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中国法セミナーレポート
「外商投資法」制定を受けた
中国ビジネス法務の最新動向

桃尾・松尾・難波法律事務所×環球(GLOBAL)法律事務所

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国内案件のみならず、世界の多くの国々における実力ある法律事務所との間に築き上げた信頼関係に基づいてグローバルなリーガルサービスを提供する桃尾・松尾・難波法律事務所。近年は中国プラクティスにも注力する同事務所が主催した「中国法セミナー」をレポートする。
なお、セミナーが開催された後、「外商投資法」が制定されており、セミナーの重要テーマについて、状況が変化している。
そこで、以下では、外商投資法も織り込んだ、「誌上セミナー」として再構築し、セミナーの参加者の方にとっても、それ以外の方にとっても有益な内容とすることを試みている。


(制作/レクシスネクシス・ジャパン株式会社 広告出版部)


M&Aの最新動向と外資規制緩和

「当所には、中国で実務経験を積んだ松尾剛行弁護士や、中国人律師が在籍し、日本企業の皆様に中国関係のサービスを数多く提供しています。本日のセミナーでは、我々が信頼し日頃からお世話になっている中国環球法律事務所の2名の劉先生と鮑先生とともに、日本企業の皆様に有意義な情報提供をしていきたいと考えています」。

桃尾・松尾・難波法律事務所のネーミングパートナーである、難波修一弁護士の挨拶からスタートした「中国法セミナー」。最初のセッションでは、環球法律事務所の鮑栄振中国弁護士が、中国におけるM&Aの最新動向について解説した。

「2018年の日本企業の対中直接投資額は約40億ドルで世界6位です。単純な製造拠点としての中国の魅力は相対的に落ちていても、販売拠点等としての中国の魅力はまだあり、ここ数年『M&Aブーム』と呼ばれるように、民間企業が外資から投資を受けるケースもよく見られます。現在は米中の貿易摩擦が懸念されています。確かに中国で製品を製造して米国に販売するというビジネスモデルに影響があります。しかし、そのようなビジネスに依存している会社でないならば、日系企業が購入するうえで支障はありません。むしろ、米国企業が中国企業の買収について様子見傾向になっているので、いわば、優良な中国企業を買収する『好機』とも言えるのではないかと見られます」。

そう語る鮑弁護士によれば、外資企業は、中国の新エネルギーや新技術、人工知能といった業種に注目しており、実際に日系の大手商社や大手銀行のM&A部門からの相談も増えているという。

次に鮑弁護士は、中国の外資規制緩和について詳細に解説した。

「2018年版の『ネガティブリスト』では、規制の項目が63から48に削減され、自動車産業や電力、鉄道網建築をはじめ22の分野で新たな開放措置がとられました」

「2019年3月15日、中国の第13期全国人民代表大会第2回会議において、「外商投資法」が可決され、2020年1月1日に施行されます。「外商投資法」は、これまで外資3法と称されてきた「外資企業法」、「中外合弁経営企業法」および「中外合作経営企業法」に代わり、日系中国企業の運営を含む外資による中国投資に関する統一された基本法となります。外商投資法の重要な内容として、内外平等があり、投資前国民待遇(4条)、組織形態、機関構成および活動の準則における会社法等の一般法令の適用(31条)等の規定が整備されました。外国企業の注目点の一つである、外資の有する技術の中国への強制移転の禁止については、行政機関とその職員による行政手段による技術強制移転が明文で禁止された(22条2項)ものの、外資系企業からは、これを肯定的に評価する意見と、当然のことを注意的に規定しただけで不徹底だという否定的意見が上がっています。第40条では、投資に関して外国政府が中国に対して差別的な禁止、制限またはその他の類似措置をとる場合には中国が相応の措置を講じるとされていますが、これは中国の観点から見れば、当然の利益を守る条項で、特に最近制定された法律にはよく見られます。しかし、一部の外国メディアにおいては米中貿易摩擦が背景と理解され、実際に『相応の措置』が取られることで、政治問題が経済問題に影響を及ぼすのではないかという懸念が見られます。このように、『外商投資法には、米中貿易摩擦を背景とした不徹底な部分があると(『誤解』に過ぎない部分も含め)受け止められてもいますが、基本的には、外国投資を促進、保護する法律と理解されます。同法については、国務院と商務部等が下位規範を制定中であり、同法と同時に発効できるように、2019年中に関連制度に関するさらなる詳細な規定や実施細則を定める予定であると報道されています」

「さらには、同法42条にご留意いただきたいです。同条では、2020年1月1日の『外商投資法』の発効と同時に、現行の『外資三法』を廃止するとしています。外資三法に定める組織形態や機関構成等は、必ずしも『会社法』の規定と一致していませんでしたが、今後は『外商投資法』に基づき、外商投資企業も、『会社法』の組織形態や機関構成等を採用しなければなりません。ここで、既存の外商投資企業に対しては、5年間の猶予期間が設けられていることが注目に値します。すなわち、猶予期間中、現存の外商投資企業は、従来の企業組織形態等を継続することができますが、この期間の満了までに、従来の企業組織形態等を内資企業と同様のものに変更する必要があり、よって、会社の定款等を修正することが必要になります。この点は、株主会ではなく董事会を最高権力機関とするほか、董事の選任、重要事項の決議方法、持分譲渡の要件等多くの面で特別な規制を受けている中外合弁企業に対して、特に大きな影響を及ぼすと思われます」


