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新しい発見と勇気を、法務から。

株式会社コルク 法務担当 半井 志央

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新しい発見と勇気を、法務から。interview by CORK


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 昨年BIZLAWで連載を開始した、クリエイターのエージェント会社コルク(注1)法務の半井さんが興味本位で企業・人を訪問するコーナー「Interview by CORK」。本コーナーの骨子は、半井さんの仕事への課題感・コルクのビジョンに沿ってインタビューしていくもので、これまでに8名のゲストをお迎えし、半井さんだからこそ引き出せるお話の数々をお届けしています。
 そこで今回は、インタビュアーである半井さんご自身に、これまでのインタビューを振り返っての所感をお聴きします。ゲストの経験から語られる貴重な言葉を、コルクの活動に活かしたい!読者へ届けたい!という半井さんの想いが伝わってきます。

(注1)コルク…… 株式会社コルク。2012年設立。漫画化・小説家などのクリエイターのエージェント会社。クリエイターとファンを直接結びつけ、新しいエンターテインメント市場を作ることに挑戦する。海外向けの版権管理も幅広く扱っている。

ゲストから得た知見を、
コルクと読者へ還元したい

BIZLAW編集部:半井さんが過去のインタビューから感じられたことを聴かせてください。

半井: 今から振り返ると、最初の頃は、私自身ベンチャーで働くことの意味や、法務だけでなく経理など他のバックエンドの仕事から編集に近い仕事まで全体的に担当することの大変さを、まだ本当には理解していなかったかもしれないですね。ゲストの方々にお話しいただいたことを、何とかして理解しようという状態で、実際にあとから腑に落ちたこともたくさんあります。
 第1回の木村剛史さんは、そのまま行けばエリートコースを歩んでいた方が、ベンチャーに飛び込まれて。そういう働き方をする時に、法律知識や弁護士資格が武器になるってすごいな、そんな方もいらっしゃるんだな、と思いました。ココッパさんもコンテンツを扱っていらっしゃるので、木村さんの働き方と同時にコンテンツビジネスにも可能性を感じて、すごく面白かったです。


BIZLAW編集部:半井さんは、いつも読者を背中に背負ってインタビューされている印象があります。「Interview by CORK」で、テーマとしてずっと聴かれていることはありますか。

半井: いつも「悩み相談」になっている理由にもなるのですが、その時不安に思っていることや課題だと感じていることをそのまま質問しています。最初は私のための連載になってしまっているなあと感じていたのですが、色々な方のお話を聞くうちに、会社が成長していくステージごとに誰しも直面しそうな課題なのかもしれない、全く違う会社でもみなさん直面している課題だったり、これから新しく会社を立ち上げる人も経験したりするかもしれない、と思うようになりました。
 それから、実はコルクのメンバーにも読んでもらいたいんですよね(笑)。コミュニティプロデューサー(編集者)の仕事を通してでは会わないような方とお会いして、ここで聴いた事例やゲストの知見を持ち帰って、社内で実践できたらいいな、と思っています。
 そういう意味では、私と同じような立場の方々が記事を読んで、ここで知ったことを自社でやってみよう、と思っていただけたら嬉しいです。


BIZLAW編集部: 半井さんが得られたものを、コルクそして読者の方々へ還元されているのですね。半井さんのインタビューは、読者からすると「よくぞ聞いてくれた」と思うところがよくあります。

半井:そうだといいですねえ。みなさんとても素敵な方ばかりなので、その会社の魅力までお伝え出来ていたらもっと嬉しいですね。


勇気もらった一言は、
「法律家の力で未来を作っていける」

BIZLAW編集部: 第2回のロフトワークさん第3回のほぼ日さんなど、組織作りにおいてユニークかつ第一線の企業にご登場いただきました。過去の連載を遡っていくと、企業ごとに各々のカルチャーがあったと思います。半井さんの中で、特に印象深かったことを教えてください。

半井: ロフトワークの林千晶さんから、「現在の行為を司る仕組みを作ることができるのも法。未来を作るための強い力を組織に与えられるのは、法律家の力だと思うし、最高に格好良いと思いますよ」と言ってもらったのは忘れられません。
 その頃は、まだコルクが立ち上がったばかりの時期で、コルクのビジネスは、著作権法の解釈という論点ではなく「慣習的にそうやってこなかった」と言われて、色々交渉しないといけない時期でもありました。
 「私たちは、クリエイターのために、未来を変えていこうとしているのだ、そのために法律やルールの力も必要なのだ」と改めて自覚させてもらい、法律家は何かが起きてから解決するだけでなく、未来を作っていいのだと思えるこの一言は、本当に印象的ですね。分野は違ったとしても、全ての法務担当や弁護士の方々に、この一言を本当に伝えたいです。


BIZLAW編集部: 非常に反響のあったものの一つに、第6回のソニーの村井武さんの記事があります。村井さんは、大企業の法務を歩み続けているエキスパートです。あのインタビューの感想はいかがですか。

