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経営・事業戦略を成功に導く
IPランドスケープ最新動向

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(写真左から 加藤 浩一郎 氏、杉光 一成 氏、小林 誠 氏、野崎 篤志 氏)

近年、欧米の先進企業において、知財データを活用した最新の経営戦略・事業戦略の支援手法やマーケティング・リサーチ手法として注目を集める「IPランドスケープ」。日本でも、経済産業省・特許庁発表の『知財人材スキル標準 version 2.0(以下「知財スキル標準」)』に盛り込まれるなど、今後の浸透が期待されている。

2019年度からIPランドスケープを冠した科目を開講するKIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院では、2018年10月26日に約80名の参加者を集めて、『経営戦略・事業戦略を支援するIPランドスケープとは?』と題されたセミナーが開催された。

(制作/レクシスネクシス・ジャパン株式会社 広告出版部)



IPランドスケープの意義と企業経営への好影響

『知財スキル標準』策定の委員長を務めたKIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院の杉光一成教授は、セミナー冒頭で次のように語った。

「『知的財産は、企業のリスク回避のためのもの』というイメージは、30年も前の古い考え方です。マーケティングが『既存市場の維持と拡大、新市場の創造のための諸活動』と定義されるならば、知的財産はビジネスやマーケティングにとって極めてパワフルで有用な“道具”だと言えます」

知財の業務や必要なスキルをまとめた『知財スキル標準』の策定にあたり、杉光教授らは欧米の先進企業にヒアリングを実施した。

「英国・ダイソン社など複数の企業から出たキーワードが、特許データを用いたマーケティング・リサーチとも言える『IPランドスケープ』でした。各企業の共通点は二つあって、一つは『経営戦略・事業戦略を目的として、結果を提示する相手が経営陣や事業責任者である』ということ。もう一つは、調査・分析する内容が『知財情報だけでなく、マーケット情報を含む』という点でした。IPランドスケープの業務の詳細は各企業で異なりますが、仮に定義するとすれば、『経営戦略・事業戦略を成功させるために、知財情報にマーケティング情報などを統合して分析した事業環境、将来の見通し、あるいは戦略オプションを、経営陣・事業責任者に対して提示する業務』となります。特許データなどの知財情報は定量化できるので、新規事業におけるマーケティング以外にも、M&A候補・アライアンス先候補の探索を経営トップが判断する際のエビデンスとして積極的に活用されていくべきだと考えています」


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新規事業の開発検討など活用方法が多種多様

続いて、実際に企業向けにIPランドスケープのコンサルティングを行い、内閣府・知的財産戦略本部の『知財のビジネス価値評価検討タスクフォース』の委員も務める小林誠氏が登壇。事業戦略と知的財産戦略の結節点やIPランドスケープの活用方法を紹介した。 「米国の上場企業(S&P500)の株式時価総額のある分析結果では、企業価値の構成要素に知財などの無形資産が占める割合が1985年は32%でしたが、2015年には87%に上がっています。これは『市場の供給力が需要を上回り、良いものでも消費者から選ばれなければ売れない』時代だから起きた変化で、知財などの資産を活用して企業の競争優位性を築く重要性が見えてきます。だからこそ、IPランドスケープによる事業戦略・知財戦略構築などを行い、知財で競争力を生み出せる事業環境をつくることが大切になります」

また、実務を通じて「多角的な情報に基づく事業環境分析が、戦略や事業を成功に導く」と力説。

「私がIPランドスケープを行う際に重視するのが、技術・知財の調査、市場調査、事業分析という三つの観点です。これらの情報を組み合わせて将来的な事業環境を見据えた仮説を構築し、中長期的な事業戦略・知財戦略を構築します」

また、実際の企業ニーズから、IPランドスケープが活用できる事例も解説した。

「新規事業開発の検討をはじめ、知財の獲得・活用などのための事業戦略上のオープン&クローズ検討、デザインやブランド、ビッグデータなども含めたマーケティング戦略上の複合的な知財活用の検討、さらにはサプライチェーンから事業環境・動向を分析するサプライヤー・カスタマー動向分析など、多岐にわたる活用が可能です。事業戦略上、I P ランドスケープは非常に有効な考え方だと思います」


特許情報の裏にある業界事情なども重要に

グローバルな特許調査・分析に関わる知財情報コンサルティング・サービスを提供している野崎篤志氏も、IPランドスケープにおける特許情報と特許以外の情報との組み合わせの重要性を強調。自動車業界の事例をもとに説明した。

「例えば、メーカー各社の特許を比較した場合、日本の完成車のトップメーカーは特許数が多く、欧州系の完成車メーカーはかなり少ないことが分かりました。一方で、欧州のメガサプライヤーの特許数は少なくありません。その理由は、日本と欧州の自動車業界の構造がまったく異なるからです。このことからも、特許の情報だけではなく、その裏側にある業界やビジネス・エコノミクスに関する情報を踏まえた分析が大切だと分かります」

そして、Web上で得られる企業情報やマーケット情報、業界動向以外に、自社内の情報にも注目。

「例えば、営業部門であれば、顧客や競合他社の経営状況や課題、ニーズなど、一般には公表されていない情報を持っていることが多々あります。そのような社内の情報も上手に活用してください」

さらに、独自の情報収集の枠組みなども伝授した。

「Political (政治)、Economical (経済)、Social(社会)、Technological(技術)の頭文字をとった外部環境把握のフレームワーク『PEST分析』に、二つのPをプラスします。関連性があるPerson(人)とProduct(製品・サービス)を加え、各情報をバランスよく集め、分析することが重要です。また、情報を収集・分析する前に、ロジックツリーを作成することも有効です」

最後に、当大学院イノベーションマネジメント研究科専攻主任である加藤浩一郎教授の司会進行のもと、登壇者によるディスカッションも行われた。本来は経営・事業戦略に不可欠な要素であった『知財戦略』。これからの日本の企業経営のキーワードになると予感させる興味深いセミナーだった。


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取材/あつしな・るせ(CreativeUnit sprash)
撮影/臼田尚史

登壇者プロフィール

杉光 一成(すぎみつ かずなり)

KIT虎ノ門大学院 イノベーションマネジメント研究科 教授/知的財産科学研究所 所長


小林 誠(こばやし まこと)

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 シニアヴァイスプレジデント


野崎 篤志(のざき あつし)

株式会社イーパテント 代表取締役社長/知財情報コンサルタント


<パネルディスカッション司会>

加藤 浩一郎(かとう こういちろう)

KIT虎ノ門大学院 イノベーションマネジメント研究科 専攻主任、教授







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