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不正・不祥事案件の
最新危機対応プラクティスと
調査時のデータ解析技術の活用法

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(写真左から 矢田 悠 氏、山内 洋嗣 氏、重政 孝 氏、デイヴィッド・サナー 氏)

「不正・不祥事案件の最新危機対応プラクティスと調査時のデータ解析技術の活用法」レポート

2017年5月17日、フクラシア東京ステーションにおいて、合同会社日本カタリスト主催による「不正・不祥事案件の最新危機対応プラクティスと調査時のデータ解析技術の活用法」と題したセミナーが行われた。企業不祥事とその対応への社会の目が厳しさを増す昨今、万一の際に企業はどう手を打つべきか。危機管理のスペシャリストたちがその疑問に答えた。

(制作/レクシスネクシス・ジャパン株式会社 広告出版部)



Session 1
近時の不正・不祥事案件を踏まえた最新の危機対応プラクティス

最初のセッションに登壇したのは、森・濱田松本法律事務所の矢田悠弁護士。金融庁・証券取引等監視委員会への出向経験もあり、企業の危機管理について有事・平時を問わず幅広い知識と経験を有する矢田弁護士は、不正・不祥事を取り巻く現状と、企業がとるべき対応を紹介した。

(1)  不祥事対応は初動がカギ
「企業不祥事に対する社会全体の目は厳しさを増しています。従業員の帰属意識の低下やSNSの普及などから社外へのリークも多く、メディアのバッシングも激化しており、対応を誤れば企業の信頼が失墜してしまうことにもつながりかねません」と矢田弁護士。不正・不祥事はどのような企業であっても起こり得る。では、社内に不正・不祥事がある、あるいはその兆候があるとなった場合、法務・コンプライアンス担当者はどうすべきか。矢田弁護士は危機対応を「初動対応」「本格調査」「再発防止」の三つのフェーズに分け、中でも初動での「迅速な事実調査」が危機対応の中核となるとした。

「初動の時点で、当該事案が“本格調査を開始すべき事案か”を判断したうえで、調査の難易度や関与者を把握し、事態の対外的影響を検討します。併行して証拠の保全や関係者へのヒアリング、社内・社外を含めた情報管理も行わなければなりません。特に証拠の保全に関しては、時機を逸すると物証を破壊されたり、関係者同士で口裏合わせの相談をされたりするおそれがあります」

従業員へのヒアリングについては、「不正調査は業務の一環であり、従業員には調査への協力義務が発生しますが、密行性やプライバシーへの配慮から、執務室から離れた場所で執務時間外の時間に設定するなど、一定の配慮が必要です」と矢田弁護士。関係者の口裏合わせを防止するため、主要な対象者については、同じ時間帯に別の場所で一斉に行うのも有効だという。

外部への公表の要否はケース・バイ・ケースではあるが、生命・身体に危険が及ぶ可能性がある場合には迅速な開示が必要となる。このとき、公表・非公表の峻別を明確にし、非公表の情報については社内関係者に情報管理を徹底しなければならない。情報管理が徹底されないと、メディアが不正確な情報を伝えたり、従業員によるインサイダー取引が行われたりするなどの二次被害が発生するおそれがある。

「初動での失敗は、企業にとって回復困難な事態を招くおそれがあります。そのことを肝に銘じて、迅速かつ的確に事態を把握し、行動しなければなりません」

(2) 本格調査時の対応
本格調査では、初動対応で把握した情報を基に調査体制を確定し、調査を実行することになる。第三者委員会か、あるいは内部調査委員会かなどの調査体制は事案の規模や社会的影響の大きさによって判断することになるが、この本格調査でいかに徹底した調査を行えるかが、企業の信頼回復のカギとなる。「このとき、経営トップに調査の必要性を十分に理解してもらうことが重要です」と矢田弁護士は語る。「徹底した調査を行い、原因を究明し、再発防止を期すためには、全社的な協力が必要だということをトップメッセージとして発出することで、有益な調査や、その後の再発防止・信頼回復へとつなげていくことが可能となります」

