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個人情報を
削除できるのは誰か?

筑波大学図書館情報メディア系・准教授 石井 夏生利

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「個人」をめぐる法と日本 第1回

個人情報の中でも最近、インターネット上の「情報のあり方」が注目を集めている。個人にとって消したい過去がネット上に存在し続けていることが問題視され始めている。ネット上の情報削除をめぐる動きについて、海外の動向にも詳しい筑波大学図書館情報メディア系・准教授の石井夏生利先生に話を聞いた。(取材日2014年8月6日)

削除要請は
情報操作の懸念も

――ネット上に個人情報が漏えいする事件が相次ぐ中、個人情報の削除問題が話題となっています。最近「忘れられる権利」という言葉をよく目にするのですが、これはどういったものなのですか?

石井 2012年にEUの「個人データ保護規則案」で「忘れられる権利」が提案されました。「忘れられる権利」の典型例としては、ネット上にある個人情報をネットの事業者に削除を依頼できる権利のことです。
 スペインでは、社会保障費を滞納した過去をネット上から削除してほしいとの訴えが欧州司法裁判所にありました(2014年)。結果、欧州司法裁判所は「忘れられる権利」を認め、グーグルに削除依頼を要請しました。この判決をきっかけに、Googleが設置した削除依頼の申請フォーム経由から、わずか一ヶ月で7万件超の削除依頼が集まったそうです。ネットに出回った個人情報を削除する道が開けた画期的な出来事だったと思います。

――ネット上の個人情報を完全に削除することはできるのでしょうか?

石井 それは無理だと思います。ネットの特性上、容易にコピーが可能ですから。また情報そのものを削除するというより、グーグルの検索エンジンに引っかからないようにするだけに過ぎません。
 もちろんグーグルに引っかからなければネット上に存在しても、情報を探し出すのは大変ですので、実質「忘れられた」ということになるとの捉え方です。しかし一度ネットに漏れた個人情報は埋もれることはあっても消えません。ネットの特性上では、埋もれた情報をほじくり返すのはそう難しいことではありませんし、探そうと思えば探し出せてしまうと思います。

グーグルが削除要請に対応した情報の中には、大手マスメディアによる記事もあった。グーグルはマスメディアに削除の事実を伝達し、BBCやGuardian等は削除の事実とともに削除されたオリジナルの記事を報道。結果として、「削除された情報の拡散」現象も起こった。

――「忘れられる権利」では、どんな情報でも削除の対象にできるのでしょうか?

石井 そこが大きな問題です。個人にとって不都合な情報であっても、社会にとって公益性の高い情報もあります。例えば重大な犯罪を犯した人の事件を「忘れられる権利」の下で自由に削除や除外されてしまってもいいのかは疑問です。
 検索大手やネット事業者が利用者の要請に基づき、依頼された情報をすべて削除や除外してしまったら、自由に情報が発信・閲覧できるネットの存在意義が薄れてしまいます。とはいえネットの事業者が、どの情報を削除や除外すべきか、判断できるとするならば、検閲や情報操作にも通じる話になります。情報の公益性について一企業が判断できるのか疑問です。例えば有力な政治家が、政治家としての資質に関わる不都合な情報を削除するよう要請し、それが認められてしまったら情報統制にもなりかねません。過去の情報は、時の経過によってプライバシー性を帯びますが、他方で、「忘れられる権利」を強調しすぎることには慎重であるべきです。
 ある意味では、ネットの良さは様々な情報が既存のメディアのような検閲なしに公表・流通できる自由さにあると思います。ただし、動画の場合は、権利者団体が著作権侵害を理由に削除要請を行うことが多く、かなりの動画が削除されています。このような場合は、企業が削除に応じるかどうかを判断することは可能ですが、プライバシーは外延がはっきりしない権利ですので、何を持ってプライバシー侵害とするかを企業が判断するのは困難です。




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石井 夏生利

Profile

石井 夏生利 [筑波大学図書館情報メディア系・准教授]

1974年神戸市生まれ。1996年司法試験合格。1997年東京都立大学(現首都大学東京)法学部法律学科卒業。1999年~2004年、ユニ・チャーム株式会社勤務。2007年中央大学大学院法学研究科国際企業関係法専攻博士後期課程修了、博士(法学)。2004年11月以降、情報セキュリティ大学院大学助手、助教、講師、准教授を経て、2010年4月より現職。




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