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未来を作るベクトルを入れ込む
ことができるのは、法律家の力

株式会社ロフトワーク代表取締役 林 千晶

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これからの会社の作り方、キーは「オープン」 interview by CORK 第2回

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第1回は、組織作りの基盤に関して触れていきました。規則は人を思考停止させる、なるべく柔軟な組織を作るには、オープンこそがキーであると。2万人以上のクリエイターという巨大な組織を束ねるロフトワークの法務は、積極的な前のめりの姿勢によって生まれる信頼の姿、といえるかもしれません。


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コルク半井:現在ロフトワークさんには2万名以上のクリエイターさんが登録されていて、案件ごとにチームが作られると聞いています。1つのオフィスに集まって作業をするのではなく、それぞれ別々のところで仕事をされるのですよね。
 社内のルールは、枝葉のところは揺れてもいいとおっしゃっていましたが、社外の方と、特に別々の場所で作業をされるとすると、納期までに仕事が完成しない、といったトラブルが起こるのではないかと思うのですが、契約書を締結されているのですか?

:契約書は、ほとんど結ばないんですよ。多くのクリエイターとは、最初にロフトワークに登録する時、基本的な規約に同意してもらうだけです。

コルク半井:えっ、それだけですか? 突然連絡が取れなくなるとか、みんなが何をいつまでにやっているかわからないとか、クライアントの納期に間に合わないとか、契約書を締結しないことで困ったことはないのですか?

:たしかにロフトワークを立ち上げたばかりの時は、クライアントからもクリエイターからも文句を言われることが多かったですね(笑)。ただ、私たちはそれを契約の問題ではなく、仕組みの問題だと考えました。クライアントとクリエイターが揉める理由を分析すると、プロジェクトのリスクは初期の計画や共有する情報量に相関があることがわかりました。初期に良い計画を立て、いいチームが出来上がっていると、プロジェクトは順調に進みます。そこで、私たちもプロジェクトマネジメントの専門家になろうと決め、世界中のプロジェクトマネジャーが培ってきたノウハウ「PMBOK(※)」を取り入れることにしました。

※PMBOK=Project Management Body of Knowledge。米国PMI(プロジェクトマネジメント協会)が定義するプロジェクトマネジメントの世界的な知識体系


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コルク半井:初期段階でコミュニケーションが取れていると、リスクが軽減できるということですか。社員の方々それぞれが、プロジェクトマネジメントができると案件がスムーズに進みそうですね。

:どういう情報を渡してどうプロセス、タスクを分解すると、リスクを把握しながら外部の人と仕事できるか。そのノウハウが15年分、社内に蓄積されています。契約で縛ったり、懲罰ルールを作ったりするのではなく、「どんな情報を伝えれば前向きに人が動くか」という仕組みづくりに情熱を注いでいます。ロフトワークが提供しているサービスは、「プロジェクトデザイン」であって、ただの案件仲介ではありません。一緒にチームを作り、クリエイティブの力で目標を達成することです。だから、プロジェクトを始める際に、クライアントと徹底的にディスカッションを重ね、発注するクリエイターともそのプロジェクトの背景や目的を丁寧に共有します。

コルク半井:オープンであること、情報共有をしっかり行う点が、社内のルールのDNA(「仕事の延長線上に遊びがあり、遊びの延長上に仕事がある」 第1回参照)と共通するわけですね。また、ただ仲介するだけでなく、クライアントとクリエイターのニーズを合致させる役割を担う、という点は、コルクのビジネスと一緒だと感じました。

:そうなんですね。コルクはどうやってエージェンシーをしているのですか?

コルク半井:作家さんの作品のことを理解して、どの様な展開をしたいかなどを、しっかり共通認識として持っておくように心がけています。そうすれば作品について任せてもらえますし、またこちらから新しい提案をすることもできます。出版社の中にいると、作品を作る編集と、作品を売り広げる営業という2つの部署に仕事が分かれてしまうことが多いので、作品のことを一番理解している編集者が作品を全世界に展開するところまで手掛けたい、という考えが、コルクという会社を作った創業者の理念のひとつです。

:仕組みとして、ロフトワークと一緒ですね。「作家の本当の強さ」と「可能性」をつくるために、既存の出版社的販路にすべてを委ねるのではなく、作品にとってベストな売り方や、クライアントにとってベストな作品を毎回考えるというアーキテクチャでしょう? 大切なプロセスですよね。作家が本当の体力をつけるためのパートナーたろうということだと思います。私たちもそういう仕組みを目指して、ロフトワークを作りました。


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コルク半井:まさに、おっしゃる通りです。出版社が持っている販路に頼るのではなく、それぞれの作品に合ったプロモーション方法を、ひとつひとつ考えるのが我々のサービスです。

