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知財英語プレゼンテーション 2
Main body

エスキューブ(株)代表取締役・エスキューブ国際特許事務所所長
知財経営コンサルタント・弁理士 田中 康子

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さあ、「知財英語」で話そう 第3回(前編)

いまや「知財」は事業戦略の柱、そして「英語」はビジネスの要。「知財英語コミュニケーション」は、知財部員や弁理士だけでなく、法務部員、研究者、エンジニア、技術営業、弁護士等々、世界を相手に仕事をするグローバル人財にとって必要なスキルなのです。ところが「知財英語」は、知財や契約に関する法律用語の他、技術に関するテクニカルワードも含むため、英会話教室ではなかなか学ぶことができません。
この連載では、「知財英語コミュニケーション」を身につけるためのエッセンスを、全6回に渡り紹介します。今回は、第3回「知財英語プレゼンテーション2 Main body」をお送りします。



 関連記事
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プレゼンの「本論」では何を語るか

プレゼンテーションを構成する「Starting presentation」、「Main Body」、「Closing presentation」、「Dealing with questions」のうち、前回は、脇役にあたる「Starting presentation」、「Closing presentation」、「Dealing with questions」を取り上げた。

今回は、いよいよ「知財英語プレゼンテーション」の真骨頂である主役「Main body」(本論)の登場である。


Main bodyのポイントは、


 1)Who is the audience? (聴衆は誰か)
 2)What is your message? (伝えたいことは何か)
 3)Order of contents (話す順番=構成)

の3つである。つまり、「誰に、何を、どう伝えるのか」である。


<誰に>

プレゼンテーションスキルは、「相手が理解できる言葉で表現する力」であると、第1回で述べた。そのためにはまず「相手」、つまり聴衆は誰なのかを知る必要がある。
日本語であるか英語であるかを問わず、またテーマの内容も問わないポイントだが、専門的な内容を含む知財英語プレゼンテーションでは、誰が聴衆なのかにより、使用する言葉、説明の内容、説明の仕方を変える必要があるので、特に重要なポイントと言える。
知財英語プレゼンテーションの聴衆としては、例えば、外国の特許代理人、海外関係会社のカウンターパートやマネージャー、共同研究開発の相手、または業界団体の仲間あたりが想定されるのではないだろうか。

グループに分けると、次のようになる。


・知財の専門家
・技術者または技術系のマネジメント
・それ以外の人


「知財の専門家」が聴衆の場合は、知財用語をそのまま用いて、難しいことを難しい言葉で説明すれば理解してもらえるので、簡単である。Patentability, infringement, patent invalidation trial… そのままでOKである。
「技術者や技術系のマネジメント」が聴衆の場合は、知財用語自体は知っているが、意味や内容に関する認識が人によって異なることがあるので、要所要所で補足説明を入れると誤解がないだろう。

「それ以外の人」が聴衆の場合は、知財用語をそのまま用いただけでは理解してもらえないことも多い。十分に理解してもらうためには、難しい知財用語を容易な言葉に言い換える必要がある。また法律上の言葉や条文番号を敬遠する傾向があるので、多用しないようにするようにしたい。難しい言葉を容易な言葉に言い換えるには、その言葉を心底理解していないと言い換えられない。事前にどう表現するかを考えておきたい。

ここで、知財・法務・技術等の分野で専門的な仕事をしている人にとって、「難しい言葉を、容易な言葉で表現すると正確性に欠けてしまう」という思いが、大きなハードルとなる。例えば次の「特許性」に関する説明1)~3)について、皆さんはどんな感想を持つだろうか?


1)特許法29条、29条の2、39条等に規定されている、特許権を取得するための要件です
2)新規性や進歩性のことです
3)特許を取るための条件です


皆さんが、知財部員等の「知財の専門家」であれば、1)が妥当、2)でもまあ許せる、でも3)は正しくない、と思い、営業部員等の「それ以外の人」なら、3)以外は良くわからない、と思うのではないだろうか?

