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今、学生が仕事を選ぶ目
企業を見抜く目

株式会社リクルートキャリア 就職みらい研究所所長 岡崎 仁美

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第2回 自ら得た情報から、未来予測する

 大卒求人倍率は6年連続で上昇し、好調な業績や人手不足を背景に、企業の採用意欲は高く、学生優位の売り手市場が続いています。その反面、大手企業の法令違反事案が連日メディアを賑わせており、求職者はより厳正な目で、自分にとって適した仕事・企業を選別する必要に迫られています。 元リクナビ編集長、現(株)リクルートキャリア就職みらい研究所所長の岡崎仁美氏に、現在の社会情勢において、求職者・採用者が心得ておきたい「企業の選び方」「就職活動の軸となる考え方」を前回に続いてお聞きします。



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誠実な人は誠実な組織を好む

―― 企業価値を上げるためには、コンプライアンスに人とお金を投資しているかというのが1つの尺度になってきていて、ESG投資(注1)もそこに紐づいてくるかと思います。現状、内部通報制度やコンプライアンス委員会などは、企業で上手く機能していると思いますか。

岡崎  「採用活動上、コンプライアンスは大切」という意識は確かに高まっていると思います。例えば、弊社はSPI(注2)という採用で用いられる適性検査を提供していますが、最近の傾向として「企業はより一層、誠実さ・正直さを重視するようになった」と現場から聞きます。今後、人工知能が一般の仕事に本格的に活用されていく中で人に残る仕事の1つは「責任をもって判断すること」だと言われています。ロボットが確率計算で確からしい答えを導き出せるようになった時に、その最終判断をするに足る人間か、つまり「信頼を獲得できる人間なのかどうか」が勝負になるのではないでしょうか。

計算や頭の回転の速さは、ロボットの方が桁違いに優れています。人間が担うのは、人と信頼関係を結び、顧客の信頼を勝ち取るところだとすると、今後ますます企業はそうした人材が必要になるでしょう。とはいえ、これはニワトリが先か卵が先かの典型で、誠実な人で構成された組織は誠実な組織になります。誠実な人は誠実な組織を好むので、会社はより誠実な人を採用する活動を続けつつ、内部を綺麗にしていかないと、そういう人材にそっぽを向かれてしまうわけです。

今は、コンプライアンスや従業員満足を採用活動上のポーズとしてやっていたのでは、本当に人が採れない時代になっています。最近も週休3日の導入、定休日の設定など、色々なニュースが飛び交っていますが、本当に従業員が安心して長く働ける環境をつくらないと、事業の運営が成り立たないところまで企業は追い込まれているようにも感じます。法令順守を含めて働く環境をクリーンにすることが極めて重要だという意識は非常に高まっています。

(注1)Environment(環境)Social(社会)Governance(企業統治)に配慮している企業を重視・選別して行う投資。コーポレートガバナンス改革の指標のひとつであり、持続的な企業価値向上と中長期的投資を促進させるものとして急速に浸透している。経済産業省は「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」において「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス- ESG・非財務情報と無形資産投資」を発表した。

(注2)SPI…Synthetic(総合的な)Personality(個性・性格)Inventory(評価)の略で、リクルートキャリアが提供する求職者の持ち味を知るための検査。現在約1万2400社に導入されている(2017年3月末時点)。


―― 従業員満足度の向上施策をポーズでやっていたのでは、もう現状に太刀打ちできないということですが、いつ頃からそう実感していますか。

岡崎 特にここ2年、高水準の求人倍率が続いていること、働き方改革が本格的に打ち出されたこと、過重労働を巡るトラブルが複数報道されたこともあって、働く環境に対する学生の関心は高くなっています。若い人が仕事を選ぶ上で、仕事内容はもちろん大事ですが、労働環境にも高い関心を払っていることは、企業側も実感していると思います。

 とはいえ、そう簡単に労働環境は変えられません。そこで、採用活動をフックにして内部を変えるという方法があります。働く環境について、学生に良いことを言おうと思うと内部を変えなければならない。例えば週休3日を導入するにしても、企業の生産性が落ちるということもあるし、内部の抵抗勢力もある。しかし今のような“空前の人手不足”の状況下では、「そうしないともう人が採れない」というある意味の御旗が、そうした内部の岩盤に風穴を開けることが期待できます。


