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弁護士の
「セカンドオピニオン」を考える

弁護士法人パートナーズ法律事務所代表弁護士 原 和良

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弁護士もセカンドオピニオンの時代 第2回

 医療業界では、1981年の「患者の権利に関するWMAリスボン宣言」(注1)以来、患者の視点に立った医療改革が取り組まれ、大きなイノベーションを起こしたといいます。原先生が代表理事を務めるベンラボでは、「依頼者の権利宣言」の策定運動を呼びかけています。
 第2回は、弁護士の「セカンドオピニオン」とは何か、どういう意義があるのか、そして原先生が経験した「セカンドオピニオン」のエピソードについてお聴きします。



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依頼者の権利としての
「セカンドオピニオン」

――原先生が普及を推進している弁護士の「セカンドオピニオン」について教えてください。

 今年5月に開催されたベンラボの総会で、今年の目標として「リーガルサービスにおける依頼者のための権利宣言」をつくってキャンペーンを実施していこうと呼びかけました。医療業界の「患者の権利に関する宣言」や「患者の権利憲章」等を参考に、「リーガルサービスを受ける依頼者は、良質な法的サービスを受ける権利がある」と広く市民に訴えることが目的です。依頼者の権利向上の一環として、「セカンドオピニオン」を位置づけています。

 依頼者の権利救済は、依頼者自身が問題の解決方法を選択する自由が保障されていることが前提になります。複数の解決方法があることを弁護士は保障しているのか、保障しているとしても依頼者がそれを理解しているのか、そこが問題です。「セカンドオピニオン」の普及によって、依頼者の権利の啓蒙、法律家アクセスの拡大、さらに弁護士の質的向上につながると思っています。


――医療業界では一般的になってきた「セカンドオピニオン」。弁護士の方々の意識には浸透してきているのでしょうか。

 昔と比べて特に若手弁護士の方々は、意識を持って依頼者に接していると思います。医療業界も弁護士業界も同じですが、医療機関側と患者側、弁護士側と依頼者側で、持っている情報量が圧倒的に違います。

 依頼者は、「何が正しい情報か、何が正しい選択肢か」を弁護士からきちんと説明されないまま依頼せざるを得ない状況で、対等な関係ではありません。その溝を埋める努力が、医療業界と比べて弁護士業界はまだまだ足りていないと感じています。

 依頼者の権利として「セカンドオピニオン」を保障することによって、情報格差を是正することが可能になります。こうした啓蒙運動をとおして、弁護士側がきちんと情報提供して複数の選択肢があればそれらを示し、メリット・デメリットを説明した上で、依頼者に方針を選択してもらうようになる。結果がどうなろうとも、依頼者は「頼んで良かった」と、納得感が増すはずです。


依頼者の納得を得ないまま受任すると、
不信の火種を残す

――原先生は、どのように「セカンドオピニオン」を依頼者に勧めていますか。

 説明を尽くしても、依頼者がこちらの方針や弁護士費用見積額で迷ったり、疑問や納得できない点がある場合、「他の弁護士にセカンドオピニオンを聞いてみたらどうですか。納得した上でどの弁護士に依頼するか決めた方が良い」と勧めます。それ以来連絡が来なかったことも、「色々聞いてみて、原先生が一番信頼できそうなのでお願いします」と言われたこともあります。最初のところを曖昧にしたまま受任すると、後々まで不信の火種を残すことになるので、最初に伝えています。

 その時に価格競争では決めてほしくないと思っています。適正価格でお引き受けすることが、依頼者のためにもなると考えています。また、他の弁護士のアドバイスを聞くことで、自分自身も新たな視点を発見することもあります。


――弁護士の側から、最初にしっかりと伝えることが大切ですね。

 依頼者は、一旦頼んだ弁護士に文句は言えない、不信感や方針の齟齬があっても途中で弁護士を替えることはできない、訴訟の途中で弁護士を変えると不利になる、弁護士の変更を申し出ると法外な報酬を請求される、関係が悪化する等、担当弁護士に対して色々な不安感を持っていても、セカンドオピニオンについてなかなか言い出せません。ですから、弁護士側から「いつでもできますよ」と宣言することが、弁護士の責任だと思っています。

 選択する弁護士によって、本来実現されるべき権利が不当に阻害されることは、我々の職責としてできる限り排除すべきです。他の弁護士の仕事を妨害するのではなく、弁護士業界全体での、弁護士被害を出さないための取り組みが大事になります。