つまり、社内の知財教育で、知財部員が営業部員に対して、「特許性とは、特許法29条、29条の2、39条等に規定されている、特許権を取得するための要件です」と説明しても理解されず、プレゼンテーションの目的を達成できないことになる。いくら話し手が正しいと思うことでも聴衆が理解できなければ意味がない。もちろん、特許法上の手続きについて学んでいる人に説明するなら1)とすべきだろうが、それ以外は目的や聴衆のレベルに合わせて言い換えることが大切である。


<何を、どう伝えるか>

聴衆に何を伝え、その結果どうして欲しいのか、つまりプレゼンテーションの目的が何かを話し手自身がはっきりと認識することが、伝わるプレゼンテーションのために必須である。そのうえで、その目的を達成するために、どう伝えるのかを考えることになる。

ここからは、具体例を挙げながら解説していきたい。次の様な前提で急遽プレゼンテーションをする必要が出てきたとしよう。


<前提>

あなたは日本企業ABC株式会社の知財部員である。
ABC社は、米国のX社から特許権Pについて日本での独占的ライセンスを受けて製品Qを販売している。先月、競合であるY社が特許権Pを侵害する製品を国内で販売しているのを見つけた。
X社にこの事実を知らせたところ、それはけしからん、特許権侵害訴訟を提起するので、協力して欲しいとのこと。
そこであなたはX社に、「日本では、特許権侵害訴訟を起こすとディフェンスとして特許無効審判を請求されることが多い」と伝えると、A社から「日本で訴訟をするのは初めてだ。来週弊社の知財法務本部長、知財部担当者、海外事業部長が日本に出張する。御社を訪問するので、日本の特許無効審判について説明して欲しい。短い旅程の中で法律事務所とも打合せをするのでプレゼンは20分程度でお願いしたい。」との返事が来た。


<プレゼンの準備>

1) Who is the audience? (聴衆は誰か)
米国企業の知財法務本部長、知財部担当者は、米国の弁護士資格または特許弁護士資格を有していると考えてよい。海外事業部長は、グローバルビジネスのセンスを有していると思われるが、知財レベルは不明である。そして、3人はいずれも米国人である。
日本で訴訟をするのは初めてということから、特許弁護士であっても日本の特許制度については素人だと思って準備すべきである。筆者の経験から、日本の知財部員が米国特許制度を知っているほど、彼らは日本の制度を知らない。

2) What is your message? (伝えたいことは何か)
来日の目的から考えると、単に日本の特許制度を勉強しに来るわけではない。特許権侵害訴訟を提起するのだから、そのディフェンスである無効審判は、訴訟提起上のリスクになりうる。よって、そのリスクにどのように対応すればよいか、事前に準備すべきことがあるか、を知りたいだろう。最終的に訴訟を提起するかどうかの判断材料の一部になるはずだ。あなたは、彼らの判断材料として、特許無効審判とは何か、を伝える必要がある。

3) Order of Contents (話の順番=構成)
以上を踏まえると、プレゼンテーションには次の様な項目を入れる必要がある。


・特許無効審判制度とは何か
・どのような場合に、特許無効審判を利用するか
・特許無効審判制度の概要
・無効審判請求された場合の特許権者の取りうるアクション


4) プレゼンテーション例の作成
さて、実際にスライドを作成してみよう。
英語のプレゼンテーションに慣れていない人には、スライドだけでなく、スクリプト(セリフ)も準備して欲しい。今回は、Main bodyのスライドを準備するところまでに留め、次回、知財英語プレゼンテーション2 Annexとしてスクリプトも含めたプレゼンテーション全体を掲載するので、お手元でスクリプト作成にチャレンジしてみていただければと思う。

Starting presentation は、前回の例をほぼそのまま使えるであろう。


スライド1:Agenda

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まずは、Agendaである。
Firstly, I’ll talk about what is a Patent Invalidation Trial, second Overview of the trial, and third Counter actions ….. というセンテンスを使って、全体の内容の構成と話の順番をはっきりと伝える。


スライド2:What is a Patent Invalidation Trial

2016/11/ipen2.png

続いて、項目1に移る。
Let’s start with What is a Patent Invalidation Trial.
または
I’m going to tell you about What is a Patent Invalidation Trial.
といって説明を始めるとよい。

