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エージェント会社の法務事情

株式会社コルク 法務担当 半井 志央

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エージェント会社コルク 第2回

コルク(クリエイターのエージェント会社)の法務を一手に担う半井さんへのインタビューは2回目。今回はコルクの法務業務に迫ります。出版業界でも異色のスキームにトライする同社だからこそ……(取材日2014年9月16日)



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新たな価値を活かす

――どのような契約形態でコルクのビジネスは成り立っているのでしょうか?

半井 コルクは、契約を締結している作家さんから、著作権の管理を受託しています。つまり、うちが契約の主体となって、ライセンサーになることができるようにしているわけです。例えば、コルクが立ち上がってから生まれた作品である三田紀房さんの『インベスターZ』や曽田正人さんの『テンプリズム』は全面的に弊社が管理を受託しています。漫画で単行本を出すときは、作家さんと出版社が出版契約を結ぶのが普通ですが、コルクが契約している作家さんの場合は、コルクが作家さんの代理人として出版社と契約するわけです。作家さん―コルク―出版社というスキームですね。


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 三田紀房『インベスターZ』(講談社)     曽田正人『テンプリズム』(小学館)

 通常は出版契約の中に、二次使用、電子、漫画化、映画化、ドラマ化、翻訳化する権利もまるっと「出版社を窓口にする」と書いてあることが多いですね。でもコルクが出版社と契約する場合、紙の本は紙の本を出版する権利だけの契約。二次使用するときもコルクと別途新しい契約をするという形態をとっています。だから、電子書籍はコルク自体が世の中にリリースする、ということもできるし、LINEのスタンプはコルクが管理する、ということもする。

 佐渡島がコルクを作るに到った問題意識の一つが、ここにあります。出版社は、権利を持っていても扱っている作品数が多すぎて、ヒット前や後の作品の権利運用は物理的に行えていません。例えば、東大に合格するためのノウハウが詰まった三田紀房さんの漫画『ドラゴン桜』は、毎年受験シーズンに売り出せば「受験生の道しるべ」的な新しい価値が創出されて、ずっと長く読まれる可能性があります。連載の続きを描かなくても、権利の積極的な運用で、作品の寿命は伸びる。しかし、雑誌というメディアを中心に経済活動を行っている出版社は、そのような積極的運用をする人員がいません。そのような組織の仕組みや慣習にとらわれず、作品を動かし続けることが出来るようにすることが、佐渡島がコルクを立ち上げた理由の一つだと聞いています。

 コルクは作品を広く長く読んでもらえるようにする会社です。作品を翻訳する権利もコルクで扱うため、コルクが海外の出版社に直接売り込める。コルクが関わる限り、国内の大手出版社も、海外の出版社もライセンシーとしては同じ立場です。

 業務としては、作家さんの作品に関する使用許諾契約の作成がほとんど。それを相手先に応じて、その目的や、どうやって出版するか、どうやってWeb上に掲載するかなどの使用形態によって形を変えて作っています。

大筋は「企業法務」

――顧問の弁護士はいらっしゃいますか?

半井 スポーツ選手・団体のエージェントをやっている事務所にお世話になっています。うちも作家さんのエージェントなので、参考にできるビジネススキームをよくご存じかなと。

 特に作家さんとの契約では密に打ち合わせをしていて、ひな形には深くコミットしてもらっています。また、今までコルクがやったことないビジネスの契約書では、特に頼りにしています。コルクには「トルク」というAR三兄弟のエージェントを行う子会社があるのですが、私にあまり余裕がなかったので、設立に関してはほとんどお願いしました。あとは、たとえば『監督不行届』という安野モヨコさんの漫画をアニメ化していますが、制作会社との2者間の契約ではなく、複数の当事者で制作資金を出資する製作委員会形式の契約でした。この契約自体は、出版社もよくしているありふれたものですが、創業間がないコルクにとっては初めてだったので、力を貸してもらったりしました。そのような時に、新しい視点が加わることで、日本の製作委員会形式の契約書が持つ問題点を認識することができました。

――法務はネゴシエーションも業務の一つかと思いますが、コルクではネゴシエーションはどうしているのでしょう。ごねられたりすることもありますよね。

半井 出版社によっては「なんでコルクが間に入るの?」と思われることもありますが、それがビジネスの障害になったことはないですね。コルクは、どこかの利益を奪おうとするのではなくて、新しく生み出そうと考えています。「作家さんのためになり、最終的に作家、出版社、エージェント全員の利益が増えるお話です」ということを丁寧に説明すれば、大体のところは納得してくださいます。 ネゴの大部分は、担当編集者が要件をつめてくれますが、細かいところは直に私が相手とやり取りをしています。 作品作りの面だけではなく、それをどう届けるかというところまで含めて作家さんにサポートを提供するのが、コルクの業務ですから。

――法務としてやっていることの大筋は一般企業の法務そのものですね。契約実務以外の法務的な業務、例えば法律面の社内啓発などもおこなっているのですか?