半井: 契約書や交渉のことなど、法務らしい法務のお話が出来たこともとても楽しかった回ですが、同時にちょうどコルク社内にエンジニアが増えてきて、コミュニケーションをとる時の共通言語に不安を感じていた時期だったので、すごく良いタイミングでした。
 「契約書はプログラムと同じで、全体がシステムです。優秀なプログラミングができる人は、用語法を覚えると、契約書をさっと書けるようになりますよ」というお話があったのですが、そこが良い糸口になりました。契約・法務の仕事に違うところから光をあてられたような気がして、すごく楽しかったですね。最近、若いエンジニアと契約書を読んでいたのですが、「ここだけ読むと事実と違うように思うかもしれないけれど、この条項に書かれていることと合わせて全体としてコンパイルするとランする契約書でしょう」と説明するとすごく腑に落ちていたみたいなので(笑)、とてもいいきっかけをいただきました。


「会社の人格」を意識して、
物事にあたる

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BIZLAW編集部: 第7回のスマイルズさん第8回のメルカリさんは、組織作りにフォーカスしたインタビューになりました。印象に残ったところを教えてください。

半井: スマイルズの田原研児さんは「会社にも人格がある」という考え方をお持ちで、「例えば、オフィスのエントランスのガラスは常にピカピカに磨き上げています。オフィスも一つの作品と考えれば、一番表に出るところが汚れていると、作品性が高い、とは言えないから」とお話しされていました。
 それは我々も同じで、コルクの仕事はクリエイターを代理して外部の方とお話させていたらくことがほとんどですから、その立場としてどう判断したらいいのか、どんな行動をすべきなのか、という観点で物事を取捨選択する必要があります。それが、自分で日々の振る舞いや使う言葉を考える時の一つのヒントになりますね。
 また、田原さんは「やりたいことは、誰もが強みを活かして未来を作り、世の中に価値を提供できるインフラ作り」とお話しされていて、皆が好きなこと・得意なことをして回る社会にしたいという考え方が、すごく良いな、私もそんな環境で働きたいなと思いました。


BIZLAW編集部: 田原さんのお話は、言うは易し行うは難しだと思いますが、実際にあのように口にされるということは、確たる裏付けがあるのだなと感じました。

半井: スマイルズさんの事業は幅広いのですが、個々の事業をされている方々の芯・愛・思い入れが深い。そこにはそういう秘訣があるのだなと思って。好きなことだけをするのは決して楽なことじゃなくて、すごく覚悟がいることだと思うんですよね。そこの腹の括り具合が、プロの集団だと思いました。


BIZLAW編集部: その意味で好対照と言いますか、スマイルズさんが事業単位で組織を分けている一方で、メルカリさんはメルカリ一本で広げています。そこの違いについていかがですか。

半井: うまく伝わるかわからないのですが、学生時代の放課後の部活動で言うと、スマイルズさんは文化系、メルカリさんは体育会系というイメージです。スマイルズさんは皆好きなことで固まっていますが、各々手元では違うことをしているみたいな(笑)。そういう緩いつながりで、でもすごく結束していて、互いに得意・不得意なところはサポートし合っている個の集団という感じ。
 対してメルカリさんは、一つの大きな固まりのよう。個々のキャラはすごく立っていますが、「メルカリ」という事業で統一されている感じですよね。同じ「チーム」でも全然違う結束の仕方をしている感じがします。


目指すのは、
個々のキャラが立つ組織

BIZLAW編集部: 第5回のカヤックさんは個の集団でありつつ、カヤックという一人の人格であるようにも見え、メルカリさんにも同じ印象を感じました。
 コルクさんの今後の舵の切り方は、スマイルズさんとカヤックさん・メルカリさん、どちらが近いと思われますか。

半井: コルクの代表・佐渡島(注2)が目指したいと言っているのは、個々人が自分の強みを把握して、きちんとキャラが立つ組織。最初から佐渡島は、「一人のコミュニティプロデューサー(編集者)が行く行くは独立して、クリエイターと信頼関係を築いて、二人三脚でやっていく。そういう人材が生まれる組織にしたい」と言っています。
 その意味では、メルカリさんのように、一つのプロダクト・サービスに対して全員で全力を注ぐというより、目指すところはもうちょっと個々のキャラが立っている組織かもしれません。

(注2)コルクの代表・佐渡島…… 代表取締役社長・佐渡島庸平。講談社にて『ドラゴン桜』『働きマン』『宇宙兄弟』『モダンタイムス』等の編集を担当。2012年に㈱コルク設立。現在は『インベスターZ』『鼻下長紳士回顧録』『テンプリズム』等を担当中。




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BIZLAW編集部: コルクで働きたいと思って入社される方は、代表メッセージに沿う思考の方が多いですか?

