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プロフェッショナルと
当事者の距離

ジャーナリスト 堀 潤

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一次情報の純度とプロフェッショナルの価値 第3回

一次情報をあますところなく掘り起こして発信する。それは物理的な制限のないネットメディアならではの可能性だ。では、蓄積された一次情報から見えてくるものは何なのか。そして既存メディアとネットメディアが共有すべきものとは? ジャーナリスト、堀潤氏インタビュー 最終回。



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――そもそも、堀さんがメディアを志したきっかけは何だったのでしょうか。そして、一次情報をあますところなく伝える、という意味合いでの、8bitNewsはどのような取り組みをされているのでしょう?

 私が学生だった90年代後半は、バブル崩壊後の混沌とした時期でもあり、メディアに対する不信感があった時代だったと思います。私自身そうでした。 松本サリン事件でのマスコミの先行報道、坂本弁護士一家殺害事件での、視聴率獲得のために放送素材を事前に対象者に開示するという禁じ手を犯したTBSの姿をリアルタイムに見ていました。それだけ報道被害が身近であり、個人の言論が封鎖されていた時代感があり、社会問題として改善しなければならないと思っていたんです。

 同時にインターネットカルチャーの黎明期でもあり、既存のメディアとは異なる情報チャネルの在り方を感じ始めてもいました。
 2000年代に入り、テレビはデジタル放送へ移行し、双方向のやり取りが可能になると言われ始めるようになりました。「情報の発信側と受信側の双方向性が実現されるなら、メディア不信が解消され、事実の収集も改善されるのでは?今行くならテレビだ」と思ったんです。

 ただ、本来の双方向とは、情報を持っている人と直接やり取りをするフラットな関係を指すもので、情報の発信者を上流とし、受信者を下流とする上下関係ではありません。その意味で、テレビのイノベーションは業界的な調整が必要でした。

 翻って、10年でインターネットカルチャーは急速に拡大しましたね。ミクシィに見るSNSの登場に始まり、今ではTwitterとの連携で軽やかな双方向性がテレビでも実現できるようになりました。SNSを活用しながら東日本大震災を取材した側として改めて実感したのは、「メディアの向こう側にいる視聴者は一次情報の保持者である」ということです。一次情報を掘り起こし、記録しておくことの大切さを痛感しました。


戦争は日常の延長だった
「みんなの戦争証言アーカイブス」

 今、8bitNewsでは「みんなの戦争証言アーカイブス」プロジェクトに取り組んでいます。
 これは、太平洋戦争終結から70年が経った2015年に、太平洋戦争を現役で過ごされた方々の声を集めてアーカイビングするという試みです。当時、戦争を体験された方々はご高齢です。伝聞ではない当事者の声を記録することの貴重さを訴え、クラウドファンディングで多くの支援をいただきました。
 このアーカイブに収録される映像の使用権はフリーです。戦争のアーカイブは権利処理が発生するものですが、「みんなの戦争証言アーカイブス」は、市民学習の教材や、映像作品を作りたい人への素材として、収録映像を無料で提供します。

 ご登場される方は、著名人から一般の人まで幅広く、さまざま。戦争の凄惨さだけではなく、日本が戦争へと向かっていった日常の空気感も含めて伺っています。何を食べていたんですか? 本や映画はどんなものを見ていましたか?ケーキなんて食べたりもしていましたか? など。
 こうした問いかけから分かってくるのは、当時の日本が決して、「軍国主義の急激な台頭により、戦争へと突入していった」という単一的な文脈で語られるような状態ではなかった、ということです。「いつの間にか戦争が身近なものとなっていった」「将校レベルの人物でも、当時の軍国主義には傾倒していなかった者もいた」といった声は、その当時を生きた当事者でなければ持ち得ない情報です。3時間に及ぶ動画もありますが、そのすべてをこぼさず、削らずに掲載しています。それができるのがネットメディアの力です。




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堀 潤

Profile

堀 潤 [ジャーナリスト]

1977年生まれ。2001年にNHK入局。「ニュースウオッチ9」リポーターとして主に事件・事故・災害現場の取材を担当。独自取材で他局を圧倒し報道局が特ダネに対して出す賞を4年連続5回受賞。2010年、経済ニュース番組「Bizスポ」キャスター。12年より、アメリカ・ロサンゼルスにあるUCLAで客員研究員。日米の原発メルトダウン事故を追ったドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」を制作。13年よりフリーランス。
NPO法人「8bitNews」代表。淑徳大学客員教授。
主著に『僕らのニュースルーム革命』(幻冬舎、2013)、『僕がメディアで伝えたい事こと』(講談社、2013)、『変身 Metamorphosis メルトダウン後の世界』(角川書店、2013)




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