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弁護士人生の歩き方
-若手弁護士を取り巻く 就職・転職市場の実態

株式会社MS-Japan チーフキャリアアドバイザー 山﨑 雅彦

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(制作/レクシスネクシス・ジャパン広告出版部)


はじめに

 弁護士のキャリアパスが多様化している。法律事務所ではなく、企業や官公庁での就業を選択する弁護士も増加傾向にあり、日本組織内弁護士協会(JILA)調べによれば、2017年6月の時点での企業内弁護士の数は1,931名と、実に弁護士全体(38,930名)の約5%を占めている。しかしながら、キャリアの選択肢が増加したこと自体は喜ばしいものの、選択肢が多くなった分だけ、選択にあたっての悩みも増えてしまったといえる。

 そこで、弁護士として研鑚を積んでいきたいとお考えの皆さんに、キャリア選択にあたって少しでも有益な情報を提供させていただきたいと思う。今後のキャリア選択に際しての参考として本記事をご活用いただければ幸甚である。


現在の就職・転職市場の状況

 まず、キャリア選択にあたって重要になってくるのが、就職・転職するタイミングの見極めである。端的に言えば、現在の状況は、就職・転職者にとって有利な状況であるのか、不利な状況であるのかを見極める必要がある。結論としては、好景気の時に動いたほうが、キャリアアップにつながる就職・転職を実現しやすい。好景気、すなわち企業活動が活発な状況では、企業内での法務業務が増加し、また企業から法律事務所に依頼される案件の数もそれに伴って多くなるため、弁護士の採用ニーズは高まる。

 他方で、経験弁護士については、現職での待遇UPや業務量の増加により求職活動をする方が 減少するため、弁護士需要が供給を上回ることになる。結果として、弁護士を採用したいと考えている事務所や企業側からは、高額な給与の提示や、希望業務への従事といった求職者に有利な条件提示が行われることが多くなる。

 また、新人弁護士についても、事務所や企業に潤沢な資金があるため、例年よりも採用数が増加傾向となり、しばらく新人を雇っていなかったような事務所でも募集が開始されるといったことが起こるため、就職しやすい状況が生まれる。

 ここで、弁護士の採用動向の重要な指標となるのが5大事務所の新人弁護士の採用状況である。リーマンショックの影響で一時は落ち込んでいた新人弁護士の採用数は、6年連続で増加している。2017年(70期)の新人弁護士採用数については、司法試験合格者数が大幅に減少する中、昨年の156名から32名増の188名となり、前年比約120%という大幅な増加となった。70期の司法試験合格者は1,583名であったため、実に合格者の8名に1名以上(約12%)が5大事務所に採用されていることになる。2009年(64期)の採用率は約4%であったため、採用率は実に3倍にもなっている。


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 このような5大事務所の採用状況にも表れているように、現在は法律事務所も企業も弁護士の獲得に積極的な姿勢を示しており、就職・転職市場の状況としては間違いなく求職者に有利な状況となっている。


事務所類型ごとの業務上の特徴

 次に、どのような法律事務所でどのような経験を積むかによって、その後のキャリア選択にも違いが生じるため、事務所類型ごとの大まかな特徴を述べたいと思う。

❶5大法律事務所
 国内外の大手企業をメインクライアントとして、国際的なM&A案件やファイナンス案件といった専門性が高く規模も大きい案件の取り扱いが豊富である。経験年数が上がっていくほどに特定の分野に専門特化していく傾向がある。その分、ジェネラルコーポレート(一般企業法務)の幅広い経験を積むことは難しいことになる。配属されるグループにもよるが、若手のうちから国際的な案件に関わる機会が多く、英語の使用頻度も高い。一定の年齢になると海外ロースクールへの留学経験も積めるため、語学力を高めたいと考えている方にとっては魅力的な環境であるといえる。