半井: 会社のビジョンに共感してくれる方が来てくれていますが、将来独立するところまでは、まだコルク自体が出来てから数年で、具体的なケースがないので、いずれそんな人が出てきたらいいなという感じですね。


BIZLAW編集部: スマイルズさんの回で、半井さんが新卒をどう考えたらいいのかという悩みをお話しされていました。入社当時から、いずれ独立してもいいと言われるのは厳しいように感じますが。

半井: 確かに、難しいことを言っていると思います。ただ、独立しなければならない、と言っているわけではなくて、個々人が独立してもやっていけるくらい、クリエイターと信頼関係を築いて、事業を作れるような人材になってほしいという意図ですね。むしろ会社が実現したい未来とか会社が提供したい価値観の方向と、個人が幸せになる方向、その2つのベクトルを合わせたいという方が大切かもしれません。その結果として独立という考えに至った時に、自由に出来る仕組みを作っておこうと。
 働き始めた時から常にそういうことを考える癖がついている方が、今後30、40年働くにあたって、その子のためになると思うんですよね。なんだかお母さんみたいですけど(笑)会社の若手のメンバーを見ていると、若いうちからそういう思考で働ける彼らが羨ましいなと思いますよ。


BIZLAW編集部: コルクのビジョンを外部に発信される場はあるのでしょうか。

半井: そうですね、きちんと会社のことを説明して、会社のサポーター・ファンを増やしたいですよね。これまであまり説明する機会を作ってこなかったのですが、今年7月に社内広報ブログ(注3)を始めたので、ぜひ多くの方々に読んでいただければと思います。また、コーポレートサイトもリニューアルを予定しています。

(注3)社内広報ブログ…… コルクのブログ。2016年7月開設。コルクが何をしているか、世界に生まれ続けている新しいエンターテインメントや魅力的な作品を紹介する。


社内のクリエイティビティを、
どうナレッジ化するか

BIZLAW編集部: コルクの課題はどこにあると思われますか。

半井: どうしたらクリエイティブな組織になるのか、というのは佐渡島が挑戦したい課題の一つです。
 現状は、入社間もない社員が多く、週刊連載の入稿や単行本の発刊作業に追われていて、新しい展開を考えたり付加価値をつけたりするところまでは、なかなか辿りついていません。そこを切り拓いているのは、数名の10年以上経験のある30代半ば以降の編集者だけです。
 彼らのクリエイティビティをどうナレッジ化して、皆で共有していくか、というところに今取り組んでいます。今まで天性のものだと思われていたクリエイティビティや編集スキルを、どれだけ横展開して拡大できるか。それ自体もクリエイティビティが必要な作業だと思います。
 会社のそんな課題に少しでも私が貢献出来ることはなんだろう、と考えて、著作権やコルクのビジネスモデルについて、社内レクチャーを始めました。例えば、紙に刷って出すのは権利の一つの展開でしかなくて、紙媒体以外にも、他に発信したい形態があればやっていい。でも、そもそも権利のことを知らないと、そんなことをしてもいいのだと思えないかもしれないですよね。権利のこと、法律を知ると、新しいアイデアが生まれるかもしれないなと思って。
 私たちが持っている法律などのナレッジを皆に知ってもらうことで、クリエイティブな活動のヒントになったらいいなと思っています。


BIZLAW編集部: 作家さんのクリエイティブ、それを拡大させるクリエイティブの両方を促進させていくということですね。

半井: クリエイターが作品を発表する場・読者が作品に触れる場は、確実にデジタルに移行していきますよね。まだ多くの作品は紙の雑誌や単行本がメディアであることを前提に作られていますが、読者にスマホを通して作品を届けましょうと提案したら、クリエイターはきっと私たちが想像も出来ない作品を作り出す。その辺りの化学反応を、誰よりも早く見たいと思っているんですよ。そのためには、クリエイターを刺激するような提案が出来る、最先端の技術や情報にキャッチアップしていたり、新しい提案が生まれやすい組織である必要がある。そういう組織であること、自分たちがそう変わっていくことが、クリエイティブな挑戦ではないかと考えているところです。


BIZLAW編集部: 今後、この連載で半井さんが会ってみたいのはどんな方ですか?

半井: 法務と事業部を兼任されている方がいたらお会いしたいですね。私も思っていますし、よく「現場の立場も理解した法務に」とおっしゃる方は多いと思うのですが、現実可能なのかどうか、色々なケースを聞いてみたいです。
 あと、これからAIが色々なところに入り込んでくる中で、法務は何を勉強しておけばいいのかが知りたいです。著作権などの法律周りの方にも、本当にずっとコードを書かれているようなAIの研究者の方にも(笑)。
 AIが作った作品の著作権について、みなさん気にされてるかと思いますが、私もそうですね。特に文章や短文レベルになると、未来の話ではないでしょう。作家の著作権はどこまで主張できるのか。もし情報としてインプットしていないのに、AIがコルクのクリエイターの作品ととっても似た作品を作り出したらどうしたらいいのか、わからないけれど可能性はありますよね。法整備に携わる方から、AIの開発者まで、実際に皆さんがどんな未来を描かれているのか聴いてみたいですね。未来の話が聴きたいです。



文/冨岡由佳子
写真/木村寛明
制作/BIZLAW編集部
イラスト/羽賀翔一(コルク・http://hagashoichi.cork.mu/




Interviewer

半井 志央 [株式会社コルク 法務担当]

京都大学法学部卒業、ロンドンへの留学経験あり。
国内のメーカー法務を経て、コルクに入社し、法務・編集・経理などを担当。


コルクホームページFacebooktwitter(@shionakarai)




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