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心がけは、
本人の意志に立ち返ること

カイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長 高橋 正

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高齢者と最期を見つめたホスピス住宅へ込める思い 第2回

家族あるいは自分が最期を迎えることになった時、皆さんはどういう形を望みますか。終末期をどう迎えるかを考える上で、1つの選択肢となる「シェアハウス型ホスピス住宅」(注1)
日本初のシェアハウス型ホスピス住宅である「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」(注2)は、入所者が互いに支え合い、終末期を自分の意志で自由に暮らせる「おうちが病院」がコンセプト。当ハウスは、がんと難病患者、重度介護者を対象とした少人数制を特徴として訪問看護ステーション(注3)が併設されています。
設立者のカイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長・高橋正氏に、今求められている高齢者住宅のあり方と、当ハウスに込める想いについて、3回にわたってお聴きします。



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自分が入りたい施設でないと、
うまくいかない

――カイロス・アンド・カンパニー社への思いをお聞かせください。

高橋 以前代表を務めたユーミーケアでは、約10年で30棟の施設をつくって、認知症や看取りも始めて、一定の希望感を持っていました。

 ただし、「自分は、自分の運営している施設で最期を迎えたいか」というと、現実にはイメージが湧かなかった。やはり「自分は家で最期を迎えたい」というのが率直な気持ちでした。お金・リスクを背負ってやるなら、まずは自分が入りたい、使いたいというサービスをつくらないとうまくいかないと思って、在宅療養をサポートする訪問看護とホスピス住宅の事業をやることにしました。


家族の気持ちを汲んだ上で、
優先すべきは本人の意思

――高齢者へのサービス事業を展開する中で、心がけていることは何ですか。

高橋 私は「全てのサービスは、本人のためにあるべき」と心がけていて、入居者やデイサービス利用者のご本人に満足していただくことを、第一にしています。

 最近医療業界では、アドバンスケアプランニング(注4)ということが言われ始めていて、例えば、人工呼吸器をつける・つけない、救急搬送する・しないについて、本人が意志を伝達できなくなった時を想定して、事前指示書を書いていただくという考え方が出てきました。それでも、医療や福祉のサービス現場では、本人の意志がなかなか反映されないように思います。

 本人の意識がなくなると、家族をはじめ遠方の親族も施設に駆けつけてこられます。例えば、延命処置も積極治療も望まない入居者が、その方針に沿って暮らしていても、海外在住の長男が帰国して、「病院じゃない場所で最期を迎えるわけにはいかない」と言って、救急車を呼んで搬送してしまうケースです。それまで本人も同居家族も、施設でゆったりと最期を迎えたいと思っていたのに、スタッフもその長男の指示に流されてしまう。結果的に、本人が一番望まない状態で最期を迎えることになります。後で奥さんが施設に挨拶に来られて「本当にあの時、搬送しなければ良かった」と、涙ながらに訴えられたケースがありました。我々はこうした悔しい思いを何度も経験しています。

 もちろん、送る側の家族の気持ちを尊重し、喪失感を上回る達成感を持っていただくことも大事ですが、。どちらかを選ばなければいけない状況はあり得ますが、その時にはご本人の意思の尊重を選びます。これは徹底していかないといけないと思っています。

 医療福祉業界では、スタッフにとって動きやすいハードを望み、それを優先します。それが本当に入居者、利用者にとって居心地の良いものなのか、生活の質をあげる方向に判断されているかには、決して一致していません。効率良く平等にサービスを提供することは、病院のマネジメントですが、生活の場では利用者ファーストであるべきです。

 本人に自宅として過ごしていただくための施設なので、我々がサービスをつくっていく中で最優先するのはご本人です。


リスクがあっても、
本人の意志に寄り添い実現

 病院では実現が難しかった経口摂取による食事・入浴・自己排泄。これらを実現して差し上げるには、リスクが伴います。嚥下の機能が低くなった高齢者が口から食べることは、誤嚥して肺に入る危険性を伴います。我々はプロとして残存機能を評価し、経口からいけそうと判断でき、ご本人が望むのであれば、リスクをしっかりと説明した上で口から食べられる可能性を示します。

 これは我々のリスクマネジメントのみを優先しては実現できません。ご本人の自己決定と自己責任というプラットホームを確認させていただいた上で、我々も共にリスクに寄り添いながら、プロとして支援させていただくということです。多くの医療・介護事業所も「本人の意志を尊重する」と書いていますが、こういったリスク領域でのマネジメントは確率できていないのが現状です。

 介護度に応じた包括報酬を受領する大きな施設では、入居者全員に、平等にを原則としてケアする必要があります。たとえば、入浴は脱衣した後にタオルをかけて列をなして待機させ、ベルトコンベアのようにお風呂に入れていくことが起こり得るのです。我々はいかなる時も、ご本人の意思に立ち返ることを心がけています。


働きやすい仕組みつくりたい
~すべては笑顔のために~

――「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」で働きたいと思って入ってくるスタッフの方は多いですか。

