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物語が生まれる
ホスピス住宅をつくりたい

カイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長 高橋 正

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高齢者と最期を見つめたホスピス住宅へ込める思い 第1回

家族あるいは自分が最期を迎えることになった時、皆さんはどういう形を望みますか。終末期をどう迎えるかを考える上で、1つの選択肢となる「シェアハウス型ホスピス住宅」(注1)
日本初のシェアハウス型ホスピス住宅である「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」(注2)は、入所者が互いに支え合い、終末期を自分の意志で自由に暮らせる「おうちが病院」がコンセプト。当ハウスは、がんと難病患者、重度介護者を対象とした少人数制を特徴として訪問看護ステーション(注3)が併設されています。
設立者のカイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長・高橋正氏に、今求められている高齢者住宅のあり方と、当ハウスに込める想いについて、3回にわたってお聴きします。



求められているのは、
最期に安心して暮らせる場所

――高齢者住宅に関心を持ったきっかけを教えてください。

高橋 カイロス・アンド・カンパニー(注4)を創業して3年が経ちました。もともと僕は、建設不動産会社でアパート・マンションの企画・設計をしていて、湘南エリアにサーファーマンションなどをつくっていました。そうした中、少子高齢化で若年層向けのアパート賃貸は先細り市場だと考え、15年程前から高齢者住宅の企画を手掛けるようになりました。ユーミーケア(注5)の社長時代を含めた約10年間で、湘南エリア中心に高齢者住宅を約30棟展開しました。

 僕は不動産業界の人間なので、はじめは介護分野に深く入っていこうとは思っていませんでした。でも、入居者が期待しているのは、生活支援や認知症、終末期になった時に、安心して暮らせる場所です。その答えを持たなければ住宅は売れないということを、経験や失敗から学びました。僕は建築というハードからスタートしましたが、最終的には、ソフトこそ高齢者住宅を求める方の一番の目的だと気がつき、ソフトに力を入れていくことにしました。

 入居者が心配しているのは、どんな状況になっても最期まで面倒を看てくれるのかどうかというところです。多くの高齢者施設では、認知症が進んで徘徊や暴力行為をするような状況になると追い出されます。または終末期になってがんや難病の診断が出て、施設の看護師が手に追えない状態と判断されてしまうと施設から追い出されます。

 多くの高齢者が望む一番心配なところで追い出されてしまう。「チャーシューめんを頼んだのにチャーシューがはいっていないラーメンを出されたみたいなもんです」自分も含めて、本当に最期までケアしてくれる事業者がいない状況でした。

 自分で起業して事業を始めるリスクを考えた時に、やはり「ニッチな分野を極めよう」と結論を出しました。認知症は既に多くの事業者が取り組んでいたし、将来的に良い薬が開発されるのではないかとも思いました。でも、高齢者住宅の業界で、終末期ケアに本気で取り組む事業者はいなかった。死はおそらく近未来では克服できないとも考え、ターミナルケア(注6)に大きな社会使命も感じましたので、在宅ホスピスの事業に特化して起業することことを決めました。


過ごしてほしい時間の質を、
ハードで表現する

――不動産の分野から入っていって、ハードを究めようとしていたところ、ソフトが大事だと気づかれたのですね。

高橋 それがソフトを究めていくと、やはりハードの大事さに気付かされました。

例えば「廊下を挟んでハーモニカ状に並ぶ部屋・食堂」という老人ホームの典型プランで施設をつくったら、私は、入居者の皆さんが寂しそうに感じました。「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」は、中央にパブリックなスペースがあって、それを囲むようにプライベートな部屋がある。そして大半の入居者が自室のドアを開けています。中央にテーブルがあって、そこにスタッフがいて、スタッフ同士やスタッフと入居者の会話が聞こえる。

 ホームホスピス宮崎「かあさんの家」(注7)は私の原点ですが、運営するNPO法人の理事長市原さんは、「まな板でたくわんを切る音、味噌汁の匂い、そういう生活の音や匂いを感じられる環境が、生活の場で生き切るということ」とおっしゃっています。


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1階中央に置かれた屋久杉のテーブル

 当ハウスでは、ここで過ごしていただきたい時間の質を、ハードでも表現しています。例えば、中央のパブリックスペースに屋久杉のテーブルを置いていますが、機能的には屋久杉である必要はないわけです。でも、我々が特別な時間をここで過ごしていただきたいと思っているのかが、少しは伝わるかなと考えました。無難なものより、「おじいちゃんがあのテーブルでお茶をこぼしちゃったわね」みたいな「物語」が生まれる仕掛けがあった方が、「特別な時間の思い出作り」のお手伝いができると僕は思っています。

 僕はハード屋からスタートしてソフトの大事さを学びましたが、良いソフトをつくろうとすると、ハードの不具合との葛藤にぶつかります。最終的にソフトこそがこの事業の根幹であるは絶対的価値ですが、ソフト(人間の行動)はハード(建物)に支配されると改 めて学びました。ソフトを熟知した上で、ハードをしっかりつくることです。


――高齢者住宅の事業を始めるにあたって、モデルにした施設はありますか。

高橋 ホームホスピス宮崎「かあさんの家」は、民家を借りてホスピスをされています。そこは本当に家族のように、疑似家族として高齢者の方と共同生活をしながら、終末期ケアをしています。

