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組織のルールは軽く、柔らかく。
未来をつくる仕組みが必要

株式会社ロフトワーク代表取締役 林 千晶

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これからの会社の作り方、キーは「オープン」 interview by CORK 第1回

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クリエイターのエージェント会社コルク法務部の半井さんが興味本位で企業・人訪問するコーナー「interview by CORK」のゲスト2人目は、ウェブデザイン、サービスデザイン、空間デザインなど幅広いソリューションを提供しているクリエイティブ・エージェンシー、株式会社ロフトワークの代表取締役・林千晶さんです。


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コルク半井:林さんは、ロフトワークの共同創業者とのことで、法務のことだけでなく、組織作りのノウハウなどをお聞きしたくて参りました。

:会社を作ったのは2000年2月、ちょうど今年で15周年です。

コルク半井:おめでとうございます! 駆け抜けるような15年でしたね。ロフトワークの設立・運営、FabCafeの活動、クリエイティブ・コモンズ…すさまじいパワフルさを見習いたいです。早速ですが、林さんのそのパワフルさはどこからくるのですか?なにかきっかけのようなものは、あったのでしょうか。

:インターネットですね。GoogleやeBay(イーベイ)などのいわゆる第1世代ネットベンチャー企業が出てきたのが1990年代後半でした。私も共同創業者の諏訪光洋も、1998年からアメリカにいて、その動きを肌で感じていました。

 私は当時、共同通信社のNY支局でアシスタントとして働いていて、起業家が「こんな会社を作りました」と発表するリリースを1日に何百件も見て、どの会社が面白そうか、どんなビジネスの流れが来るか、経済記者に伝える仕事をしていました。例えばその中のひとつにGoogleを見つけ、これはすごい!これからはアルゴリズムの時代だと思って、上司のブラウザのデフォルト検索画面を勝手にYahooからGoogleに変えたりしていました(笑)。インターネットによって、色々な物事が構造から変わるぞ、と思いました。それが当時も今も、私たちを一番動かしている動機ですね。

コルク半井:こんなビジネスが来る、という傾向をたくさん目にしていたから、自分たちもこのインターネットベンチャーの波に乗らなければ、今ビジネスを立ち上げなければ、と思われたのでしょうか?


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:いや、波に乗らなきゃというより、勝手にワクワクしちゃったんです。

コルク半井:ワクワク、ですか?

:証券取引委員会(SEC)から企業に課される情報開示義務が徹底していることもあって、アメリカの起業家が書くリリースは日本の企業が出す業績報告よりもずっと詳しく生々しくて、読んでいて面白いんですよ。自社にとって何が機会で、何が脅威で、どこにいくら投資して、リスク対策はどうするかなど、すごく緻密に書かれています。まるでビジネススクールでケーススタディーを学んでいる気分。生の情報に触れながら、記者として市場分析やシミュレーションをして、ワクワクしながら記事にしていました。このサービスどう思う? この市場は伸びるんじゃない? って、友人や同僚のエンジニアと毎日のように話していました。

コルク半井:なるほど、これから先の未来のことを予想して、新しい価値を生み出そうとしている人たちの熱意が込もった業績報告を見るということは、「これからの世界がどんな風になるのか」という可能性の塊や、最先端の情報に触れていることになりますもんね。きっとコルクが出来たことを私が知った時のワクワクと似ているかもしれません。

:そう、インターネットが普及してきた時に、さまざまなルールが大きく変わると思いました。それは新しいニーズを作るだけでなく、今まで人が不便だと思っていたこと、もっとこうだったら、と思っていたことが、解決されたりつながったりするだろう、という予感でもありました。
 最近の例だと、新しい配車サービス『Uber』はまさにそんなサービスです。以前は、タクシー料金は一律で、どのタクシーに乗るかも「目の前を通る空車」という偶然性を前提にしていましたよね。でも急いでいる時、目の前を通る車に「高いお金を払うから今すぐ乗せて!」と思ったことありませんか?あるいは、この運転手のタクシーには二度と乗りたくないとか。そんな気持ちに応えているのがUberだと思います。運転手を選べるし、混雑時には高いレートを払う人が優先される仕組みが導入されている。インターネットによって、もともとあった人の欲求を満たすサービスが提供できるようになった例じゃないかと思います。

コルク半井:なるほど、インターネットベンチャー、というと新しいサービスを作り出しているようなイメージを抱きがちですが、それだけではなく、ベースにあるのは人の中にあったニーズという理解を林さんはしていらっしゃるんですね。

:はい。だから私たちも、人の才能や夢を結びつけるプラットフォームを作りたいと思い、ロフトワークを立ち上げました。当時は自分を含めてメンバー4名。法務担当なんていないので、定款や社内規則も自分たちで作ったわけですが…その時のことを思い出すと、感じていたのは、法律やルールの多くは過去でしかない、今と未来に追いつけない、という感覚。でも私たちがほしかったのは、今のためのルールであり、未来を生みだすためのルールだったんです。