スライドが少しbusyな感もあるが、専門的内容について、プレゼン初心者が話す場合は、多少busyになっても文章でしっかり説明があるとよい。万一、聴き取りにくい場合に、聴衆がスライドを読んで理解してくれるからである。しかし、かといって話し手がスライドの文字を読みながらプレゼンしてはいけない。スライドは、聴衆に見せるものであって、話し手が読むものではない。目線はできるだけ聴衆へ向けよう。
中ほどの「b/w」は、betweenの略である。英語プレゼンテーションのスライドでは、文書を短くしたいときに、この様な略号が使われることがある。この他、w/ : with, w/o: without, TBD: to be decided(未定)、cont.: continued(続き)等も見かける。


スライド3:Overview of a Patent Invalidation Trial

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次に、項目2である。
Next, I will move on to Overview of a Patent Invalidation Trial. で説明を始める。
Overview of Patent Invalidation Trialは、3枚のスライドに分けて(1)~(7)の項目に細分化されているので、This section is divided into seven items. とすると聞き手が安心する。
(4)の、JPY 49,500/case の読み方、説明の仕方は事前に決めて練習をしておくと、本番で楽である。特に、数字の読みは慣れないと、そこで止まってしまう。
ちなみに、49,500は、forty nine thousands and five hundreds である。


スライド4:Cont. (前のスライドの続き)

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前のスライドからの続きである。
Next is the fifth item of Overview of a Patent Invalidation Trial. と言って説明を始める。
このスライドは、どのような場合に特許が無効になるか、特許法123条1項に記載された無効理由の説明である。特許法の条文に基づいた説明は必要だが、条文そのものを紹介してもわかりにくい。また、今回のプレゼンの目的は、制度の勉強ではないので、条文に列挙された全ての無効理由を取り上げる必要もないと考える。特にメジャーな、novelty, inventive step, 及びwritten description requirementsについて強調して説明すれば十分であろう。例えば、
The most important grounds here are novelty, inventive step and written description requirements. の様になる。


スライド5:Cont. (前のスライドの続き)

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こちらも前のスライドの続きなので、The next items here are Appeal against the decision and Effect of trial decision. と始めればよい。さらに口頭で、「審決について不満のある当事者は、いずれも知財高裁に控訴でき、さらに最高裁に上告できる」という説明を加えるとよいだろう。


スライド6:Counter Actions by a Patentee

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次は、3つ目の項目、特許権者が取りうる対応としてのCorrection of Claim(訂正)に関する説明である。
Now, I’ll show you what we can do when the invalidation trial is filed. に続けて説明する。
ここでは、特許無効審判を請求された特許権者は、特許無効審決を避けるために訂正請求をすることができることを説明すると同時に、どんな訂正でもOKなのではなく、特許法で定められた一定の訂正要件があり、必ずしも訂正請求で無効を逃れられるわけではないことを伝えておこう。さらに、無効審判が請求される前に、訂正審判を請求して、無効にならないように特許権を強化しておく方法もあることを付け加えておこう。


スライド7:Summary

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いよいよ最後のスライド、Summaryである。前回のClosingの部分でも説明したように、再度プレゼンテーションで説明した全てのエッセンスをまとめ、聴衆の目的に合致するようなSummaryに仕上げるとインパクトが上がる。


5) スクリプトの作成
プレゼンテーションの時間は20分しかないので、Q&Aとして5分を加味し、15分で説明できるスクリプトを作成する。

次回は、Starting Presentation からClosingまでのスクリプト例を紹介してプレゼンテーションを仕上げる。





編集/八島心平(BIZLAW)





2016年11月11日、18日、25日の3日間にわたり、本連載著者、田中康子先生による「知財英語コミュニケーション」ワークショップが開催されます。詳しくは下記バナー先よりご参照ください。


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田中 康子

Profile

田中 康子エスキューブ(株)代表取締役・エスキューブ国際特許事務所所長
知財経営コンサルタント・弁理士]

1990年千葉大学理学部卒業。1990年より 帝人株式会社 知的財産部。2005年より ファイザー株式会社 知的財産部、2006年住友スリーエム株式会社 知的財産部。 2013年4月 エスキューブ株式会社を設立。2013年8月エスキューブ国際特許事務所を設立。現在日本弁理士会 知財経営コンサルティング委員会 委員長。




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