MENU
BIZLAW BIZLAW
Powerd by LexisNexis®
BIZLAW
BIZLAW Powerd by LexisNexis®

RSS
Google+
Twitter
Facebook
HOME

「関係者すべての納得」
のために

株式会社カプコン 総務・法務統括 法務部 部長(現:株式会社ドワンゴ事業サポート本部 法務部部長) 伊達 裕成

main_date_01_04

戦う法務部長 第4回

 これまで様々な企業で法務に携わり、いくつものトラブル解決や、部門自体の復活劇などを果たしてきた伊達裕成氏。どのように企業法務と出会い、どのような辛さと直面したのか。そして、伊達氏の考える企業法務の本質とはどのようなものなのか。カプコン法務部長伊達裕成氏インタビュー、最終回は「「関係者すべての納得」のために」。 (取材日:2014年8月19日)



関連記事
 戦う法務部長 第1回 減額請負人
 戦う法務部長 第2回 内と外への交渉術
 戦う法務部長 第3回 企業法務と「自由研究」



企業法務との出会い

――これまでの伊達さんのお話からは、業界区分を越えた「企業法務部の実戦力」とでもいうべき汎用性の高い内容がうかがえます。これまで、いったいどんなキャリアを積んできたのでしょうか。

伊達 大学卒業後は電機メーカーに勤務し、はじめは特許部門で特許庁へ提出する書類の作成を行っておりました。むしろ、その業務が、その後に、一般法務を携わって行く上で、非常に役立っていると思います。特許庁へ提出する書類の中で、特許の権利範囲を示すものとして、請求項を記載します。つまり、製品や方法の発明の内容を文章で説明するものです。その範囲は、狭過ぎず広過ぎずが理想とされております。ある製品を、図を用いず、言葉だけで説明したものが、誰もが同じ製品をイメージできるような記載を何度も練習した記憶があります。これが、法律文章を作成する上でも非常に役に立っていると現在は思っております。
 その後は、商社、テレビ会社、外資系企業等、さまざまな会社の法務部門で企業法務に携わってきました。
  商社で勤務した折の債権回収業務は、私が一般法務としての面白みを知った業務の一つです。毎週、数十通の内容証明郵便を、東京駅の駅前の郵便局に夜中に出しに行ったことを覚えております。約20年位前になりますが、その当時は、内容証明も縦書きが主流でして、結構、郵便局のチェックも厳しかったため、句点、読点の位置も工夫して作成しておりました。回収業務は、回収できるという結果がでますので、回収するためにあらゆる法的な可能性を研究しました。民法の担保等、今思えば一番勉強していた時期かもしれません。

 

 同時に、取締役会、常務会(今はあまり聞きませんが)、及び株主総会の管理・運営に携わりました。特に、議事録の作成については、非常に苦労した記憶があります。とにかく、取締役会の添付されている資料は膨大で、それぞれの議題を簡単に議事録に纏めていくのですが、要約が非常に大変でした。そういった意味でも、如何に簡単に纏めるかは、議事録を作成した折に培われたのかもしれません。
日常的な管理業務の徹底が身に付いたのは、メーカー勤務時代だったかもしれません。とにかく、メーカーは工場での無駄の排除が徹底されているため、それが事務部門も影響を受けております。時間の使い方、備品や消耗品一つについても、無駄のない管理体制は徹底しておりました。
 また、メーカー時代に、部品の不具合の事件(第1回参照)、特許紛争、グループ間合併等の案件に携わり、企業法務の醍醐味を知ることになりました。

――その後も、幾つかの会社に移られているようですが、その理由は何ですか?

伊達 企業法務担当者は、一つの会社だけですと、仕事の幅が狭くなってしまいます。確かに、企業法務の業務は、大体、その6~7割程度は大体同じようなものです。残りの3~4割程度で、業種による仕事の違いがでてくると思います。 その違いを自ら経験してみたかったというのがその理由となります。

――判例研究、自由研究の発表とはどんなものですか?

伊達 判例研究については、法務担当者であれば、誰でもが知っておくべきである判例を題材にしてやってもらっています。
 自由研究のテーマについてもすべて自由です。スタッフが興味のある分野を選んで、図書館なりを利用して、期末の発表会に向けて纏め上げてもらいます。
 チームによってテーマは違いますが、ちなみに、前期のテーマは以下の通りです。

訴訟に勝つことが
一番大切なことなのか?

――これまでいろいろな業界で法務を担当していますが、そこから学んだ企業法務哲学みたいなものはあるのでしょうか?

伊達 関係者がすべてハッピーになる。これに尽きます。
 企業法務は、訴訟でたとえ勝訴したとしても、必ずしもハッピーであるかというとそうではありません。勝者側もそれなりに痛みを負います。日本ならまだしも、米国での訴訟であれば、莫大な弁護士費用を掛けて戦うことにもなり、負ければ、更に損害賠償も支払わなければならないため、会社の負担は小さくありません。費用の面だけではなく、時間と労力を含め、多大なる負担を強いられることになります。
 つまり、企業法務は、勝ち負けを考えるのではなく、会社の将来を考え、長期的な視点で解決策を模索することがとても大切だと考えております。
 相手方のことを積極的に考える必要はありませんが、解決するためには、自社だけでなく、相手方のことも考え、更には、紛争となっている事案に関わる全ての人にとって、一番メリットとなることは何かというのを、考えることが必要ではないかと思います。自社だけの短期的な利益だけを考えると、将来、結局、巡り巡ってしっぺ返しを受けることもあり得ます。会社は、ある程度の限られた範囲で、企業活動をしていく訳ですので、紛争相手と何かしら関わる可能性もゼロではないからです。

――その姿を実現するために、気を付けていることはありますか?

