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内と外への交渉術

株式会社カプコン 総務・法務統括 法務部 部長(現:株式会社ドワンゴ事業サポート本部 法務部部長) 伊達 裕成

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戦う法務部長 第2回

企業活動をしていると、ちょっとした書類不備や営業のミスから、多額の損失を負ってしまうトラブルに見舞われることもある。しかしこうした危機的な場面こそ、企業法務の腕の見せ所。かつて流通の会社で法務を担当していた伊達裕成氏は、書類不備により数億円の損失を負ってしまうところ、交渉によって損失を防いだ実績を持つ。
伊達流・企業法務のとっておき交渉術について話を聞いた。(取材日:2014年8月19日)



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トラブル発生後即現場へ飛び、
約1週間で数億円の見込み損をゼロに

――第1回目では、取引先からの損害賠償請求額を10分の1にまで減額したエピソードをうかがいました。それ以外にも、印象深いエピソードはありますか?

伊達 いろいろありますが、数億円の損害を被るところを、何とか回避できた事例があります。

――そんなことが!一体、どんな案件だったのでしょうか?

伊達 以前、中古車買取会社に勤めていた時のことです。 自動車買取会社は、買い取った自動車を自動車オークション会社に、そのオークション会社の出品規約に従って、出品します。大手の自動車買取会社であれば、1回の出品で、数千台出品するということがあります。出品された自動車が第三者によって落札されれば、出品者から提出される譲渡書類によって、名義変更がなされていくことになります。しかしながら、その書類に不備があった場合、名義変更手続きがストップしてしまいます。元々、自動車オークションに出品する会社(個人は出品することはできません)は、その自動車オークション会社の規約に基づいて自動車を出品する旨、事前に誓約します。その規約に、所定の期間内に不備のない書類を提出しなければ、出品者はそのオークション会社にペナルティを払わなければならないとの定めがあります。
 つまり、私が勤務していた自動車買取会社が出品して、落札された自動車に関する書類全てに不備があった訳です。そして、オークション会社によっても異なるのですが、その自動車オークション会社の書類不備ペナルティは10万円でした。出品した会社が1000台の自動車を出品して落札された場合、1000通分の不備のない書類を提出しなければ、出品した会社は、1億円のペナルティを払わなければならないことになります。実際は、その数倍の額だったと記憶しております。
 そして、本件で一番の問題は、その不備のない書類を、オークション開催日の翌日から7日以内に、オークション会社に引き渡さなければならないと規約に定められていたことです。書類に不備があったことに気付いたのは、既にオークション開催日から2日程度経過しておりましたので、実際には対応できる日は5日間しかありませんでした。この案件について、関係者を集めて、悠長に方針を決定している時間はありませんでした。

――なぜこんな事態になってしまったのでしょうか?

伊達 私が不在の間、若手の法務担当者が、書類の不備に気付かなかったためです。その若手スタッフは、書類の体裁だけの確認だけで問題ない旨の回答を営業部門にしてしまい、変更された内容が、そもそも法律上問題があるかないかの判断をしていなかったのです。
 若手のスタッフにはよくあることですが、他部門からの時間的なプレッシャーに負けて、ついつい、上司の確認を得ず、回答してしまうことがあります。
 若手スタッフは、日常的な業務と同様のつもりで、営業部門からの質問に簡単に回答してしまったのがその原因です。それが、まさかとんでもない額の損失を会社に与えてしまうことになるなんて、想像もしなかったのでしょう。

――絶体絶命ともいえる状況をどう打開したのでしょうか?

伊達 5日間の攻防といっても過言ではありませんが、なんとかことなく終息させることができました。問題を把握した翌日から直ぐ動き、関係する全国の役所にお願いに行きました。勿論、アポイントなしでしたので、お会いしてくれない方もおりましたが、諦めることなくお願いして理解を頂きました。
 また、我々が全国周りをしている間に、本部の方では素晴らしいバックアップをしてもらいました。万が一、全てがうまく行かい場合、ペナルティの対象となる書類全ての差し替えをする人員配置をしてくれていたのです。最終的には、ほとんどの役所にご理解を頂くことができました。1部の役所においては、1、2か月の時間的猶予を頂いて、書類の差し替え対応をすることで解決に至りました。
 結局、本件の場合、じっくりと対応について事前に協議するという時間はありませんでした。とにかく、動きながら、解決方法を見出すしか方法はなかったのです。そういう中で、前線と後方支援との連携がしっかりとなされたよい案件だったと思います。つまり、後方でしっかりと支援して頂いたこともあって、前線である程度の無茶も覚悟の上で、対応ができたからだと思います。
 この案件はついては、外への交渉、つまり説得の事案ですが、内に対する交渉、つまり、経営層への説得ということも法務部門の重要な仕事であります。

――どんな案件だったのでしょうか?

伊達 商社での勤務時におきまして、ある海外メーカーの販売代理店(日本国内)の買収の話がありました。営業部門をはじめとして、経営側は、その買収に非常に意欲を見せていました。しかしながら、デューデリジェンスが進む中、いろいろと問題が発覚しました。どちらかといいますと、法的なリスクの内容でした。
 今後の会社としての展開から考えれば、ある程度の無理をしても買収をしたいという流れの中、ストップを掛けることは非常に難しい説得でした。そして、何とか経営層を説得し、買収を断念してもらいました。その2週間後に海外メーカーは倒産しました。もし、買収を進めていれば、数億円の損害が発生していたことになります。

――経営に対する説得がうまくいったポイントは何だったのでしょうか?

伊達 本件においては、外国の弁護士事務所と日本国内の調査会社とのしっかりと連携できたいたことにあると思います。さすがに、倒産する可能性についての情報は、ありませんでしたが、調査した結果として、買収するには将来的な法的リスクがあまりにも高かったのです。
 しかしながら、なんといっても、一気に販売代理店を買収して、海外メーカーの代理店としての展開を考えていた経営に、その法的リスクについて、聞く耳を持って頂いたことが最大のリスク回避につながったと思います。結果として、会社が多大なる損失を蒙らなかったことは本当によかったと考えております。

第3回へ続く


文/笠原崇寛
写真/柏崎佑介
編集/八島心平(BIZLAW)



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 戦う法務部長

伊達 裕成

Profile

伊達 裕成 [株式会社カプコン 総務・法務統括 法務部 部長(現:株式会社ドワンゴ事業サポート本部 法務部部長)]

明治大学大学院法学研究科 博士前期課程修了。電機メーカー、商社、外資系企業、TV会社の法務責任者を経て、 株式会社カプコン総務・法務統括法務部部長として活躍。2016年10月より株式会社ドワンゴ事業サポート本部 法務部部長として勤務。




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