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第一審から憲法の議論を

学習院大学 名誉教授 戸松 秀典

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憲法と法秩序 第2回

憲法の意味内容は、法の実践過程と歴史的な定義の積み重ねの中で作られていく。そのため、訴訟の研究は大切だと戸松先生は言う。第2回は、企業にも関係する憲法訴訟についてお聞きした。



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――訴訟といえば、戸松先生は、これまでにもさまざまな意見書を書かれていらっしゃると思います。意見書を書かれる中で軸にされた論点や、企業訴訟についてお感じになることをお聞かせください。

戸松 では、私が書いた意見書について、幾つかご紹介します。
 一つは東京都銀行条例事件ですね。銀行側の依頼で意見書を書きました。
 この事件は、2001年4月1日施行の東京都条例の、外形標準課税(所得にかかわらず、企業規模に応じて課税される制度「東京都における銀行業等に対する事業税の課税標準等の特例に関する条例(平成12年東京都条例145号)」)に関する事件です。有名な事件ですから、内容についてはご存じの方も多いと思いますので細かなことは割愛します(東京高裁(2民)平成15年1月30日判決、判時1814号44頁参照)。
 この事件は、銀行が協力して東京都を訴えた事件です。第一審から憲法についても意見を入れて議論しました。具体的には憲法第14条、31条、94条などの関係や、地方税法を通じて憲法の理念をどこまで投じなければならないかを検討しました。結論としては、2003年に和解が成立していますが、第一審、第二審とも銀行が勝訴しており、地方税法違反が議論されていましたが、私は憲法論にもつながっていたと思っています。

 二つめは、ブルドックソース事件です。ブルドックソース社側の依頼で意見書を書きました。
 この事件は、株式公開買付(TOB)によって、乗っ取りの危機にあったブルドックソース社が、株主総会で乗っ取りを防止する決議を行ったところ、相手側は、決議は会社法109条1項の株式平等の原則に違反しており、平等原則がかかわるため、憲法違反を主張したという事例です(最高裁(二小)平成19年8月29日決定、民集61巻5号2215頁)。

 このほかにも幾つかの意見書を書いていますが、私は、意見書を書く中で、一貫して憲法を直接議論するのは乱暴であり、憲法をもとにした法秩序が現実としてどうなっているかを整理して示すことが大切であると説明しています。
 私は、「憲法の価値がなんたるかを意見することが憲法学者の役割である」ということは研究過程でとうに捨てようと思いました。私は、憲法の実態が今どうなっているか。そこをしっかり整理して、「憲法秩序だけでなく、今の法秩序全体がこうあります」ということを整理して示す。そうすると、どこが問題で、解決すべき点は何かがみえてくる。そういう提案ができるところが、研究者の役割だと心がけてきました。意見書も、そのスタンスで記述しています。

――意見書に関連して、訴訟対応を行う企業法務部の方や実務家の方にアドバイスいただけませんか。

戸松 日本では、民事上の争いであっても、憲法判断に頼ることが認められています。
 民事訴訟法第312条1項にもありますが、裁判結果が憲法に違反するときは上告することができることになっています。つまり、私人間(会社vs会社も含む)の争いであっても、憲法判断に頼ることができるようになっているのです。
 ですから、ビジネス界においては、重要な問題で訴訟になりそうなときは、第一審の段階から憲法に関する議論を入れておくことが大事だと思います。なぜなら、上告が想定されるような事案では、憲法の議論は上告理由の検討段階になってはじめて出てくる存在ではないはずですから。

 きっと最高裁でも、上告理由になってはじめて憲法にふれられている事案と、第一審の段階から憲法が議論されている事案では印象がまったく違うはずで、第一審から憲法の議論が入っているものに対しては向き合い方がおのずと違うのではないでしょうか。
 アドバイスというほどのことではありませんが、企業法務部の方、顧問弁護士の方は、第一審段階から憲法に関する論点を検討しておくことが重要であると思います。

第3回につづく


編集/木村寛明(BIZLAW)
写真/古田悠太




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 憲法と法秩序

戸松 秀典

Profile

戸松 秀典 [学習院大学 名誉教授]

憲法学者。学習院大学名誉教授。
1976年、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了(法学博士)。新・旧司法試験委員、最高裁判所一般規則制定諮問委員会委員、下級裁判所裁判官指名諮問委員会委員、法制審議会委員等を歴任。著書に『プレップ憲法(第3版)』(弘文堂、2007年)、『憲法訴訟(第2版)』(有斐閣、2008年)、『論点体系 判例憲法1~3 ~裁判に憲法を活かすために~』(共編著)(第一法規、2013年)、『憲法』(弘文堂、2015年)など多数。




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