本格調査の際には、関係者のヒアリングや証拠類の分析に加え、当該事案に類似した別事案がないかも調査しなければならない。これを怠ると第二の不正の芽を見逃してしまいかねず、後々役員が善管注意義務違反を問われやすくなる。このため、事態を矮小化せず、似たリスクのある取引はないかなど、慎重に調査する必要がある。また、併行して証券取引等監視委員会や消費者庁などの行政機関による調査への対応を迫られる場合もあるが、その調査の性質や特徴をよく理解して、適切な対応をとることが必要となる。

(3) 再発防止のために
「再発防止策の策定自体は参考になる他社事例も公表されていますし、そう困難なことではありません。しかし、本当に重要なのは“不正を許さない”という意識と組織の改革を、どう企業に根付かせるかです」と矢田弁護士は語る。「ドナルド・クレッシーの『不正のトライアングル』によれば、”動機・プレッシャー””機会””正当化”がそろったとき、人は誰でも不正を行うとされています。プレッシャーのない企業など存在しませんし、心の問題は個人の事情にもよりますから簡単ではありませんが、教育や研修を通じて不正への不利益処分の周知を行うなど、社内全体の意識を改革し、定期的な人事ローテーションや権限分掌などで不正の機会を潰し、企業倫理は業績に優先するといったトップメッセージで不正を正当化させない企業風土を構築するという、“当たり前”なことの徹底が再発防止の王道です」と矢田弁護士は締めくくった。


Session 2
人工知能「Predict」の継続能動学習機能で効率的に証拠文書を抽出

続いて登壇したのは、合同会社日本カタリスト代表のデイヴィッド・サナー氏。米国に本社を置くカタリスト社(Catalyst Repository Systems, Inc.)は、元訴訟弁護士のジョン・トレデニック氏が設立したリーガルテクノロジー企業である。同社が提供する人工知能を中軸にしたTAR(TechnologyAssisted Review)によるeディスカバリ支援システムは過去6000件の訴訟や調査案件に活用されるなど、世界各国で高い評価を得ている。2011年の合同会社日本カタリスト設立以降、同社は日本、韓国、中国、香港、台湾、タイ、マレーシア、UAE、インド等のアジア企業にも広くサービスを展開し、不正・不祥事案件に対応している。

サナー氏も不正調査における証拠保全の重要性を次のように語る。
「企業が不正の兆候を察知し、従業員に一切のデータの更新・削除を禁止したとしても、事後的な対応では間に合わない場合も少なくありません。不正が発覚してからご依頼をいただくこともありますが、やはり平時からメール等デジタルデータの保存・管理を行っておくことで、迅速かつ的確な証拠の保全が可能となります」

また、同社の提供する専用ツールの活用により、調査における時間と労力、そして費用面でのコストを大幅に削減できるという。「当社が提供する電子データ解析システム”Insight”に搭載された人工知能”Predict”には継続能動学習機能があります。このPredictは、各文書の事案関連性について業務担当者の判断結果をその都度学習し、レビューを重ねるごとに精度を上げていきます。これにより、膨大なデジタルデータから証拠となる文書を抽出するための時間的・費用的な負担の50%以上を軽減することが可能です」

同社のシステムは「事後」の対応にとどまらない。平時から活用し、定期的に内部監査を行うことで、不正・不祥事の芽を事前に感知し、その芽を摘み取ることもできる。その煩雑さから疎かになりがちな社内文書の管理が専用ツールの活用で徹底できれば、企業のコンプライアンス体制の強化にさらに力を与えるのではなかろうか。


Session 3
デジタル・フォレンジックの基礎

3番目に登壇したのは、弁護士と公認不正検査士の資格を併せ持つAOSリーガルテック株式会社の重政孝氏。同社はデータ復旧に関して高い技術力を有し、デジタル・フォレンジックサービスやeディスカバリ支援サービスを提供している。「デジタル・フォレンジック」とは、コンピュータから有用な情報を抽出し、法的手続のために証拠化する技術をいう。コンピュータがビジネスに必要不可欠となった昨今、情報漏えいやパワハラ、セクハラなど労務問題、また資産横領等のさまざまな社内不祥事の調査において、同社のサービスは活用の場を広げていると、重政氏はいう。

