MENU
BIZLAW BIZLAW
Powerd by LexisNexis®
BIZLAW
BIZLAW Powerd by LexisNexis®

RSS
Google+
Twitter
Facebook
HOME

専門性の殻に閉じこもらない

Unilever CLO Ritva Sotamaa

_NM_3825

「自分の頭で考える勇気を」 第2回

500人規模の法務スタッフが実に50か国でビジネスを支える、ユニリーバ社。その法務部門トップに立つRitva氏は、どのようなキャリアビジョンを持ってユニリーバ社に入ったのか。彼女ならではのユニークなポリシーを語ってもらった。



関連記事
 「自分の頭で考える勇気を」 第1回 自国の問題をグローバルな文脈に置き換える




「次のこと」を考えすぎない

――次に、少し話題を変えて、ご自身のキャリアについてお聞きします。ユニリーバ以外にも、GEやシーメンスなど、さまざまなグローバル企業の法務部門をご経験されたRitvaさんが、初めに法務の道に進まれた理由は何だったのでしょうか?

Ritva ビジネスの環境に身をおいて、ビジネスを作り出すことに貢献したい、また、自分で誇りに思えるような商品開発の手助けや働き方がしたいと思ったからです。
 私は20年以上、ヘルスケア事業に関係する企業に勤務し、その法務部門の一員として多くの経験を積んできました。現在は、数多くの顧客向け優良商品を産み出しているユニリーバで、同じように誇りに思える経験を積んでいます。

 加えて、私は、ビジネスというものは、継続的に学び続けることが可能な、とてもチャレンジングな環境を提供してくれるものだと思っています。
 そういう意味で、私はこれまでとても幸運だったと思います。なぜなら、常に多くのことを学び続けることのできる立場に身を置けたからです。GE時代にはアメリカ、シーメンス時代はドイツ、そして現在のユニリーバではイギリスと、さまざまな国の法務部門で働くチャンスに恵まれました。フィンランド生まれの私にとって、世界のいろいろな国の人たちの考え方や異なる企業の文化に触れながらビジネスを経験できたことは、とても刺激的でした。

――法務部門のトップから、さらにボードメンバーとしてのキャリアというのは、昔からある程度ご自分の中で思い描いていたストーリーだったのでしょうか?

Ritva そうですね……。まず、聞いてほしいのですが、私にはあるポリシーがあります。それは「あまり将来を考えすぎない」ということ。私はいつも、そのときの自分にとって可能なことを、よりよく行うように心掛けてきました。もし私が現職にいながら次の職場のことを考えていたとしたら、それは幸せとは言えないし、よい働き方には結びつかないでしょう。だから私は、「次に何がやって来るのか」ということに対して、あまり気に病まないようにしています。実際のところ、「次へのチャンス」というものは、目の前の仕事を全力で楽しみながらこなしている人が進んでいく道の上にやって来るものだと思っています。それは、私の仕事やキャリアに対する哲学でもあります。

――日本では、法務部門のトップが、企業のボードメンバーに入る例は少なく、ましてそれが女性であることは非常に稀です。これまでさまざまなグローバル企業を見てきた中で、現在のRitvaさんの立場というのは、もはや普通だと思いますか。それとも、仕事を行ううえで、女性であることが理由で大変だと思うことはありますか?

Ritva そのご質問に答えるとするならば……、当社の法務部門に所属する女性がどれくらいの数かということをお話ししたほうがよいですね。ユニリーバの法務部門における上位20人(※)のインハウスローヤーのうち、約半数は女性です。また、法務部門のマネージャーの中で、女性の比率は現在50%を超えています。ですから、ユニリーバにおいて、私は自分が女性であることで不利益を感じたことは一度もありません。

※法務部門におけるリーダーシップチームメンバーの役割を果たすインハウスローヤーの数

 今日、企業組織のダイバーシティは全世界的なトピックです。日本でも盛んに議論されていますよね。ユニリーバでは、性(ジェンダー)に関する多様性だけでなく、文化的な多様性も重視しています。そして、先ほど申し上げたトップ20のインハウスローヤーの国籍も12か国にのぼります。性別はもとより、さまざまな国籍、文化を持った人たちで組織が構成されていることを、私自身、よいことだと考えていますし、ユニリーバの企業哲学としてもダイバーシティを重視しています。

――RitvaさんがユニリーバのCLO(最高法務責任者)として、ボードメンバーでとして業務にあたる中で、今一番エキサイティングだと感じられるお仕事はどのようなものですか?

