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編集者になりたかった
法務部員

株式会社コルク 法務担当 半井 志央

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エージェント会社コルク 第1回

BIZLAW編集部が会いたい人に会いに行くシリーズをはじめました。一人目は株式会社コルクの法務担当、半井志央さんに登場いただきます。コルクといえば、講談社勤務時代に『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』をヒットさせた佐渡島庸平氏が2012年に立ち上げた、超一線級クリエイターのエージェント会社として知られています。現在スタッフは10名ほどですが、法務は重要な役割を担っているとか……(取材日2014年9月16日)

いざ、コルクへ

――なぜコルクで法務を担当しているのでしょう? そもそもベンチャー企業で法務専門となるとなかなか数が少ないように思いますが。出版志望だったのでしょうか?

半井 学生の頃は出版が第一志望で、なんとなく紙媒体に携わりたい、出来れば雑誌を作りたいと思っていました。でも、読んでいたのは書籍が多かったですね。就職してから数年間、全部記録していたんですけど、一番多かった年は年間350冊ぐらい読んでいたほど。でも、学生時代は、何となく「好きなものの近くにいたい」としか考えてなかったのです。今思うと、そりゃ落ちるわなというぐらい、全然方向が定まってなかったと思います。だから就職活動で応募した出版社は全滅。ただ、海外に住んでいたこともあって、海外で働くチャンスのある仕事がしたいとも思っていたので、そちらの方向で就活を続けました。結局、印刷会社に就職して営業志望を出しますが、法学部出身だったことを見込まれて、法務部に配属されました。その後、一度転職して、同じく法務部に勤務していました。

 それから数年経った2012年の夏、偶然出会った本が、栗田明子さんの『海の向こうに本を届ける』でした。日本の版権エージェントの先駆けとなった栗田さんの自伝です。これは、自分に多少経験があり、「できる」ことである契約業務と、「やりたい」ことである本に携わることとが交わる仕事なのかもしれない、と思い、はっとしました。ただその時点では、自分が企業の法務で一人前ではないという自覚があったので、すぐに転職するつもりはありませんでした。いずれそういう方面にいけたら幸せかもしれないと考え始めたくらいですね。

――秘めたる思いを抱えて、企業法務にいたわけですね。

半井 その年の10月1日に弊社の副社長の三枝が、コルクを立ち上げて「作家のエージェント会社始めました」とツイートをしたんです。私はそれまで安野モヨコさんの作品は全部読んでいたり、コルクの他の漫画家さん、作家さんの作品も沢山読んではいたんですけど、それを編集した佐渡島庸平と三枝亮介たちのことは知りませんでした(笑)。でも、コルクのホームページを見てすぐにピンときました。その日のうちに「単刀直入に言います。雇ってください」という内容のメールをコルクに送ったんです。当時関西に住んでいたにもかかわらず。

 阿部和重さんとか安野モヨコさんとか、超一流のクリエイターさんたちの側で仕事をできる機会は、この先、私には絶対に訪れないと思ったので、前の会社を辞めて、半ば押しかけで上京してきました。ここで行かなかったら、その後もコルクの動向がすごく気になるに違いないと思ったんですよね。みんながどんどん新しいことをやっていくのを、遠くで指をくわえて見ているのは、精神的にきついと。このチャンスを逃したら、「私もそこに居たかったのに」とか、「やろうと思えばできたのに」とか、そのあと絶対後悔すると思ったことが、上京を決断した一番大きな理由だったかもしれません。

編集×法務

――編集作業もしているとか?

