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クリエイティブの
アーキテクチャを創造する

シティライツ法律事務所

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クリエイティブと法 第1回

クリエイティブ業界やITベンチャーなどからの信頼も厚いシティライツ法律事務所。代表の水野祐弁護士は、資格を得る前からクリエイターに対し無料で情報提供などを行うNPO「Arts and Law」(http://www.arts-law.org/)の活動に関わり、現在は代表理事を務めながら、2013年に独立して当事務所を立ち上げた。 異色の弁護士・水野氏のクリエイティブと法の関わりについて話を聞いた。(取材日:2014年8月25日)

インターネットが拡張する
クリエイションの可能性に期待した

――弁護士を目指したきっかけは何だったのでしょうか?

水野 大学は法学部でしたが、弁護士を目指すために入ったわけではなく、たまたま受かった慶應大学の法学部に入りました。中学高校の頃から映画や音楽、サブカルチャー全般が大好きで、大学時代の周囲にも映画や音楽、演劇などを作っている友人が多くいました。

 仕事をするならクリエイターと関わっていける編集者かプロデューサーのような存在になりたいなと漠然と考えていたのですが、大学1年生の時に、アメリカの法学者ローレンス・レッシグの『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』(翔泳社、2001)の翻訳が出版され、それを読み、著作権などの法律とインターネットの交錯点において発生し始めている新しい動きに感銘を受けました。この分野に大きな可能性を感じるとともに、この分野であれば法的な面からクリエイターの活動をサポートするなど自分にしかできない活動ができるのではないか。そのような思いで弁護士を目指しました。

――自身がクリエイターになるという選択肢はなかったのでしょうか

水野 バンド活動もしていましたし、映画サークルで映画を作ったりしていたので映画監督になりたいと思った時期もありましたが、周囲や世界には自分よりはるかにクリエイティブに関する才能あふれる人たちがいて、そういう人たちを見つけたり、サポートしたりするほうがワクワクしたんですよね。ですから、自分自身がクリエイターになろうという発想にはあまりならなかったですね。

 大学を卒業するかしないかの頃に、著作権をより柔軟に考えていくための考え方や仕組みである「クリエイティブ・コモンズ」を、先述したレッシグが提唱し始め、その思想に内在するパンク精神、かっこよさに強く魅かれました。そして、社会の動きとしても、ビジネス的にも、「法律×インターネット×クリエイティブ」という交差点がおもしろくなるのではないかとも思っていました。クリエイティブそのものよりも、新しい時代に合わせたクリエイティブの法的なアーキテクチャ(仕組み・構造の意)を作ることがおもしろい時代になりそうだなと。

敷居が高い弁護士イメージを
変えるためのプロボノ活動

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――水野弁護士はクリエイターを支援するためのNPO法人Arts and Lawの代表としてアクティブに活動してきていますよね、どのような経緯でできた団体なのでしょうか?

水野 広く芸術文化活動に関わる人が、法律や契約に悩まされることなく、自由な表現活動ができるよう、弁護士などの専門家から気軽に情報提供を受けることができる場所を作りたいとの思いから、2004年に東京藝術大学出身の作田知樹らが立ち上げたのがArts and Lawです。アメリカにはVLA(Volunteer Lawyers for the Arts)という団体があり、3000人以上の弁護士が登録しているといいます。その日本版を作ろうといって始まったのがArts and Lawです。所属の弁護士をはじめ専門家達はプロボノ活動(社会人が自らの専門知識や技能を生かして参加する社会貢献活動)として参加しています。団体名が「Art」ではなく「Arts」と複数形にしているのは、アート(美術)に限らず、映画、映像、音楽、デザイン、写真、出版、建築など、様々なクリエイションをサポートしたいとの思いからです。私は2007年から参加し、現在では代表理事を務めるようになっています。

――実際にはどのような人の利用が多いですか?