コルク半井:なるほど、先日ちょうど弊社の代表の佐渡島から、人はルールを作るとそれだけで安心してしまうから、会社という有機的な存在が変化し続けるための動的なルールを作れるかを考えろ、と言われたところでです。

:そう、同じです! 私が好きなのもまさに動的なルールで、ロフトワークのルールも可能な限り動詞にしたいと思っています。「考えろ」とかね。あと企業の成長フェーズによって必要なルールは異なるし進化させたいけれど、ルールは1回作ってしまうとまるで永遠のもののように思われてしまう。初期の組織ルールが、どんどん現実と乖離してしまうのは大きなリスクです。組織でも国でもそういうことがよく起きていますよね。そういう「ルールの落とし穴」に陥らないように、ロフトワークの組織やルールは、できるだけ軽く、今のため、未来へのベクトルを生むものにしようと心がけています。

コルク半井:まさにそれは、私がコルクの中に作りたいと思っているものです。秘訣があればぜひ教えていただきたいところなのですが、ロフトワークさんの中に文章化された規則や規定はあるんですか?

:最低限のルールは作って、誰でもアクセスできる社内サイトに置いています。特徴的なところがあるとすれば、ロフトワークのルールのDNAは「仕事の延長線上に遊びがあり、遊びの延長上に仕事がある」ことを前提にしているところかな。一般的に企業は、仕事と遊びの間に線を引きたがります。「Facebookは遊びだからオフィスからアクセス不可」みたいな。でもそんな単純に分けられるものじゃない。仕事として情報をキャッチしたりシェアするために使うこともあれば、遊び心でビジネスパートナーとチャットすることもありますよね。だからロフトワークはそこに線を引きません。遊び心やワクワクすることは働くことの大切な源です。まず自分が「楽しい」と感じて、「他の人も楽しいのでは」と想像し、そこから「ビジネスにも繋げられるのでは?」と可能性を広げていってほしい。だから遊びの先にどんどん仕事を作ってほしいし、仕事の先にワクワクする遊び心を持っていてほしい、と思っています。

コルク半井:コルクも、漫画や小説を読んだり、映画を見たりすることは、仕事と分けられないものだと考えていますし、雑談も重要視しています。私なんて、仕事中に雑談をしないことで最初怒られたくらいです。でも、まったく線を引かずに、全員が同じ価値観を共有することは、難しくないですか?そうあることは理想ではあるのですが、組織に人が増えると、ルールがなくて個別に判断するという文化を全員に共有することが難しいなと感じることがあります。考え方を社員に共有したり、浸透させたりするにあたって工夫していることはありますか?


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:そうですね。例えば、あまりにもおかしいお金の使われ方が生まれないように、経費精算や勤怠などの「守りのルール」を作る時は、「幹」を見るように心がけています。骨格となるルールが明確に規定されていれば、「枝葉」では揺れがあってもいい。細かいところは、仲間同士が確認し合って「それってフェアだよね」と納得すればよくて、ルールで思考停止するのではなく、常に思考しながらみんなでルールを作り上げるほうが重要です。

 そのために色々なことをオープンにしようと心がけています。例えば遅刻連絡は、理由を添えて社内全員で使っているチャットツールに投稿してもらう。オープンにすると個々人の思考力も高まるし、仲間内のピアプレッシャー(周囲の仲間(peer)から受ける力)によって、一定の公平さも生まれてくる。

コルク半井:なるほど。勤怠については、ピアプレッシャーがよく働くかもしれないですね。毎日「遅刻します」って全員に言うのって、嫌だなと思うはずで、それによって遅刻しないようにしよう、となるはずですね。

:そう、「会社のルールでこうだから」という価値基準で動くと、自分で考える力、モラルを上げるための自己活動が下がってしまう。メンバーには自分の健全さのためにプレッシャーを感じてほしい。そのためのオープンな仕組み作りを心がけています。

第2回に続く



聞き手/半井志央(コルク)
イラスト/羽賀翔一(コルク・http://hagashoichi.cork.mu/
写真/稲垣正倫(BIZLAW)



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 これからの会社の作り方、キーは「オープン」


Interviewer

半井 志央 [株式会社コルク 法務担当]

京都大学法学部卒業、ロンドンへの留学経験あり。国内のメーカー法務を経て、コルクに入社し、法務・編集・経理などを担当。編集としては、紙と電子書籍の総合書店hontoのフリーマガジンhonto+に携わる。

コルクホームページFacebooktwitter(@shionakarai)

林 千晶

Profile

林 千晶 [株式会社ロフトワーク代表取締役]

1971年生、アラブ首長国育ち。早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒業。花王株式会社、共同通信ニューヨーク支局を経てロフトワークを起業。プロジェクトマネジメント(PMBOK)の知識体系を日本のクリエイティブ業界に導入し、共著にて『Webプロジェクトマネジメント標準 』(2008、技術評論社)を執筆。学びのコミュニティ「OpenCU」、デジタルものづくりカフェ「FabCafe」などの事業展開、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのアドバイザリー・ボード、MITメディアラボ所長補佐を勤めるなど、パワフルな実業家。




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