伊達 現場とのコミュニケーションを常に密に行うことです。現場のことを知らずに、ただ法務に上がってきた書類だけを見て、機械的に判断し、対応するだけではリスクが伴います。法務担当者の、独善的な理解は非常に危険です。
 現場から上がってくる情報について、不明な点は現場担当者に質問し、現場担当者と法務担当者との理解に齟齬がないようにすることがとても大切です。実際の意味を理解しないまま、勝手な法的な解釈をしてしまう人がおりますが、それでは法務担当者自身でリスクを高めてしまうことになるからです。
  また、私は、スタッフに、問題が発生した部門等から提出された資料等の内容を何度も確認させます。どれだけ確認しても、十分ということはありません。
 実態を正確に把握するためには、現場の人間と何度も顔を合わせて、コミュニケーションを行い、書類上では出てこない、案件の背景や事情をきちんと理解し、把握することが大切です。これを続けることで、些細な変化に気付き、大きな事件や事故が回避されることに繋がるからです。つまり、会社が蒙る損害を未然に防ぐことになるのです。

――とはいえ、特に訴訟対応ではかなり負担も大きくなるのでは。

伊達 確かに、訴訟において、負けないようぎりぎりの対応をすることも辛いと思うことはあります。訴訟が始まれば、大体、1ヶ月~2ヶ月間隔で、原告と被告が主張することになり、いずれの立場においても、しっかりとした主張をしなければ、相手方の主張を認めたことになるからです。従って、自社側の主張が難しいときは、苦しむこともあります。しかしながら、不思議なことに、ぎりぎりのところで、救いの手を差し伸べてくれたりする人も登場してくれたりすることも少なくなく、その人たちの助けによって、訴訟を有利に運ぶことができたことは何度もあります。
 訴訟での遣り取りにつきましては、上記の通り、相手方との戦いにおける面での辛さはあります。
 それに比べ、ある会社が解散した折の対応は、精神面での辛さがありました。会社が解散することが決定され、その対応を副社長と共に対応することになったのです。しかしながら、会社を成功させたいという従業員の思いに対して、前向きの話が一切できない点は非常に辛かったです。特に、解散の説明会の場において、従業員が百数十名おりましたが、私が会社の経営者側の立場で、解散に至る経緯を説明しました。その折に、「なんで、あなた(伊達)が会社側にいるんだ?」とか、「自分(伊達)だけ守られているのではないか?」とか、厳しいお言葉を従業員から頂きました。この質問に対して私が回答に苦慮している折、副社長が、「あちら側(従業員側)に場所を移ってもよいよ。」と優しい顔で囁いてくれたことを覚えております。とても嬉しかったです。私は、なんとか、その場に踏みとどまりました。
 さらに、「解散についてどう思うか?」と私に対する問いに対しても、すぐには言葉がでませんでした。それは、会社を解散しないよう、約2ヶ月間懸命に親会社に説得したのですが、残念ながら、それが叶わなかったからです。何とか会社を成功させたいという百数十名の従業員の思いに対しては、ただただ申し訳ないという気持ちだけで一杯でした。今も、時折、その会社が解散しなかったら成功していたんじゃないか!と思っております。


_MG_5333

――最後に、企業法務に携わっていて一番辛かったのはなんですか?

伊達 スタッフの不幸な事故による死亡の対応です。非常に若いスタッフでした。残念なことに、そのスタッフの遺族の方から訴訟が提起されることになってしまいました。
 このような案件にも対応しなければならないというのが、企業法務の仕事の厳しさ、そして辛さでもあると思います。
 結局は、人が起こした問題や事件を、何とか解決へ導くのが企業法務の仕事です。そういう意味では、人間味のある仕事なのだと思います。
 企業法務の業務を通じて、解決した折の嬉しさ、対応に苦慮する際の辛さ等を感じている時こそが企業法務の本当の醍醐味を味わっている瞬間なのかもしれません。


文/笠原崇寛
写真/柏崎佑介
編集/八島心平(BIZLAW)



この連載記事を読む
 戦う法務部長

伊達 裕成

Profile

伊達 裕成 [株式会社カプコン 総務・法務統括 法務部 部長(現:株式会社ドワンゴ事業サポート本部 法務部部長)]

明治大学大学院法学研究科 博士前期課程修了。電機メーカー、商社、外資系企業、TV会社の法務責任者を経て、 株式会社カプコン総務・法務統括法務部部長として活躍。2016年10月より株式会社ドワンゴ事業サポート本部 法務部部長として勤務。




ページトップ