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メディアの変革 2つの理由

ジャーナリスト 堀 潤

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一次情報の純度とプロフェッショナルの価値 第2回

「コンテンツは誰が作るのか」「運営コストはどう下げるのか」。これからのメディアの課題はこの2つと堀氏は語る。では、その解決のためのスタンスは? メディアの使命と価値とは? ジャーナリスト 堀潤氏インタビュー第2回。



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――現状のネットメディアと、既存のマスメディア、それぞれの課題はどのようなものでしょうか。

 今、YouTubeのような市民参加型のメディア、既存のマスメディアそれぞれが変革期に来ていますよね。

 参加型メディアの変革の背景にあるのは、「コンテンツの供給をどうするのか」という問題。配信ツールの普及でネットメディアが身近になった一方、コンテンツと呼ぶに足るだけのものを配信できる供給者を確保しなければならない。今、GoogleがプッシュしているYouTubeが分かりやすいですよね。
 YouTubeに始まるネットメディアでは、ホームラン以外はほとんど見られない。ほとんどの情報は埋没するので、恒常的に、多くの人に見てもらうための仕組みを必要とするんです。

 一方、既存メディアの変革の背景にあるのは、「運営コストをどう下げるのか」という問題。これまで多額の人件費、広告費用を使いながら運営されてきた既存のマスメディアも、運営コストを下げざるを得ない時期に来ている。
 それまで100人の記者を抱えて作っていたニュースを、5人のプロデューサーと95人の外部リポーターで作るような方向転換を考え始めています。

 私は、この2つの問題に共通する視点は「国民一人ひとりの当事者意識の程度」だと思うんですね。コンテンツ、即ちニュースを生み出す側における、当事者意識の問題につながっていく。今では、ひとつの社会的なトレンドとして情報公開が叫ばれ、民主主義はオープンソース化するべき、という言論も力強くなっている。ほんの3、4年前には考えられなかった。
 放送は民主主義の発達に貢献すべし、と放送法で定められています。では、民主主義って何か、と考えると、国民がそれぞれの自由や権利、幸福を求め続けるための仕組みですよね。そして憲法12条では、国民の自由と権利は国民の努力によってこれを保持すべし、とある。けれど、昨今の選挙投票結果を見ても分かるとおり、国際的に見ても日本は政治への参加意識が低い。行政や企業、教育機関などの誰かがやってくれると思っている。

 過去に、テレビの街頭インタビューを行っていたときに感じたことです。
 街を歩く人から国政についての意見を伺ってみても、「自民党にやって欲しい」「民主党の役割だから」「大企業の責任では」という回答がほとんどでした。
 この街頭インタビューを重ねていたある日、「これを重ねていても、何も変わらないな」と思ったんですよ。それで、「あなたはどう思いますか? あなたは何ができると考えています?」と聞くようにしたんです。
 すると、「あっ、そうか。これ俺のことだよね。私の問題だったんだよね」というレスポンスを下さる方も増えて来るようになりました。

 問いかけ方を変えるだけで、社会への視点が変わるんです。社会が他責的なものではなく、自分のこととして見えてくるようになる。普段、漠然と見ていた社会が、違う角度で見えてくるんです。
 そもそもメディアの役割は、公共性のある社会の創造に寄与すること。国民一人ひとりが、社会へのより強い当事者意識を持つようになれば、社会そのものに参画するしくみとしてメディアが作れる。そこで流通する情報は国民という社会の当事者のコンテンツそのものになると思いますよ。

在り続けることがメディアの使命

 これまでの市民メディアが失敗してしまった要因をもう一つ加えるなら、メディア単体で採算を取らなければならなかったことも挙げられますね。広告費に依拠し、人件費的に高コスト体質であったことです。つまり、記事が見られなければお金が入らないシステムでした。結果、テレビにおける視聴率至上主義のような状態となり、過激な見出しや著名人のオピニオンベースになった。ファクトベースというよりページビューを稼ぐことが優先になってしまった。今のネットメディアも同じところがある。クリックしてもらうためのPVありきになっている側面を感じざるを得ないメディアも、正直あるように思います。

 メディアは在り続けることが大事で、それがメディアの使命です。そのために8bitNewsでは、可能な限り運営コストをかけず、既存のインフラを組み合わせるやり方を取っています。投稿インフラはYouTube、プロモーションは各SNS、更新はWordPress。サーバ・メンテナンスはGoogle、プロモーションはFacebookと協同しているとも言え、WordPressを使えばどこでもサイトの更新が可能なので、極論すればオフィスの賃料もいりません。NPO法人としてセミナーなどイベントをするときは、8bitNewsの趣旨や志に共感をいただいているマスメディアの皆さんと一緒に組ませてもらう。
 2013年には、「8bitNews×講談社現代ビジネス 僕らのジャーナリズム学校」と題したワークショップを『現代ビジネス』編集長である瀬尾さんのご協力で行いましたし、毎日新聞とのコラボレーションで「毎日新聞社×8bitNews 毎日女性会議」というワークショップを毎月行っています。
 東京MXテレビやテレビ神奈川にも、個々人の情報発信の受け皿としての8bitNewsに共鳴してもらっています。

 今では、サイトに投稿されたものがテレビにそのまま流れる時代です。それまでは誰の耳目にも触れなかったものが、多くの注目を得られる環境にある。
 情報を発信したという実感が得られ、自分にもこんなに情報発信力があったんだ、という満足を得られるチャンスが拡がっている。

 特定秘密保護法の成立のように、メディアに対するプレッシャーがあり、情報発信が危機を迎えている時代感のある今でも、個々人が当事者となって個々に情報を出していけば、恐れることはないんですよ。
 企業人としてのジャーナリストは、報道への志があっても「社命に背いて情報発信した」「会社責任になるならば沈黙を選ぶ」というスタンスを取らざるを得ない。ジャーナリズムという使命がある一方、生活との折り合いを考えなければならない。 ただし、「情報を世の中に出す」と純粋に考えると、今では誰でもできる時代になっているんですよ。冒頭でも述べたように、プロフェッショナルとしての企業人ジャーナリストの課題は、何をどのように伝えるか、という文脈作りにシフトしていると思います。




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堀 潤

Profile

堀 潤 [ジャーナリスト]

1977年生まれ。2001年にNHK入局。「ニュースウオッチ9」リポーターとして主に事件・事故・災害現場の取材を担当。独自取材で他局を圧倒し報道局が特ダネに対して出す賞を4年連続5回受賞。2010年、経済ニュース番組「Bizスポ」キャスター。12年より、アメリカ・ロサンゼルスにあるUCLAで客員研究員。日米の原発メルトダウン事故を追ったドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」を制作。13年よりフリーランス。
NPO法人「8bitNews」代表。淑徳大学客員教授。
主著に『僕らのニュースルーム革命』(幻冬舎、2013)、『僕がメディアで伝えたい事こと』(講談社、2013)、『変身 Metamorphosis メルトダウン後の世界』(角川書店、2013)




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