中国の独占禁止法と情報通信政策

続くセッションでは、環球法律事務所独禁チームの主要メンバーでもあるパートナーの劉淑珺弁護士が、中国の独占禁止法に関する最新動向について解説した。

「最近のトピックとして、中国の独占禁止法には主な法執行機関が三つありましたが、2018年3月中旬からの中央機関再編の一環として新設された国家市場監督管理総局(SAMR)の独占禁止法局として統合されました。同局は設立されてからちょうど1年になりますが、2019年3月25日時点で、既に32件の行政処罰決定を公表しています。過去に最も多かった独占禁止法関連の処罰は2016年の28件です。統合前に統合準備で取締が低調だったと評することはできますが、統合後は当局の取締が非常に活発になり、迅速なペースで法執行が行われています」

また、劉弁護士によると、事業者結合の事前届出の分野においても、中国の当局の経験値が上がり、かつ、効率化が重視されるようになってきているので、従来と比べて、当事者の届出から当局のクリアランスが下りるまでの期間は大分短縮されてきており、簡易届出案件なら、基本的には第一段階(正式な立件日から30日以内)においてクリアランスが下り、最近ではそのスピードも加速傾向にあるとのことである。

続いて劉弁護士は、独占協定(水平的カルテルおよび垂直的独占合意を含む)について明確な書面の合意をした証拠がなくても、競争者同士間の意思の連絡または情報交換、関連行為の同時性と一致性、関連市場の構造状況などの証拠から独占協定として処罰につながった事案等の中国独占禁止法の特徴的な執行事案を踏まえた対応策を紹介した。さらに、独占禁止法執行の重点的な対象となった業種と行為類型、そして、独占禁止法調査の端緒、日系企業の留意点等も紹介した。

そして最後のセッションでは、松尾剛行弁護士、劉弁護士、鮑弁護士が登壇し、中国の情報通信政策についてそれぞれが解説した。

最初に登壇した松尾弁護士は、中国当局の顔認証システムによって多くの指名手配犯が逮捕されたジャッキー・チュンのコンサートツアーを例に、日本などとは異なる“中国流”の個人情報保護規範を概説。

「表現の自由を重視する米国、プライバシーを重視するEUという大きな方向性の中で、各国がプライバシー外交を行っているところ、中国は、このいずれの陣営とも一線を画するスタンスと評することができ、今後その動向が更に注目されるところです」

さらに松尾弁護士は、Googleをはじめとする世界的なIT企業“GAFA”とは一線を画しながらも、現地のテック企業が「10億人市場」で大量のデータを収集している現状にも言及し、データ時代の未来を予想した。

そしてセッションの最後では、鮑弁護士が中国サイバーセキュリティ法の要点を説明。

「中国サイバーセキュリティ法により規制を受ける主な対象者は、ネットワーク運営者、重要情報インフラ運営者、ネットワーク製品及びサービス提供者です。そのうち、重要情報インフラの運営者は、通常の情報ネットワーク運営者よりも厳しい義務を課されており、例えば、重要情報インフラの運営者は、一定の要件を満たす場合に、中国国内でデータを保管し、国外に移転する場合に安全評価を受ける義務が課せられます。しかし、重要情報インフラそのものについては、現時点で、明確な定義と具体的な範囲が定められていません。重要情報インフラは外資系企業が中国ビジネスを展開するうえで非常に重要な概念であり、早急な適用範囲の明確化が待たれます」

最後に劉弁護士は、「現在中国では、個人情報の保護に関する法令が多く存在し、200以上の法令で『個人情報の保護』に言及されています。今のところ、法律レベルでは主に刑法とサイバーセキュリティ法で個人情報保護について関連する規定が行われており、また、非強制規範である『個人情報安全規範』が相当程度実務の指針として使用されていますが、統一的な個人情報保護法は制定されていません。個人情報保護法はすでに中国の第13期全人代常務委員会の立法計画に掲げられており、今後、同法の立法動向に注目する必要があります」とセッションを結んだ。

Profile

難波 修一(弁護士) Shuichi Namba

82年東京大学法学部卒業。84年弁護士登録(第一東京弁護士会)。87年アメリカ合衆国コロンビア大学ロースクール卒業。アメリカ合衆国ニューヨーク州Weil,Gotshal & Manges法律事務所、アメリカ合衆国ニューヨーク州バンカーズ・トラスト銀行勤務の後、88年アメ リカ合衆国カリフォルニア州弁護士およびニューヨーク州弁護士登録。89年桃尾・松尾・難波法律事務所開設。

Profile

松尾 剛行(弁護士) Takayuki Matsuo

06年東京大学法学部卒業。07年弁護士登録(第一東京弁護士会)、桃尾・松尾・難波法律事務所入所(現パートナー)。13年アメリカ合衆国ハーバード大学ロースクール卒業。14年ニューヨーク州弁護士登録。15年北京大学法学院修士号取得。

Profile

鮑 栄振(中国弁護士) Bao Rongzhen

環球法律事務所パートナー。日本業務チーム。日中間の会社関連業務分野において20年近く豊富な実務経験を有し、特にM&A、労務、商業賄賂等のコンプライアンス・リスクマネジメントやインターネット、データ・セキュリティ等の法律業務に注力。

Profile

劉 淑珺(中国弁護士) Liu Shujin

環球法律事務所パートナー。日本業務チームと独禁・競争法チーム。10年以上にわたり日本企業に対してM&A、独占禁止法、コンプライアンス、危機管理等のリーガルサービスを提供。




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