――依頼者が他の弁護士に「セカンドオピニオン」を求めたところ、原先生への信頼がより一層高まったというご経験もあるそうですね。

 頻繁にはありませんが(笑)。その依頼者は、労働関係のトラブルを抱えていました。ちょっとしたコミュニケーションの行き違いから私のサポートに対して不信感を持たれた、というのが発端です。その方は弁護士を乗り換えることも想定して、他の弁護士へ相談に行かれました。

 相談先の弁護士の先生は、「今依頼している弁護士の対応・方針は間違いない。この弁護士を信頼してついていくのがベストな選択」というセカンドオピニオンをされました。その後に、依頼者から「実は他の弁護士に相談したところ、原先生を信頼して任せなさい、と言われました。信頼して任せるので、ぜひがんばってほしい」と言われた経験があります。


不当介入でない、
節度ある「セカンドオピニオン」

――原先生が依頼者から「セカンドオピニオン」を求められて、先任の弁護士に共同受任を申し出たことがあるそうですが。

 かなり難解な離婚事件で、内容も依頼者との信頼関係の継続も難しいものでした。依頼者本人は精神疾患で入院していて、ご両親には「息子が病気になったのは奥さんが原因だ」という強い思い込みがありました。ある時ご両親が「今の弁護士を替えたい」と相談に来られたのですが、その弁護士は私が知っている方でした。

 事件の処理方針は間違っていなくて、コミュニケーション不足のところをうまくカバーできたら、解決の見通しがつくと思ったので、共同受任を申し出ました。その弁護士にも非常に重くのしかかった事件で、本人は辞任したいと思っていたのですが、一緒に解決することができました。結果的に依頼者との信頼関係も回復できて、依頼者・弁護士双方から感謝されました。


――共同受任という形もあるのですね。

 弁護士会の「弁護士職務基本規程」(注2)に、「共同受任を提案された場合、依頼者から申し出があった場合には拒否してはならない」という趣旨の規程があります。弁護士全体に対する信頼を向上させる上でも、あまりプライドにこだわらず一緒に市民の紛争を解決していく、という立場でやっていくことが大事です。


――「弁護士職務基本規程」72条(注3)に「他の弁護士等が受任している事件に不当に介入してはならない」とありますが、弁護士同士の意識の持ち方も大事ですね。

 ベンラボで私たちが提唱しているセカンドオピニオンのスローガンは「品格のあるセカンドオピニオンを弁護士自身が常に意識してやっていく」です。すなわち、セカンドオピニオンの目的は、弁護士というプロフェッショナルの職能集団が、一体となって市民に対しリーガルサービスの質を担保する、弁護士間においては互いに補い合いチェックアンドバランスを取りながら、互いに法曹としての質を向上させていくというところにあるということです。このことを忘れずに、節度をもって、セカンドオピニオン司法の質の向上に貢献するということを、常に意識しながら取り組むことが大事ですね。

第3回へつづく


 文/冨岡由佳子
 取材・撮影/木村寛明(BIZLAW)




※注
(注1)1981年の「患者の権利に関するWMAリスボン宣言」
1981年ポルトガルのリスボンでの第34回WMA総会で採択(WMA:World Medical Association、世界医師会)。良質の医療を受ける権利、選択の自由の権利、情報に対する権利、守秘義務に対する権利等、患者の権利を宣言している。

(注2)弁護士会の「弁護士職務基本規程」
2004年日本弁護士連合会総会で弁護士倫理に代えて制定。2005年施行。

(注3)「弁護士職務基本規程」72条
「(他の事件への不当介入)弁護士は、他の弁護士等が受任している事件に不当に介入してはならない。」と定める。 ただし、弁護士間の自由競争が制限されるべきではなく、依頼者がセカンドオピニオンを求めることは権利として認められる。そのため、「介入」は否定されるべきでなく、「不当に介入」してはならない、とされている。不当介入は、介入の目的と手段が不当な場合を含む。例えば、先任の弁護士等の能力を不合理に批判する、依頼者の不安をかきたてる、自分に依頼を誘引する行為等がある。




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 弁護士もセカンドオピニオンの時代

原 和良

Profile

原 和良 [弁護士法人パートナーズ法律事務所代表弁護士]

1963年佐賀県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1995年弁護士登録(東京弁護士会)。2007年パートナーズ法律事務所設立、2012年弁護士法人パートナーズ法律事務所設立。現在、弁護士法人パートナーズ法律事務所代表弁護士、一般社団法人弁護士業務研究所(ベンラボ)代表理事、東京中小企業家同友会理事等を務める。
労働事件(労働者側)、公害事件、痴漢冤罪事件等を手がける。現在は、中小企業の法律・経営問題、海外進出の援助、若手弁護士の指導・育成等にも力を注ぐ。
主な著書に、『弁護士研修ノート』(レクシスネクシス)他多数。




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