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専門性を
弁護士の武器にすること

鳥飼総合法律事務所パートナー 弁護士、
青山学院大学法科大学院客員教授(租税法) 木山 泰嗣

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『弁護士が勝つために考えていること』 第2回

今回、星海社より出版された『弁護士が勝つために考えていること』の主題は民事訴訟法ですが、著者の木山弁護士は税務を専門に弁護士活動を行っています。その専門性に関してお伺いしてみました。



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スペシャリティを追求したかった

――弁護士を目指されたきっかけはありますか?

木山 司法試験の勉強中は弁護士に会ったことがなかったので、弁護士の業務をよく分かっていませんでした。テレビで見たことはあっても、生の弁護士の先生を見たことはそれまでの人生で1度もなかったのです。ただ、弁護士になれば、その人の専門性や才覚、やり方、スキル等を使っていろいろな仕事ができるのではないか、と何となく思っていました。専門家として「この分野だったら木山先生に」というようなポジションが得られるのではないかと。
 私はいろんなことをやるより、一つのことを極めたいタイプなので、何か一つの専門分野で、そのスキルを磨いていきたかったのです。あとは本も書きたかったので、弁護士になれば本も書きやすいだろうとも思っていました。

――というと…本を読み漁っていない時期にすでに本を書きたいと思っていたわけですね?

木山 はい。全然重要な情報じゃないのでさらっと言いますけど、もともと漫画家になりたくて。でも、漫画は絵が上手な人には勝てないと思って中学2、3年の頃に諦めて、漠然と文章で何かしたいと。
 はっきりとそうだったとはいえませんが、結果論的に今の自分の状況を見て振り返って考えると、生業として「ものを生み出して行きたい」という思いがあったのだと思います。

弁護士としての木山先生

――税務を武器にしてみてどうですか?

木山 税務の専門弁護士は数が少なく、良好なマーケットです。私ほど税務だけに特化して業務を行っている弁護士は、ほとんどいないと思います。ただ、税務を専門にされている弁護士は、まだ多くはありませんが名前をよく聞く方は一定数いますね。最近では、若いロースクール生、修習生や新人で、税務をやりたいという人も増えています。

 専門性を身に着けるためには、浅く広く手を出していてはダメです。弁護士になってから4年目ぐらいにそう確信して、それからは税務だけに絞ってきました。税務だけをやりますということは、当時から業界でも税務訴訟の第一人者といわれていた所属事務所の所長である鳥飼重和弁護士と話をして決めました。鳥飼弁護士から勧められたのではありません。私の意思でそうしたいと伝えたのです。
 そのように決めた後も、税務だけの弁護士なんて聞いたことがない、税務だけで食っていける弁護士なんていない、という周囲の雑音がたくさん耳に入ってきました。しかし専門的に特化することこそが、自分が生き残る道だと私は信じて疑いませんでした。きわめて専門性が高く取り扱える弁護士が少ない分野であるにもかかわらず、社会的なニーズは相当にあるのが税務だったからです。
 税理士の先生は税務の専門家で7万人近くいますが、法律の専門家として「租税法」を専門的に取り扱える弁護士の数はきわめて少ないと感じたのです。

――税に興味があった…というわけではないのですか?

木山 そうですね、この点も大事なことだと思うのですが、税務が好きでやりたくてやったというのではなくて、目の前に大量にやってくる案件が希少性の高い税務事案だったということです。鳥飼弁護士のもとに普通の事務所では扱えないような、そして、判決がでれば先例になり、民集に登載されるような税務案件が山ほどあったからです。これほどのチャンスはないと思いました。ですから、税務が好きで好きでたまらない(やりたくてたまらない)というような、オタク的な思考で選んだのではなく、現実的に冷静にとらえて、これを専門分野にできるほどに集中して仕事をすれば、必ず将来自分の大きな力になると考えての決断だったのです。

 弁護士になった当初は、ストックオプションの税務訴訟が全国的に100件くらいあり、そのうちの50件近い訴訟を弊所で担当していました。判決は記者会見などを通して大手メディアに掲載されていました。当時、先輩の弁護士が主任だったのですが、半年ぐらいしたところで私にバトンが渡されました。そのため、若いうちから記者会見にも座らせていただきましたし、弁護士が一生で1回か2回あるかないかという最高裁の弁論を3年目で2回経験しました。自分が主任でやった税務訴訟で民集に登載されたものもたくさんあります。弁護士になって3年ぐらいの間で多くの税務訴訟で勝ち星をあげ、弊所の代表である鳥飼弁護士も「木山さんがやれば勝つから」といって任せてくれるようになったのです。

――最近の税務訴訟はどのような状況なのでしょうか?

木山 実は税務訴訟の件数そのものは増えてはいません。去年は1年で290件、この10年間ずっと300件以上だったものが少し減っています。税務調査が国税通則法の改正で厳しくなったことから、実地調査(税務調査)の件数が3割ぐらい減りました。それに連動して処分の件数も減ったので、不服の数も減ったというわけですね。最近ではホンダが移転価格税制で75億円の全面勝訴、5月には日本IBMも1100億円の課税処分取消、デンソーも処分取消しの判決が出たりしていて、大企業の法人税の訴訟が賑やかになっています。

 法律が悪ければ改正すればいいのですが、それが間に合わなければ「法律の枠内で解釈を拡張してでも課税しなければならない」というのが国税の考え方です。これに対して納税者側からすると「法律にはそんなこと書いていないじゃないか」と裁判所に判断を仰ぐという図式です。憲法が租税法律主義を定めているからです。東京地裁も今年の4月1日から、行政事件の専門部を増設して税務訴訟に対応しています。裁判所にとっても、件数そのものの負担に加えて、重たい事件が増えているのだと思います。国税と納税者の戦いというのは、永遠になくなることはないでしょう。根本的に「課税をしたい」国税当局と、「課税をされたくない」納税者との間には、やむことのない根源的な二項対立の図式があるからです。 http://www.bizlaw.jp/wp-admin/about.php

 書き手としてはオールマイティのように思われているかもしれません。しかし弁護士としては、私の場合は申し上げた通り税務を専門にしています。専門性を強めることこそが他の弁護士との差別化にもなりますし、強力な武器になるというのが、私の考え方です。

第3回へ続く


協力/星海社
文・写真・編集/稲垣正倫(BIZLAW)



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 『弁護士が勝つために考えていること』

木山 泰嗣

Profile

木山 泰嗣 [鳥飼総合法律事務所パートナー 弁護士、
青山学院大学法科大学院客員教授(租税法)]

上智大学法学部法律学科卒、2003年弁護士登録(第二東京弁護士会)。専門は税務訴訟及び税務に関する法律問題。著書『センスのよい法律文章の書き方』(中央経済社)、『小説で読む民事訴訟法』(法学書院)、『弁護士が書いた究極の文章術』(法学書院)、『反論する技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など専門分野を超えた多才な文筆力を持つ。




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