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今、学生が仕事を選ぶ目
企業を見抜く目

株式会社リクルートキャリア 就職みらい研究所所長 岡崎 仁美

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第1回 求人情報は、WEBの先を読み対話で確かめる

 大卒求人倍率は6年連続で上昇し、好調な業績や人手不足を背景に、企業の採用意欲は高く、学生優位の売り手市場が続いています。その反面、大手企業の法令違反事案が連日メディアを賑わせており、求職者はより厳正な目で、自分にとって適した仕事・企業を選別する必要に迫られています。 元リクナビ編集長、現(株)リクルートキャリア就職みらい研究所所長の岡崎仁美氏に、現在の社会情勢において、求職者・採用者が心得ておきたい「企業の選び方」「就職活動の軸となる考え方」を2回にわたってお聞きします。



WEB情報の先を読む

―― 最近の就職活動の状況を教えてください。

岡崎  大卒求人倍率は1.78倍(注1)という高水準で、企業の採用に対する危機感が高まり、採用活動に非常に積極的になっています。それに呼応する形で、学生の個人差はありますが、気持ちに余裕ができて行動量が減り、企業・職種研究が不足する傾向があります。

(注1)大卒求人倍率は1.78倍…2018年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の倍率。従業員5千人以上の企業は0.39倍、300人未満の企業は6.45倍で、企業規模や業種により差がある。(リクルートワークス研究所調べ)

 3年以内離職率は少し下がってきてはいますが、早期から「こんなはずではなかった」という気持ちを抱えて、潜在的な社内失業状態にある若者が増えているのではないか、企業・職種・職場環境についてしっかりと調べて納得感を持ち、「辛いことや想像しなかったことも乗り越えて頑張る」と覚悟した上で社会に出るべきではないか。売り手市場が続く中、こうした指摘は静かに、しかし確実に高まっていると実感しています。

 就職みらい研究所が実施した就職活動に関する調査(注2)によると、学生が圧倒的に情報収集しているのは、仕事内容や経営方針についてです。それらは学生も知りたいし、企業も情報提供しているので、納得感の醸成につながります。一方で、社員1人1人がどういう社会人生活を送っているかという情報は、まだ十分に知ることが難しい状況です。

(注2)就職活動に関する調査…就職みらい研究所が毎年調査を実施し「就職白書」として報告。


―― 学生が「企業名+ブラック」と検索して、その時点で企業研究を止めて判断してしまうケースが多いと聞きました。企業を掘り下げるには、どういうアプローチが有効ですか。

岡崎 「ブラック」という言葉が一人歩きしすぎることを危惧しています。検索結果に表示されたからそこで思考停止するのではなく、自分にとって一体何がブラックなのか、そのブラックの特徴は対象企業のどのような事実から感じられるのか、丹念に調べる必要があります。WEB上では、当該企業自身による法令違反のプレスリリース等よりも、ネットにあげた人の価値観に照らした解釈でその事案を「ブラック」扱いしているケースが圧倒的に多いです。

 就活生が企業を調査する場合、「ブラック」と打ち込むのではなく、まずはその企業に法令違反の実績があるかを冷静に調べるべきでしょう。そしてより重要なのは、もし法令違反の実績を確認した場合、その後の取り組みを開示しているかどうかも併せて確認したいポイントです。

 もちろん、法令違反はないに越したことはありません。しかし、1度でも法令違反をした企業は、もう完全にダメかと言うとそうではない。法令違反を契機に大改革に着手するケースもあります。大切なのは、社会の指摘に対して、どういうスタンスで、どれぐらい本気で改善すべく取り組んでいるかです。企業を選ぶ際には、法令違反があるか、さらに法令違反があった場合どう対応しているか、そこに目を向けてほしいと思います。企業の側で言えば、その改善等に関する取組みをきちんと社会に提示できているか否かで、人の集まり具合は大きく変わるでしょう。


中小企業の情報は、
経営者との直接対話で得る

岡崎 現在の民間企業の求人総数は75.5万件で、半数以上の42.6万件が中小企業の求人です。中小企業の法令違反は、きちんとモニタリングされなければチェックの手が及びづらい領域です。そのため学生は「中小企業はブラック」と決めつけてしまうところがあるのは事実です。けれども、就職するチャンスの半数以上は中小企業にあるので、それらを視野に入れないのはもったいない。そうした企業がまっとうにビジネスをしているかどうかを調べるべきでしょう。