半井 こまめにできてはいませんが、新入社員やバイトさんたちに対して「著作権とは何ぞや」のさわりの部分を教えたりとか、コルクの契約書の概要をレクチャーしたりもします。また、契約に基づいてちゃんと債務履行されているかもチェックしています。出版社などから印税などが入ってきて、作家さんに対しての手数料をいただいた上で、作家さんに渡すというスキームをとっていますから。金銭的なやりとりの窓口になるのはコルクなので、債権回収業務もやるわけです。

この業界のひな形を作る

――権利関係で困ったことはありますか?

半井 漫画や小説を海外で映像化する場合の権利設定でしょうか。例えば、ある映画を海外で実写映画化する場合、コルクがその権利を許諾する契約当事者になることができます。しかし、国内で先に映像化されていると、映像にも著作権が発生しますから「原作を海外でリメイクすることについて何も言いません」ということを国内の映像の権利者、多くの場合は製作委員会のメンバーに保証してもらう必要があります。ハリウッドに売り込むときなどは、ライセンシーになる配給会社などは権利関係をとても気にされるので。ただ、日本だとそこまで見越した製作委員会契約や制作委託契約は一般的ではないので、海外に売りたい時にコルクの動きを縛ってしまう。製作委員会のメンバーのみならず、映像制作に携わった全てのスタッフから合意書をもらわなければならない、ということが起こりえます。「こういうことを見越しているので契約書の中にこの条文を盛り込みたい」と、国内の契約相手の方々に説明をして、なるべくその様な事態を避ける契約書をあらかじめ締結することを始めています。

 今までもきっと同じような問題は出版業界で起こっていたはずです。しかし、誰も海外での展開を気にしていなくて、コルクが新しいビジネスを始めてみると、こういうところが足枷になるとか、日本で一般的に使われている契約を海外にもっていっても通用しないんだとか……。様々な観点が出てきますから、常に試行錯誤しています。

――出版業界の新しいひな形を作るような作業にあたりますよね。

半井 佐渡島と三枝の思いとしては、設立当初からこういうクリエイターのエージェントがどんどんできればいいという意思がありますから、社外とも共有していきたいですね。なので、このような仕事を始めようと思う人は、遠慮なくコルクを訪問しにきてください。私の持っている知識を、できる限りお伝えします。

――『ドラゴン桜』は海外展開されていますね。メディア輸出の状況を教えてください。

半井 最近では、インドネシアで現地の漫画家さんがリメイクをしています。一般的に海外で漫画を翻訳出版する場合、セリフだけ翻訳して入れ替えるのですが、海外の人にとっては「東大」が意味する内容はそのままでは伝わらないので、インドネシアだったらジャカルタ大学にするなど、設定からローカライズするケースもあります。紙の本を出版する権利だけでなく、電子書籍で出したり、WEB上で掲載したいというオファーも多いです。

 海外展開は台湾と韓国、あとは中国。アジアが大多数です。例えば、伊坂幸太郎さんの作品は、台湾と韓国ではほぼ全作品翻訳されて出版されています。現地の出版社が情報をキャッチするスピードも早くて「新作が出るって聞いたからサンプル頂戴」と出る前からオファーが来るような状態です。コルクができる前から、伊坂さんの作品の半分以上が、日本の出版社から台湾などに輸出されていましたし。

 コルクでは、作家さんの作品すべてのラインナップを見て、ライセンスと出版社とのマッチングを考えています。たとえば、今までその国に出ていなかった作品をライセンスする、出版社の得意なジャンルなどを考慮して、「**に出せばプロモーションにはこれくらい力を入れてくれるだろう」と最終的に契約する出版社を決定します。
 これまでは、ほとんどの作家さんの作品は、A社さんから出た作品はA社さんが海外にライセンスする、B社さんならB社さん、というスキームでしたが、うちは作家さんから全作品のライセンスをお預かりしているので、組み合わせやプロモーション案、タイミングまで提案できますしね。

第3回へ続く


イラスト/羽賀翔一

文・写真・編集/稲垣正倫(BIZLAW)



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 エージェント会社コルク

半井 志央

Profile

半井 志央 [株式会社コルク 法務担当]

京都大学法学部卒業、ロンドンへの留学経験あり。国内のメーカー法務を経て、コルクに入社し、法務・編集・経理などを担当。編集としては、紙と電子書籍の総合書店hontoのフリーマガジンhonto+に携わる。

コルクホームページFacebooktwitter(@corkagency)




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