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弁護士が指名される事務所

シティライツ法律事務所

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クリエイティブと法 第2回

弁護士志望者や若手弁護士の中で、企業内弁護士の人気が高まっている。様々な弁護士がいる中、IT企業でインハウスローヤーとして働いている傍ら、個人としても、起業家、スタートアップ、クリエイターへの法的支援を行っているのが平林健吾弁護士だ。音楽好き、映画好きなことから、ツイッターでの交流を通して知り合った水野祐弁護士が立ち上げたシティライツ法律事務所にも所属している。平林弁護士のこれまでの活動内容や、今後のあるべき法律事務所の姿について、両弁護士に話を聞いた。(取材日:2014年8月25日)



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アメリカ留学経験が
ITへの道標に

――なぜ平林弁護士はIT企業のインハウスローヤーになったのでしょうか?

平林 弁護士資格を取得して4年ほど法律事務所で働いていました。その後、サンフランシスコ近郊にあるUCバークレーのロースクールで学ぶ機会がありました。知的財産権の分野で著名なロースクールです。エンタテインメント法のクラスがあって、ワーナー・ブラザーズやルーカスフィルムの見学に行って、そこのインハウスローヤーとディスカッションしたり、グリーン・デイのプロデューサーがクラスにゲストで来たりと、映画、音楽好きの私にとってはとてもおもしろい経験でした。他方で、シリコンバレーが近いこともあって、グーグルやフェイスブックのようなインターネット企業の勢いを身近で感じていました。キャンパス内でもマックブックを抱えた若者が何かのプログラミングをしているのを見かけたり、iPhoneを使っているクラスメートがいたりして、未来感というかなんというか、ワクワクする雰囲気がありました。ロースクールでも2008年当時はまだ珍しかったサイバー法、コンピュータ法といったクラスも開講されており、法的な側面からインターネットに触れる中、ネット上での情報の流通と著作権やプライバシーといった権利との関係をどう考えていくか、今後おもしろい分野になるのではないかと肌で感じました。この分野でのリーガルサービスができたらなと漠然と思ったのもこの頃です。

 日本に帰国後、転職活動を始めて、はじめはエンタテインメント分野のブティック事務所に入れたらと思っていました。でも留学時に感じたインターネットのワクワク感が忘れられず、そのカルチャーに飛び込んでみたいという思いから、たまたま弁護士を募集していたIT企業に転職しました。

――そのIT企業のインハウスローヤーとして、これまでどんな仕事をしてきたのでしょうか?

平林 入社した当時は、検索エンジン事業が主軸でした。グーグルのロボット検索の次に来る新しいタイプの検索サービスを模索していました。法的にも、ちょうど著作権法で検索エンジンの権利制限規定が新設されホットな分野でした。他にも、ゲーム、ウェブメディア、インターネット公告、SNS、EC、電子書籍、音楽配信、動画配信、オンライン決済サービスなど様々なウェブサービスに携わっています。仕事の内容は、新規サービスの立ち上げ前のリーガルチェック、利用規約やプライバシーポリシーの作成、ビジネスパートナーとの契約締結交渉、時には紛争の解決と幅広くやっています。最近ではグローバルにサービスを展開していることから、海外での法的問題に対応することも多くなっています。業務は困難を極めますが、おかげでウェブサービスの法律分野にはほぼどんな案件にも対応できるようになり、非常に貴重な経験を積むことができていると思います。

――インハウスローヤーとして働く傍ら、Arts and Lawに参加したきっかけは何ですか?

平林 Arts and Lawの代表理事である水野のツイッターアカウントが興味深かったので(笑)、以前からフォローしていました。ある時には、好きな映画女優が出演しているDVDを購入したと水野が投稿をしていたので、思わず「僕も見たいです!」とはじめてリプライしたんです。それがきっかけで意気投合し(笑)、ともに映画好き、音楽好きということもあって、私もクリエイターの支援活動を行っているArts and Lawに参加することになりました。

大所帯の事務所より
少数精鋭のチームで仕事

――その後、Arts and Lawだけでなく、水野弁護士が立ち上げたシティライツ法律事務所にも所属することになったのは、どんな経緯があったのでしょうか?

