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キャリアを拓く
弁護士から研究職へ

筑波大学図書館情報メディア系・准教授 石井 夏生利

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「個人」をめぐる法と日本 第4回

昨今、企業の法務部に所属する企業内弁護士が増えている。石井夏生利先生の場合は、法律事務所とユニ・チャーム株式会社の法務部での経験を経た後、大学に移り、情報セキュリティの専門家として転身を遂げた。法曹資格を持つ人は今後どんな風に考えてキャリアを歩んでいけばよいのか。石井先生の経験をもとに話を聞いた。(取材日2014年8月6日)



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社会人経験のない苦労

――石井先生のこれまでのキャリアについて教えてください。

石井 大学在学中に司法試験に合格し、司法研修所を修了した後は法律事務所で働きました。そこでは、相続・不動産・離婚などの民事事件や、刑事事件など、様々な案件に関わらせていただきました。ここでの経験はとても貴重でしたが、弁護士としての経験が不足していたことはもちろんのこと、社会経験が乏しい立場ではつらいことも多くありました。法律相談に来られる依頼者に向けて、社会経験もない20代半ばの人間が、このまま弁護士の仕事のみを続けて、適切なアドバイスなり解決策の提示を行うことができるようになるのだろうかとの思いもありました。
 また、長きにわたり弁護士業務を続けて来られた先生も多くいらっしゃいますが、私自身はほかの仕事を知らないまま年を重ねることへの不安もありました。そのため、早い段階で一度社会人経験を積もうと考え、ヘルスケア用品などを手掛けるユニ・チャーム株式会社に転職しました。法務部に所属し、主にコンプライアンス対応や個人情報関連の業務などを行いました。

――企業法務から研究分野に移られたのはなぜですか?

石井 はじめは社会人大学院に通い、個人情報について学びたいと考えたのがきっかけでした。しかしそこで縁があり、助手の仕事の話をいただきましたので、休職中だった会社を退職し、研究中心の仕事に移りました。ちょうど時代的にも個人情報保護や情報セキュリティの分野が注目されている時期と重なったため、時代のニーズに合わせて、今の仕事をしているといった感じです。

企業法務と企業内弁護士の
ミスマッチも

――弁護士を採用する企業が増えていますが、うまく活用できているのでしょうか?

石井 弁護士の実務から離れてずいぶん経ちますので、今のことは分かりませんが、私が企業法務に移ったときは、企業側も弁護士の使い方について確固たる方針を有している訳ではなく、企業側のニーズと弁護士経験を有する者のスキルにミスマッチが起きているのではないかと感じていました。企業法務に勤めるのであれば必ずしも弁護士資格は必要ではありません。なぜ弁護士資格を持った人間が必要なのか、どのようなことをしてほしいのかが明確でないと、企業内弁護士を雇った意味が薄れてしまうような気がします。

――これまでのご自身のキャリアを振り返って、どう思われますか? 事務所弁護士、企業内弁護士を経て大学での研究職と、順風満帆ですね。

石井 そんなことは決してありません。私は、弁護士としては数年しか働いていませんでしたが、弁護士として一人前になるには、最低でも10年は法律事務所に所属し、様々な事件を担当する必要があると言われてきました。今でもそれは変わらないのではないでしょうか。特に、資格の有無は、訴訟を経験できるかどうかという違いにかかってきますので、弁護士として地に足をつけた仕事をするためには、代理人や弁護人として事件を引き受けて、訴訟経験を積むことが大切になるだろうと思います。もちろん企業内弁護士として得られることも多々あるでしょうが、私のように、企業に就職する弁護士が少なかった時代は、企業内弁護士として働く意義という課題に直面しました。今は就職事情も変わってきているとは思いますが、企業内弁護士として働く場合には、先輩方によく話を聞いておいた方が良いでしょう。
 また私自身は、現在の仕事をするのであれば、海外問題に慣れるという意味で、渉外法律事務所の経験を積んでおく道があったかもしれません(結局その道は歩みませんでしたが)。大学院に入るまでは国内問題しか扱ったことがありませんでしたので、プライバシーや個人情報保護の分野で海外動向を探る際に、調査に非常に苦労しました。今でも国外動向の調査に取り組むときには、いろいろな面で苦労しています。グローバルな仕事をしたいと思うのなら、若いうちに渉外法律事務所での経験、さらには留学の経験があった方がよいと思います。

研究テーマを
興味本位だけで選んではいけない

――自身の興味があることをテーマに研究職で仕事ができたら、やりがいも楽しさも両立できると思います。常におもしろく仕事に打ち込めているのでは?

石井 仕事について「おもしろい」と思うことはないんですよ(笑)。むしろ、苦労することのほうが多いです。研究職の中には「自分にとっておもしろい」「好き」という理由でテーマを選んでいる人が多いかもしれませんが、法学という分野では、おもしろいというだけで研究ができるかは疑問です。自己満足な論文を書いたとしても、研究が社会に役立たなければ、社会科学としての役割を果たすことができません。私の場合、おもしろいからこのテーマを選んだのではなく、社会的な必要性があるだろうと感じたので、この分野の研究を行っています。

――今後の抱負についてお聞かせください。

石井 私が今、専門としている情報セキュリティ、個人情報保護の研究分野は、インターネットの発達とともにますます注目されています。特に個人情報保護法は、来年の法改正を控え、事業者も新たな対応を求められる場面が出てきます。情報セキュリティの分野では、特定秘密保護法が制定され、国の安全を守るための法制度が動き出します。国の情報を守るためには個人のプライバシーを犠牲にしなければならない場面もあり、「セキュリティ」という言葉は多面的に分析しなければなりません。時代の要請に応えられるよう、この分野の研究を続け、社会に役立てていければと考えています。

石井 夏生利(いしい かおり)

石井 夏生利(いしい かおり)

<学歴>

1997年3月

東京都立大学法学部法律学科卒業

2007年3月

中央大学大学院法学研究科国際企業関係法専攻博士後期課程修了。博士(法学)

<職歴>

1997年4月

司法研修所(第51期)

1999年4月

弁護士登録(東京弁護士会)

2001年8月

ユニ・チャーム株式会社法務部

2004年11月~2010年3月

情報セキュリティ大学院大学 助手、助教、講師、准教授

2010年4月~

筑波大学大学院図書館情報メディア系 准教授

<受賞歴>

2010年3月

電気通信普及財団 テレコム社会科学賞 奨励賞

2011年9月

ドコモ・モバイル・サイエンス賞 社会科学部門 奨励賞

2012年度

筑波大学SS教員評価(研究領域)


文/笠原崇寛
写真/柏崎佑介
編集/八島心平(BIZLAW)



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 「個人」をめぐる法と日本

石井 夏生利

Profile

石井 夏生利 [筑波大学図書館情報メディア系・准教授]

1974年神戸市生まれ。1996年司法試験合格。1997年東京都立大学(現首都大学東京)法学部法律学科卒業。1999年~2004年、ユニ・チャーム株式会社勤務。2007年中央大学大学院法学研究科国際企業関係法専攻博士後期課程修了、博士(法学)。2004年11月以降、情報セキュリティ大学院大学助手、助教、講師、准教授を経て、2010年4月より現職。




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