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市民目線で、
より良い選択肢を一緒に探す

NPO法人シニアライフ情報センター代表理事・事務局長 池田 敏史子

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高齢者の最期の住み替えを考える~あなたは誰とどこで暮らしますか~ 第1回

NPO法人シニアライフ情報センター(注1)は、高齢者の「在宅からの住み替え」をお手伝いしています。1992年の発足以来、高齢者の安心居住を目指して、消費者の立場・視点から、安心して老後の生活を託せる公・民の高齢者施設の情報を幅広く集めています。集めた情報を市民へ提供し、セミナー・見学会を通して見る目を養う場をつくるとともに、面談によるきめ細かな相談も行っています。
高齢者の住み替えの相談機関としては、パイオニアとして知られているシニアライフ情報センター。今回から2回にわたって、当センター代表理事・事務局長である池田敏史子さんのインタビューをお届けします。発足から25年間、一貫して市民目線を大事にされてきた池田さん。高齢者の住まいに関心を持ってから現在に至るまで、池田さんがどのような思いで活動に打ち込んでこられたのかをお聴きします。



生活まるごと情報発信する
夢を持って

――高齢者の住まいに関心を持たれたきっかけを教えてください。

池田 私も若い頃は仕事を持っていましたけど、結婚後は夫の転勤で各地を転々としていました。私が40代前半だった頃に子どもから手が放れて、「社会とつながりたい。何かやれないかな」と思うようになって、うろうろし始めたのがきっかけです。
 私は地方出身ですが、母は早くに亡くなって、三人きょうだい全員が地元を離れました。実家を継ぐ人間がいない状況で、親の問題が出てきたことと、いずれ自分も同じ状況に置かれるかもしれないと思ったこともあって、高齢者の住まいに関心を持つようになりました。それから高齢者に関する分野の勉強をしたいと思って、セミナーへ通ったりもしました。


――そういったきっかけに始まって、今では長年NPO法人の事務局長を務められていますね。

池田 当時から私は色々なことに関心を持っていたので、高齢者の住まいに限らず、生活全体に関わる情報を発信できたらいいな、という夢を持っていました。「シニアライフ」の名称は、「生活まるごと」の意味を込めています。
 会報誌『シニアライフ通信』は、発足当初はあらゆる情報を盛り込んで発信しようとしていました。でも、とてもじゃないけど無理だと分かってから、「住み替えのお手伝い」に特化するようになりました。当初は豊富な知識があるわけではないので、私たちにできるのはあくまでお手伝いです。何もない状況で、「お手伝いしかできません。一緒に情報収集します」という形で活動を始めました。

 当時はインターネットもなく、情報量が非常に少なく、高齢者の住まいに関する情報も閉ざされていました。シニアライフ情報センターは「市民目線でつくった情報センター」として活動していたので、各方面から「面白い」と興味を持っていただけたのか、新聞で取り上げられ、厚生労働省や国土交通省の委員会に呼ばれるようになりました。そういう場で私たちは、「住み替え先を選ぶには、情報の公開が第一」と情報提供の必要性を訴え続けてきて、徐々に国も動き始めたということもありました。


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機関誌「シニアライフ通信」


「知らないことを知りたい」が
活動の原点

――シニアライフ情報センターが発足した1990年代は、情報源が少なかったのですね。

池田 一体どのような住まいがあるのかさえ、全く情報が整理されていませんでした。そこで私たちは、自分たちが知りたいと思ったことを、実際に施設を歩いたり、自治体で資料をもらったりしながら一つずつ調べて、そこから得た情報を整理して会員へ伝えていきました。分からないことは、「時間をください、調べてきます」という形をとりながら、消費者セミナーや施設見学会を開いていました。

 私たちに何かができるわけではなく、見て・聞いて・調べた情報を、会報誌やセミナーを通して伝えて、消費者自身の責任で選んでいただく。私たちの活動の原点にあるのは、「自分たちの知らないことを知りたい」「情報提供の場をつくりたい」という思いです。消費者の一人として、自分たちが分からないことを分かりたいという思いで、結果として情報を共有化していったということです。


