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短時間で信頼関係を築き、
伴走者となる

NPO法人シニアライフ情報センター代表理事・事務局長 池田 敏史子

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高齢者の最期の住み替えを考える ~あなたは誰とどこで暮らしますか~ 第2回

NPO法人シニアライフ情報センター(注1)は、高齢者の「在宅からの住み替え」をお手伝いしています。1992年の発足以来、高齢者の安心居住を目指して、消費者の立場・視点から、安心して老後の生活を託せる公・民の高齢者施設の情報を幅広く集めています。集めた情報を市民へ提供し、セミナー・見学会を通して見る目を養う場をつくるとともに、面談によるきめ細かな相談も行っています。
高齢者の住み替えの相談機関としては、パイオニアとして知られているシニアライフ情報センター。今回は、当センター代表理事・事務局長である池田敏史子さんのインタビュー2回目をお届けします。発足から25年間、一貫して市民目線を大事にされてきた池田さん。高齢者の住まいに関心を持ってから現在に至るまで、池田さんがどのような思いで活動に打ち込んでこられたのかをお聴きします。



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  高齢者の最期の住み替えを考える 第1回 市民目線で、より良い選択肢を一緒に探す



いかに短時間で、
相談者と信頼関係を築けるか

――相談を受ける際に、心がけておられることは何ですか。

池田 相談者の困り事全てをお話ししていただくことで、私たちはその方に寄り添うことができます。それはかなりプライバシーに入り込むことなので、一番大事にしているのは、短時間で信頼関係を築けるようにすることです。

 家族関係・健康状態・経済状況などは、普通なら入り込めない領域です。電話ではなく対面で、さらに相手がこちらを信用して心を開いてくださって初めて、「この方はこういうことで困っている」と分かり、その先まで踏み込んで一緒に考えることができます。逆に、「情報だけほしい」とおっしゃる方は、一覧表を送って終わってしまいます。

 私は自分の役割を「伴走者」だと思っています。その役割を担うのは結構大変で、以前は一日二件ほど相談を受けていましたが、夕方にはもう体力を吸い取られたようになっていました。


――他人の人生に入っていくことですからね。

池田 入っていって、どこまで責任を持てるかということもありますし。大変なところに踏み込んでしまった、というのが正直なところです。


――最良の答えを一緒に探すためには、相談者と同じ景色を見ることが大事なのですね。

池田 過去に数件ですけど、「そんなことまで話さないといけないのですか」と言われたこともありました。気持ちを閉ざされている方に対しては、これ以上聴いてはいけないと思うので、限られた領域の中でご相談にあたるようにしています。ただ、大半の方は全部を話してくださるので、ありがたいことです。

 「伴走者」は、相談者にとってより良い選択は何か、一緒に考えさせてもらう立場です。何にお困りなのかを知るところから始まり、多方面からお話しいただいて、私たちが25年間で得てきた知識を土台に、より良い選択肢をつなげられるのだと思います。


しがらみを作らず
相談者に寄り添ってきた時間が、誇り

池田 私たちはこの25年間で1000件近くの施設等を見てきましたが、それをはるかに超える数があります。とてもじゃないけど、「全部知っています」とは言えません。ある程度絞り込むことはできるかもしれないけど、基本的にはこれからのより良い暮らしを一緒に考える。その答えは住み替えとは限りません。

 施設から紹介料などを受け取っていたら、住み替えを勧める気持ちが出てくるかもしれない。それは相談者に真の意味で寄り添っていることにならないので、すごく嫌なのです。そういうことに振り回されず、相談者のこれからの時間をどうしたらいいか、一緒に考えさせてもらう立場にいたい。初めからずっと、私はそう思っています。


――紹介料を受け取っていたら、住み替えに導こうという気持ちになるかもしれないですね。

池田 そういうことに判断が影響されない、と必ずしも言い切れないので。しがらみはとにかくつくらない、というのが私がずっと掲げてきた活動方針ですね。私たちが最適な答えを出して、最適な形で相談者に寄り添えているかというのは、明確には言えません。ただ、そうありたいと思ってこれまで活動してきました。その時間こそが、私の誇りです。


――最良の答えを、相談者と伴走して一緒に探すことは、素晴らしい活動ですね。

池田 誰しも、残された時間は段々と限られてきます。いつまで生きるかは誰にも分からなくて、それぞれ異なります。「残された時間を、大事に良く使いたい」と思うのは皆同じでしょう。基本になるのは、一人一人にとって、より良い時間を過ごせる場所を探すことです。


住まいを選ぶ時は、
物事を天秤にかけて判断する

――これから自分の親が高齢になる、あるいは自身が高齢になっていく方々にとって、高齢者の住まいを探すことは現実になってきます。その時に気をつけるべきポイントを教えてください。

池田 私がずっと言ってきたのは、まず長所・短所を理解することです。どんな住まいにも必ず長所・短所があるので、そこをきちんと踏まえることが大事です。

 私がよく言うのは、「捨てるものがあれば、得るものもある」ということです。二つのことを天秤にかけた時に、どちらが重いかを量っていくべきだと思っています。もしマイナス要素が大きい場合は、その判断はやめた方がいいということになります。


