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社内に法務リピーターを
生み出す

ソニー株式会社 法務・コンプライアンス部
法務グループ シニア・リーガル・エキスパート 村井 武

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法務が描き、作り、決めていくこと interview by CORK 第1回


nakaraisann

クリエイターのエージェント会社コルク法務部の半井さんが興味本位で企業・人物訪問するコーナー「Interview by CORK」第6回は、その製品が世界で愛されるソニー株式会社の法務部シニア・リーガル・エキスパート、村井武さんにお話を伺いました。



「何とかなりませんか」を
相談しあえる関係を築く

コルク半井:「Interview by CORK」を読んでくださっているそうで、とても嬉しいのですが、どこを面白いと思ってくださっているのか、ちょっと不思議でもあります。

村井:ほぼ日の篠田さんの回で知ってから、読んでいますよ。カヤックの回はタイトルから面白かったですね。あまり法務の話が出てこない連載ですね(笑)。

コルク半井:今日はぜひ「ザ・法務」のお話をお聞かせください。組織や仕組み作りも続けていますが、法務の仕事も増えているので、改めて「法務のプロ」の話を聞きたいモードなのです。ソニーの法務は今何名いらっしゃるのですか?

村井:法務・コンプライアンス部のメンバーは50名ほど。その中で実際に今日の大きなテーマとして設定して頂いた契約やディールを行っているのは、もう少し少ない人数です。子会社にはそれぞれ独自の法務機能を持つところもありますが、グループ全体の本社として、全世界の子会社などとのネットワークを構築する機能を持ちつつ、ソニー株式会社とエレクロトニクス事業の一定分野について、今の人数で見ています。 限られたリソースをどう分配しどこにフォーカスするかという問題は悩ましいですね。

コルク半井:「来ちゃダメ」と言いたくても、いつどこの企業が訴訟を起こしてくるか分からない。しかも全世界からですよね。

村井:「絶対にこの国でしかビジネスしない」という方針の企業は、他の国の企業や当局から訴えられたり調査が入ったりしても、極論を言ってしまえば無視してもいい。しかし世界で事業を展開しているソニーは、そうはいかない。ビジネスが成立しているのは世界に展開しているおかげではありますが、その分のリスクは高くなります。

コルク半井:確かに、ビジネスの規模を拡大するとリスクも比例して大きくなりますね。文化や法制度の違う国ですから、比例どころでなく倍増かもしれない。私だったら、現場の担当者に、「自分たちがそのビジネスを行いたいのであれば、法的な問題も自分たちの問題だと意識しろ、法務任せにするな」と言いたくなると思いますが、現場担当者とのコミュニケーションや連携で苦労されたことなどはないですか?

村井:法務に相談する文化は、ソニー社内に育っていると思います。それは、創業者の一人である盛田昭夫が法務をうまく使ってくれていたおかげのようです。盛田は、法務が経営に影響を持つことに深い理解があり、また持つべきだと考えていたようですね。1986年4月1日発行の「ジュリスト」に掲載された「経営者のみた法務戦略」という文章が印象深いです。

コルク半井:初めて聞きました。それは素晴らしいですね。

村井:グループ全体で13万人以上の社員がいますから、法的な問題に対するセンスや価値観は本当にさまざまです。ただ、これだけの規模でありながら、「これは法務に聞かなくていい?」と気づく人間がいて、「法務は何て言っている?」と気にしてくれる人がいます。

 とはいえ、社員全員にこの気づきを得てもらうのは継続的なチャレンジです、本当に。日々のやり取りやその結果で、各担当者や経営陣に「法務はビジネスをサポートするためにいる」と分かってもらうしかないかなと思います。

コルク半井:私も、法務はサポーターであることをアウトプットで示すことで、社内の「法務リピーター」を生むことにつながるのではないかと思っています。

村井:そうです、そうです。事業部の担当者からの信頼を勝ち取って、お互いに困ったときに、「何とかなりませんか」と相談できる関係を築いていくことが、法務メンバー全員のチャレンジですね。