「デジタルデータは不正行為者や不正行為の内容を示す重要な証拠になり得るものですが、その半面、複製・消去や改変が容易であるため、取扱いには注意が必要です。PCのハードディスクやスマートフォンのメモリチップに記録されたデジタルデータが十分な証明力を有する証拠と認められるためには、『手続の正当性』『解析の正確性』および『第三者検証性』の3点が充足されなければなりません」

デジタル・フォレンジックで特に重要となるのが、証拠保全、すなわち媒体に記録されたデジタルデータの可能な限り全領域にわたる完全な複製(物理コピー)を作成し、この複製媒体を調査対象とすることだ。これにより、調査の正確性に疑義が生じた場合には再度原本から複製を作成して調査することで事後的に調査の正確性を検証できるため、「第三者検証性」が確保されるというわけだ。

また、不正行為者が証拠隠滅のためデータを削除してしまうことは往々にしてあり、これらを復元・解析することも同社の得意分野だ。「物理コピーを行うことで、削除領域に含まれるデータも保全することができます。このため、上書きがなされていない限り削除されたデータも復元することが可能です」と重政氏は語る。

デジタル・フォレンジックにおいて解析の対象となる媒体は、PC・サーバや携帯電話・スマートフォン、また監視カメラやカーナビなど多岐に及び、解析の対象となるデータもオフィスファイル、メール・SMS、LINEなどのSNS、画像・動画、インターネットアクセス履歴やファイルアクセス履歴、USB接続履歴、GPS履歴、携帯の発着信履歴など広範に及ぶ。また昨今、退職者による情報漏えいが問題となるケースが非常に増えているが、退職者のPCを初期化・再利用する前にHDDのデータを証拠保全しておくことで、問題が表面化した際の迅速な調査が可能となることも知っておきたい。

デジタルデータとビジネスとが切り離せない現代社会において、データの解析を通じて隠された不正を暴く デジタル・フォレンジックは、企業にとって心強いものといえるだろう。


Session 4
企業側弁護士から見た危機対応とデータ解析技術活用法

最後に登壇したのは、森・濱田松本法律事務所の山内洋嗣弁護士。データや品質の偽装、プロ競技における不正行為問題、DOJ(米国司法省)など海外当局による調査対応など数多くの大型の危機対応事案の経験を持つ山内弁護士は、危機管理の現場でデジタルデバイスやデジタルデータがどのように扱われるかを、実例を元に紹介した。

(1) 私物のPC・スマートフォン、私的なメールデータの入手
「業務用として企業から支給されるPC、スマートフォン、会社アカウントのメールについては、就業規則上に明記される例もあり、調査の必要性と目的の合理性、手段態様の妥当性が担保されれば調査について原則的に従業員の同意は不要です。逆に、従業員の私物のPCやスマートフォンなどについては、強制的な入手は原則的に困難です。不正行為者の中には、こうした枠組みを理解したうえで、私物を利用して不正行為を行う者も多くいますので、いかに私物を任意に提出させるかが現場の課題となっています」

私物のPCなどを任意に提出させるためのアプローチについては「事案や調査対象者の性質によって異なります。外部へのデータ送信や会社PCへの私物USBの接続といった客観的な証拠を突き付けて観念させるアプローチが有効な事例もあれば、弁護士限りの開示としたり、獲得した情報の管理徹底を確約したりすることによって安心感を与えるアプローチが有効な事例もあります。場合によっては情報提供者に有利な取扱いを提案することもあります。不正行為者による証拠隠滅を防ぐことも重要で、そのためには、迅速に調査に当たり、調査対象者に私物提出を迫らなければなりません」と山内弁護士は語る。重要データの大量出力のアラートを受けて、即日対象者への調査を開始した事例では、迅速な対応の結果、証拠隠滅を防いだうえで情報の漏えいも水際で防ぐことができたという。