―― 多くの企業が、体質改善をしなければいけない状況に直面しているのですね。

岡崎 そうですね。直近で若者法(注3)の施行によって、新卒の職場情報の明示が義務付けられましたが、やはり企業は情報公開を嫌がります。例えば、3人入社して皆モチベーション高く働いていたのが、うち1人が結婚で、相手が海外に行くために退職したとしても、対外的なデータとしては「離職率1年以内33%」になる。一方、別の企業が大量採用して、2割がしんどくて辞めたとしても、前者の方が悪い数字になってしまう。そういう情報は本当に公開したくないという一方で、公開しないと余計に疑われてしまいます。

ジレンマの末、企業にとって決して嬉しくない数字でも、非公開にして怪しまれるぐらいなら公開しようということで、今は情報開示に踏み切る企業が傾向として増えています。「他社が公開しているなら自分たちも」という、競争原理も働いているようです。現在の求人倍率の状況がなければ、ここまで情報公開は進まなかったと思いますが、紆余曲折を経て、情報開示率は当初予想されたよりも高いのが現状です。

(注3)若者法…青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)。平成27年10月より順次施行。適切な職業選択の支援に関する措置、職業能力の開発・向上に関する措置などを講ずることで、若者の雇用促進を図り、能力を有効に発揮できる環境を整備するための法律。新卒者を採用している企業に対し、就活生への幅広い職場情報の提供が努力義務とされている。応募者から問合せがあった場合は、一定の情報提供を義務付けている。


必要なのは、
クリティカルシンキングで考える力

―― 「離職率」や「ブラック企業」というキーワードで企業を測り、多くの学生が最初からネガティブアプローチをして、自分の将来をチョイスする傾向がある今、メディアに喧伝されている数字の裏を見るにはどういうアンテナの張り方が良いですか。

岡崎 これは就職先選びだけでなく、今後世の中で活躍する人材の要件としても言われていることですが、やはりクリティカルシンキングのスタンスを身に付けることが、極めて重要になってきています。
インターネットの登場以来、情報量が格段に増えました。でも玉石混交だったり、実は非常に古い情報だったり、火のない所に煙は立たないのかもしれませんが、一筋の煙が盛んにフィーチャーされてしまうこともあります。情報が増えた分、それは本当に正しいのか、どういう意味があるのか、自分の目で確かめて、しっかりと考えなければならなくなりました。そういう意味で、成熟度がとても問われる時代になっています。入試は戦後以来の改革が行われると言われていて、学習指導要領では思考力・判断力・表現力の3つの力が求められています。今の社会で必要なのは、批判性を持って、自分の頭で考える力だということです。

ある意味、「人間ならでは」なのかも知れませんが、考えて、判断して、表現する能力が求められる世の中である、という大前提があります。アンテナの張り方としては、あたりをつけるという意味で、巷に出ている情報に目を通すのも良いですが、ネット情報の先にある確かな実態を把握するためには、自分で汗をかいて情報を得て、判断することが求められています。生身の方に話を聞いて、そこから得られた情報の中から自分の判断で未来予測ができる学生は、おのずとブラック企業には距離を置くことができるでしょうね。

最近は学生が盛んにインターンシップに参加しますが、そこで学ぶタイプの学生と、「インターンシップに行った」という履歴だけを重ねようとするタイプの学生で、二極化しています。インターンシップを通じて自分の就職先選びの軸を明確にできる学生は、社員とのコミュニケーションの機会に、あえて面接では聞きづらい質問をすることもあるようです。 例えば、数年前は良くない事実があって、今もなくなってはいないとしても、今はそれを改善しているのか・していないか。今、企業選びで大事なのは「悪い事実があるか・ないか」ではなく、それを「改善しているのか、それとも放置しているのか」という事後対応を調査することです。企業側としても、この部分をおろそかにしている企業はますます厳しい状況に置かれていくと思います。




取材・編集:八島心平、丸田由佳子
写真:伊藤玲


岡崎 仁美

Profile

岡崎 仁美 [株式会社リクルートキャリア 就職みらい研究所所長]

1993年リクルートに新卒入社。以来一貫して人材関連事業に従事。営業担当として中堅・中小企業を中心に約2000社の人材採用・育成に携わった後、転職情報誌『B-ing関東版』編集企画マネジャー、同誌副編集長、転職サイト『リクナビNEXT』編集長、『リクナビ』編集長を歴任。2013年3月、就職みらい研究所を設立し、所長に就任。




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