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個人情報を
削除できるのは誰か?

筑波大学図書館情報メディア系・准教授 石井 夏生利

個人情報流出を止める
「消しゴム法」の実効性の課題

――アメリカ・カリフォルニア州ではSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の投稿を削除できるボタン設置を義務付ける「消しゴム法」ができましたが、個人情報流出の歯止めになるのでしょうか?

石井 一定程度の効果はあるかもしれませんが、あくまで投稿した児童が削除ボタンを押せるようになるということなので、効果は限定的だと思います。また一度投稿された情報はすぐにコピーされてネットで出回ってしまうため、取り返しがつかないケースも多いのではないでしょうか。また「ウェブ魚拓」のように削除前の情報を他人が保存し、誰もが閲覧できる状態にしてしまえば、本人が削除しても手遅れというケースもあります。
 SNSを活用して情報発信をする児童も多いと思いますが、削除できるかどうかではなく、投稿する前に情報の内容を吟味し、慎重に公開する配慮が必要でしょう。ネットに発信した情報は後から削除しても手遅れと考えた方が無難です。

――個人情報の削除という意味では、自身が死んでしまった後の個人情報の取り扱いも焦点になっています。

石井 検索大手のヤフーでは、生前に申込みしておけば、亡くなった後に、データや画像を削除するサービスを始めました。ネット上のデータ削除サービスは今後ネット事業者にサービスメニューとして定着していくかもしれません。

ヤフーの生前準備

2014年7月14日開始された「ヤフーの生前準備」。サービス登録者の死後、Yahoo!ボックスのデータ削除、Yahoo!ウォレットで利用している有料課金サービスが停止される。また、指定した相手へのメッセージ送信機能や「プロフィール/メモリアルスペース」の作成が行える。

個人情報保護は
ネット上のイノベーションを制約する?

――ネット上の個人情報の保護やサービスは、国によって異なるという印象を受けます。

石井 ヨーロッパはプライバシーを尊重し、個人情報をできるだけ保護する傾向が強いと言えます。ただ、技術の進展に伴う論点の把握はアメリカの方が早くて、ヨーロッパでは、例えば個人情報(個人データ)に該当するかどうかという問題を考えるときには、クッキーやIPアドレスを例に出します。一方、アメリカの政府機関の報告書等では、クラウドコンピューティングやビッグデータの時代が到来したことを踏まえて、個人を識別できるかどうかをきれいに区別することはできないことを指摘しています。
 また、アメリカの法制度は、ヨーロッパとは大きく異なっていて、特に民間部門では、自主規制を基本に、児童の保護、医療、金融など、保護の必要性が高い分野で個別の法律を制定するというスタイルを取っています。その結果、アメリカの事業者は自由度が高く、ネットのサービスが進んでいるのもアメリカ企業が多いのが現状です。日本人でヨーロッパの有名なIT企業を挙げられる人は、あまり多くはないのではないでしょうか。
 プライバシーは個人の権利で、その重要性はいうまでもありませんが、理想論に走り過ぎると、ネット業界のイノベーションが制限されるリスクも発生します。個人情報については、プライバシー保護と公益性のバランスを考えることが重要です。ネットの情報はボーダレスに行き交うため、諸外国の法制度などを見ながら、日本なりの環境整備が必要だと思います。

第2回へ続く


文/笠原崇寛
写真/柏崎佑介
編集/八島心平(BIZLAW)



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 「個人」をめぐる法と日本


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石井 夏生利

Profile

石井 夏生利 [筑波大学図書館情報メディア系・准教授]

1974年神戸市生まれ。1996年司法試験合格。1997年東京都立大学(現首都大学東京)法学部法律学科卒業。1999年~2004年、ユニ・チャーム株式会社勤務。2007年中央大学大学院法学研究科国際企業関係法専攻博士後期課程修了、博士(法学)。2004年11月以降、情報セキュリティ大学院大学助手、助教、講師、准教授を経て、2010年4月より現職。




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