶すると、印象が良い。そして、先方のリクエストはプレゼン20分で、とのことである。そこで、プレゼンとQ&Aの時間配分を明らかにし、「時間についてわかっていますよ」ということを伝える。


スライド1:Agenda

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Firstly, I’ll talk about what is a patent invalidation trial, second, overview of the trial, and
third, counter actions by a patentee. Then finally, I’ll briefly summarize the presentation.

(最初に、特許無効審判とは何か、2つ目に、無効審判の概要、そして3つめに特許権者の取りうる対応をお話し、最後に簡単にまとめたいと思います。)


Agendaでプレゼンテーションの全容をはっきりと伝えることにより、聴衆の理解度が上がる。


スライド2:What is a Patent Invalidation Trial

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Let’s start with what is a patent invalidation trial.
The patent invalidation trial is a way to invalidate a patent to solve a dispute.
When a patent infringement trial is filed, an alleged infringer files a patent invalidation trial as a defense.
The trial is Inter Partes process at the JPO between a patentee and a demandant.
A demandant is like a plaintiff in a court of law. Here, it is called “a demandant.”
An alleged infringer may also argue an invalidity of patent at a court without filing a patent invalidation trial at the JPO.
The alleged infringer may argue the invalidity both in a court of law and at the JPO.
A patent invalidation trial may be filed when a patent falls within the grounds defined by Patent Act. Art. one-twenty three, paragraph one. I will talk about the grounds later.

(では、特許無効審判からご説明します。特許無効審判は、係争を解決するために特許を無効にする方法です。通常特許侵害訴訟が提起されると、被疑侵害者はディフェンスとして特許無効審判を請求します。無効審判は、特許庁で行われる特許権者と請求人間の当事者系の手続きです。請求人というのは、一般の裁判で言う原告にあたります。無効審判では「請求人」と言います。被疑侵害者は、特許庁で特許無効審判を起こさなくても、裁判所で特許の無効について議論することもできます。つまり被疑侵害者は、特許の無効について、一般の裁判所と特許庁の両方で争うことができるのです。特許無効審判は、特許が特許法123条1項に規定する無効理由に該当するときに請求することができます。無効理由については追って説明いたします。)


Inter Partes(当事者系)やdemandant(請求人)は、特許手続きに特有の表現であるので、より一般的な表現での補足をしておくと良い。特に、demandantは、日本等の審判請求人について用いる用語であり、米国特許弁護士にとってはなじみがないようであるが、ひとこと「裁判所でいう原告ですよ」と付け加えればすぐに理解してもらえる。また、条文番号は読みにくいので、事前に少なくとも1度は声に出して練習しておきたい。


スライド3:Overview of a Patent Invalidation Trial

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Next, I will move on to overview of patent invalidation trial.
This section is divided into seven items.
Firstly, demandant.
Only interested parties may file a trial and must not be anonymous.
No strawmen can file.
A trial may be filed anytime after the patent is granted, and even after the expiration of patent as long as there is a merit to do so.
Trial prosecution is basically document based, but usually, an oral hearing is held at least once.
Official fee for the trial is forty nine thousands and five hundreds Japanese yen per case plus fifty-five hundreds Japanese yen per claim.
If a patent has five claims, the official fee will be seventy seven thousands yen. And also an attorney fee is necessary.

(続いて、特許無効審判の概要について説明します。この部分は、7つの項目に分かれています。最初は、請求人です。利害関係人だけが、この審判を請求できます。匿名では請求できません。よってダミーもダメです。特許発行後は、請求の利益がある限り特許期間が終了しても審判請求が可能です。審判手続きは、書面審理が基本ですが、少なくとも1回は口頭審理が行われるのが通常です。特許庁に支払う審判請求料は、1件あたり日本円で49,500円、さらに1請求項あたり5,500円がプラスされます。5つの請求項がある特許の場合は、77,000円となります。さらに代理人費用も必要です。)


このパートは少し長く3枚のスライドに及ぶので、最初に7つの項目に分けた旨を伝えておくと聴きやすい。日本語で良く言うダミーは、dummyでも通じないことはないが、strawmanの方が自然のようである。


スライド4:Cont. (前のスライドの続き)

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Next is the item five, grounds.
The grounds are stipulated in Patent Act Art one twenty three, paragraph one.
Representative grounds are, such as where the patent has been granted in violation of novelty, inventive step, double patenting, and the like, on a patent application not complying with written description requirements for patent documents, and on a patent application with an amendment adding a new matter, because no new matter can be added to the patent application.
A demandant needs to prepare an evidence to prove that the patent falls within any of the grounds.

(次は、5番目の項目、無効理由です。無効理由は特許法123条1項で規定されています。代表的なものは、その特許が、新規性、進歩性、先願等に違反してされたとき、特許書類の記載要件を満たしていない特許出願に対してされたとき、そして補正により新規事項が追加された特許出願に対してされたときです。補正で新規事項を追加することは禁止されていますので。請求人は、特許がこれらいずれかの無効理由に該当することを証明する証拠を準備する必要があります。)


前回も述べた通り、今回の前提において無効理由を条文通りに説明するのはお勧めしない。「代表的なものは」として主なもののみ述べればよい。異なる前提の場合、例えば知財の専門家の間で制度の詳細についてディスカッションするような場合は、条文や審判便覧の言葉を忠実に使用して紹介するべきである。


スライド5:Cont. (前のスライドの続き)

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Let’s move on to the items six and seven.
The item six is appeal. When the decision is made, either party who is not satisfied, may appeal to the IP high court. Then they can go to the supreme court if not satisfied with the high court decision.
The last item is effect of trial decision.
The patent shall be deemed never to have existed by the invalid patent decision.
And, when a final and binding trial decision has been registered, the concerned parties and any intervenors in the trial may not file a request for a trial on the basis of the same facts and evidence. This is like “double jeopardy” in the states.