平林 それは誘ってくれた代表に聞いていただければ(笑)。

水野 2013年1月にシティライツ法律事務所を立ち上げましたが、「クリエイティブ」とか「カルチャー」とか、そういうものに特化した事務所にしたいという中で、自分にはない強みを持つ、専門性の高い弁護士と組んで仕事ができればシナジー効果を生むのではないかと思っていました。僕も以前所属していた事務所でわりと幅広い案件に関わらせていただいていたので、わりとどんな案件でも対応できると思っていたのですが、私よりも企業法務の経験があり、英文契約にも強く、ネット関連にも非常に詳しい平林さんにぜひ加わってもらいたいと思い、ビールをおごって誘いました(笑)。

平林 いや、おごってもらってはいないよね(笑)。


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水野 まあ、真面目な話をすれば、日本でも有数のIT企業をベンチャーの時から今のように広汎な事業を展開するようになるまですべて見てきている人なので、日本のローヤーの中でもコンテンツやインターネットとコンテンツという法分野において屈指の知識と経験を持っている人だと思いました。もちろん、カルチャーやネットが大好きであることや人柄が一番の決め手ですが。実際、大きめの案件は共同受任しているのですが、よいコンビを組めているのではないかと感じています。

――今後も弁護士を増やしていくつもりでしょうか?

水野 人数を増やすことには興味がありません。うちが扱っている案件の多くは、弁護士2人ぐらいで足ります。それに会計士または税理士と組んで3人くらいでプロジェクトチームを組成できるとベストですね。大体どこの事務所も所属弁護士の人数がいても結局担当しているのは1人か2人の弁護士、大きな案件で3人くらいですしね。大きなM&Aや企業再生案件でも受注しない限りは、人数を雇って大所帯な事務所を構える必要はないと考えています。

 それに何よりも、個性が豊かで、「どんな案件でもいいから、あの弁護士と仕事がしてみたい」と思われるような弁護士が所属する法律事務所にしたいです。もちろん専門家としての知識やスキルは大前提なのですが、ブティック系の法律事務所であっても、人数が多くなってしまうと、依頼者からは弁護士の顔が見えなくなってしまったりしますよね。また、これからの時代、ネットやデジタル技術の発達でどんどん専門家の知識やスキルの価値は相対的に低くなってくるでしょう。そのときに、ぼくら弁護士に残る価値ってなんだろう?と考えると、「リーガル・エクスペリエンス」ともいうべき「体験」として価値のようなものになるのではないかと思うんです。それこそ、極端な例になりますが、法律が苦手な人が「ぼくと仕事をして楽しかった」と思ってくれるのであれば、それだけで大きな価値になるわけです。

 法律事務所という形態も、もともと単なる任意組合であることが多いですし、そろそろ時代に合わなくなってきているとも感じているところです。実際に、もう実践し始めていることではありますが、案件やプロジェクトごとにその分野が得意な弁護士を、事務所の垣根を越えてアサインするやり方もネットやデジタル技術の発達により可能な時代になってきました。有機的に弁護士同士が組み合うことでより大きなシナジーが見込めますし、もっというならば、恊働するチームのメンバーは弁護士に限らず、会計士、税理士、弁理士、司法書士、行政書士はもちろん、建築家やデザイナー、医者などであってもよいと本気で思っています。

――どんな個性を持つ弁護士に来て欲しいですか?

水野 大前提は「新しいものに開かれている人」「好奇心が強い人」ですね。今うちではアソシエイトとして働いてくれる、経験のある弁護士を募集しているのですが、実際にあった話として、応募してきてくれた方の中で、SNSは一切興味がありません、という人がいました。我々が求める人物像は真逆で、とりあえずアカウント作りました、くらいの人でないと厳しいですね。なにもデジタル支持者であれ、と言っているわけではありません。WIREDの創設者のケヴィン・ケリーという人がいますが、近著の『テクニウム』という本を読むと、彼はデジタル関連の最先端の仕事をしているにもかかわらず、ラップトップもスマートフォンも持っていないんです。でも、最新のガジェットやサービスのことはちゃんと勉強して、知っている。主義主張としてデジタルを拒否することは構わないのですが、触ったこともない人によい仕事ができるとは到底思えないのです。

平林 それから、なにか僕らにはない強みを持っている人がいいなと思います。チームとしてできることの幅が広がりますから。とはいえ、具体的なスキルセットよりも、なんか惹かれる、一緒にやりたい、というフィーリングが大事な気がします。

――現在はどんな仕事が多いですか?

