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企業に採用される人、
採用されない人、その資質の差

株式会社ジュリスティックス
リーガルプレースメント事業部長/リーガル専門ヘッドハンター 野村 慧

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Decade of the In-house lawyer 第2回

 10年で11倍増加し、その6割が60期以降の若手であるインハウスローヤー。その増加には、企業側の「自前主義」「グローバル化」と、よりビジネスの現場で活躍したいという応募者側の意向がある、とジュリスティックス リーガルプレースメント事業部長 野村氏は語る。では、インハウスローヤーに求められる資質はこの10年でどう変化したのか。企業に受け入れられる人、受け入れられない人の違いはどこにあるのか。その分析を聞いた。第2回は「企業に受かる人と受からない人の差は?」



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インハウス必須の能力・資質
その過去と現在の姿とは

――10年間で11倍も増加したインハウスローヤーには、需要側、供給側でのさまざまなニーズがあることをお伺いしました。では、10年と現在で、インハウスローヤーに求められる資質はどのように変化したとお考えですか?

野村 私は、インハウスローヤーに求められるものは10年前も今も代わらないと思っています。クライアント様からヒアリングさせていただく際の、求められる人物像は特に変化していないように思います。
 企業法務の命題は問題解決です。ここで言う「問題解決」には問題の予防も含みます。インハウスローヤーに求められる能力や資質は、今も昔も同じで、いかに迅速に問題を解決できるか、という一点でしょう。
 特定の企業で発生する問題の裏には、社内システム、社内の権力関係、スタッフ個々人の心理的背景など、数多くの要因があります。それらは純然たる法的な要因以外のものです。
 自分の足を使って現場で社内の人々と連携しこうした要因を探り出し、その問題の最適解を導くこと。それは10年前も現在も、これからも変わらないと考えます。

 ただ、頻繁な法改正や、グローバル化やIT化など、ビジネス環境の急激な変化に対応する能力・資質の必要性は、現在のインハウスローヤーのほうが高まっていると言えるでしょう。そして、それは、法律専門家であるインハウスローヤーだけに求められる資質ではなく、ビジネスパーソン全体に求められている能力・資質であると思います。
 まず、インハウスローヤーなら国内取引、日本法のみで食べていこうとする方には厳しい時代になってきていると言えるでしょう。グローバル化の波は確実にリーガル市場にも押し寄せていますから、欧米法など海外の動向をも理解していないと、競争に勝てない状況になっていると思います。また、一口にグローバル化と言っても、主戦場がどこに移るのかを敏感に察知するアンテナも必要です。例えば、海外進出企業にとっては現在、アジアが中心ですが、これからは南米やアフリカが来る、とも言われています。そのシーンがやって来たときに、こうした現地法・現地慣習に習熟し、人的ネットワークを持っているインハウスローヤーは重宝されるでしょうね。

――中国はどうでしょう?

野村 中国はまた別の切り口です。現在は進出企業よりも撤退企業のほうが多いこともあり、ニッチ特化戦略として上海などに進出する法律事務所が増えているように思います。ただ、まだまだ進出している事務所数は少ないので、逆にいえば競争のハードルが少ないと言えるでしょう。もっとも、日系企業も法務部に中国律師を採用することも増加しており、中国関係の採用については弁護士と中国律師との競合になるような事態も生じています。
 そもそも、インハウスローヤー自体、黎明期はニッチな存在でした。ニッチ領域でキャリアを積み専門性を高めていくこともまた、インハウスローヤーに求められる資質であるとも言えます。

「専門力」と「傾聴力」

――実際のところ、インハウスローヤーを目指して企業に応募して、受かる人と受からない人の違いはどんな点にあるのでしょう?

野村 専門分野を持っている人。もしくは、自分が勉強してきた過程に一定の自信を持っている人。そして、専門分野以外には謙虚な人。
 こうした人は面接を突破しやすいです。
 採用規定に「自分に自信のある人」と入っているわけではないですが、人を採用するときに自信のある方を採用するのは心理的に当然です。
 具体的な振る舞い方の傾向として、自分の専門分野に自信を持っている方は、与えられた質問に端的に回答します。面接官は自然と、この人になら仕事を任せられるのではないか、と思うでしょう。

 またその一方で、面接を突破しやすい方には「傾聴力」があります。自分が知らないことに対して過剰防衛せず、謙虚に情報を得ようとします。無知であることを隠さないんです。
 「傾聴力」のある人の周囲には、自然と人が集まるようです。人は話を聞いてほしいですから。企業内でも同じで、こうしたキャラクターの人には自ずと情報が集まります。社内のキーマンは誰なのか、社風は、文化は、新旧の経営方針の違いは……。得意分野の「専門力」と、未知の分野に対する「傾聴力」がある人は、面接を突破しやすいですね。

  ――では、面接で落ちてしまいやすいのはどんな方でしょう?

