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「おうち」とは「モノ」ではなくて
「コト(物語)」

カイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長 高橋 正

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高齢者と最期を見つめたホスピス住宅へ込める思い 第3回

家族あるいは自分が最期を迎えることになった時、皆さんはどういう形を望みますか。終末期をどう迎えるかを考える上で、1つの選択肢となる「シェアハウス型ホスピス住宅」(注1)
日本初のシェアハウス型ホスピス住宅である「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」(注2)は、入所者が互いに支え合い、終末期を自分の意志で自由に暮らせる「おうちが病院」がコンセプト。当ハウスは、がんと難病患者、重度介護者を対象とした少人数制を特徴として訪問看護ステーション(注3)が併設されています。
設立者のカイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長・高橋正氏に、今求められている高齢者住宅のあり方と、当ハウスに込める想いについて、3回にわたってお聴きします。



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良い家族関係に戻れる場所

高橋 「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」は、自宅から引っ越してこられる方が多いです。中には、入居時には親を施設に入れることに対して家族が罪悪感を抱いて来られるケースも見受けられますが、退去時には、ご本人様もご家族も本当に喜んでいただき感謝の言葉をいただける場合がほとんどです。例えばがんの方の週末期はやはり大変なもので、家族はその全てを背負わないといけないという使命感で余裕がなくなり、ややもすると患者本人に対してネグレクト気味になってしまうことさえあります。

 重篤な病気のために、家族のコミュニティが壊れてしまうことがある。その時に、家族の負担、背負いこんでいるものを取り払ってあげれば、家族の関係を復活できて、とても良い関係性の中で最期を迎えることができるようになります。


――ここで本人の望みが実現されているのですね。

高橋 家族は本人の希望を聞き叶えるところに集中して関わりを持てたり、気持ちに余裕のある中で前向きに考えることができると考えます。


――医療とは違う付加価値を提供しているのですね。

高橋 当ハウスでは、医療は安心感として後ろには必要なものですが、やはり大事になのは生活の質です。当ハウスで提供するもの、支援するものは、病院ではつくることができない「最期のステージにふさわしい、質の高い生活をつくる」ことです。だから食事、入浴、排泄にこだわります。末期がんの方で、ここから箱根の温泉に行った方もいます。口から食べることができるようになると皆元気になります。その方は一時、自分で歩けるようにもなりました。


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自由とコミュニティの中で生きる
~おうちが病院~

――2025年問題(注4)などもあって、私たちは超高齢化社会(注5)を生きていくことになりますが、今後の展望をお聞かせください。

高橋 僕のビジョンは、2025年に1万人の最期の時間を支援できるサービスを提供することです。2025年には、年間約140万人が亡くなると言われています。そのうちの1万人への関わりなので、比率はまだまだ小さいですが、2025年までに当ハウスのような拠点を50か所は整備したいと思っています。

 基本的に、各エリアに1つの施設にしています。同じエリアに箱モノをどんどん増やすというより、在宅サービスを広げてニーズをカバーしたいと考えています。いよいよ終末期担って自宅では厳しいとなった時に、1〜2ヶ月でもハウスに入居されれば良いのです。こういったバックベッド施設があることで、在宅の限界が上がり可能性が広がると思っています。


――最期に看取ってもらえる場所があると、家族もがんばれますね。ここは、そういう場所になると思います。

高橋 起業する時に、自分は「どこで最期を迎えたいか」と自問しましたが、やはり「家」でした。しかし、医師や看護師などの医療者が近くにいて欲しいとも思いました。その相反する希望を叶えるもの、それが「おうちが病院」という当ハウスのコンセプトだと僕は言っています。

 ある独居のおじいさん(医師)は、本当に頑固な方でした。(笑)後輩医師がその方の面倒をみていたけれど厳しくなってきて、「自分が訪問するからこちらの施設に住み替えてほしい」と説得されて当ハウスにしぶしぶ引っ越してこられました。