:「リスク」は、いつでも「可能性」と表裏一体。ポジティブな面をより高めるべく努力し続けるというのが、ロフトワークの存在意義です。

コルク半井:クライアントや、協業パートナーとの契約についてはいかがですか? さすがにしっかり締結しなければならないのでは、と思ってしまうのですが。

:さすがにクライアントとは秘密保持などの契約は結びますが、それでも可能な限り、契約書は結びません。

コルク半井:おおお、潔い。

:例えば、私たちが運営しているデジタルものづくりカフェ「FabCafe(※)」は、世界4カ国5店舗で展開しています。なのですが、海外にFabCafeを作る時の合意プロセスは、弁護士的には「ありえない!」と驚かれるほどシンプル。契約書ではなく、Mutual agreement(合意書)という形で、A4一枚にまとめているんです。海外のパートナーと組むし、商標なども絡むのに、その短さはありえない、と。普通であれば、最初はお互いに弁護士が入って、こんな時はどうする、あんな時はどうする、と決めようとしますよね。ただ、私たちの経験則として、契約前に心配したことは大概、大きな問題にはならなくて、むしろ思ってもみなかったトラブルが起こる。じゃあどうするかというと、結局、協議する以外ないでしょう? 契約書上で事前にいくらトラブルを想定しても、揉める時は揉めるんですよ。だから、契約書に書けることは、「何かあったら協議する」という内容だけ。それであれば、互いに大原則を確認できるシンプルな合意書だけでいいはず。

※FabCafe:レーザーカッターや3Dプリンタなどのデジタル工作機器を使って誰もが「ものづくり」を楽しめるカフェ。ロフトワークが2012年にスタートし、各地のパートナーにのれん分けする形で世界展開している。(http://fabcafe.com/tokyo/

コルク半井:私も契約書は短く、簡潔にしたいと常に考えてはいるのですが、なかなか難しいですね。つい、想定されるケースを見越した条項を入れたくなりますし、入れてしまいます。海外のパートナーでも、短い合意書で不安にはならないですか?

:ポイントは、事業パートナーの選び方だと思います。信頼し合っているからこそ、一緒に事業を手がける相手とは、協議で解決することができるはずです。ロフトワークは、契約書で最悪のことを想定して予防するよりも、パートナーを選ぶ過程にもっとコミットしたい。パートナー候補には、どんなに物理的距離が離れていても必ず実際に会って人柄をじっくりみるし、FabCafeに興味をもった理由は何なのか、本音を確認します。そうやって相思相愛になった相手だから、まだ3年しか経っていませんが、今のところ揉めたことはないですし、1枚の合意書でも全く問題ありません。

コルク半井:クライアントから最初にヒアリングして、しっかり情報を共有するから、契約書を締結しなくても齟齬が起きないという仕組みと一緒ですね。

: 密なコミュニケーションを重ねていくことで、「この人たちを裏切ってはいけない」「格好悪いことはできない」と思わせる関係作りができているんだと思います。それが、新しいクリエイティブのアーキテクチャではないでしょうか。
 逆に、FabCafeグローバルのルールには、「各店舗の売り上げや情報をシェアすること」が含まれています。なぜそこの店舗は成功して売り上げが伸びているのか、どんなイベントやキャンペーンを手がけているのか。その点をお互いに共有すると、良い点は自ずと真似したくなり、結果として未来につながるでしょう? FabCafeのパートナーシップ合意書は、現在と未来だけを見ているんです。

コルク半井:今と未来のための契約を作れるようになりたいと強く思いました。それができるのが法務の仕事ですよね。契約書をチェックすることだけを法務の仕事にするのではなく、パートナー探しや、そのパートナーとどんな情報を共有したら未来が広がるかを考えるところまでが法務の仕事だ、という風に変えていきたいですね。

:もともと法律やルールは、単独で存在するものではないですよね。法とビジネス、法と暮らし、など、新しい領域を掛け合わせて意味を持つもの。法律自体がベースを作ってはいるけど、そのプラットフォームに何かが乗ることで機能するものです。だからこそ、現在の行為を司る仕組みを作ることができるのも法。未来を作るための強い力を組織に与えられるのは、法律家の力だと思うし、最高に格好良いと思いますよ。

第3回に続く


聞き手/半井志央(コルク)
イラスト/羽賀翔一(コルク・http://hagashoichi.cork.mu/
写真/稲垣正倫(BIZLAW)



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 これからの会社の作り方、キーは「オープン」


Interviewer

半井 志央 [株式会社コルク 法務担当]

京都大学法学部卒業、ロンドンへの留学経験あり。国内のメーカー法務を経て、コルクに入社し、法務・編集・経理などを担当。編集としては、紙と電子書籍の総合書店hontoのフリーマガジンhonto+に携わる。

コルクホームページFacebooktwitter(@shionakarai)

林 千晶

Profile

林 千晶 [株式会社ロフトワーク代表取締役]

1971年生、アラブ首長国育ち。早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒業。花王株式会社、共同通信ニューヨーク支局を経てロフトワークを起業。プロジェクトマネジメント(PMBOK)の知識体系を日本のクリエイティブ業界に導入し、共著にて『Webプロジェクトマネジメント標準 』(2008、技術評論社)を執筆。学びのコミュニティ「OpenCU」、デジタルものづくりカフェ「FabCafe」などの事業展開、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのアドバイザリー・ボード、MITメディアラボ所長補佐を勤めるなど、パワフルな実業家。




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