Ritva それは、たくさんありますよ(笑)。その中でも、電子商取引などデジタルエコノミーの進展に伴って世界全体が小さくなり、どこからでも接続可能となって、日々のビジネスのスピードが加速度的に高まっていることは、とてもエキサイティングだと感じます。特に若い法務担当者にとって、ITに関するスキルや経験値はどんどん重要になっていますね。

 また、既にお話したように、多くの国が関わるようになった今日のグローバルビジネスにおいて、法律を適切に使うための法務部門の役割は非常に重要になっています。ユニリーバに限らず他の企業でも、さまざまなレギュレーションに対応しながら、ビジネス上のリスクをうまく取りながらビジネスを成長させていくことの重要性が増していますので、若い法務担当者にとって、その役目を担うチャンスがあることは、とてもエキサイティングだと思いますよ。

―― 一般的な日本企業では、新人の法務担当者はまず日本の法律知識をしっかり身につけることが大事だとされています。そして30代前半にさしかかると、今度は海外支社に駐在させるなどして経験を積ませるといったトレンドもあります。これからの法務担当者にとって、多くの国で実際に仕事の経験を積むことは必須の条件だと思いますか?

Ritva 確かに、さまざまな種類のビジネスを支えるうえで、多くの国を訪れ、そこでの問題を知っておくことは大切です。けれども通信の発達した今日では、世界はより仮想化していますよね。現実に別の国に移動しなくても、同様の経験を得ることはできるのではないでしょうか。
 ユニリーバの法務担当者には、勤務する国・地域をベースとしたローカル色の濃い仕事と、国際的な枠組みの中での専門性を要する仕事の両方があります。グローバルな働き方を志向している場合において、本社あるいは特定の国で働く必要があるということにこだわったりする必要はありません。一つの国にいながら、ロイヤーのリーダーシップを発揮して他の国に影響を及ぼすこともきます。「実際にその国を訪れて、そこで働き、学ぶ」という方法は有効ですが、それだけが唯一の方法ではありません。

――最後に、Ritvaさんが思う、理想的な法務人材像はどのような人ですか? また、日本で働いている若い法務担当者へのメッセージをお願いします。

Ritva ビジネスでは、それに関わる複数部署のメンバーが一丸となって問題点を探り、リスクを明らかにして、対応方法をひとつひとつ考える必要があります。その中で法務担当者も決して受け身でいてはいけません。私が法務部門のメンバーにいつも求めるのは、自分自身がユニリーバのビジネスパートナーとして、事業を成功に導こうとするビジョンを持ち、チームワークを強く意識しながら案件を遂行していく忍耐力、そして誠実さです。

 ただ、私がチームのスタッフによく言うことでもあるのですが、弁護士資格者を含む法務担当者は、性質上、どうしても正しい答えにこだわりすぎるきらいがあります。そのため、ビジネス上の判断に対しても慎重すぎる場面が見られます。しかしビジネスには、どんなときも絶対に正しい答えなどというものはありませんから、限られた条件の中で常に自分の頭を使って考え、ときにはリスクを取るという判断もしなければなりません。さらに、法務担当者は、事業部門とは違った側面からビジネスを冷静に見つめることも求められます。

 私がユニリーバの法務担当者に求めること、そして日本の若い法務担当者たちに伝えたいことは、とてもシンプル。それは「本に頼らず、自分の頭で考える勇気を持ってください」ということ。専門性の殻に閉じこもらないことです。
 それがリーガルパーソンとしてのスキル、才能を磨く一番の道だと思いますよ。

――大変ありがとうございました。


取材/漆崎貴之(BIZLAW)
通訳/加藤 彰
編集/八島心平(BIZLAW)
写真/稲垣正倫(BIZLAW)



この連載記事を読む
 自分の頭で考える勇気を

Ritva Sotamaa

Profile

Ritva Sotamaa [Unilever CLO]

Unilever Chief Legal Officer(CLO)。フィンランド生まれ。シーメンスAG、GEヘルスケア社などのグローバル企業で法務部門のトップを勤める。2013年、ユニリーバで初めて法務部門トップ(CLO)としてボードメンバーに名を連ねた。




ページトップ