会員への情報提供から、
国への提言まで手がける

――個人会員・法人会員(注2)へのサービスは、どういったものがありますか。

池田 個人会員には、セミナーや見学会をはじめ、会員同士のディスカッションなど、学びの場を提供しています。また、取材で得た情報を整理して提供したり、アンケート調査をしたりしています。
 会報誌は、ありがたいことに今色々な方々に多角的な視点で記事を書いていただいて、バリエーションが非常に広がっています。ただ、情報がオープンでなかった時代は、会報誌は情報提供という大きな役割があったけど、これからは情報提供のあり方も変化していくと思っています。
 一方、法人会員制も取り入れています。消費者の意向や様々な施設の取り組みを運営に生かしてもらうことが狙いです。


――国への提言もされていますね。消費者の思いを国へ伝える役割も担っているのですね。

池田 厚生労働省と国土交通省の委員会には、何度か呼んでいただいています。その資格があるかどうかは別にして、私たちがかなり公平な立場にいることが大きいと思います。私たちは情報提供していると言っているけど、結局は相談者や会員の方々から情報収集しているわけです。そこで得たものから私が大事だと思うことを、国へ提言させていただいています。


――その他に第三者評価事業もされていて、こちらの組織ならではだと思いますが。

池田 公に第三者評価が始まる以前は、私たちは高齢者施設から直接委託を受けて、自分たちで評価軸を作り、施設の評価をしていました。その後東京都の評価事業も手がけるようになりました。これは都が介護施設の評価軸を作り、大規模な予算をとって行うものです。現在私たちは都の評価機関の一つとして、都が作成したテキストに沿って評価をしています。


情報は「収集・提供の時代」から
「選択・整理の時代」へ

――25年間活動されてきて、手応えは感じておられますか。

池田 私は当初掲げた情報提供という目的は達成したと思っていて、その意味での満足感はあります。現在は情報過多の時代になって、インターネットでいくらでも情報収集できるし、国・自治体も懸命に情報発信に取り組んでいます。これからは、「情報を収集・提供する時代」から「情報を選択・整理する時代」へ移っていきます。大事なのは、膨大な情報を、誰がどのように整理していくのか、ということです。
 同時に、改善点もたくさんあって、時代に合った活動をする組織へと、徐々に変化させていかないといけないと思っています。


時代を映す、消費者からの相談

――実際に、どのような相談が寄せられていますか。

池田 私たちがキーワードとする「住み替え」を中心に、あらゆるご相談をいただいています。相談者は、子どものいないご夫婦、お一人の方、親の介護をされている方、あるいは子どもとトラブルになっている方などがいらっしゃいます。相談内容から、時代の変遷を感じることがあります。

 1980年代は都市開発が進められて、新宿のようなところで少しの土地でも何億の価値になったわけです。例えばそういう方々が、子どもに「一緒に住もう」と言われて、言われるままに大金を出し、いざ郊外に家を建てて住み始めたけど、うまくいかなかった。親は、住み替えたいけどもうお金がない。「家を売ってほしい」と子どもに頼んでも、聞き入れてもらえない。毎日が針のむしろのようになってしまった、という事例もありました。
 たとえ小さくても、元の家に住んでいたら親子が衝突することはなく、互いにもっと寄り添えたのではないか。住み替えたために大事な絆が切れてしまった事例で、その時代を象徴しています。


消費者がリスクを事前に知る意義

――その時々に、どれが正しい選択肢か分からないですからね。相談した時に、過去の事例を聞いておくことで、予防できるかもしれないですね。

池田 先程の事例で言うと、私は二世帯住宅が悪いと思っているのではなく、リスクを事前に知っておくことが大事だと思っています。
 私たちのセミナーを受けた方が施設へ入られた後に、「あぁ、聞いていたことはこのことだったのだ」とおっしゃったことがあって、すごく印象に残っています。その方はセミナーで「こういうリスクもあるから、ある意味で、覚悟して入らないといけない」と聞いていたので、実際に同じような事態に遭遇した時に、受け入れる心の準備ができていた。それが、リスクを予め知っておくことの意義だと思います。