対面から見える
文字以外の情報の重さ

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コルク半井:現場の言うことを聞きすぎると法務機能は果たせないけれども、できるだけ現場のビジネスを理解したいですね。でもソニーではどんどん新しい技術の開発が進み、商品、ビジネスも広がっているでしょう。把握するだけでも大変そうですが。

村井:キャッチアップするために、事業部の会議に出してもらったり、新商品をプロトタイプ段階で見せてもらったりしています。あとは「なんかやってるって聞きましたけど~」と足を運ぶ(笑)。それができるように、また新しい情報が自然と入ってくるように、レディネス、センシティビティを高めるようにしています。

コルク半井:なるほど。事業部との物理的な距離感はどうでしょう?

村井:それはすごく大事です。この品川駅前の本社にはさまざまな事業部の開発、企画、アライアンスなどの部門も入っているので、すぐに会いに行けるところはいいですね。でも拠点はここだけではないので、たとえば神奈川県厚木のテクノロジーセンターの仕事をサポートしている法務担当者は、シャトルバスで半日がかりで会いに行きます。現場担当者の顔が見えること、直接会って話すことは大事です。

コルク半井:会いに行ける法務、ですね。

村井:メールはとても便利ですが、どうしても会って話す場合よりも得られる情報量が落ちます。書いている人の表情までは分からない。でも会いに行けば、テキスト以外の情報も得られる。メールから読み取ろうとする想像力はもちろん大切ですよ。でも、イメージで物事を考えて、言語化しない人もいて、そんな人とのイメージの共有は、メールや電話を使ったシリアルなコミュニケーションでは限界があります。

 たとえばこの応接室にも、ホワイトボードがありますよね。対面で会話して、当事者の関係や、相互のリソースのやり取りを可視化すればイメージは共有できる。だから私はいつもスケッチブックを持ち歩いてるんですよ、ほら。

コルク半井:図に描くことは、人の話を理解したり整理したりする際に有効ですよね。私もよく「ちょっと聞いてほしいんだけど」と声をかけられたら、まず紙とペンを探します。相手の顔を知っているかどうか、で大きくビジネスの進めやすさは変わりますね。

村井:事業部の担当者同士が合意してきた内容にそぐわない契約書は、相手方に提示したくない。そのためには当然、契約書という権利義務の平面に落とし込むため、法務もビジネスの枠組みを理解しておく必要があります。
 そうすると、蓄積されてきた過去の事例や実績から、法務から事業部に対して「こういうビジネスや権利義務関係にしたらどうか」という提案ができる場合もある。
 「これは譲れない」という部分、つまり経済的な動機の部分が事業部と法務の間で共有できていれば、契約書をベースにした交渉に入ったあとも、どこまで譲歩できるか、という判断も速く行うことができます。そのためには密なコミュニケーションや、日々の関係構築は欠かせませんね。

第2回につづく


聞き手/半井志央(コルク)
イラスト/羽賀翔一(コルク・http://hagashoichi.cork.mu/
写真/市川貴浩



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 法務が描き、作り、決めていくこと


Interviewer

半井 志央 [株式会社コルク 法務担当]

京都大学法学部卒業、ロンドンへの留学経験あり。
国内のメーカー法務を経て、コルクに入社し、法務・編集・経理などを担当。
編集としては、紙と電子書籍の総合書店hontoのフリーマガジンhonto+に携わる。


コルクホームページFacebooktwitter(@shionakarai)

村井 武

Profile

村井 武 [ソニー株式会社 法務・コンプライアンス部
法務グループ シニア・リーガル・エキスパート]


大学法学部卒業後、外資系コンピュータメーカーにて契約や企業倫理規定を担当。
アメリカ本社と日本のお客様の間に挟まり悩むうちに権利義務とビジネスの関係の面白さに目覚め、より自由なビジネスデザインを求めてソニーの法務へ。
たまに大学で教えたりしています。




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