高橋 そうですね。特に看護師は事業所名に「ホスピス」と入っているので、在宅ホスピス、緩和ケアをやりたいという思いで飛び込んでくる方が意外と多いのです。そのフィルターがかかっているので、入職後のミスマッチ退職は少なくないと感じます。

 僕はこれから多死時代を迎える日本においては、「訪問看護ステーションの充足」が最も大事だと考えたのですが、実際に事業所を経営してみると、訪問看護という在宅サービスは「在宅へ強い思いを持つ訪問看護師の、個人犠牲の上に成り立っていることと、気づきました。これから訪問看護師の数を増やさないといけないことは自明です。訪問看護や在宅サービスが敷居の高い世界ではなく、働きやすく働きがいのある職種に変えないと、在宅サービスの質も量も上がっていかないと考えました。看護師は94%が女性です。働き盛りと考えられる30~40代の女性は子育て期のど真ん中にいます。子育て期の女性が参加しやすい「働ける仕組み」をつくりたいと思っています。


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ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス

――スタッフの表情が、いつも(何かに追われて)苦しそうな表情で働いていると、患者さんや家族がが気遣ってしまいますよね。

高橋 当社は「すべては笑顔のために」というキャッチフレーズを掲げています。少なくとも直接処遇スタッフが笑顔でいないと、入居者や家族の笑顔は望めません。笑顔は連鎖していくものだと思います。


本人の自己責任の上で、
自己実現へ向かう

――提供しているサービスの特徴は何ですか。

高橋 サービスを提供するにあたって、我々は本人の意志、自己決定を尊重しています。自己決定をして自由に生きることは、自己責任と表裏一体だと思っています。自己責任のない自己決定はありません。食事・入浴・排泄という希望の多いケア全てに必ず一定のリスクはあります。本人と家族に、自己責任についてしっかりと説明する必要があります。リスクを背負わずしてメリットは得られません。自己責任は我々が無責任なことをすることではありませんので、ここをしっかり理解していただく必要があります。

 在宅では、自己責任というプラットホームを提供するトレードとして病院では得られない自己実現が可能です。病院では無限責任が問われますから、手が出せない領域があって当然です。これは制度的なものと理解する必要があります。そこが病院との大きな違いです。

 また福祉の世界では、手を差し伸べて差し上げての「至れり尽くせり」が良いことであると考える傾向があります。手を出すことは能力を奪うことです。食べ物を口に運べば自分で食べる能力を奪し、車イスで安全に移動してあげれば、自分で歩く能力を奪うことです。介護というのは、多くの人が望んでいなかったサービスではありませんか。

 自己実現に向かって、自己責任というプラットホームの上で、我々は仕事をさせていただいています。リスクを含みますが、自宅でも病院でも実現できないことが実現できる大きな可能性を持っていると思います。


文/冨岡由佳子
取材・撮影/木村寛明(BIZLAW)



※注

(注1)「シェアハウス型ホスピス住宅」
ホスピスとは、死を目前にした人の身体的・精神的な苦しみを緩和する目的でつくられた療養所や病院。

(注2)「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」
24時間看護師常駐の、がん患者、難病患者、重度介護者専門療養住宅。
▼ホームページURL(http://f-hospice-kmm.com/index.html

(注3)訪問看護ステーション
自宅で療養する人に対して、訪問看護を行う目的で運営される事業所。看護師・保健師・助産師・理学療法士などが所属し、医師や関係機関と連携して在宅ケアを行う。

(注4)アドバンスケアプランニング
ACP(Advance Care Planning)。意思決定能力低下に備える対応プロセス全体を指す。患者の価値を確認し、個々の医療の選択だけでなく、全体的な目標を明確にさせることを目標にしたケアの取り組み全体。患者が治療を受けながら、将来もし自分に意思決定能力がなくなっても、自分が語ったことや書き残したものから自分の意思が尊重され、医療スタッフや家族が、自分にとって最善の医療を選択してくれるだろうと患者が思えるケアを提供すること。


高橋正様を講師に迎えたセミナーが開催されます!

NPO法人シニアライフ情報センターが主催し、講師に高橋正様をお迎えしたセミナーが開催されます。 高橋様の熱意のこもったお話をライブで聴くことができる貴重な機会です。詳しくは、NPO法人シニアライフ情報センターのホームページをご確認ください。
(URL:http://senior-life.org/news_1.htm


高橋 正

Profile

高橋 正 [カイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長]

カイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長。一級建築士、宅地建物取引主任者。
1962年神奈川県生まれ。東京工芸大学工学部卒業後、都内設計事務所で病院建築や公共施設の設計に携わる。1990 年㈱丸山工務所(ユーミーらいふグループ)に入職。湘南エリアでデザイナーズマンションなどの開発に携わる。2001年丸山工務所で高齢者事業を立ち上げ、2008年㈱ユーミーケア社長就任。
2012年㈱ユーミーケアの代表を辞任し、カイロス・アンド・カンパニー㈱を創業。2013年に訪問看護ステーション「訪問看護ファミリー・ホスピス本郷台」、2014年に「訪問看護ファミリー・ホスピス小田原」、日本初のシェアハウス型ホスピス住宅「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」を神奈川県小田原市に開設。




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