❷外資系法律事務所
 クライアントは国内外の大手企業がメインとなる(ただし、傾向としては5大事務所に比較すると外資系企業の比率が高いところが多い)。ジェネラルコーポレート、M&A案件、金融・ファイナンス案件、プロジェクト案件といった高い専門性が必要とされる案件の取り扱いが多い。経験年数が上がっていくにつれ、特定の専門分野に特化していく傾向にあるのは5大事務所と同様である。業務の大半が英語を使用するものであり、読み書きだけでなく、会話でも日常的に英語を使用している事務所が多い(クライアントとのコミュニケーション以外にも、外国人弁護士 が多数事務所に所属しているため、所内でも頻繁に英語を使うことになる)。海外ロースクールへの留学経験や、海外法律事務所での勤務経験を持つ弁護士も多く、語学力は総じて非常に高い。

❸企業法務系法律事務所
 クライアントの規模は大手から中小まで幅広いが、中小企業の比率が高い。取り扱う業務については多岐にわたり、契約書の審査・作成、コンプライアンス関連業務といったジェネラルコーポレートの経験だけでなく、小規模なM&A案件や商事法務(株主総会・取締役会対応)、各種訴訟対応といった幅広い企業法務案件に従事できる。他方で、5大法律事務所や外資系法律事務所に比べると専門性の高い案件に関わる機会はあまり豊富ではないことが多い。語学力に関しては個人差が大きく、国際的な案件の取り扱い経験が豊富な弁護士は高い語学力を有するが、国内法務の経験しかない弁護士も多い状況にある。

❹一般民事系法律事務所
 個人をメインクライアントとして、離婚・相続案件、債務整理、交通事故案件、不動産案件、医療案件といった幅広い一般民事案件に従事することになる。他方、企業法務に関する案件の経験を積むことは難しい。
 また、英語を使用するような案件もほとんどないため、語学力の高い方はまれである。


企業内弁護士への転職

 近年増加しているのが企業内弁護士(インハウスローヤー)というキャリアである。直近の3年間(2015~2017)は、毎年250名前後の弁護士が企業への就職・転職を決断している。そのうち、100名前後が、司法修習終了後に直接企業へ就職した司法修習生であり、事務所から企業へ転職した弁護士は150名前後となっている。


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 企業法務系の法律事務所に勤めた場合、専門特化した領域(M&A、金融・ファイナンス、知的財産等)に従事するいわゆるスペシャリストタイプの弁護士と、ジェネラルコーポレート(契約法務、コンプライアンス対応等)に従事するジェネラリストタイプの弁護士と大きく分けると2タイプの弁護士に分かれる。

 結論としては、企業で評価されやすいのはジェネラリストタイプの弁護士のほうである。スペシャリストタイプの弁護士が従事しているような案件については、企業内でコンスタントに発生するような案件ではなく、こうした業務は法律事務所にアウトソーシングして処理することが多いのが実情である。他方、企業内での法務業務は、ジェネラルコーポレートを中心として多岐に わたるため、ジェネラルコーポレートを含めた幅の広い企業法務経験を積んでいるジェネラリストタイプの弁護士のほうが企業側から高い評価を獲得しやすい。

 ただし、外資系企業については、特定の業務に関する専門性の高さや経験年数を重視する傾向 が強いため、スペシャリストタイプの弁護士のほうが高い評価を得られるケースも多い。
 この点、上述したように、5大法律事務所や外資系法律事務所については、年齢が上がるにつれて専門特化しスペシャリストタイプとなっていく傾向が強いため、もしキャリアチェンジをするのであれば30代前半までに行動を起こしたほうが企業選択の幅は広くなる。5大事務所や外資系事務所出身の若手弁護士に対しては、総合商社やグローバルメーカーといった大手企業を中心に非常に高いニーズがある。