水野 クリエイター以外にも、ギャラリーや美術館や映像制作会社、レコードレーベルなどクリエイターのマネージメントをしている人たちなど、様々な人たちからも使ってもらっています。緊縛師という方からも相談があったこともあります(笑)。

 Arts and Lawを使っていただいている方には大きく分けて2つのタイプがあるように思います。1つは、個人のクリエイターなどで経済的に弁護士に相談することが難しいというタイプ。もう1つは、クリエイティブに強く、クリエイターの気持ちを理解してくれる弁護士を探していて、僕らの専門性に期待してくれているタイプです。

 どちらの場合にせよ、クリエイターにとって弁護士は縁遠く、敷居が高い存在に思われてしまいます。Arts and Lawの活動では、いかに弁護士が市民にとって身近ではない存在かを痛感しますし、気軽に情報提供が受けられるArts and Lawの価値観も再認識しています。また、ここで出会ったクリエイターや会社さんが、その後クライアントになってくれたことも多いですね。結果的にはArts and Lawが営業ツールとしても機能しているということかもしれません。もっとも、僕自身はArts and Lawの活動にかなり時間を使っているので、費用対効果としてペイしているとは到底言えず、好きでないとできないことだとは思います(笑)。

――どんな悩みを持ったクリエイターが多いのでしょうか?

水野 国内外における作品の著作権などの契約に関する問題ほか、ギャラを支払ってもらえないといった債権回収に関する問題、作家とギャラリーとの間の所属契約の問題など、本当に様々です。そもそも自分の悩みや問題が法律に関するものなのか、それ以外のものなのかも、整理がついていないクリエイターも多く、時には人生相談のようになることもあります。まあ、これはArts and Lawに限ったことではなく、「弁護士あるある」ではありますが(苦笑)。

 実は、ここ5~10年で美大にも法律講座が開設されるところが増えてきました。僕自身も2014年から、武蔵野美術大学で知的財産と著作権に関し、教鞭を取っています。クリエイターと法律との関わりは、ネットの隆盛以降、特に強まっていると思いますし、クリエイター自身が法律や契約に関する基礎知識やリテラシーを持つことは、自身のクリエイティブを保護するうえで重要なことだと考えています。もっとも、クリエイターには創作に集中してもらうことが一番なので、必要以上に詳しくなるべきだとは考えていません。法律家はすぐに「法律や契約の知識をつけろ」と言ってしまうのですが、その点には注意が必要ですね。

――Arts and Lawの活動を有料にしないで、プロボノとして活動を続けている理由は何ですか?

水野 弁護士法に規定されている斡旋にあたらないようにしなければならないというのももちろん1つの理由です。

 先輩の弁護士からは「弁護士はどんな案件でもお金をとってサポートすべき」とのアドバイスも何度となくいただいていましたが、日本におけるクリエイティブの現場を知れば知るほど、お金を取らないで、敷居を低めることによって広く普及していくことがまず一番大事だと思ったのです。また、ネット以降特に顕著ですが、市民と法やその専門家である法律家の関わり方も時代とともに変わってきている中で、そのようなフリーミアム的な手法こそが僕らの時代なりの「闘い方」なのかなという思いも個人的にはありました。「闘い方」というと大げさですが、偉大な先輩方と同じことを繰り返していても仕方がないですしね。

 こういう活動は短期ではなく、長期的な視点でものを考える必要があります。VLAがアメリカのアートやクリエイティブの下支えをしているように、Arts and Lawも日本のクリエイティブのインフラになれるように、これからも地道に続けていきたいと思っています。

第2回へ続く


文/笠原崇寛
写真/柏崎佑介
編集/稲垣正倫(BIZLAW)



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シティライツ法律事務所

Profile

シティライツ法律事務所

水野祐弁護士が代表を務め、平林健吾弁護士がパートナーとして所属。Perfumeの3D映像などで有名なクリエイティブカンパニー「ライゾマティックス」や、コンテンポラリーアートの旗手「Chim↑Pom」などをクライアントに抱える。クリエイティブ系をサポートする異色の法律事務所(http://citylights-lawoffice.tumblr.com/




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