水野 Web、アプリ、ソフトウェアなどのIT関連が40%、映像、映画、音楽、デザイン、写真、出版などのクリエイティブ関連が30%。10%が建築、不動産、残りの10%は「オープンイノベーション」などと呼ばれる新しい分野のプロジェクトにアサインされる仕事といった感じでしょうか。  僕はArts and Law以外にも、「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」の理事を務めていたり、いま話題の3Dプリンター等のデジタルファブリケーションに関するネットワークである「ファブラボ・ジャパン」などにも所属しているので、オープンソースや3Dプリンター関連などの新しい分野の仕事も多くなってきています。

平林 私が担当するのはサービスを立ち上げたばかりの起業家からのご相談から成功している上場企業の案件まで様々ですが、ネット関連のお客様が多いです。サービス内容のリーガルチェックや利用規約の作成といったサービスローンチ前のお手伝いは、私のバリューが発揮できる仕事だと思います。契約の作成やレビューをご依頼頂くことも多いです。IPO(株式公開)に向けた資本政策の助言をしたり、出資、投資案件のリーガルカウンセルを務めたり、定款、社内規程といったコーポレート周り整備業務も行っています。

――今後どんな案件を手掛けてみたいですか?

水野 クリエイターの法的支援をする案件は引き続き注力したいと思います。特に日本のクリエイターが海外に進出するのを手助けしていきたいです。とにかく、まだ見ぬ新しい問題を考えるのが好きなので、そういうトライをしている企業や個人をサポートして、一緒に並走したいですね。あと、いつかやってみたいのは、デザイナーと組んだ企業再生の案件です。

平林 それなら私も協力できますよ。前職の法律事務所で再生ファンドのお客様を担当していて、ファンドのストラクチャリングや契約業務から投資先業で発生する日々の法律問題への対応までガリガリやっていたので。

水野 再生ファンドを実際に作ってみるのもおもしろいかもしれませんね!こうやって互いに無いものを持っている弁護士同士と組んでいると、不可能な案件も可能になるんですよ。何にせよ、常に考えているのは、自分達の世代だからこそできるアクションをしかけていくということです。アートやエンタテイメント分野では、内藤篤先生や福井健策先生などの偉大な先輩弁護士がおり、僕も大変お世話になっています。お二方もいまだに信じられないくらい情熱をこの分野に注いでいらっしゃいます。

 僕は、それこそ好きなカルチャーやアートの影響だと思うのですが、人一倍「他人と同じことをしていても意味がない」と思っているタイプなんです。偉大な諸先輩と同じ分野で活動する以上、内藤先生や福井先生にできないことは何か、ということを常に考えています。

 また、僕は神戸大学のロースクールを出ているのですが、ロースクール出身だからこそ、ふっきれたというか、偉大な諸先輩方と一緒のことをしていても何の意味もないなと自然に思えるようになったのかもしれません。ロースクールについては色々言われることもありますが、僕にとってはそういう効用があったのかもと今お話していて思いました。

第3回へ続く


文/笠原崇寛
写真/柏崎佑介
編集/稲垣正倫(BIZLAW)



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Profile

シティライツ法律事務所

水野祐弁護士が代表を務め、平林健吾弁護士がパートナーとして所属。Perfumeの3D映像などで有名なクリエイティブカンパニー「ライゾマティックス」や、コンテンポラリーアートの旗手「Chim↑Pom」などをクライアントに抱える。クリエイティブ系をサポートする異色の法律事務所(http://citylights-lawoffice.tumblr.com/




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