 企業法務系法律事務所については、企業法務全般についての経験を積みやすく、またクライアントの規模も大手からベンチャーまで多岐にわたる。そのため、大手企業だけでなく中小やベンチャーといった幅広い層の企業から高い評価を獲得しやすい。ただし、大規模なプロジェクト案件や海外M&A、国際取引といった業務についての経験は5大法律事務所や外資系法律事務所に比べると少なくなりがちであるため、こうした業務が多い総合商社やグローバルメーカーへの転職時には苦戦することも多い。

 一般民事系法律事務所については、基本的に企業法務の経験を積むことは難しく、経験年数が 上がったとしても企業側から評価を得られるような経験は積めないため、できるだけ早いタイミング、できれば20代のうちにキャリアチェンジを決断したほうが転職の成功確率は高い。


法律事務所・企業の年収相場

 最後に、法律事務所と企業の若手弁護士の年収相場についても述べたいと思う。総じて、企業に比べると法律事務所のほうが年収水準が高い傾向にあるが、労働時間や福利厚生の面では企業のほうが充実していることも多いため、キャリア選択にあたっての一つの要素としてお考えいただきたい。

● 法律事務所
 法律事務所の年収相場については、事務所類型によって相場が大きく異なる。
 5大事務所に関しては、入所1年目で1,000~1,200万、3年目で1,300~1,500万、5年目で1,500~2,000万程度と非常に高い年収水準となっている。外資系法律事務所では、入所1年目 で1,100~1,500万、3年目で1,200~1,700万、5年目で1,500~2,000万程度であり、若手のうちは5大事務所よりも高い場合もある。企業法務系法律事務所では、事務所ごとの差が大きいため類型化が難しいが、入所1年目で500~800万、3年目で600~1,000万、5年目で800~1,200万程度がおおよその目安となる。一般民事系法律事務所では、入所1年目で350~500万、3年目で400~700万、5年目で500~1,000万程度となっている。

● 企業
 企業内弁護士の年収相場については、入社1年目で400~600万、3年目で500~700万、5年目で600~800万程度となっている。法律事務所との比較でいえば、一般民事系の法律事務所に近い水準である。ただし、企業内弁護士については、所属する業界によっても年収水準がかなり異なるため、上記金額は東証1部上場メーカーを想定させていただいた。総合商社や大手金融機関、外資系企業などについては、若手弁護士に対しても1,000万を超えるような条件を提示する企業もあり、企業法務系の法律事務所に遜色がないような年収を獲得できる可能性もある。


まとめ

 「多様なキャリア選択がありうる中で、どのような弁護士人生を歩むべきか?」

 この問いに唯一の正解はない。やりがいを重視する方、お金を重視する方、ワークライフバランスを重視する方、仕事に何を求めるのかは人それぞれである。何を重視するかによって、就業先の選択も変わってくるし、重視する事柄自体もその時々で変化する。
しかし、唯一の正解はないが、自分なりの正解を導くためのヒントとなる情報は社会のいたるところに無数に存在している。

 本記事もそうしたヒントの一つとして活用いただき、ぜひ貴方らしいキャリアを切り開いていってほしい。



山﨑 雅彦

Profile

山﨑 雅彦 [株式会社MS-Japan チーフキャリアアドバイザー]

弁護士および法務人材の転職支援において業界トップクラスの実績を有する株式会社MS-Japanにおいて、リーガル部門のプロジェクトリーダーを務める。法務領域に関する豊富な知識・経験を活かし、多数の法律事務所および企業の採用支援を行う。また、弁護士を中心とする法務人材との面談を年間500名程度担当し、高い支援実績を残している。プライベートでは、1児のパパとして子育てと仕事の両立に奮闘中である。

●執筆等
「法務人材採用の理想と現実」連載(BUSINESS LAW JOURNAL/レクシスネクシス・ジャパン)2015年10・12月号・2016年2月号掲載。

法務、弁護士、法律事務所、知財、弁理士、特許事務所の求人・転職サイト「リーガルネット」
http://www.legalnet-ms.jp/




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