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日本で先端技術ビジネスが
敗走する将来、その理由

インクリメントP株式会社 知的財産法務部長 足羽 教史

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前例なき時代の道標、「未来型コンプライアンス」 第1回

 爆発的な成長を遂げている個人用3Dプリンター市場、ビジネスフロンティアとして注目されているドローン技術。これら先端技術が産業界から熱い視線を集める一方、適切な法的整備が求められている。先端技術にかかわる法的整備のベクトルをどう定めるかが日本の経済振興には重要であると、インクリメントP株式会社知的財産法務部長 足羽教史氏は語る。先端技術ビジネスの将来と法務パーソンの役割とは何か? 話を聞いた。



――ドローン、3Dプリンターなどの先端技術は、半年ほどの間に驚異的な速度で社会に浸透しつつあります。これらの技術がメディアに登場し始めた当時、足羽様はどのようなビジョンを想定しておられましたでしょうか。

足羽 日本の電機メーカーのガラケー(フィーチャーフォン)は、アップルやGoogleが主導するスマホによって壊滅的な打撃を受け、続々と撤退に追いやられました。加えて、スマホが実現できる機能は多岐に渡るため、携帯音楽プレーヤー、デジタルカメラ、ゲーム専用機、カーナビゲーション、最近ではパソコンでさえ、市場を大きく減らしています。
 すでにこういう状況なのに、次々に出てくるドローンや3Dプリンター等の新技術は米国の主要IT企業の得意分野ばかり。今後、スマホで起きたことと同様の事態が日本の全産業を巻き込んで波及していくのではと最初に思いました。

――その原因は何でしょう?

足羽 すでに言い古された例ですが、ソニーのウォークマンを例に出すとわかりやすいでしょうね。ハードの音質だけで言えば、ウォークマンは決してどこにもひけを取りません。しかし、アップルやGoogle等の海外勢はハードに加え、iTunes Storeのような音楽販売の場や、決済システム、顧客データベース等の多層のレイヤーで構築されたプラットフォーム全体を押さえに来るわけです。しかも機能を司るソフトウェアはインターネットでつながっているため、随時品質も改善し、機能も追加されていきます。サードパーティーがつくる関連アプリも膨大な数にのぼります。

 それに対して、日本のメーカーは単独で切り話された製品の品質や性能だけにこだわった。ところが、どこの製品も、性能はもう十分高くて差がつかなくなってきています。そうなるともうスタンドアロンの日本製品は勝負になりません。ドローンや3Dプリンターなどの先端技術でもこの構図は変わっていないように見えます。ロボットでもそうです。個別の製品の性能だけではなく、プラットフォーム全体として、しかもつながっていることを前提として考えていかないと、どの市場でも同様な悲劇に見舞われることになると思います。

――日本がプラットフォームを取れる可能性の高い産業はどのようなものでしょう?また、IoTや他の先端技術分野ではいかがでしょうか。

足羽 日本でも、ニコニコ動画やLINE等、プラットフォームを押さえることに成功している会社もあります。ただ、現状では、どの産業でもかなり厳しい状況にあると言わざるを得ないと思います。

 戦後の日本経済の成長を支えたのは製造業です。血の滲むような努力の結果、製品の品質や性能は世界に誇れるレベルに達して、日本製品は世界中の市場を席巻しました。ところが、今申し上げた通り、フィーチャーフォンや携帯音楽プレーヤーなどのいわゆる家電製品は、米国主要IT企業の攻勢によって壊滅しつつあります。もちろん、製品単体、部品の品質は今でも非常に高いので、部品供給で生きる残る方法もありえるわけですが、昨今では中国やインドのような新興国の技術レベルが上がって、しかもコストが圧倒的に安いとなると、その道も閉ざされつつあります。

 今のところ、自動車や、日立や東芝のような会社が扱う、発電機やタービンのようないわゆる重電は、そのような攻勢から逃れているため、強さを維持しています。
 ただ、自動車には次第にGoogle等のIT企業による攻勢の手が伸びて来ています。今後、電気自動車や自動運転車が本格的に導入されるようになると本当に家電で起きたことと同じことが起きる懸念があります。
 重電でさえ、日立や東芝のライバル企業である米国のGEなど、データやソフトウェアの方向へ大きく舵を切ろうとしていて、まさにスマホで起きたことを重電で実現しようとしているように見えます。

 先端技術の一つである、ロボット工学について言えば、日本の技術は欧米にひけを取らないレベルにあるし、ロボット産業の世界市場における日本のプレゼンスはまだ圧倒的と言っていい。ただ、ここでも、欧米のロボットはネット接続が前提なのに比べて、日本のロボットはスタンドアロン指向が強いと言われています。
 欧米はロボットをネットにつなぐ端末として製造し、情報を収集し、サーバーに送り、情報や経験を共有するための道具と捉えているわけです。

 ドイツが自国の製造業の競争力を維持、強化するために掲げた政策である、インダストリー4.0(※)などは、工場を中心とするIoTと言えるものです。また、GE、IBM等米国巨大企業5社はインダストリアル・インターネット・コンソーシアムという組織を昨年設立しましたが、同様に工場の内外を、IoTを結節点として、工場、部品メーカー、物流、サービス、顧客まですべてつなげて、情報を収集して、工程を無人化すると同時に、集まった情報を分析して、全体の効率化や改善につなげようとしています。ここでも日本企業の遅れが目立ちます。
 残念ながら、日本企業はどの分野でも、出遅れているのが実情ではないでしょうか。

(※)インダストリー4.0という巨大なエンジンが回り始めた(BLOGOS 足羽氏による執筆記事)

第2回に続く


取材、編集/八島心平(BIZLAW)




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 前例なき時代の道標、「未来型コンプライアンス」

足羽 教史

Profile

足羽 教史 [インクリメントP株式会社 知的財産法務部長]

インクリメント P(株)知的財産法務部部長/ブログ『風観羽』主宰

トヨタ自動車、JX日鉱日石エネルギー(旧三菱石油)を経て現職。海外企画、マーケティング、海外事業等、事業系のキャリアが長い。
尚、ブログでの発言は所属する組織・団体とは関係ない。




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