(続いて、項目の6と7に移ります。6番目は不服申し立てです。審決がされた場合、審決に満足しない当事者はいずれも知財高裁に控訴することができます。そして高裁の判断に満足できない場合は、最高裁に上告することができます。最後の項目は審決の効果(効力)です。特許無効の審決により、その特許は最初から存在しなかったものとみなされます。そして、審決が確定すると、当事者と参加人は、同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができなくなります。米国のdouble jeopardy と似ています。)


このスライドは、より専門的な内容が多いので、説明する際には、適当な場所で切り、強弱をつけながら説明すると聴きやすくなる。こういう専門的な内容について説明する場合、事前に内容を良く理解しておくと、言い換えを求められたり、質問された際にうまく対応できる。


スライド6:Counter actions by a Patentee

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Now, I will show you counter actions by a patentee.
A patentee has opportunities to correct claims to avoid invalidation.
There are two ways, first, a patentee may file a trial for correction with the JPO, and second,
a patentee may also request a correction of claims in an on-going patent invalidation trial process.
Either way, a correction needs to meet correction requirements defined in the patent law.
The requirements are complicated, so we are willing to collaborate with you when the correction is necessary.
However, a trial for correction must be filed by a patentee.
Official fee for a trial for correction is the same as the fee for an invalidation trial.

(さて、特許権者による対応について紹介します。特許権者は、特許無効を避けるために請求項を訂正する機会があります。2つの方法があり、1つ目は、特許庁に訂正審判を請求する方法、2つ目は、進行中の特許無効審判の手続きにおいて訂正を請求する方法です。いずれの方法でも、訂正は特許法に規定する訂正要件を満たしている必要があります。訂正要件は複雑ですので、必要な場合は喜んでお手伝いします。ただし、訂正審判は特許権者が請求する必要があります。特許庁へ支払う審判請求料は、無効審判の場合と同様です。)


聴衆が特許権者にあたるので、この部分は大切である。わかりやすいように、ゆっくりはっきり説明しよう。どういう場合に訂正できるか、費用がかかるのか、が特許権者によってポイントとなると思われるので、訂正は訂正要件を満たす必要があることを説明して、なんでも訂正できるわけではないことを伝え、料金に触れることで、無料ではないことを念押しする。


スライド7:Summary

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Well, finally I’d like to summarize what we discussed today.
Patent Invalidation Trial is a way to invalidate a patent to solve a dispute, and used by an alleged infringer as a defense.
An alleged infringer may also argue invalidity in a court of law.
When an invalidation trial is filed, a patentee has a chance to correct a claim to avoid invalidation.
The invalidation decision has a retroactive effect.
The fees for an invalidation trial are not prohibitive.
This is the end of my presentation. Thank you for your attention. Do you have any questions?

(では最後に、本日のプレゼンテーションをまとめます。特許無効審判は係争を解決するために特許を無効にする方法であり、被疑侵害者がディフェンスとして使用します。特許の無効については、裁判所でも争うことができます。無効審判が請求されると、特許権者は無効にされるのを避けるため請求項を訂正する機会があります。無効審決は遡及効果があります。審判請求料は、それほど高くありません。以上です。ご清聴ありがとうございました。ご質問はありますか?)


毎回述べているように、プレゼンテーションで説明した全てのエッセンスをまとめ、聴衆の目的に合致するようなSummaryに仕上げるとインパクトが上がる。Summaryの内容がプレゼンの内容として記憶に残ることが多いので、スライドを作る際にしっかり吟味する必要がある。尚、上記のスライドでは、スライド5の (7)Effect of trail decisionで “The patent shall be deemed never to have existed” と述べた点を、 “retroactive effect” と言い換え、official fees については、not prohibitive (それほど高くない)と表現して、より簡潔でわかりやすいようにしている。
最後の thank you for your attention は thank you for your kind attention という人もいるが、Native speakerによると、レターやメール含め、”kind” はtoo muchのようである。確かにNative speakerはプレゼン等で、kind を用いていない。


以上、3回にわたり知財英語プレゼンテーションについて具体例を用いて解説した。
上記スクリプト付きのプレゼンテーション例は、英語でのプレゼン未経験者にとっては格好の練習材料になるのではないだろうか。通勤時間に暗記して自習する、社内の勉強会でプレゼンの練習に使う、あるいは忘新年会の余興として披露するなど、来るべきプレゼンのチャンスに備えて活用していただければ幸いである。

次回は、「知財英語ディスカッション1」をお届けする。





編集/八島心平(BIZLAW)





田中 康子

Profile

田中 康子エスキューブ(株)代表取締役・エスキューブ国際特許事務所所長
知財経営コンサルタント・弁理士]

1990年千葉大学理学部卒業。1990年より 帝人株式会社 知的財産部。2005年より ファイザー株式会社 知的財産部、2006年住友スリーエム株式会社 知的財産部。 2013年4月 エスキューブ株式会社を設立。2013年8月エスキューブ国際特許事務所を設立。現在日本弁理士会 知財経営コンサルティング委員会 委員長。




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