――セミナー等で「住み替えにあたっての確認事項」(注2)を示されていますが、具体的で分かりやすいですね。

池田 80歳を過ぎる方々にとっては、生活支援や介護、あるいは最期まで看てもらえるかどうかが一番大事です。そこを心配されているので、「住み替える目的は何?そこでどんなサービスを望むのか?どう暮らしたいのか?」と聴くようにしています。


――こちらに相談するには、どういう手段でコンタクトをとったらいいですか。

池田 電話でも入会していただけますが、電話相談だと限界があります。まず会員になっていただいて、ご本人でなくても誰か直接来ていただいて、お話をお聴きするようにしています。


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――インターネットは、施設を検索して、その長所・短所を見て、自分で判断する人たちにとっては、有効なメディアだと思います。一方で、直接会って話を聴くことで、相談者が気づかないことや広い情報の中で答えを見つけることができる、というのがよく分かりました。

池田 私も試されているのだけど、直接お話ししていくことで、この人はどういう人なのかを知ることができるし、人となりが分からないと、例えば「自分はこうしたい」と思っておられるけど、それだとうまくいかないと判断するケースもあります。希望と違うけど、やんわりと方向チェンジをしてもらえるように話をする。人柄までは、電話では分かりませんから。


力になってくれる場所が、
全国に必要な時代

――これから取り組もうと考えておられる課題は何ですか。

池田 現在、情報公開はもう十分できるようになったので、これから大事になってくるのは評価の問題です。これだけ多くの種類の施設が出てきて、それらの長所・短所をどう評価していくのか。東京都が評価を実施しているのは福祉施設で、高齢者住宅市場の中心である民間のサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどは、評価対象になっていません。こうした住まいを選択するにあたり、どのように評価していくのかが、今後の課題です。


――シニアライフ情報センターの活動は、他で代わることはできないですね。

池田 私たちのような活動を担うところが他に存在していないとすると、それでは困ります。私は常々、「駆け込めば力になってもらえる場所を、全国に作らないといけない」と強く訴えています。

 その役割となるのが地域包括センターですが、人手や専門相談員はいません。それには「高齢者の住まい」相談の担い手養成が必要だと思っています。


――誰しもできることではないですね。

池田 「簡単に出来そう」と人から言われると、「そうかなぁ」と思ってしまうのも事実です(笑)

 住まいの相談は、生活まるごとの相談です。私たちだけでは限界があります。現在法律家などの専門職の方々が入って、ワンストップで対応できる体制作りを進めています。全国各地にできることを願っています。 私は四半世紀をこの活動に賭けてきて、ある意味で自分の命も賭けました。私たちの活動が、社会に一石を投じられたらいいなと思っています。


文/冨岡由佳子
取材・撮影/木村寛明(BIZLAW)



※注

(注1)NPO法人シニアライフ情報センター
【活動の特徴】1.会員制による活動で、市民目線の良質な施設・サービスの情報提供を基本スタンスとする。2.様々な高齢者の住まいの情報を収集する(全国の有料老人ホーム、ケアハウス、高齢者専用賃貸住宅、高齢者向け優良賃貸住宅、シニア住宅など)。3.セミナー・見学会を行い、市民の学び・行動・決断を手伝う。4.高齢者住宅や施設への住み替えを考える市民へ、面談による個別相談を行う。(URL http://www.senior-life.org/

(注2)「住み替えにあたっての確認事項」
サービス内容(誰が・費用は)、生活環境(広さ・設備・立地)、一時的に体調を崩した時の対応、重度になっても住み続けられるのか、退去の要件、緊急時の対応、医療との連携、看取りはするのか(看取り介護予算を取っているか)。
 【住み替え先を選ぶ際のポイント】自分らしい生活ができるところを選ぶ、どんな選択にも長所・短所があることを知る、元気なうちに地域の相談機関・サービス・医療機関などを知る、地域の施設見学を始める、事業者は信用できるところを選ぶ、費用をきちんと確認する、不明なことは専門家に相談する、など。




 NPO法人シニアライフ情報センター主催 外岡潤先生のセミナーが開催されます!

 タイトル:「知っておきたい!高齢者が巻き込まれやすいトラブルと対処法」
       ~事例で学ぶ老人ホーム(住まい)選び~
 日  時:2016年12月17日(土)/13:30受付開始14:00開演(16:00終了予定)

 詳しくは、NPO法人シニアライフ情報センターのホームページをご確認ください。
 (http://www.senior-life.org/seminar161217.html



池田 敏史子

Profile

池田 敏史子 [NPO法人シニアライフ情報センター代表理事・事務局長]

1945年生まれ。島根県出身。子育てをする一方、安全な食べ物・アレルギー問題をフリーの立場で取材。平成4年シニアライフ情報センターを設立し、以来事務局長を務める。平成10年より厚生労働省、国土交通省の各種委員会委員として参加。著書は、『終の住まいの探し方』岩波ブックレット(平成14年岩波書店)他多数。




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