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社外取締役は企業不祥事を
防止できるのか?(前編)

明治学院大学法学部教授、明治学院大学学長補佐 河村 寛治

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伝説の法務部員、語る 第2回

 この連載では、伊藤忠商事株式会社法務部に所属し、法務部国際法務チーム長として活躍した河村寛治氏(現 明治学院大学法学部教授)に、そのエピソードの一端を明かしてもらいながら、法務パーソンが追うべき時事的課題とその対応について語っていただきます。第2回、テーマは「社外取締役は企業不祥事を防止できるのか?」。



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 オリンパス事件をはじめ、東芝事件、旭化成事件など、最近の企業不祥事においては「社外取締役が適正に機能していたかどうか」という点が検討すべき特徴として挙げられます。
 本稿では、「社外取締役は企業不祥事を防止できるのか?」と題して、社外取締役機能と企業風土との関連性、そして監査役制度との比較を考えてみたいと思います。

東芝事件に見る
社外取締役の「適格性」

 話題となっていた東芝の不適切会計処理問題に関連しては、9月9日付で一部株主からの役員の責任を追及する訴訟の提起の請求を受け、また「役員責任調査委員会」において、その役員に任務懈怠責任があったかどうか、その役員の責任追及の訴えを提起すべきかどうか等を検討するとされていましたが、会社は、11月7日に、歴代3社長を含む旧経営陣5人に対し、総額3億円の損害賠償を求める訴訟を提起したことが公表されました。

 東芝として早々と導入した委員会等設置会社における社外取締役が中心となる監査委員会においては、取締役および執行役の職務の執行を監査するとともに、必要な場合には、取締役や執行役に是正を求めることをその役割としているとされています。
 そして監査方針としては、①業務の有効性および効率性の確保、②コンプライアンスおよびリスクの管理、③財務情報・開示情報等の信頼性の確保が挙げられていますが、第三者委員会の調査報告書においては、監査委員会の監査は、①に主眼が置かれており、②および③の視点については、ほとんど行われていなかったと指摘されています。

 また企業風土の問題が指摘されておりますが、さらに再発防止策として、取締役会の監督機能を強化するために取締役会に提供される情報量を増加し、報告事項を拡大すべきであるとされています。ここを見るかぎり、社外取締役を含めた監査委員に対して、必要な情報が提供されていなかったということが分かります。
 社外取締役に対して必要な情報が提供されていなければ、期待される監査・監督機能を果たすことができないことは明らかですので、社外取締役に対して不祥事防止機能を期待するのであれば、やはり適時の情報提供を含め、必要なコミュニケーションを図るしかないということでしょうか。

旭化成事件では、
総勢6名の社外役員は
どこまで監督機能を果たしたのか

 一方、最近話題となっている、マンションをはじめとする杭打ち工事に関連したデータの転用・加筆・改変問題については、その原因がいまだ明らかとはなっていませんが、10月22日付で、やっと外部調査員会が設置されたということが発表されています。その調査結果を待たないと正確な原因究明ができませんが、子会社である施工業者による他の工事においても、同様のデータ改変の問題が多く発生しているという事実が公表されていることを考慮しますと、施工業者の企業風土やコンプライアンス問題だけではなく、グループ全体としてのコンプライアンスの問題も指摘されるのではないかと思われます。

 ちなみに、旭化成は、グループとして、「グループ内のコンプライアンス教育や法令遵守状況のモニタリングを行う「企業倫理委員会」を設置し、企業倫理に関する審議と全社方針の決定を行っており、同委員会の委員長は持株会社のコンプライアンス担当役員が務め、問題点の抽出や改善策の検討を行い、グループ全体のコンプライアンスの推進に努めている」と公表しており、この委員会では、グループ各社ごとのコンプライアンス重点課題・方針、法令の遵守状況、情報の取扱い対応、内部通報制度の運用状況なども議論されることが想定されています。

 なお同社は、監査役会設置会社であり、取締役9名のうち、社外取締役は3名、監査役は5名のうち、3名が社外監査役となっており、社外役員が合計で6名という非常に多くの社外役員が取締役会の監督機能を果たすこととなっているようです。
 これらの社外取締役や社外監査役が今回の事件に関して、それを把握できていたかどうかは、調査委員会の調査結果待ちということにはなりますが、まずは内部監査部門がどこまで認識していたかということになりそうです。特に、今回の問題は、子会社が施行した工事の問題ですので、親会社に対して適時に報告がなされていたかどうか、また親会社としてどこまで把握できていたかという点が、特に重要なポイントとなるのではないかと思います。

 以上の事例からも分かりますが、企業において不祥事を防止するため、このような社外取締役等の社外役員が機能するのかどうかという点は、従来から議論の対象となっていた問題ではあります。
 過去のオリンパス事件の際には、3名の社外取締役の方々が選任されていたにもかかわらず、不祥事防止には機能しなかったと指摘されています。