 我々はそのわがままも含めて要望をしっかり受けとめたので、その頑固じいさんにとっても快適な環境になったようでした。がんを患っておられ入退院を繰り返した後に、主治医から「もう最期でしょうから病院で看取ってもらいます」と入院されたのですが、入院すると間も無く施設長がその頑固じいさんから呼び出されました。
 病院に駆けつけると、「おい、うちに帰るぞ」とおっしゃいました。もともと住んでいた自宅は手入れされていなかったので、施設長が「今のご自宅の状態で帰っても、生活できないわよ」と言ったら、「俺のうちはお前のところだろうが、はやく支度せい」とおっしゃったのです。信じられないことに頑固じいさんが、ここの施設を「おうち」と言ってくれたわけです。
 今まで何十年も住んでいた家ではなく、この新しい施設を「うち」と言ってくれたわけですよ。家族と我々スタッフとで最期まで寄り添わせていただきました。とても良い最期を迎えることができました。

 私はお看取りの報告を受けた後で、その頑固じいさんがどうしてここを「うち」と言ってくれたのかと考えました。頑固じいさんには実は奥様と、お子さんが2人いらっしゃったのですが、自宅にいた時は誰も寄りつかなかった。うっかり、敷居をまたぐと全部背負いこむことにナルト思ったのかもしれません。それが、施設に入居された後は、そのご家族がよく通ってきてくれました。これは、この住み替えによって、家族というコミュニティが復活したのかもしれないと考えました。

 その時に僕は、自己決定によって自由に生きることと、家族というコミュニティ(社会のなかで)生きることこそが「おうち」であると気づきました。古い家に戻ったら家族に囲まれて最期を迎えるは望めない。「おうち」はモノとして狭義に捉えていた私たちに、頑固じいいさんは「おうち」とはコト(物語)であると実践で教えてくれたのです。


文/冨岡由佳子
取材・撮影/木村寛明(BIZLAW)



※注

(注1)「シェアハウス型ホスピス住宅」
ホスピスとは、死を目前にした人の身体的・精神的な苦しみを緩和する目的でつくられた療養所や病院。

(注2)「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」
24時間看護師常駐の、がん患者、難病患者、重度介護者専門療養住宅。
▼ホームページURL(http://f-hospice-kmm.com/index.html

(注3)訪問看護ステーション
自宅で療養する人に対して、訪問看護を行う目的で運営される事業所。看護師・保健師・助産師・理学療法士などが所属し、医師や関係機関と連携して在宅ケアを行う。

(注4)2025年問題
団塊の世代が75歳以上になることにより起こる諸問題。団塊の世代は2015年には前期高齢者(65歳以上)、2025年には後期高齢者(75歳以上)となり、日本人の約5人に1人が75歳以上となる。

(注5)超高齢化社会
高齢化率(総人口に対する、65歳以上の人口が閉める割合)が21%を超えた社会。日本は平成19(2007)年に21.5%、平成27(2015)年には26.7%となり、過去最高を更新。


高橋正様を講師に迎えたセミナーが開催されます!

NPO法人シニアライフ情報センターが主催し、講師に高橋正様をお迎えしたセミナーが開催されます。 高橋様の熱意のこもったお話をライブで聴くことができる貴重な機会です。詳しくは、NPO法人シニアライフ情報センターのホームページをご確認ください。
(URL:http://senior-life.org/news_1.htm


高橋 正

Profile

高橋 正 [カイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長]

カイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長。一級建築士、宅地建物取引主任者。
1962年神奈川県生まれ。東京工芸大学工学部卒業後、都内設計事務所で病院建築や公共施設の設計に携わる。1990 年㈱丸山工務所(ユーミーらいふグループ)に入職。湘南エリアでデザイナーズマンションなどの開発に携わる。2001年丸山工務所で高齢者事業を立ち上げ、2008年㈱ユーミーケア社長就任。
2012年㈱ユーミーケアの代表を辞任し、カイロス・アンド・カンパニー㈱を創業。2013年に訪問看護ステーション「訪問看護ファミリー・ホスピス本郷台」、2014年に「訪問看護ファミリー・ホスピス小田原」、日本初のシェアハウス型ホスピス住宅「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」を神奈川県小田原市に開設。




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