半井 書店のPR誌(honto+)を毎月作っています。三枝が編集長で、私が進行管理。会社では「毎月半井さんの機嫌が悪い時期がある」といわれています(苦笑)。ちょうど締め切りの時期ですね。全体の仕事の中で、編集業務の割合は1~2割です。


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――編集と法務の両方に携わることで、シナジー効果は生まれるのでしょうか。

半井 契約書を作るときには、売ろうとしているものが何で、どこに持っていって、どういう形態なのかを把握する必要があります。また、ヒアリングして、要件の整備をして、それから一つの文章に並べて、両者が合意できるよう整えるわけですから、契約書を作る行為自体が編集とも言えますね。

 スタッフから「ちょっと聞いて」と声をかけられて、私が契約書に落としこむというケースもしばしばあります。彼らが人に説明することで、自分で問題を整理していくための一つの機能としても法務は有効だと思っていて、仕事自体を編集しているということでもあるかなと。編集と法務の両方に携わるメリットは大きいと感じています。

――事業と法務の距離感が近い故の効果ですね。

半井 一般的な法務に対する感覚とは違うかもしれないですが、新しい話が来たときに何ができるかを考えることが、コルクの法務では大事です。また、コルクのエージェンシー業務は、編集、プロモーション、営業まで包括した仕事ですし、営業自体は法務と距離が近いですよね。ですからコルクの業務自体が、法務と親密だと言えると思います。

 できること、できないことが契約の内容と密接に関係してくるので、「あれどうなってたっけ」ってみんなに聞かれることも多いです。もし私がいなくなっても、データーベースで各作品に関する契約の内容が残っていて、適宜活用できるような仕組みを作ることも自分の仕事だと感じています。メーカーにとっての商品の台帳のイメージですね。それができれば、スタッフがステイタスを把握できますから、不足部分にも気づきやすいでしょうし、新しいビジネスを作り出しやすい土壌になるのではないかと思います。

法務キャリアは中堅

――コルクの前に2社で法務経験があるとお聞きしましたが?

半井 新卒で入社したのが京都の印刷会社です。印刷の技術を活かしてタッチパネルなどを製造し、海外展開をしているところに魅力を感じ入社しました。法学部出身ではありますが、法律を仕事にしていくつもりは無くて、会社の中に法務部があることさえ知らなかったぐらい。配属面談などでも営業をしたい、という意向を伝えましたが、前述したとおり法学部出身だったからなのか、法務に配属になりました。3年ほどキャリアを積んで、2つめのメーカー企業に転職しています。コルクに来る前はトータル4年半ほどメーカーの法務キャリアがあることになりますね。1社目の法務部は当時5、6人くらいの小規模なもの。2社目は法務のキャリアを積むつもりで転職したので、私の配属された海外法務部だけで10人。国内と知財特許グループと合わせたら70人の大所帯でした。

――メーカー法務時代の業務はどのようなことをしていましたか?

半井 契約書のチェックがほとんどでした。1社目は訴訟が起きるような会社ではなかったし、M&Aなどの案件も当時はありませんでした。営業や開発から相談を受けたら、一個一個丁寧にヒアリングしてそれに合わせた契約書作りをしたり、帰国子女の強みで英文契約に関わったり。社員に向けた、契約に関するセミナーなども行っていました。ただ、次第に法務でキャリアを積むためには、他の企業の法務部でも仕事をしてみたいと思うようになり、一回転職を考えたんです。

――その時は法務指向になっていたわけですね?

半井 出版に関わる仕事がしたいという夢を諦め切れてはいませんでしたが、出版社の編集者はほとんど経験者のみの中途採用ですし。好きなことは趣味と割り切って、法務でキャリアを積んでいこうと。2社目では、法務としての仕事も幅が広くなってきたので、海外の会社を買うとか、訴訟があるとか、1社目ではできなかったことも経験させてもらいました。下っ端でほとんど見ているだけでしたけど、海外で合弁会社を作る時は、エキサイティングでしたね。

第2回へ続く


イラスト/羽賀翔一

文・写真・編集/稲垣正倫(BIZLAW)



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 エージェント会社コルク

半井 志央

Profile

半井 志央 [株式会社コルク 法務担当]

京都大学法学部卒業、ロンドンへの留学経験あり。国内のメーカー法務を経て、コルクに入社し、法務・編集・経理などを担当。編集としては、紙と電子書籍の総合書店hontoのフリーマガジンhonto+に携わる。

コルクホームページFacebooktwitter(@corkagency)




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