なぜ社外取締役は
機能不全に陥ってしまうのか

 そもそも社外取締役等社外役員が不祥事防止のために適正に機能するためには、社外役員等がどのような目的で選任されたかという点、また社外取締役が出席する取締役会において、取締役会で議論すべき事項が適切に上程されているかどうかという点が重要であるのではないでしょうか。

 日頃は社長と懇意にしていることから、有事になってもモノが言えないということでは問題外といえますが、有事にモノが言える方が社外役員であっても、「どのような事態が有事であるか」という問題意識を共有していないかぎり、社外取締役等社外役員として期待される不祥事防止のための役割は果たせなくなることは当然だと思われます。

 またどんなに素晴らしいコーポレート・ガバナンス体制を構築している企業であったとしても、取締役会への上程事項の基準に問題があればガバナンスは機能しないのはもちろん、不祥事防止という意味においても、社外取締役や社外監査役が問題意識を共有して議論することができる状態となっていないということになります。
 重要な検討すべき事項が適切に取締役会に上程されておらず、また、社外取締役や社外監査役などに「指摘されそうな事項」は、取締役会に上程されないとか、上程される前に、役員会議や常務会等の社内の役員だけで議論されたままで済まされているということであれば、それは論外ではないでしょうか。

 特に、企業不祥事問題が発生した場合に、世間に公表すべきかどうかという公表の是非の問題がありますが、やはり社外役員を含めて論議すべきであるにもかかわらず、社内調査の結果が別の会議体で報告され、社長決裁等で済まされてしまうということは十分にあり得るでしょう。

 「取締役会上程基準が適正に規定化されているか」「誰の責任において上程基準への該当性の判断をしているのか」「その判断について検証される機会が確保されているのかどうか」という点はとても重要な仕組みであり、これら取締役会上程基準が健全かつ適正に運用されてこそ、社外取締役等社外役員は有事意識を共有することが可能となります。
 そうであってこそ、不祥事等の早期解決を含め企業価値向上のための経営判断において社外取締役等社外役員は有効に機能するものではないかと考えます。

 最近では、不祥事等が発生した企業は、ほとんどのところで、比較的早い時期に、それがウェブサイトなどを利用して開示されたりしていますので、昔とは随分変わってきたといえるのですが、どこの経営者も、株価や投資判断に影響があるような問題や決算情報などを開示することに対しては、やはり抵抗があるのではないかと思います。

 私自身としては、ここ5年程度の間に、これまで10社近くの企業においてコンプライアンスの意識調査とその総括を経験しましたが、そこで共通した結果として、次の2点が挙げられるでしょう。

1 内部通報制度の認知度が決して高いとはいえない
2 内部通報制度の利用状況が非常に少ない

 内部通報制度というものは、企業の不祥事などの問題を社内で早期に把握することで損失の拡大を未然に防止することができるという仕組みです。これが企業にとってのコンプライアンスの実効性を高めるということは頭では理解されているものの、現場では、犯人捜しにつながるとか、処遇も不利になるのではないかという不安や危惧がぬぐいされないという意識調査の結果も出ています。

 やはり、この制度の意義を含め、通報者は不利な取扱いなどはされないということを、根気よく説明をし、理解してもらうしかないと思います。その意味で、最近のような他社事例は、他山の石として、社内の研修等で積極的に利用すべきでしょう。

(後編につづく)


 写真/市川貴浩
 編集/八島心平(BIZLAW)


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この連載記事を読む
 伝説の法務部員、語る。/ 河村 寛治(明治学院大学法学部教授、明治学院大学学長補佐)

河村 寛治

Profile

河村 寛治 [明治学院大学法学部教授、明治学院大学学長補佐]

1971年、早稲田大学法学部卒。伊藤忠商事株式会社入社、法務部配属。1977年、ロンドン大学大学院留学。1981年、伊藤忠ヨーロッパ会社(ロンドン)駐在。1990年、法務部国際法務チーム長。1998年、明治学院大学法学部教授。2004年、明治学院大学法科大学院教授。2013年、明治学院大学学長補佐。2015年4月、明治学院大学法学部教授に就任。
主な著書に『契約実務と法[改訂版]』(2014、第一法規)、『国際取引・紛争処理法』(2006、同友館)などがある。共著に『実践 英文契約の読み方・作り方』(2002、中央経済社)、『国際売買契約 ウィーン売買条約に基づくドラフティング戦略』(2010、レクシスネクシス・ジャパン)、『国際取引と契約実務[第3版]』(2008、中央経済社)、『現代企業法務 1(国内企業法務編)』(2014、大学教育出版)、『法務部員のための契約実務共有化マニュアル』(2014、レクシスネクシス・ジャパン)など多数。




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