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著作権を
使いやすく編集すること

株式会社コルク 法務担当 半井 志央

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エージェント会社コルク 第3回

コルク(クリエイターのエージェント会社)の法務を一手に担う半井さんへのインタビュー最終回です。代表の佐渡島さんを交えて、コルクにおける契約の重要さを語ってもらいました(取材日2014年9月16日)



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著作権のあるべき形

――話を戻しますが、半井さんは自らコルクにメールを送ってアピールされたわけで……、元々法務はいなかったことになりますね。佐渡島さんは、コルクの立ちあげ当初、法務をどうされるつもりだったんですか?

佐渡島 まず、こんなに契約書が必要だってことがわかってなかったですね。だから、法律事務所にすべてお願いするつもりだったんですよ。もしそうしていたら破産してましたね(笑)。現状でもコルクは事業規模にしては、かなりの費用を法務関係に支払っています。入社希望の連絡をしてきたのが、いきなりこんな必要な人材だった(半井さんはコルク2人目のスタッフ)というのは超びっくりですよね。会社とは、たくさんの偶然によって支えられていて、その偶然を活かすためのアンテナをはることが重要なのだと思います。たまに、半井が初めて送ってきたメールを読み返すのですが、とてもいい文章で、今読んでもこの人と一緒に仕事をしたいと思います。

 講談社時代は、編集が作家さんのところに契約書を持っていったりはしていました。ただ、作家さんと出版社との契約は知っていましたが、出版社が外部企業と結んでいる契約書は見ていないですね。

 当時の僕の仕事はイレギュラーなことが多かったので、契約書を作成する部署の人間からヒアリングを受けたりしたことがあり、社内でも法務に詳しいほうだったと思います。例えば『ドラゴン桜』(三田紀房著)はドラマ化したのですが、その後、勉強法を紹介するだけの特番もつくりました。もともと漫画で紹介している勉強法は僕の経験や取材した内容を盛り込んでいて、その特番では放送作家のような役割を僕が果たしました。なので、テレビ局から原作使用料だけではなく、企画料も払ってもらえるような契約に出来ないか、といった相談をしていました。

――契約の書き方一つで作家さんを守るわけですから、半井さんはとても主要な人材になりますね。

佐渡島 そうですね。でも僕はコルクの契約書は、著作権を「守る」というよりも、「どう使うのか」という観点を大事にしていると思っています。「守る」っていう言葉は、反論を封じ込める言葉です。守る気がないのか?と聞かれると、全員がそんなことはないと答えますよね。反論を封じ込める言葉は、思考停止を促す言葉でもあります。著作権という言葉って、思考停止が起きていて、インターネット時代にあった形になっていません。著作権って日本語で考えると、「著作物にまつわる権利」みたいな感じで、様々なことを連想させます。でも、英語で考えると、「コピーライツ」であって複製権ですよね。著作権の中心の考え方は、複製物をどういう風にコントロールしていきながらマネタイズしていくか、だと僕は思っています。

――戦略的な法務としての能力が必要と言うことでしょうか。

佐渡島 「今の時代に合った著作権って何だろう、コピーライツって何だろう」ということをいつも考えています。これまでの著作権やコピーライツは、作家さんを守るという名目のもと、何もしない、むしろ作家さん自身も出版社に預けてしまうとその権利を自由に使えないということが多々あります。使わないと侵害がほとんどおきないのは確かだけど、権利者自身や権利を扱う側も、権利そのものをうまく使えなくなっているわけですね。

 半井には、「我々が作品を自由に使用することを制限しない内容にしてほしい」ということと、「クリエイティブなところに携わった人に対しては、正しくロイヤリティが入ってくる仕組みを作るように」と言っています。一つの作品から更なる多展開をするときに、その原作の権利者が二次著作物の著作権やコピーライツによって縛りを受けない、というようにするには、ビジネススキームや契約書の内容をどうすればいいんだろうとか、ですね。法務部にも、権利を編集するという意識を持ってほしいと思っています。

――権利の編集ですか。半井さんがおっしゃっていた契約書を作ることは編集である、という言葉にいっそう深みがでてきました。

佐渡島 出版社だと、一番こだわりの強い作家さんを基準に、権利の運用が決まることが多いです。たくさんの権利を、同時に扱う場合、それがもっともトラブルを回避できるので。でも、本来は作家さんと作品ごとに権利の運用を考えたいと僕は思っています。

 例えば新聞の全面を使って小説を載せようと思うと、新聞社にお金を払わないといけないじゃないですか。宣伝ととらえられるので。でも新聞社から連載を依頼されたのならば、原稿料が発生する。いつお金を払って、いつお金をもらうのかなんてあやふやで契約次第、アウトプットの形によるものではないんです。それって業界慣習によるところですよね。しかも最近では、ちょっと前まで当たり前だった慣習が変わってしまうこともある。執筆契約なんかも1年たつと状況が変わって、それまでお金を貰っていたところから「払え」って言われたりとか、そんな時代も来るんじゃないかと思って、危機感を持っています。

これからの「コルク」の法務

――今後、半井さん自身がどうしていきたいか、コルクの法務としてどうしていきたいか、2つの観点でお願いします。

半井 コルクは作家さんの権利をお預かりしている会社です。そこで法務をやっている以上、作家さんの権利を積極的に運用しつつ、やはり守る義務がありますから、契約書の作成などの面でも、もっともっと経験を積んで一流になりたいです。

 それから、私が法務としてどうなりたいかとつながってくるのですが、ビジネスを作れる法務になりたいと思っています。自分で海外の市場を調査して自分で現地に出張に行って、自分で現地の出版社と話をつけてきて、自分で契約書を作って、お金を産み出して、最後に作家さんにお支払いするというのをやってみたいんですけど、それは私が法務としてやっていることではなくて、そもそものコルクの仕事ですね。

――まさに事業部になっちゃいますね。半井さんはコルクでどんな法務のエキスパートを目指しますか?

半井 まだ出版ビジネスとかエンターテイメントビジネスの法務のことが全部わかっているわけでないので、ある程度自分で判断できる状態になりたいです。コルクの中で法務のエキスパートになっていくときに、ビジネスと切り離して考えていくのは難しいかもしれません。

 そもそも、私は「法務しかしない法務」になりたくないんですね。大きい会社だったらセクションが分かれているので、法務の仕事はここまでっていう感じになるじゃないですか。そうじゃなくて、前の会社にいるときから、「現場と一緒に動く法務」になりたいなと思っていました。現場の人から声をかけてもらえやすい法務になりたいと思っていたので、今はだいぶ近づいたかなと。

 契約書は、現場からかなり細かく話を聞かないと作れないですし、契約書作りとは関係なくても、作品の背景のことだったり、作家さんの趣味のことだったり、丁寧にヒアリングをしています。法務のエキスパートになっていくときに、いわゆる法務の部分だけを伸ばしていくっていう意識は私の中にあまりないですね。

 大きい会社ですと本当に法務の仕事しかしないですけど、こっち(コルク)に来たらより現場の人と仕事ができるんじゃないかという期待が、もしかしたらコルクに入った理由と潜在的につながっているのかもしれないなと。


イラスト/羽賀翔一

文・写真・編集/稲垣正倫(BIZLAW)




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 エージェント会社コルク

半井 志央

Profile

半井 志央 [株式会社コルク 法務担当]

京都大学法学部卒業、ロンドンへの留学経験あり。国内のメーカー法務を経て、コルクに入社し、法務・編集・経理などを担当。編集としては、紙と電子書籍の総合書店hontoのフリーマガジンhonto+に携わる。

コルクホームページFacebooktwitter(@corkagency)




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