 中小企業の情報はWEBで調べきれないところはありますが、大手と比べて学生が経営者と直接対話しやすい利点があります。経営者が誠実な人柄か、正直に仕事をしているか、工夫を施しているか、ぜひ面会して、ご自身で確認してほしいです。これは法的知識を蓄えて経営者にインタビューを行い、法令違反のスクリーニングをかけるよりも優先すべきことだと思います。


―― 求職者の側が、法的知識を身につけて相手をジャッジするのではなく、まず人柄を見ると。その仕事を志す方の目でしっかり見ることは、大事ですね。

岡崎 法律を盾にしてコミュニケーションに挑むと、会話が成立しないこともあります。法令を守るべきというのはその通りですが、法律も日々変わる中で、中小企業は法改正情報をキャッチアップ中ということもあります。査察に行くわけではないので、あまりデジタルに「これは×ですね」という会話をすると、相手は心を閉ざしてしまう可能性もあり、本来得たかったはずの「相手の深層を知る」こととは矛盾したコミュニケーションになってしまいます。現時点での〇×だけに意識を集めるのではなく、将来的に改善が見込まれそうか、改善の実績があるか。なによりも「人を大切に考えている経営者か」というところを見る必要があるのではないでしょうか。

 そこはデジタルに測りようがないので、ぜひ面会して、対話して、自分自身が「この人ならついて行ける」「心身ともに健康に働けそうだ」「好きになれる仕事だ」と思えるかどうかを見極めてください。最近は職種別採用が増えていますが、実は中小企業では以前から導入されています。何の仕事に就くかわからない就社型の就職ではなく、中小企業は比較的職種を限定して企業を決めやすいという特徴があります。その仕事内容を熱中してできそうか、という観点も極めて重要です。


1人の人間として扱ってくれるか、
ビジョンを共有できるか

―― 中小企業だと、法令違反をしているか、社会の要請にどう応えているか、見えにくいところがありますね。どういうコミュニケーションの仕方が、企業を知るための良いフックになりますか。

岡崎 やはり対話なので、「興味を持っている」と伝える必要はあります。ただ、学生はどうしても現時点の企業の立派さ、世に出ている商品・サービスに注目しがちです。一方で、企業は未来に向けての投資として新卒を採用します。この時間軸がズレているので、会話が成立しないことはよくあります。

 特にコンプライアンスの話に切り込む場合、現時点の話を尋問的に聞くのではなく、「興味を持っている」と伝えて、「どういう会社にしていきたいか」「今抱えている課題は何で、それをどう変えていきたいか」など、未来に向けた話としてヒアリングするのが良いのではないかと思います。

 コンプライアンスへの取組み姿勢は、世の中のルールに対するその企業のスタンスを示しています。自社の悪いところも含めて、非常に客観的に冷静に話す相手なのか、学生を子ども扱いして良いところばかりを話し、後ろめたい部分を隠すようなコミュニケーションをする相手なのか。そうしたところを学生や求職者は面談を通して肌で感じ取るべきでしょう。つまるところ、学生を1人の人間、大人として認めてくれる企業は、社会に選ばれる企業とも言えると思います。

 インタビューの切り口としては、未来の話をした上で「これから描く未来に対して、現時点でどうやって着実に歩んで行こうとしているのか」という話をする。若い人から未来についての話を振られれば、熱心に語ろうとする経営者は多いです。求職者と企業の双方がビジョンを共有できるかどうかが、マッチングにおいてとても大事なのではないかと思います。


(第2回に続く)



取材・編集:八島心平、丸田由佳子
写真:伊藤玲


岡崎 仁美

Profile

岡崎 仁美 [株式会社リクルートキャリア 就職みらい研究所所長]

1993年リクルートに新卒入社。以来一貫して人材関連事業に従事。営業担当として中堅・中小企業を中心に約2000社の人材採用・育成に携わった後、転職情報誌『B-ing関東版』編集企画マネジャー、同誌副編集長、転職サイト『リクナビNEXT』編集長、『リクナビ』編集長を歴任。2013年3月、就職みらい研究所を設立し、所長に就任。




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