 僕もとても感動して、何度も訪れました。理事長の市原さんが「グループホーム(注8)の9人や特養(注9)の10人というのは人数が多すぎて、どうしても利用者対スタッフの関係になってしまう。利用者同士のコミュニティが生まれにくい。ここは5、6人という規模だから1つのテーブルを囲むことができて、隣のおじいちゃんの食べこぼしをおばあちゃんが拾ってあげるような相互支援の関係ができる」ということ。それで僕も、1フロアの定員数を1つのテーブルを囲める6人にしています。

 当ハウスのケアのあり方は、入居者がスタッフに寄りかかるのではなく、まずは自分で立つことと、そして小さな家族として互いに支え合うことです。我々は、その外側で足りないところをサポートに徹します。そこはホームホスピスに学んだ、自己決定・自立支援をコンセプトの核にしています。

(第2回につづく)


文/冨岡由佳子
取材・撮影/木村寛明(BIZLAW)



※注

(注1)「シェアハウス型ホスピス住宅」
ホスピスとは、死を目前にした人の身体的・精神的な苦しみを緩和する目的でつくられた療養所や病院。

(注2)「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」
24時間看護師常駐の、がん患者、難病患者、重度介護者専門療養住宅。
▼ホームページURL(http://f-hospice-kmm.com/index.html

(注3)訪問看護ステーション
自宅で療養する人に対して、訪問看護を行う目的で運営される事業所。看護師・保健師・助産師・理学療法士などが所属し、医師や関係機関と連携して在宅ケアを行う。

(注4)カイロス・アンド・カンパニー
2011年設立。高橋氏が代表取締役社長を務める。高齢者の自立から介護、終末期というステージごとに、ニーズに合う住宅やサービス提供を行う。特に認知症や終末期ケアのプロフェッショナルとして、安心社会の実現を目指す。
▼ホームページURL(http://kairos-company.com/index.html

(注5)ユーミーケア
神奈川県湘南地区で介護事業を展開する㈱ユーミーケアは、2015年10月株式会社学研ココファンと合併。㈱学研ココファンは、㈱ユーミーケアがこれまで取り組んできた湘南CCRC(Continuing Care Retirement Community)を継承し、自立から終末期まで、住まい、医療、介護を同じ地域(神奈川県湘南地区)で受け続けられる高齢者のためのコミュニティを提供している。 高橋氏は、ユーミーケアにおいて、湘南エリアに「湘南ケアセンターシステム」を構築。サ高住を中心に、介護付き有料老人ホームやグループホームなどの介護施設を取り込み、多様な在宅サービスを組み合わせ、自立期から介護、認知症、ターミナルケアまで対応する「途切れない介護・100%の終身ケア」の住宅を実現。湘南エリアで26棟700室の高齢者住宅を展開した。

(注6)ターミナルケア
治療困難な患者と家族を対象とする、身体・精神両面の終末期ケア。緩和ケア。延命治療が中心でなく苦痛と死に対する恐怖の緩和を重視し、自由と尊厳が保障された生活の中で死を迎えられるよう援助する。

(注7)ホームホスピス宮崎「かあさんの家」
自宅ではない、安心のケア付きのもう1つの家。住み慣れた地域、家にできるだけ近い環境で過ごしてほしいという思いで開設されたケアハウス。看護師・介護福祉士などの専門職が24時間常駐し、ボランティアや地域の人々の支援を受けて運営される。 ホームホスピスとは、自宅に近い環境で自然な看取りができる場所。普通の一軒家を改装した場所で、少人数で共同生活を送る。
▼ホームページURL(http://www.npo-hhm.jp/past/mother/index.htm

(注8)グループホーム
介護保険制度において、数人の認知症高齢者が共同住宅に住み、職員とともに日常の家事を行うことで症状の進行を遅らせ、家庭介護の負担を軽くする施設。

(注9)特養
特別養護老人ホーム。重度の介護を必要とする要介護者が、少ない費用負担で長期にわたり入所できる施設。社会福祉法人や地方自治体などにより運営される公的な介護施設。


高橋正様を講師に迎えたセミナーが開催されます!

NPO法人シニアライフ情報センターが主催し、講師に高橋正様をお迎えしたセミナーが開催されます。 高橋様の熱意のこもったお話をライブで聴くことができる貴重な機会です。詳しくは、NPO法人シニアライフ情報センターのホームページをご確認ください。
(URL:http://senior-life.org/news_1.htm


高橋 正

Profile

高橋 正 [カイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長]

カイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長。一級建築士、宅地建物取引主任者。
1962年神奈川県生まれ。東京工芸大学工学部卒業後、都内設計事務所で病院建築や公共施設の設計に携わる。1990 年㈱丸山工務所(ユーミーらいふグループ)に入職。湘南エリアでデザイナーズマンションなどの開発に携わる。2001年丸山工務所で高齢者事業を立ち上げ、2008年㈱ユーミーケア社長就任。
2012年㈱ユーミーケアの代表を辞任し、カイロス・アンド・カンパニー㈱を創業。2013年に訪問看護ステーション「訪問看護ファミリー・ホスピス本郷台」、2014年に「訪問看護ファミリー・ホスピス小田原」、日本初のシェアハウス型ホスピス住宅「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」を神奈川県小田原市に開設。




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