(2) データを「残す」際の注意
平素からしかるべきデータをしっかり残しておくことが、発生した不正の原因を突き止め、事実を認定するために重要なことは言うまでもない。一方で、「企業内の文書は常に反対当事者の目に晒されるリスクを抱えているため、重要な文書をデータや紙の形で残す以上、その内容の吟味が欠かせない」と山内弁護士は指摘する。米国のディスカバリのような強制的な証拠開示制度が脅威であることはいうまでもないが、日本の民事訴訟法上の文書提出命令、仲裁におけるDocumentProduction の手続も決して無視できないリスクである。企業内の文書作成においては、後から誤解を受けないような言葉選びが重要になる。また、近時、デジタルデータについても、法令・文書管理規程を遵守しながら一定期間経過により処分をするという考え方に着目する企業も増えている。「紙媒体であれば、スペースの問題などもあり定期的に廃棄されやすいですが、デジタルデータは、PCの中で半永久的に残ることも少なくありません。こうしたデジタルデータの特質を踏まえた情報管理を平時から行うことが有効です」

伝統的な証拠作成手段である録音にも注意が必要である。近時では、デジタルデバイスの容量増大、ICレコーダーの高性能化などにより「常に録音」という姿勢で臨む担当者も少なくない。この点、山内弁護士は録音データについて「録音データも強制的な証拠提出手続の対象となり得ます。一般に、口頭での発言は文書よりも言葉が選ばれていませんし、発言の一部分だけが独り歩きするリスクもあります。声のトーンなどが分からない録音反訳が証拠として採用される怖さもあります。どのように証拠化するのかという視点は録音にも必要なのです」と指摘する。

(3) データ分析上の留意点
膨大な電子メールを社内で調査する必要に迫られた場合については、重要なものから調査をするべくメールアカウントと期間で絞り込み、言い逃れができない“送信済みメール”を優先的にチェックすることもある。山内弁護士は、メールをレビューする担当者にとって重要な点について「“探す”という視点よりも、“理解する”という視点が重要です。証拠の相互関係や文脈を理解して初めて事実認定が可能となるのです」と締めくくった。


セッション後の質疑応答では、事前に募集した質問のほか、各企業の実態に即した質問が数多く寄せられた。いつ自社に火の粉が降りかかるか分からない不正・不祥事対応にどう取り組むか、企業担当者にとって有意義な4時間半であったに違いない。



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  合同会社日本カタリスト

  tel:03-6441-2270
  Websitehttp://www.catalystsecure.com/jp/

Profile

矢田 悠 氏
[森・濱田松本法律事務所 弁護士、公認不正検査士]

2012年から2014年まで金融庁・証券取引等監視委員会に出向し、調査、制度設計に携わる。法律事務所復帰後は有事の危機管理、当局対応から平時の体制整備まで、コンプライアンス関連業務を幅広く取り扱っている。


山内 洋嗣 氏
[森・濱田松本法律事務所 弁護士、ニューヨーク州弁護士]

危機対応、国内外の訴訟・仲裁、裁判外の交渉を専門とする。危機対応分野では、データや品質の偽装、プロ競技における不正行為問題、DOJ(米国司法省)など海外当局による調査対応、情報漏えいなど数多くの大型事案に携わった経験を持つ。


重政 孝 氏
[AOSリーガルテック株式会社 eLaw事業本部 弁護士、カウンセル]

長慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、社会人経験を経て慶應義塾大学法科大学院を卒業。2014年2月弁護士登録。AOSリーガルテック株式会社にて社内法務を担当後、デジタル・フォレンジック業務に従事。


デイヴィッド・サナー 氏
[合同会社日本カタリスト 代表]

IT企業のCOOやフォレンジック部門のVPとして活躍。日本在住経験があり文化慣習などへの理解も深く、カタリスト日本法人代表として営業活動等すべてを統括する。米国本社の国際ビジネス開発担当副社長兼務。




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