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ルールはできるだけ少なく、
性善説で運営

株式会社メルカリ 執行役員 掛川 紗矢香

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「ねばならない」から離れた、メルカリのルール interview by CORK 第2回


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クリエイターのエージェント会社コルク法務部のコルク半井さんが興味本位で企業・人物訪問するコーナー「Interview by CORK」第8回のゲストは、日本最大のフリマアプリ「メルカリ」のサービス開発を行う株式会社メルカリの執行役員、掛川紗矢香さん。第2回は人事制度、「メルシーボックス」についてうかがいます。


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コルク半井:掛川さんにお話をうかがってみたかった理由は、merci box(メルシーボックス)のこともお聞きしてみたかったからです。会社を立ち上げられた時期はコルクとそれほど変わらないのに、新しい制度を作っているのがすごいなと。そもそも、産休育休制度は法律でも定められていますが、なぜさらに新しい人事制度を作ろうと思われたのでしょうか?

※merci box(メルシーボックス)
メルカリが2016年2月に発表した人事制度。詳しくはこちら

掛川:メルカリでは現在の290人ほどの従業員が働いていますが、その半数以上がカスタマーサポート(CS)を担当しています。そのCSの7割近くが20代女性。当然、これから多くの人が結婚、出産というステージを迎えるだろうなというのは予想されますよね。そこで、彼女たちが働きやすい環境はどういうものだろう、とずっと考えていました。

 そんな中、初めて産休育休を取る社員が出てきたんですね。そのときに、育休産休を取りやすい環境、さらには休んでもまた現場に戻ってきやすい環境を作っておきたいと思いました。もしも社員が辞めてしまった場合、新しく人を採用しなければならず、そこには費用も時間もかかりますよね。そのことを考えると、多少コストを負担しても、社員が働き続けやすい、休んでも復帰しやすい環境作りをしたほうが、従業員にとっても会社にとってもメリットが大きいと思ったんです。


コルク半井:なるほど、確かに、これから子育てをする世代が社員に多いと、人がコロコロ入れ替わるという状態になりかねないですね。

掛川:また去年末に、役員2名に子供が生まれたこともあり、社内でホットな話題にもなったタイミングもきっかけになったかもしれないですね。法定では産前6週間からの休暇取得ですが、3か月前くらいから、おなかはかなり大きくなる人が多い。その状態で働くことは本当に大変そうだ、ということを、奥さんが妊娠した彼らもそばで見ていて実感したみたいで(笑)なんとかしたほうがいいのではないか、という気流が生まれてきたので、今だ! という感じで労務の担当者とも相談して、導入しました。


コルク半井:確か、メルカリさんのコーポレート部門の中で、労務を担当されているのはお一人ですよね。私は今の社員10人、アルバイトやインターンを含めても30人程度の規模でも、一人で何かルールを作って浸透させていくのは大変だなあと思っているので、新しい制度を作りたい、と思っても、そのために法律を調べて、社内用に置換して……ということを想像すると、とてつもないことのように思えるのですが、メルシーボックスを作られたときは、プロジェクトチームのような体制を作られましたか?

掛川:いえ、ほぼ労務の担当者と私とで進めましたね。法定の部分と抵触しないように、といった部分は、社労士先生にも相談しながら、作っていきました。社内の浸透具合や具体的なオペレーションは、実際には導入して使ってみてから、ブラッシュアップしている最中ですね。なかなか完成させたものをリリースすることは難しいですし、やる必要はないかなと思ったので。まずは導入してみてから、「申請方法はどうする? こんな場合は?」と試行錯誤しながらやっていく方法がいいのではないかなと。


コルク半井:導入後の社内の反響はいかがですか?

掛川:現在は男性からの申請が多いんですよ。2月以降、5人が育休を取得しました。世間的には男性の育休取得は抵抗があると言われることが多いですよね。会社、国の制度が変わらないとなかなか難しいでしょうが、今回、merci boxを導入してみて、子育てをしたい男性はたくさんいることが実感できました。そういう人が休みを取れるようにするためには、会社が「休んでいいんですよ」と明示してあげること、育休を取ることを「申し訳ない」と思わせないことが必要だと思いましたね。


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コルク半井:休んじゃダメと言っているつもりはなくても、なんとなく休めない雰囲気を作ってしまっていることは、たくさんの会社や職場であるでしょうね。

掛川:元々フレックス制を導入していることもあって、休みを取りにくい、帰りにくい、という雰囲気はない社風ではありますが、今ちょうど執行役員の一人が育休を取得しているので、経営陣が取得するとスタッフもより取りやすくなるかなと思っています。


コルク半井:フレックス制や有給のルールは、設立何年目で作りましたか?

掛川:設立当時からエンジニアはフレックス制で、コーポレート部門もフレックス制にしたのは、1年半後くらいですね。人が増える中で会社の施策、ルールの変化が必要になり、徐々に作っていきました。


「申請」「ルール」は
少ないほうがいい

コルク半井:ルールは人を縛るだけのものではなくて、人を守る側面もありますよね。メルシーボックスはまさに守るためのルールだと思います。ただ、ルールを明文化する=縛られる、と構えてしまう人もいて、その思想の違いで折り合いがつかず、ルールの議論まで行かないことがあります。特に人事や労務に関するところはその傾向があってなかなか進まないのですが、メルカリさんではそんなことはありませんでしたか?

掛川:そうですね、メルカリは「ルール」があまりない会社です。「ルール」はないほうがいいと思っています。例えば、社内のコミュニケーションを促進するため、1か月に1回、違うチームのメンバー同士で飲みに行ったらその費用は会社が持ちますよ、という制度があるのですが、実は複数回行って、それを全部会社に請求したからといって怒られることはありません(笑)。「今月はもう1回行ったから2回目はダメ」と硬いことは言わず、そこは各マネージャーの裁量に任せています。コミュニケーションを取ってほしいという目的のために導入しているので、その意向を摘み取りたくないと考えています。


コルク半井:人が縛られるルールではなく、メルカリさんの「文化」と言えるかもしれないですね。

掛川:必要のない「申請」をしている時間はとことん減らして、その分ビジネスに集中してほしいです(笑)。

 たとえば、始末書を最初はルールにしようとしましたが、やめました。実際に出されると、それのために保管ルールとかを作らなければならないなあとか、逆に困ることに気付いて(笑)。基本的に、会社から支給された備品を紛失したいと思う人はいないですよね。特に管理をするという立場で考えると性悪説になりがちですが、基本的には誰かに迷惑をかけたいと思っている人はいないはず、という、性善説で考えるよう気をつけています。むしろスタッフにいかに「信じています」と伝えるかに腐心しています。

第3回につづく


聞き手/半井志央(コルク)
イラスト/羽賀翔一(コルク・http://hagashoichi.cork.mu/
写真/BIZLAW編集部



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 「ねばならない」から離れた、メルカリのルール


Interviewer

半井 志央 [株式会社コルク 法務担当]

京都大学法学部卒業、ロンドンへの留学経験あり。
国内のメーカー法務を経て、コルクに入社し、法務・編集・経理などを担当。


コルクホームページFacebooktwitter(@shionakarai)

掛川 紗矢香

Profile

掛川 紗矢香 [株式会社メルカリ 執行役員]

東京女子大学英米文学科卒業後、株式会社GDH(現ゴンゾ)を経て2009年6月グリー株式会社に入社し、海外子会社立ち上げ、グローバルアカウンティングマネジャー等を担当。2013年10月より株式会社メルカリに参画。米国子会社設立、コーポレート基盤及び体制の確立等を手がけ、2015年2月執行役員就任。




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