野村 このようなことを言える立場ではありませんが、内定が出る方と出ない方の特徴を分析していくと一定の傾向を感じるのも事実です。
 落ちてしまいやすいのは、「私は司法試験に受かりました。弁護士です」という、あからさまに権威主義的な人でしょうか。実際には、ほとんどいらっしゃらないのですが。
 我々エージェントに対する態度でも、自分が弁護士であることを前提として、とにかく求人案件をください、という態度の方はやはり落ちてしまいます。
 そうした方は、いざ具体的な質問に入ると答えられないことも多いように感じます。実際に私どものキャリアコンサルティングを受けられても、リーガル市場の人材動向について知識が乏しい。未知の物事に対して準備を行おうとする意識が不足されている方は落ちやすいとは思います。権威主義的であるため、書籍やインターネット以外で情報を得る機会を、自ずと狭めてしまっている。つまり生の情報を知らないということがあるのかもしれません。
 そうした方は、面接でも傾聴力の弱さを見抜かれます。


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 これまで私がキャリアコンサルティングを行ってきた方々の中で、最も優秀と思った方は印象に残っています。その方は司法試験にトップクラスで合格し、任官の道に進まれたほどの方でした。カウンセリングでは、過不足無く端的にご自分のお仕事をご説明され、その後に私が、転職希望先の法務部分析に移りました。そこから、10個以上のご質問が投げかけられたのですが、いずれも的を射たものでした。「やりがいは」「待遇は」といった各論的な質問ではなく、現在のリーガル市場における自分のポジショニングや、その企業で手がけられる仕事の全体像など、自分がキャリアを作るうえで必要な質問をすべて体系づけて問い合わせてきたのです。その態度は非常に真摯で謙虚なものでした。
 情報を体系化するために、質問を的確に使用する能力に長けている。結果的に、汎用性の高いノウハウを持って面接に進まれ、内定を獲得されました。
 その案件は中途採用者の募集でしたが、中途採用希望者からの質問には、その人の経験の蓄積が現れているべきと採用側は見ています。やりがいを問うのは、新卒でもできますから。
 質の高い質問ができれば、面接時でのコミュニケーションの質が異なってきます。一次面接で質の高いコミュニケーションを行い、面接担当者と盛り上がることができれば、そこから得られる情報のグレードが上がります。一次面接で得られた情報を整理して、より具体的に志望動機も話せるようになります。結果として二次面接の質も、ほかの応募者に比して大きな差が出てくるのです。

――しかし、やはり採用面接である以上、やりがいや待遇に言及してしまうのは、仕方のないことでは?

野村 おっしゃるとおりです。そうした不安を払拭しようとするあまり、自分が何を提供できるのかをアピールすることを忘れてしまって「企業が何を提供してくれるのか」にのみ固執してしまうのは、面接では案外やりがち。仕方のない面もあります。しかしその結果、報酬はどれくらいか・個人受任が扱えるか・海外留学制度があるかなどのみに質問が集中し、事業内容については、勉強不足であることを露呈してしまうことが見受けられます。このようなケースが面接に落ちる大きな要因になっているように感じます。
 有価証券報告書やIR資料、関連業法の確認などを経たうえでの、思考と分析をした結果の質問ではない。どのような利益を自己に与えてくれるのかにフォーカスしたコミュニケーションになってしまっていると言い換えることもできるでしょう。
 社内でインハウスローヤーが特別扱いされるのは、日々の業務で信頼を蓄積し、実績を作ってからなのであって、弁護士であること自体が価値であるかのように振る舞うと、今のリーガル分野での人材マーケットの中では、厳しい評価を受けることになるのではないでしょうか。

 

将来を過去・現在から
語ることのできる人は強い

野村 司法試験を通過した方は、まとめられた物事を理解する能力は非常に高いです。統計立てられた過去の情報から一定の答えを用意する能力に長けています。面接でも、これまで何をしてきたのか、今何に取り組んでいるのかを分かりやすく説明できる方は多くいらっしゃいます。
 その反面、説得性を持って将来を語ることのできる人はやや少ないと感じます。自分の将来は、ひとりひとりの構想力にゆだねられる、きわめて自由度の高い物事ですから、ある意味、起業家のようなマインドが必要となります。
 自分は今、市場の中でAというポジショニングである。だから将来、A’を目指すべきである、というように転職の動機がつながっている人は、より経営に近い存在として組織は育成しようとします。それは企業でも、法律事務所でも同じです。過去から至った現在を現状分析し、その演繹として将来を語ることのできる人材は強いと言えますね。

――なるほど。ところで、面接で効果的な質問を行う際の、具体的なコツのようなものはありますか?

野村 カウンセリングにお越しください(笑)。
 これは、コンサルティングの手の内をさらしてしまうようであまり言いたくはないのですが(笑)、ひとつだけ。
 志望する企業の有価証券報告書を漫然と眺めるのではなく、事業系統図を見ることです。子会社・提携会社との関連や、その企業のビジネスのフローを一望する際に、事業系統図は非常に役立ちます。

第3回に続く


写真/柏崎佑介
取材・編集/八島心平(BIZLAW)



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 Decade of the In-house lawyer

野村 慧

Profile

野村 慧 [株式会社ジュリスティックス
リーガルプレースメント事業部長/リーガル専門ヘッドハンター]

弁護士及び法務人材の転職支援における、業界有数のヘッドハンター。
株式会社ジュリスティックス リーガルプレースメント事業部長。
求職者側では、執行役員~法務スタッフ・弁護士(パートナー~アソシエイト)・司法修習生等の転職支援を成功させてきた経験を持つ。クライアント側では、数百の企業・法律事務所のリクルーティング活動を支援してきた実績を有する。法律事務所では、大手法律事務所から一般民事系法律事務所まで、企業としては、上場企業を中心に業界を問わず担当。 複数の日本を代表する大手企業より、独占でコンサルティング業務を受注している。
これまで、大手金融機関の法務人材採用に関するアドバイザーや東証1部上場企業の法務課から法務部昇格のプロジェクトに関与するなど、活動は多岐にわたる。




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