――事前に知識を持っておくことで、本来のハードルの高さよりも低く感じたり、予防できたりするのですね。

池田 事前にあらゆる事例やリスクを知っているのと知らないのとで、感じ方も対応の仕方も、全然違ってくると思います。


豊富な生活経験が、
相談の役に立つ

池田 私たちは常に同じ土俵で物を見、感じ、一緒に考えることを大事にしているので、上から何かを教えることはありません。大量の情報を提供しているだけだと捉えられがちですが、相談者の痛みを共有して、最良の答えを一緒に出すことが、シニアライフ情報センターの本来の考え方であり、姿勢です。


――そこがシニアライフ情報センターの柱ですね。

池田 私は資格者でも専門家でもないけど、例えば親を癌で亡くしたり、自分が急性のうつ病で10キロ痩せて子育てに困る状況に陥ったりと、色々な壁にぶち当たってきました。逆にそういうことが、私の財産になっています。だから相談者の話を聴いて寄り添えるのであって、生活経験というのは、すごく大きいと思いますね。


――情報や知識の領域を越えていますね。

池田 知識は、勉強すればいくらでも身に付けることができるけど、生活経験は違います。当センターは年配の職員が多く、それだけ豊かな生活経験を持っています。色々な時間を経てきています。辛いことに遭っていれば遭っているほど、相談者とお話ししている時に、ピン!ピン!と「自分もあの時そうだったな」と、自分に置き換えて向き合うことができる。色々経験したことが、相談に役立っています。

(第2回につづく)


文/冨岡由佳子
取材・撮影/木村寛明(BIZLAW)



※注

(注1)NPO法人シニアライフ情報センター
【活動の特徴】1.会員制による活動で、市民目線の良質な施設・サービスの情報提供を基本スタンスとする。2.様々な高齢者の住まいの情報を収集する(全国の有料老人ホーム、ケアハウス、高齢者専用賃貸住宅、高齢者向け優良賃貸住宅、シニア住宅など)。3.セミナー・見学会を行い、市民の学び・行動・決断を手伝う。4.高齢者住宅や施設への住み替えを考える市民へ、面談による個別相談を行う。(URL http://www.senior-life.org/

(注2)個人会員・法人会員
個人会員は老後の住み替えを考えている方で、一人暮らしに不安を抱いている、自宅での介護に限界を感じている、老後に備えて勉強したい、親の住み替え先を探している、既に施設に入居している方など。  法人会員は、高齢者の住まいに関わる事業者・団体で、高齢者に居住の場を提供または計画している社会福祉法人や一般企業、高齢者の住まいや施設を計画中の企業など。




この連載記事を読む
 高齢者の最期の住み替えを考える~あなたは誰とどこで暮らしますか~


 NPO法人シニアライフ情報センター主催 外岡潤先生のセミナーが開催されます!

 タイトル:「知っておきたい!高齢者が巻き込まれやすいトラブルと対処法」
       ~事例で学ぶ老人ホーム(住まい)選び~
 日  時:2016年12月17日(土)/13:30受付開始14:00開演(16:00終了予定)

 詳しくは、NPO法人シニアライフ情報センターのホームページをご確認ください。
 (http://www.senior-life.org/seminar161217.html



池田 敏史子

Profile

池田 敏史子 [NPO法人シニアライフ情報センター代表理事・事務局長]

1945年生まれ。島根県出身。子育てをする一方、安全な食べ物・アレルギー問題をフリーの立場で取材。平成4年シニアライフ情報センターを設立し、以来事務局長を務める。平成10年より厚生労働省、国土交通省の各種委員会委員として参加。著書は、『終の住まいの探し方』岩波ブックレット(平成14年岩波書店)他多数。




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